高齢者用賃貸住宅を知っていますか?<老後>新しい選択のススメ

老後は自宅で過ごしたい、そう思う人もいる一方で「不便な場所にある自宅を売却して駅近の高齢者住宅に入りたい」という人や「なんとか自立はできているけれど食事作りがしんどいし、認知症になるまでは高齢者住宅がいい」という人など、老後の暮らし方には選択肢があります。若いうちこそ知っておきたいこの情報についてご紹介します。



<老後問題>誰もが感じる老い

年を重ねた自分と向き合う

「高齢者」と呼ばれるようになる前から、誰もが「老化」を感じます。老眼であったり、疲れやすさであったり、忘れっぽさであったり。年をとることでそんな自分と向き合うことが辛いこともあるかもしれません。しかし、その分若いときに比べて蓄えてきた様々な知識や経験、そんな深みを大事に「年を重ねた自分」を肯定的に捉えたいものですね。

「自宅を出るとき」は介護が必要になったときというイメージを持っている若い人は多いことでしょう。それはある意味間違っていません。「可能な限り自宅で過ごす」ということはある程度可能ですし、それを実現している人もいます。しかし、今、「高齢者用の老後の住まい」に選択肢が増えているようです。核家族化が進み、「料理がしんどい」と思っても同居でもしていない限り「お嫁さんに任せてしまう」ということもできないでしょうし、「おひとりさまの老後」もブームになっています。様々な生き方があるからこそ、「様々な老後」があるようです。

「お金がないから」と思って「自宅以外の住まい」を考えていない人もいるかもしれません。しかし、年金でやりくりできる「老後の住まい」もあるようです。実際に年をとってからでは、各住宅を見て回るのもしんどいものです。元気なうちにこそ、どのような選択肢があるのか自分の足で回って見て考えておくことができるのです。

高齢者用の住まいとしては、大ざっぱな区分で言うと費用負担の大きい順に

(1)有料老人ホーム
(2)サービス付き高齢者住宅
(3)ケアハウス(自立に近い人)あるいは特別養護老人ホーム(要介護)

に分けられます。この記事では(2)のサービス付高齢者住宅のような中負担の住宅についてご紹介しましょう。知っていて損はない「老後の住まいの選択」です。

消費者向けガイドブック
参照元:厚生労働省(2015年11月時点、著者調べ)



高齢者用<賃貸住宅>の種類

緊急時対応サービスや食事提供がある場合も

はじめに、高齢者向けの賃貸住宅の種類と概要についてご紹介しましょう。

(1)シルバーハウジング
公営住宅やUR都市再生機構賃貸住宅などの公共賃貸住宅のうち、住宅をバリアフリー化するとともに、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)が、生活相談や緊急時対応などのサービスを提供するものです。

(2)地域優良賃貸住宅
高齢者向け優良賃貸住宅という「バリアフリー化」され、「緊急時対応サービス」の利用が可能な賃貸住宅制度がありましたが、平成23年の法律改正により廃止となり各自治体の判断により「地域優良賃貸住宅」制度として運営されています。

(3)サービス付き高齢者住宅
「高齢者住まい法」(2011年)の改正前にあった高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)・高齢者専用賃貸住宅(高専賃)・高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)の3つを一本化する形で創設された住宅です。一定のサービスを提供する高齢者住宅の整備を目標に、ハード面の基準、介護サービスについての基準、入居時の金銭のやりとりにも基準が設けられました。

高齢化に伴い、高齢者の住まいに関する環境も年々変わってきていることがわかりますね。

厚生労働省:政策レポート(高齢者の住まい)
参照元:厚生労働省(2015年11月時点、著者調べ)

(1) シルバーハウジング

自立できているが不安があるという人に

シルバーハウジングは手すり、段差の解消、緊急通報システム(※1)が特徴となっています。入居高齢者に対する日常の生活指導、安否確認、緊急時における連絡等のサービスを提供する生活援助員(ライフサポートアドバイザー)が配置されている(※2)ところが安心の理由と言えるでしょう。
※1 浴室やトイレに設置されているため安心です。
※2 「ライフサポートアドバイザー常駐型」の他に「福祉施設連携型」で、デイサービスセンターなどの施設と連携したサービスを提供する形もあります。

入居対象者については、決まった基準がありますのでご紹介しましょう。

・高齢者単身世帯(60歳以上)
・高齢者夫婦世帯(夫婦のいずれか一方が60歳以上であれば可)
・高齢者(60歳以上)のみからなる世帯
・障害者単身世帯又は障害者とその配偶者からなる世帯等

60歳以上、あるいは障害者世帯というところがポイントとなるようですね。

シルバーハウジングは、一般的な賃貸住宅と変わらない生活ができることが最大のメリットです。自立できていても、単身であることや高齢が原因で「生活に不安を感じてしまう」人に向いています。ライフサポートアドバイザーが近くにいることで、安心と言えます。

