生活費の理想的配分の見つけ方とは?お金の不安と安心を考える

生活費の管理が面倒で「もう考えたくもない!」と投げやりになっている人はいませんか?たとえ少しづつでも貯金の習慣ができ始めれば、面白いようにそんなストレスは消えてしまいます。投げ出す前にぜひ読んでみてください。



動機は「幸福の追求」であるべき

何かを長く続けるためには、それが楽しいことが一番です。

老後の生活や年金不足といった「不安」が動機で「貯蓄」や家計の見直しを考えている人がいたら、私はまず「貯蓄の動機」から見直してほしいと思います。

「貯蓄」を増やすことには私も大賛成!

ですが、その動機は「幸福の追求」や「夢の実現」であるべきなのです。

「将来の不安に備える」とか「老後が不安だから」とみんなが口にしますが、「不安」という得体のしれない理由をメインに家計の見直しをしようとしても、それでは家計簿をつける作業や節約することがまるで「苦行」のようになってしまいます

「不安」という不確定な動機をもとに蓄財をしていては、いったいいつまで続ければいいのか、いくら貯まれば「安心」なのか、出口の見えないトンネルを進むようなものです。

その間に時間はどんどん過ぎていきます。若い人は若さを失い、子供は愛らしさを失い(失礼!)、お金がたくさん貯まった未来を手にすることはできるかもしれませんが、そのお金を使っていたら「もっと」楽しめたかもしれない過去に戻ることはできません。

現在の生活を楽しみつつ、想定できる範囲の将来に備え、真に豊かな人生を送るための、「生活費の理想的な配分」について考えてみたいと思います。



生活費の適切な管理とは?

貯蓄は単純な算数

「家計」とは、消費や社会の最小単位として使われる「世帯」をもとにした経済活動を示していて、「支出、収入、ローン、貯蓄」などが含まれます。

・家計の管理は「収入と支出」「負債と資産」の把握から始まります。
・貯蓄は、「収入ー支出=貯蓄」という単純な算数で決まります。

■収入 >支出

このルールが守れる人は貯蓄のできる人です。

貯蓄ができない3つの原因

貯蓄ができない人は以下の3つを検証してみてください。

1. 支出額と収入額の両方、またはどちらかを把握していない
2. 支出額をコントロールできない
3. そもそも収入が少なすぎる

一番頭を悩ませるのが3.の「収入が少なすぎる」場合です。

収入が少なすぎる場合の対処法

正規、非正規の平均給与は、正規473万円、非正規168万円で、およそ2.8倍の差がある

平成25年分、国税庁「民間給与実態調査」によれば、正規雇用と非正規雇用者の民間給与(年)には3倍近くもの格差があることが分かっています。あなたが既に正社員で働いていて、まだ20代ならば、そう心配することもないでしょう。

もし、あなたが非正規で働くアルバイトや派遣社員なら、できればすぐにでも正社員になれる仕事を探したほうが良いかもしれません。ただし、働き方のスタイルは様々ですので一概にはいえないかもしれません。

例えば旦那さんが非正規雇用で収入が安定しないのなら、配偶者である奥さんが正規雇用の仕事に就けないか模索してみるのも一つの方法かもしれません。小さな子供がいてフルタイムでの就業が困難ならば、旦那さんに正規雇用の仕事に就いてもらい、自分はパートタイムで働くなど、夫婦で力を合わせられないか、考えてみるのも良いでしょう。

離婚して、子供がいるのに元配偶者の経済的支援が得られないような方の場合も、手取り収入が20万円を切っているようなら生活保護基準ギリギリかもしれません。日本には公式に設定された国民貧困線はありません。代わりに生活保護基準が実務上の目安とされています。

平成25年分 民間給与実態統計調査|統計情報|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月現在、筆者調べ)

収入>支出のバランス感覚

収入はそこそこあるのに貯蓄ができない原因で最も多いのは2.の「支出額をコントロールできない」ではないかと思います。

「必要なものを買っているだけで、贅沢なんて何もしてないはずなのに」という人も多いのですが、では、「食費にいくら使ってる?」や「固定費はいくら?」と聞いても即座に答えられない人は、「生活費を把握していない」証拠かもしれません。そこで助けとなるのが、「支出の割合」のモデル・ケースです。

理想的な支出の割合は?

