住宅手当の相場|選択できるなら手当支給より社宅がお得!

住宅手当が支給される企業は年々減少傾向にあると言われています。住宅手当には法的な取り決めはなく、各企業の規定に従い支給の有無や金額が決定されるため人によってまちまちです。「収入」にあたるため課税の対象となり、住宅手当分の上乗せで保険料や税額が上がってしまうことも懸念されますが、あると有り難いと感じる人が多いようです。



住宅手当とは

住宅手当は任意の補助

住宅手当とは法定外福利厚生として企業が「任意」で行う住宅関連の補助です。法定福利厚生とされている健康保険や厚生年金、雇用保険、労災保険などとは違い、法で定められていないため企業によっては支給されない場合もあります。

一定の住宅手当は「収入」と見なされ、所得税や住民税、社会保険料にも影響してきます。社会保険料は労使折半といって企業と従業員で半分ずつ負担することになっていますが、収入が増えると負担額も大きくなります。

転勤族などで社宅や賃貸住宅を法人契約で借り上げ社宅として使用している場合は、住宅手当ではなく企業が家賃を支払い、従業員の給与から住宅使用料を控除するという形が取られることが多いようです。

こうすることで企業は社宅負担金を福利厚生費として計上できますし、双方の社会保険料負担も増えないため、住宅手当として支給するより企業にとっても従業員にとってもお得なのです。

しかし現在は維持困難などの理由で社宅を手放す企業も多く、また賃貸住宅を社宅として使用し経費として計上するためにも必要な条件があるため、住宅手当として支給されている場合も多いようです。

住宅手当の支給率

厚生労働省の平成22年就労条件総合調査結果によると、住宅手当の支給率は40.6%となっており、平成17年に比べると4.2%のダウンとなっているようです。企業規模が小さいほど支給率は低く、大きいほど高くなる傾向にあるようで、従業員300人以上の企業では支給率が5割を超えています。

4~5割の企業では何らかの形で支給されているようですが、近年は健康診断や人間ドックなどの健康維持のための福利厚生費が増加傾向にあり、住宅補助としての福利厚生費は減少傾向にあるようです。

厚生労働省:平成22年就労条件総合調査結果の概況:結果の概要 3 賃金制度
参照元:厚生労働省(2015年12月:著者調べ)

住宅手当が支給される条件

住宅手当は企業の任意支給となりますので、その企業の規定に従って支給が決定されると思われます。よく条件として設定されているものとしては「世帯主でかつ扶養家族を直接扶養する義務がある者」などが挙げられます。

また、ある年齢を超えるまでは社宅として使用料を給与控除され、上限の年齢を超えると住宅手当となるといった場合もあるようです。持ち家を購入すると社宅としての処理はできないため住宅手当となり課税対象になることが多いようです。

また実家住まいなど、自己の名義でない住宅に居住している場合は支給されません。虚偽の申告で住宅手当を受け取ると、後で発覚したときに返還を求められることもありますので注意が必要です。



住宅手当の相場

住宅手当の労働者一人当たり平均支給金額は、厚生労働省の平成22年就労条件総合調査結果(上記リンク)によると平均17,279円となっています。企業によって幅がありますが、最多支給額は1~2万円の範囲のようですので、相場としては1~2万円だと考えていいかと思われます。

また支給額も支給率と同じく、企業規模が小さいほうが低く、大きくなるほど高くなる傾向にあるようです。大企業の場合は転勤を伴うことが多いですので、社宅や借り上げ社宅の貸与といった形で家賃が補助されることが多く、そういった面で支給率も高くなっているのではないかと考えられます。

消え行く福利厚生「住宅手当」の相場はいくら?|【Tech総研】
参照元:Tech総研リクナビNEXT(2015年12月:著者調べ)

社宅を提供される場合の相場

転勤がある企業の7~8割は、借り上げ社宅を含めた社宅の提供や家賃補助があるようです。このような企業の都合で転居しなくてはならない場合は、敷金や仲介手数料、引っ越し費用などの転居に伴う費用を企業が負担するのが一般的であると思われます。

