世帯収入とは?世帯年収別の各種制度と恩恵の差をまとめてみた

世帯収入とはその言葉通り世帯の合計収入のことですが、世帯年収ベースで考えられる制度の主なものとして、高等学校就学支援制度や保育料、高額介護サービス費用や65歳以上の介護保険料などが挙げられます。しかし、家庭の形態によってはその恩恵を十分に受けられない場合もあるようです。



世帯収入とは

世帯収入とは

世帯収入とは、世帯全体の合計年収のことです。働いているのが世帯主一人であればその収入、共働きであれば夫婦の収入、また株式の配当収入やその他の雑収入、一時収入なども合算したものです。

親世帯と同居していて生計を共にしている場合も、基本的には世代ごとの収入を世帯収入と判断されることが多いようですが、そう判断されない場合も、住民票上の世帯が分離されていれば、同一住所でも別世帯ということになり、世帯収入は親世帯、子世帯それぞれ別になります。

平均的な世帯年収

厚生労働省の国民生活基礎調査結果によると、平成25年の全世帯の平均世帯年収は528.9万円だということです。うち、高齢者世帯300.5万円、児童のいる世帯は696.3万円となっています。全世帯平均は10年前と比べると1割近く減少している計算になるということです。

また中央値と言われる、所得を低いものから高いものという順に並べ2等分した境界値は415万円ということです。全体の平均となると、一部の高所得者層が平均を押し上げていることもあり、実質的にはこの「中央値」が平均的な世帯年収ではないかと言われています。

また6割以上の世帯が、生活が苦しいと感じているということで、特に児童のいる世帯は7割近くがそう感じているようです。

調査の概要|厚生労働省
参照元:厚生労働省|平成26年 国民生活基礎調査の概況(2015年11月:著者調べ)



世帯年収ベースの制度(子育て)

「世帯年収ベース」で考えられる子育て関係の制度として、高校授業料無償化と言われる高等学校就学支援制度と、保育園の保育料が挙げられます。これは前年中の所得を基準に計算される「市町村民税所得割額」という金額から判断されるということです。

この前年中の所得には、給与所得や事業所得だけでなく、利子や配当収入、保険金の満期などの一時所得や雑所得も含まれるということです。そのため、大きな一時所得があった場合には翌年度の高校就学支援金や保育料の金額に影響が出る可能性があるようです。

所得割額(所得金額と税率)|岡山市|くらしの情報|税制度
参照元:岡山市(2015年11月:著者調べ) 市町村民税所得割額の算定方法について分かりやすく説明されています。

高校無償化に所得制限

2014年4月入学分より高等学校就学支援制度に所得制限ができたということです。公立高校の場合は授業料分の月額9,900円、私立高校の場合は、これにさらに所得に応じて加算金が支給されるのですが、これが世帯収入によって受けられない場合があるのです。

この場合の世帯収入とは生徒の親権者の合算収入となります。同居の祖父母や兄姉と生計を共にしていても、主に生計をそちらに委ねている場合でない限り収入が合算されることはありません。共働きの場合は両親の市町村民税所得割額を合算して考えます。

サラリーマンで給与から住民税が天引きされている場合は、毎年5~6月ごろに会社から「給与所得等に係る市(町村)民税・(都道府)県民税特別徴収税額通知書」という細長い用紙が配られていると思われます。サラリーマン以外の職業の人や用紙を紛失している場合は、市町村が発行する「課税証明書」がそれにあたります。

それに記載された市町村民税所得割額(合算額)が304,200円以上の場合には高等学校就学支援制度を受けることができないということになります。

高校生等への修学支援:文部科学省
参照元:文部科学省(2015年11月:著者作成)

私立高校は世帯収入により追加支援

私立高校に通う生徒の場合は、世帯収入に応じて月額9,900円の1.5~2.5倍した額が支給されるということです。以下は文部科学省ホームページよりの抜粋です。

私立高等学校、私立中等教育学校の後期課程、私立特別支援学校、国立・公立・私立高等専門学校、公立・私立専修学校、私立各種学校については、世帯の収入に応じて、月額9,900円を1.5~2.5倍した額を支給します。具体的には、下記のとおりです。
・年収250万円未満程度(市町村民税所得割 非課税)の世帯:29万7,000円(2.5倍)
・年収250~350万円未満程度(市町村民税所得割額 5万1,300円未満)の世帯:23万7,600円(2倍)
・年収350~590万円未満程度(市町村民税所得割額 15万4,500円未満)の世帯:17万8,200円(1.5倍)