注意点として、シルバーハウジングは一般の賃貸住宅に近いことから、老人ホームなどと比較すると介護・医療体制が充分ではありません。介護度が重度(要介護4・5)となった場合に居宅介護サービスを利用し続けた場合、介護保険の上限額を超えてしまい介護費用が割高になってしまいます。そのため、介護度が上がってしまった場合は、転居することを計画しておく必要があるようです。

利用料は利用者の年間所得によって決まり、1万円~10万円程度と幅広く所得が低い人でも入居することができます。しかし高齢者人口に占める供給率が低いわりに人気が高く、入居をしたくてもなかなか入居できないという問題点もあります。

シルバーハウジング、LSA | 一般財団法人 高齢者住宅財団
参照元:一般財団法人 高齢者住宅財団(2015年11月時点、著者調べ)



(2) 地域優良賃貸住宅

入居の条件

地域優良賃貸住宅の入居に関しては条件がありますのでご紹介しましょう。

・60歳以上の単身者または夫婦・親族
・施設のある都道府県に在住あるいは在勤していること
※他にも月額の世帯所得が48万7千円以下、感染症にかかっていないことなど施設によって様々のため、詳細は施設に問い合わせる必要があります。

また、自立できている、あるいは軽度の要介護の人が対象であり認知症の方には基本的に対応しないようです。 UR都市機構の提供する住宅の場合はさらに条件がありますので合わせてご紹介しましょう。

・申込本人の毎月の平均収入額がUR都市機構の定める基準月収額以上であることが必要
・緊急時対応サービスに加入することが必要(有料)
・高優賃Bというタイプにおいては所得制限があり、世帯所得月額が48.7万円を超える場合は申込みできない

UR都市機構 高齢者向け優良賃貸住宅
参照元:UR都市機構(2015年11月時点、著者調べ)

月額利用料は5万~10万円程度

地域優良賃貸住宅の特徴はバリアフリー化されており、住居内に緊急通報装置が設置されていることです。そして高齢者向けに一定基準を満たした居室や共用スペースが提供されています。また一部の施設では外部の事業者による見守り、食事・掃除・洗濯の世話、緊急時の対応などのサービスも提供されているようです。施設内に段差がない、手すりが設置されている、通路や出入口が広い、エレベーターが設置されているなど、バリアフリー構造が義務化されていることも安心材料と言えます。

注意点としては、比較的家賃が高く連帯保証人を求められる、重度の介護状態では基本的に住み続けられないということが挙げられます。

地域優良賃貸住宅の入居には初期費用(敷金)と月額費用(家賃)が必要になります。施設の場所や設備によって初期費用は数十万円、月額利用料は5万~10万円程度です。収入が一定基準以下の場合には、最大40%程度の家賃補助を受けることができます。

高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)とは? | HOME'S介護
参照元:HOME'S介護(2015年11月時点、著者調べ)

暮らしぶりイメージ

地域優良賃貸住宅の暮らしぶりをイメージするために、一つの例として「こもれび武蔵浦和」をご紹介しましょう。こちらはNPO法人が運営しています。

JR「武蔵浦和」駅より徒歩15分で最寄りバス停より徒歩3分ですから交通機関アクセス良好ですね。周辺環境としてはスーパーマーケットが徒歩8分で1件、徒歩10分にもう1件、セブンイレブンが徒歩3分、内科、消化器科、外科のクリニックが徒歩6分、郵便局が徒歩10分、公民館が徒歩10分ですからこちらも申し分ないと言えるでしょう。

気になる賃料ですが、家賃補助後月額として44,300円~からとなっています。基本月額賃料が68,300円~106,800円なのですが収入に応じて、1DK/上限24,000円、2DK/上限30,000円の家賃補助が受けられるためです。共益費が9,400円、基礎サービス費が14,100~17,000円、敷金3ヶ月分で礼金無し、更新料も仲介手数料も無しです。ただし駐車場は別途契約が必要となります。食費、居室の通信費、光熱費、NHK受信料、火災保険等は別途実費負担です。

「年金で安心して最期まで暮らせる住まい」(栗原道子著)からさらに詳しい暮らしぶりについてご紹介します。コミュニティルームは「麻雀を楽しむ人達」「手芸を楽しむ人達」の場にもなっており、ダイニングキッチンでは入居者にコーヒーやお茶のサービスをしているとのこと。また、この住まいを拠点として仕事に通う人もいるそうです。浴室には暖房機、寝室には床暖房など、健康面への配慮もしっかりされているようです。市が主催の日帰りバス旅行に約半数の人が参加するなど地域交流もさかんな様子。

なるべく自立していられるように、というコンセプトがいいですね。

NPO法人 いちごの会 | こもれび武蔵浦和 高齢者向け優良賃貸住宅
参照元:NPO法人 いちごの会(2015年11月時点、著者調べ)

(3) サービス付き高齢者住宅

ハードとソフトに基準あり

新しい法律により新設された「サービス付き高齢者住宅」という基準。「高齢者単身・夫婦世帯が
安心して居住できる賃貸等の住まい」という形で始まりました。ハードとソフトの2本柱が特徴です。