手取り収入20万円で生活する場合と30万円で生活する場合を想定してモデルケースを作成してみました。モデルとは「ひな形」ですので、とりあえず下図を参考に予算を組み、数か月家計の記録をとってみてください。

余る費目、オーバーしてしまう費目があれば、その分をどのように調整するか考えるための参考値です。教育費にもっとお金がかかる場合もあるでしょう。地方に住んでいて「車の維持費や燃料費が」といった個別の事情もあるでしょう。

モデルケースは「最低限生活を維持するため」を想定して作成しています。「自分のライフスタイルに合う予算」はご自身で「考え抜いて」決めるプロセスを経てこそ、はじめて「実効性」が生まれるでしょう。 筆者作成(2015年11月現在)

住居費と貯蓄の配分はいじらない

注意していただきたいのは、「住居費の25%」と「貯蓄の20%」の2項目の比率はできるだけ守ってほしいということです。

便利で安全、おしゃれなイメージの街の駅近物件に住みたい。最新設備を完備した快適な住まい等、「理想の住処」を求める気持ちは分かりますが、住居費は家計の支出の中でも大きな比率を占めますので、25%上限を超えないように注意しましょう。

また、貯蓄の20%には(私なりの)明確な根拠があります。どんなに自制(セルフ・コントロール)に長けた人でも、後から検証してみると不要な支出(浪費)に収入の2割程度は使ってしまっているものだと言われます。

私はかなりの倹約家だと自認しているのですが、ちょっと甘いものが食べたいとか、出先のコーヒーショップで一休みなど、後から考えれば「別に我慢もできたのにな」という支出はチョコチョコあるものです。しかし、完全に無駄のない消費行動を目指すのは不毛です。逆にストレスが溜まり思わぬ形で爆発してしまいかねません。

「78対22の法則(別名ユダヤの法則)」は、「宇宙の法則」とも言われ、いろいろなケースに当てはまるのですが、私は貯蓄率の考え方に応用させています。

100の収入、78は消費、22は浪費に消える

どうせ2割が浪費に消えてしまうのなら、その分を先に「貯蓄」で消してしまい、残りの8割を生活費として予算を組もう、というアイデアです。残りの8割で生活していても、結局またその2割は「チョコチョコ浪費」に消えていくのですが、単純計算では、浪費額を結構減らすことになるんですよ。

単位を小さくして100円で計算してみましょう。

・100円x20%=20円
・(100円―20円) x20%=16円

どうですか?先に2割をひいておけば、浪費に消える額を当初の20円から16円に(4円分)節約できます。手取り収入が20万円なら、本来4万円が浪費に消えてしまうところです。その分を引いておけば浪費額は3万2,000円に収まる計算です(100円を20万円に換算しなおし再計算)。

・4万円 – 3万2,000円=8,000円

そうすると、月額8,000円分の浪費を抑制できたことになるのです。1年では9万6,000円ですから結構大きいと思いませんか?



お金の不安はどこからくるの?

超高齢社会を迎え、増え続ける社会保障費(医療や介護、福祉、年金)の負担を補うために、役人や政治家たちが「増税が必要です」や「国民みんなで負担を分かち合いましょう」など「大変だ!大変だ!」と言い出せば、メディアもこぞって「財政の危機」や「老後の不安要素」をあげつらうのですからたまったものではありませんね。

日本の「消えた年金問題」が発覚したのは2007年5月のことでした。「消えた年金」は同年の流行語大賞に選ばれるなど、大問題となったのですが、それより10年近くも前の1990年代末~2000年初頭頃には、「勤労世代が老齢世代を支える」という、高齢化が加速する日本の人口構造にそぐわない年金制度を問題視する声はすでにあちらこちらで聞かれていました。

その頃、中国共産党の幹部候補でもあった若い中国人女性と金融の仕事を通じて知り合ったのですが、彼女は「それでも日本の年金制度はまだまし。わが国は(日本の)10倍以上の人口、広大すぎる国土、都市戸籍と農村戸籍、少数民族の問題という複雑性に加え、一人っ子政策の弊害が出始めている」と嘆いていました。

彼女が嘆いているばかりではなく、「中国の年金問題は自分達の世代が解決してみせる」と意欲を燃やし、アメリカの名門大学に入学していったのを見て、そのバイタリティ―に心から敬服したのを覚えています。

日本はまだまだ豊かな国

誤解を招かないように注意が必要なのは承知の上で、あえて言いたいのは、「日本はまだまだ豊かな国」で、対応を間違わなければ現在抱える様々な問題を克服する力を持っているはずだということでしょう。

確かに、現在の年金制度ではいずれ破たんするかもしれません。しかし、現在の財源ベースで破たんしてしまうなら、別の財源を引っぱってきて、世界で最も進んだ「超高齢社会」を支える仕組みに作りなおせばいいのだとおもいます。

大金を投じた「住基ネット」が大失敗だったのに、新たに財源を確保し、時間も人も、そしてお金も使って「マイナンバー」制を実用にこぎつけられるぐらいですから、日本にはまだまだ余力がある!と私は安心(?)しています。

豊かさとは何か?