出典:

www.mext.go.jp
このように、年収に応じてかなりの額が加算されるので助かりますね。

しかし世帯年収ですべてを判断され各々の事情は考慮されないことが多いため、十分な恩恵を受けられないといった家庭もあるようです。例えば、世帯主が単身赴任などの理由で生活費が二重にかかり暮らし向きは楽でない場合などがあります。

こういった場合、実質的には収入が増えていないにもかかわらず、手当や帰省交通費などで所得が上乗せされてしまうということです。税金や保険料もアップする上に、数万の違いで私立高校の補助額が大きく変わってしまうのは納得がいきませんね。

高校の場合は公立に入れない場合もあり、家計に特別余裕があるわけでなくても私立に行く場合もあります。こういった実質的な収入が増えたわけではないケースについては、臨機応変な対応が望まれるのではないかと思われます。

大阪府/府政への意見の公表/府民の声  公表(詳細)
参照元:大阪府(2015年11月:著者調べ)

世帯収入と保育料負担

保育料に関しても世帯収入ベースで考えられており、こちらも市町村税所得割額の合計金額によって決定されます。ただしこちらについては少しややこしいのですが、諸々の控除によって減税された分を足し戻して計算するということなのです。

具体的には、住宅借入金等特別税額控除、寄付金税額控除、配当控除、外国税額控除、配当割額・株式等譲渡所得割額控除などの控除分を、市町村民税の所得割額に足し戻して保育料が算定されます。これにより、住宅ローン減税が受けられる世帯と受けられない世帯によって保育料に差が出るなどの不公平をなくすことができるということです。

また、その年のうちに生計の主な維持者が失業した場合や収入が大きく減った場合、災害などで損失を受けた場合、同一世帯で多額の医療費がかかった場合などは減額される場合もあるようです。

しかしこちらも単身赴任などで、やむを得ず生活費が二重にかかるなどの場合は、生活が厳しい状況であっても保育料減額の対象とは考慮されないようです。単身赴任手当で所得が増えたと見なされ、かえって保育料が増えてしまうことすらあるようです。

「市民の声」Q&A 広報・広聴
参照元:堺市(2015年11月:著者調べ)

世帯年収ベースの制度(介護)

介護費用と65歳以上の介護保険料

高額介護サービス費の自己負担限度額についても世帯収入ベースで考えられます。例えば親世帯と子世帯が同居し生計を共にしている場合、親世帯が年金のみの収入であっても住民票上の世帯が同一になっていれば子世帯の収入も合算して計算されるということです。

65歳以上で公的年金収入が、単身者の場合年間148万円以下、夫婦の場合192万8千円以下であれば住民税非課税となるそうですが、親世帯のみの世帯であればそのまま非課税世帯となります。

しかし、住民税課税の子世帯と同一世帯として住民登録されていると、高額介護サービスを利用する際に非課税世帯と比べて年間26万円以上負担が増すようです。

「世帯分離」で親の介護費用を節約する裏ワザ!? 知ってる人と知らない人で差がつく制度の矛盾|男の健康|ダイヤモンド・オンライン
参照元:DIAMOND‐Online(2015年11月:著者調べ)

diamond.jp
つまり住民登録をする際に、親世帯と同居だが子世帯が世帯分離して登録している場合と、親世帯と同一世帯として登録している場合とでは、その届け出の仕方だけでこのような差が生まれるということなのです。

また65歳以上の介護保険料についても、世帯年収ベースとされるため、これも親世帯のみで非課税世帯となれば年間保険料が23,700円であるのに対し、課税世帯の子世帯と同一世帯であれば52,600円と1年間で倍以上の費用が必要となります。

しかし、世帯分離についてはデメリットもあり、国民健康保険料の場合は負担が増す、車両保険の家族限定が適用されなくなることで保険料の負担が増すなどが考えられるようです。高額介護サービスを受けない場合はメリットがないとも言われています。

「介護保険料や介護サービス費を安くするという目的での世帯分離」は、本来のルールから逸脱しているため、自治体によっては受け付けてもらえない場合もあるということです。また、介護をする人が2人以上いる場合などは高額介護サービス費用などを合算できなくなり割高になることもあるようです。

同じ年収なのにお隣さんの介護保険料は半分! 「わが家のサイフ」の小さな大疑問:PRESIDENT Online – プレジデント
参照元:PRESIDENT‐Online(2015年11月:著者調べ)



片働きと共働きの世帯収入

同じ世帯収入でも共働きのほうがお得!?