家賃に関しては10割負担という企業はほとんどないと思われます。地域ごとに上限額が決まっている場合が多く、家賃の何割といった補助の仕方が多いようです。

一般的に都心などの賃貸料が高い地域は補助額も大きく10万円以上という例もありますが、企業が借り上げ社宅として契約し、従業員の給与から負担額を天引きする場合は家賃の50%以上を従業員が負担する必要があるため、従業員自身が郊外に住むことを希望する場合が多いようです。

通勤手当は月額10万円まで非課税となりますので、家賃負担額が増えるのなら通勤に時間をかける派の人が多いようですが、通勤手当は社会保険上では所得に含まれるので注意が必要です。しかし、社会保険料が増えても将来もらえる年金も増えるのでそこまで心配する必要はないかもしれません。

反対に、地方など賃貸料が安い地域は補助額が少なくなる傾向にあるようです。地方では家賃は安い代わりに水道光熱費が高くなる場合もありますが、そこまでの考慮はされていないように思われます。

また転勤族であっても年齢が40歳以上など、ある基準を超えた場合は借り上げ社宅であっても全額自己負担となる企業もあります。転勤に伴う費用は企業が負担するとしても、毎月の家賃は給与から控除され企業を通して支払われます。

住宅手当として課税される上に、使い方に関わらず一定の修繕費用などを強制的に徴収される場合もあるため、子供の進学などのことも考慮したうえで持ち家を購入し転勤があれば単身赴任で対応しようとする家庭が多いようです。

住宅手当を出す会社は従業員ともども損をする? 「あなたの仕事・職場」と数字の秘密:PRESIDENT Online – プレジデント
参照元:PRESIDENT‐Online(2015年12月:著者調べ)

住宅手当として支給される場合の相場

持ち家や、賃貸でも自己調達した場合にこの支払い方法がされることが多いようです。また賃貸物件に関しては、従業員50人以上の企業であれば9割方が何らかの補助をしているという情報もありますが、持ち家になると支給率は7割程度となるようです。

それまで実家や独身寮から通勤していた従業員が結婚するなどした場合は、転勤が伴っていないため自己都合での退寮、独立と見なされ敷金礼金などの負担はされないことが多いようですが、住宅手当という形で補助を受けられることはあるようです。

この場合は、前述したとおり1~2万円の支給が相場であるようですが、課税対象となるため社会保険料・所得税・住民税額の負担増が懸念されます。

また、結婚し住宅手当を支給されていたものの、その後転勤によって転居する場合には社宅または借り上げ社宅を提供という形になり、住宅手当支給という形でなく家賃自己負担額を給与より控除されるという方法に変更されることも多いようです。

平成27年職種別民間給与実態調査の結果
参照元:人事院 National Personnel Authority(2015年12月:著者調べ)

社宅貸与という形のほうが得

社宅貸与というのは従業員にとってだけでなく、企業にとっても有利なのです。住宅手当を上乗せするという形の支給方法だと、課税対象となるため従業員の税負担、社会保険負担が増え、なおかつ企業の社会保険負担も増えます。

しかし、社宅貸与という形になると一定の条件はあるようですが企業は社宅費用を福利厚生費として経費計上することができます。従業員の税負担・社会保険料が増えないだけではなく、企業の社会保険料負担も増えずに済みます。

企業が社宅を持たなくても、一定の条件を満たせば民間の賃貸住宅を借り上げ社宅として使用することでもこの方法は可能ですので、住宅手当として支給されている場合は企業によっては交渉の余地があるかもしれません。

アット社宅|株式会社ランドトラスト
参照元:株式会社ランドトラスト(2015年12月:著者調べ) 社宅と住宅手当の違いが分かりやすく説明されています。

住宅手当は必要?

就職前に住宅手当があるか確認できる?