(1)高齢者にふさわしいハード
・バリアフリー構造
・一定の面積、設備

(2)ケアの専門家による安心できる見守りサービス
・安否確認サービス
・生活相談サービス

バリアフリーは勿論のこと、手すりの設置や廊下幅の確保なども必要基準として設けられています。安否確認サービスと生活相談サービスが必須のサービスです。ケアの専門家(※)が少なくとも日中建物に常駐し、これらのサービスを提供します。
※社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、介護職員初任者研修課程修了者

施設毎に異なるサービスとして介護・医療・生活支援サービスが提供・併設されている場合がありますので、どういったサービスが利用可能なのか、入居前に比較検討することが大切です。

サービス付き高齢者向け住宅
参照元:一般財団法人 サービス付高齢者向け住宅協会(2015年11月時点、著者調べ)

月額費用は10万~30万円

バリアフリー対応の賃貸住宅において、安否確認や生活相談などのサービスを受けられるサービス付き高齢者住宅ですが、主に自立あるいは軽度の要介護状態の高齢者が対象です。居宅介護支援事業所が併設されているケースも多く見られるようです。

入居には、多くの場合初期費用(敷金・礼金)と月額費用が必要になります。施設の場所や設備によって、初期費用は0~数百万円、月額利用料は10~30万円程度とかなり差があるようです。なお、費用については大都市圏の方が高めに設定されていることが多いようです。

注意点として、比較的家賃が高いことや連帯保証人を求められること、重度の介護状態では基本的に住み続けられないということがあるようです。認知症にも基本的には対応していないようです。

特定施設入居者生活介護の指定を受けている一部の施設では介護職員による食事・掃除・洗濯のサポート、介護職員や看護師による入浴・食事・排泄などの介護、機能訓練指導員によるリハビリテーションなど、介護付有料老人ホームとほぼ同様のサービスを行っているところがあるようですので、そのようなサービスを望む場合は調べてみるとよいでしょう。

利点として、法律改正後に非常に増えていることもあり、地域によっては空き物件が比較的簡単に見つけられるようです。ただし、居室が18~25平方メートルの低価格帯の物件は人気があるようですので早めのリサーチがオススメです。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住・サ付き) とは? | HOME'S介護
参照元:HOME'S介護(2015年11月時点、著者調べ)

暮らしぶりイメージ

例として東京都稲城市にあるシニア向け賃貸マンション「ペアウェル流山」をご紹介しましょう。入居条件は「55歳以上で自立している人、連帯保証人がいる人」です。介護認定を受けている人も相談できるようです。京王線「稲城駅」から徒歩5~6分と便利な立地です。

費用は1Kタイプで入居金が15~16万円、敷金15~16万円、毎月の家賃が7.5~8万円です。2Kタイプの場合は入居金が23~25万円、敷金23~25万円、毎月の家賃が11.5~12.5万円です。共益費として1室1.5万円、生活支援サービス費(1人入居:15,390 円/月)(2人入居:30,780 円/月)も別途かかります。

全室にエアコン、キッチン、ユニットバス、ウォシュレット付トイレ、手すり、緊急時コールが完備されています。エレベーター、トランクルーム、多目的室などもあります。自然に囲まれた立地ながら近隣には公共施設や娯楽施設があるので生活に便利とのこと。都心へのアクセスも良いため家族と会いやすいと言えそうです。

「年金で安心して最期まで暮らせる住まい」(栗原道子著)からさらに詳しい暮らしぶりについてご紹介します。入居者のうち一定の割合の人が『将来介護度が進んだら同じ系列の「ペアウェル多摩川」(介護付き老人ホーム)に移りたい』と希望しているそうです。

外観も中身もマンションと変わらず、食堂を外から見ると喫茶店に見えるほどということです。食堂では食事を頼むことができますが、自立型のため自炊の人も多いようです。徒歩圏にスーパー、薬局、スポーツクラブ、郵便局、コンビニがあるため元気な方は散歩を兼ねて買い物をしているそう。

最寄り駅周辺に内科や耳鼻科のクリニックもあるようです。年金内で暮らせる利便性、環境の良いところを見つけるのは多少苦労があるようなのですが、ここはそのうちの一つと言えるそうです。

「徒歩圏に何があるか」「外見や中に入ってからの雰囲気」などについては、現地に見学に行って雰囲気を見ておくことが大事と言えそうですね。

自宅では不安、不便という方に

いかがでしたか?年をとってから「自宅では不安、不便」という方の選択肢として高齢者用の住宅があるということがおわかりになったことと思います。住宅によっては、要介護になった場合の行先が同じ法人の系列にある(その場合、かかる費用は変更となります)場合もありました。

誰もが避けられない高齢化、判断力が鈍る前に(契約書などを比べるのが難しくなる前に)知っていて損はない「老後の住まい」の情報です。この知識を人生のプランを考えるために役立ててみてはいかがでしょうか。 *本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。