同じ世帯年収でも片働きと共働きとでは、手取り収入(可処分所得)は共働きのほうが多くなるということです。例えば世帯年収1,000万円の4人世帯であっても、手取り年収は片働きで718.15万円、共働きで779.01万円となり、60万円以上もの差が出ると言われています(2015年分の試算)。

要因としてはまず給与所得控除が挙げられます。これは所得が大きくなるほど控除率が減っていくため、収入が低いほど受ける恩恵が大きいのです。平成26年度税制改正で給与所得控除の見直しがされたということですので、今後ますます差が大きくなると思われます。

これまでは給与所得控除の上限が適用される収入は1,500万円(控除額245万円)でしたが、平成28年分は1,200万円(控除額230万円)に、平成29年分以降は1,000万円(控除額220万円)に引き下げられることとなったようです。

これにより平成29年以降の場合だと、世帯収入が片働きで1,000万円超の場合は220万円の控除しかされませんが、共働きで例えば600万円+400万円=1,000万円といった場合は308万円控除されます。片働きより共働きのほうが同じ年収でもかなり大きな控除が受けられることになりますね。

世帯収入と所得税

所得税も、同じ世帯年収でも共働き世帯の負担のほうが軽くなる大きな要因です。所得税は累進課税といって所得が多いほど税率負担が大きくなるシステムになっていますが、世帯単位ではなく個人単位で課税されるため、片働きより共働きのほうが課税税率も低くて済み、手取り収入は多くなります。 PhotoBy:著者(2015年11月:著者作成)

No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月:著者調べ)

世帯収入と児童手当

また児童手当も共働き世帯の実質収入を上げる要因です。児童手当は世帯収入ではなく、世帯収入の軸となる最も大きい収入で判断されますが、960万円以上の年収になると支給額が一律5,000円となってしまうのです。

1,000万円の世帯年収であっても、片働きだと所得制限に引っかかり一律5,000円になりますが、共働きであれば所得制限に引っかかることなく3歳未満は15,000円、3歳以上中学校終了までは10,000円受け取ることができます。15年間で一人当たり100万円以上の差が出ることもあるようです。

消費税増税で家計の負担はどう変わる?(上) 片働きに「重く」、共働きに「軽い」実態 (マクロ経済編第1回)|消費税増税2014徹底攻略!|ダイヤモンド・オンライン
参照元:DIAMOND‐Online(2015年11月:著者調べ)

社会保険の壁が130万円から106万円へ

2016年10月より、パート勤務の社会保険料負担の壁が130万円から106万円へ引き下げられるということです。当面は大企業に1年以上勤める場合に限られるようですが、いずれは完全に106万円まで引き下げられる可能性が高いようです。

そうすると年間の保険料負担額も数十万円となり、かなり手取り収入が減ることになります。税金面や夫の会社からの家族手当なども考慮すると、106万円をかなり上回る収入を得なければ厳しいかもしれません。
ただ、パートで働く人のすべてが扶養内で働きたいと思っているわけではなく、保育園に入れず幼稚園に通わせているから短時間しか働けないという人なども多いと個人的には思うので、フルタイムの共働き世帯を中心にばかり考えられるのもどうかと思います。

しかし妻も厚生年金に加入することは、将来的には年金受取額も多少増えるので悪くはないのかもしれません。

まとめ

このように、個人収入ではなく世帯収入という考え方をすると、受けられる恩恵は少なくなるケースが多いような気がします。高校授業料の実質無償化や保育料、介護サービス費用は世帯年収をベースとして考えられるので、家庭の形態によっては色々な問題もあるようです。

しかし共働きで世帯収入を増やすことは、メリットのほうが大きいと思われます。所得控除面、税金面、児童手当などの面からみても、共働きは優遇を受けられやすく、同じ世帯年収でも共働き世帯のほうが実質収入は多くなると考えられ、経済的なゆとりがうまれる可能性は高いと思われます。

専業主婦やパート主婦に対する優遇策である配偶者控除が廃止される動きもあります。安易に配偶者控除のために世帯年収を抑えたり、介護費用のために世帯分離を考えたりすることは、結果的にかえって将来的な負担が増えてしまうケースも多いようです。

それぞれの家庭に合った形で、収入バランスを考えていけるといいですね。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。