金満国家とも揶揄されるカタールの政府関係者と話しをする機会がありました。

「日本はいいよね。きれいな水と、生産性の高い農業、高度な技術を誇る製造業。何より勤勉で誠実な労働力を誇る国民。どれもわが国が喉から手が出るほど欲しいものばかりだ」と言われました。

日本人に対するリップサービスだと思ったのと同時に「その代わりに石油が出て大金持ちになれたんだからいいじゃない?」とも思いましたが、よくよく調べてみれば、かの国では食料や飲料水の備蓄が常にギリギリの状態で、サービス業や建設業などに従事するのは外国からの出稼ぎ労働者ばかりと、財政的には豊かでも国民の生活基盤は非常に脆かったりすることがわかりました。

お金で手に入る豊かさは確かにあります。でもお金だけではどうにもならない事もあるのです。

想定できる将来と、できない未来

今20代の方が老後を迎えるのはおよそ40年後になります。

私もまだ小学校入学前の子供の頃、世界の石油埋蔵量は50年後にはほぼ枯渇しているだろうというのが一般の人々の認識でした。根拠は諸説ありますので割愛しますが、急激に増加する人口や経済の発展、2度のオイルショックに「石油の枯渇」という「不安」が相まって、エネルギー資源の乏しい日本では「原発」という選択を受け入れることとなりました。

40年以上たった今日では、アメリカが原子力技術を同盟国家である日本へ供与することで対ソ連(現ロシア)政策で優位に立つ目的もあったなど、政治的な思惑や「原発利権」が複雑に絡んでいたことも明らかになってきているようです。

地球上で唯一、戦争による原子爆弾攻撃を受けた日本が「原発」に向かうなどよっぽどだったと思います。多くの国民が結果的に「原発の平和利用」という選択を受け入れてしまった一番大きな原因は「石油枯渇の恐怖」という「不安」にあったのではないかと、私は考えています。

当時、日本の人口はどんどん増え続けていたため「人口爆発」の懸念に「住宅不足」や「食糧難」といった「不安」も社会に広まっていました。

40年後どうなったでしょう?石油は枯渇するどころか、新たな油田の発見や代替燃料の増加などによって価格は低価格で安定、むしろ今後は需要の低下傾向もみられます。日本の人口も、減少傾向にある上に、空き家は増え続けています。誰も40年後の未来のことなんて正確には分からないものでしょう。

家計の管理についても、子供の成長に合わせて、小学校、中学校、高校、大学、定年の時機、住宅ローンの払い終わりの予定など、「想定できる将来」に最低限備える準備と心づもりがあればいいと思うのです。

若い人には不確定な未来予想図に惑わされず、「最低限の心づもりと準備」のあとは、おおいに人生を楽しんでほしいと思っています。

安心の目安は何でしょう?

安心して日々の生活を送るために、最低限の備えとしては、「半年分の収入の貯蓄」を私は考えています。病気やケガ、突然の解雇*などの不測の事態に陥っても、とりあえず「半年分」の普通預金口座への貯蓄があれば、暮らしを立て直す時間的猶予が得られるでしょう。

私は成果主義でリストラも頻繁に行われる外国の金融機関に勤めていたこともあり、「年収の1年分」をいくつかの金融機関に分けて預金していました。

「安心」の目安は人によって異なりますが、普通預金口座に「年収の半年分」が貯められたら、その後の預貯金は「余裕資金」として定期預金にしたり、株や債券などの投資資金にしてもいいのではないかと思います。

先にご紹介した「手取り収入の2割の貯金」を続けていると、ボーナス分を少し足す程度で、年収の半年分くらいは2年もすれば貯まりますから、まずは2年間、試してみて下さい。「年収の半年分の普通預貯金」の効果は絶大ですよ。貯蓄を楽しく続けていくためにも、ぜひ目標の目安にして頑張ってください。

*不当解雇にあたりそうな場合は専門家に相談することができます。

解雇でお困りなら  法テラス|法律を知る  相談窓口を知る  道しるべ
参照元:法テラスHP(2015年11月現在、筆者調べ)

まとめ

新渡戸稲造の「武士道」の中に「知識はただ知ればいいというものではなく、そこから知恵を身につけるための手段でしかなかった」という一文があります。

また、「知識の真に大切な点は人生に実際に役立つようにすることである」ともあります。

私もその通りだな、と思います。

溢れる情報の中で生きていく私たちは、「知識を得る」という機会に関しては非常に恵まれていますが、どんなに知識を積み重ねても、それを役立てる「知恵」がなければなりません。

生活費の理想的な配分について「知識」を得たら、次はあなたの人生の「幸福の追求」や「夢の実現」に向けて、知恵を働かせてくださいね。