住宅手当は法定外福利になりますので、企業が絶対に支払わなければいけないものではなく任意での支給となります。雇用保険や社会保険、労災保険などは法定福利となるため求人票にも書かれていることが多いですが、住宅手当があるかどうかまでは確認できないことも多いのではないかと思われます。

求人票などに記載されているとすれば、手当の有無や寮・社宅完備などといった程度であると思われ、具体的な条件や金額などについては書かれていないことがほとんどでしょう。面接などでも、そういったこちらの権利を追求するような質問はしないほうが無難ではないかと思われます。

転勤の有無などは就職前にもわかると思われるので、そういった条件と基本給などの給与面から判断するしかないのかもしれません。従業員数300人以上などの大きな企業は何らかの補助がされることが多いようですので、入社後に就業規則を確認しましょう。

もらうと損になる場合もあるってホント?

社宅提供という方法ではなく、住宅手当として収入に上乗せ支給される場合は、所得税や住民税、社会保険料の負担も増えることになるので、実質的には住宅手当分の収入がそのまま増えるわけではありません。

一般的には「総収入が増えたのに、税負担や社会保険料の負担が増えることによって手取り収入が減る」ということはありませんが、例えば児童手当や子供医療費助成の所得制限でギリギリ支給されるラインの収入の場合、住宅手当の支給によってそれらの恩恵が十分に受けられなくなる場合もあります。 PhotoBy:著者(2015年12月作成)
子ども医療費助成の所得制限については自治体により異なりますが、児童手当と同等の制限を設けている場合が多いようです。中には2歳まで、小学校卒業まで、などのように期限付きで所得制限を撤廃している自治体もあるようです。 児童手当の場合、所得制限に引っかかってしまうと、通常一人当たり15年間の児童手当は200万円程度となりますが、所得制限に引っかかると90万円程度しか受け取れないことになり、子供1人であれば100万円、2人であれば200万円以上の損となります。

また児童手当の所得制限に引っかかると、子ども医療費助成制度の所得制限にも引っかかることが多いようです。自治体によっては所得制限を期限付きで撤廃している場合もあるようです。

また、保育料負担増や高等学校就学支援制度の所得制限に引っかかる場合もあり、住宅手当の支給額によっては結果的に手元に残るお金は減ってしまうということもなきにしもあらずと言えます。

完全に収入がオーバーしている場合は仕方ないと割り切れますが、年収900万円前後で数万円の差で所得制限に引っかかり、ここまで恩恵が受けられなくなるというのは厳しいですね。これらは一度受けられなくても、毎年所得額を見直し再審査されますので、資格登録をしておいて必ず確認するようにしましょう。

あったら嬉しい手当の1位

しかしながら住宅関連の補助は、どういったアンケートでも休暇の充実などを抑えて「充実させてほしい福利厚生の1位」を独走しているようです。生活するうえでの必要な費用の中で、最も大きい割合を占める住居費に対する補助はなんといっても魅力的ですね。

できれば課税の心配のない社宅や借り上げ社宅への入居ができればベストですが、もし手当の上乗せという形であっても収入が増えることは有り難いことなのでほしいと考える人が大多数を占めているようです。



まとめ

昨今では公務員の住宅手当が廃止されてきていることもあり、民間企業でも法定外福利厚生である住宅手当は廃止される傾向にあるようです。

雇用形態やライフスタイルの多様化なども、住宅手当の支給基準を複雑化させていると思われます。基本給に手当を上乗せするという従来からの給与形態ではなく、成果重視で給与を決めるという給与形態に変わりつつあるということなのかもしれません。

住宅手当などの福利厚生に身を割く企業が減少している中、それでも支給される場合は大変有り難いことですが、場合によっては損になってしまうこともあるようですので、特に年収900万円前後の収入の方は注意が必要となります。

また住宅手当として支給されると課税対象となりますが、社宅に入居する、または借り上げ社宅として給与から自己負担額が控除されるという方法であれば、住居費の負担が軽くなる上に税負担が大きくなることもありません。

好きな場所や好きな物件に住むのは魅力的ですが、社宅入居という選択が可能な企業であれば利用したほうが経済的にはかなりお得になると思われます。また個人企業で住宅手当が加算されている場合も、勤務先に相談してそうした対処をしてもらえるか交渉してみるのも一考に値するのではないかと思われます。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。