<世帯収入で考える暮らし方>世帯分離についても解説します

世帯収入、世帯年収という言葉を聞いたことがありますか?日本の世帯収入の平均は一体どのくらいでしょうか?また、世帯分離という手続きがあることを知っていますか?なぜ世帯分離を検討する人がいるのか、税金にどのような影響があるのか、などについてわかりやすく紹介します。



世帯の合計収入のこと

一馬力でも二馬力でも

世帯収入とは「その世帯の合計収入」のことです。一人が働いていて収入が1,000万円の場合は「世帯収入1,000万円」、二人で働いていて一人が700万円、もう一人が300万円であっても「世帯収入1,000万円」ということですね。

この人と結婚したい!けど収入が…と思ったら、その不足分と思える分を自分で稼いでしまうというのも一つの手ですね。「世帯収入」で考えれば一緒ということになります。

気になるのは平均

誰しも気になるのは「平均の」世帯収入ではないでしょうか。普段は気にならなくても、老後の不安があったり、やりくりに自信がなかったり、どう家計を見直そうかしら、と思うタイミングに他の家庭の状況を参考にしたいと思うことは誰にでもあることでしょう。

そのようなときは国がしっかり調査してくれていますから、そのデータで確認してみましょう。「平成22年国民生活基礎調査」による結果です。

・全世帯平均所得額:549.6万円
・高齢者世帯平均所得額:307.9万円
・児童のいる世帯平均所得額:697.3万円
・母子世帯平均所得額:262.6万円

世帯別で平均も大分変わる様子がよくわかりますね。

平成22年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年11月時点、著者調べ)

下がり続けているという現実

次に世帯収入(世帯所得)のここ10年の推移を見てみましょう。厚生労働省の調査による平成25年の資料の内容を紹介します。

【世帯種類:平成15年→16→17→18→19→20→21→22→ 23→24】

●全世帯(万円):579.7→580.4→563.8→566.8→556.2→547.5→549.6→538.0→548.2→537.2
●高齢者世帯(万円):290.9→296.1→301.9→306.3→298.9→297.0→307.9→307.2→303.6→309.1
●児童のいる世帯(万円):702.6→714.9→718.0→701.2→691.4→688.5→697.3→658.1→697.0→673.2

高齢者世帯は上がっていますが、他の世帯は基本的に下がり続けてきたことがわかります。収入が減っているということは、家計をスリム化する必要があるということですね。

各種世帯の所得等の状況
参照元:厚生労働省(2015年11月時点、著者調べ)

世帯主の年齢階級別

さらに世帯主の年齢別の平均を見ていきましょう。(世帯主の年齢階級別1世帯当たり平均所得金額)

・50~59 歳:720 .4
・40~49 歳:648.9
・30~39 歳:545.1
・29 歳以下:323.7

なお、世帯人員1人当たり平均所得金額では「50~59 歳」が 247.1万円で最も高く、最も低いのは「29 歳以下」の169 .9 万円です。

年功序列が崩れてきたと言われますが、所得で見ると「年齢に比例」した結果となっているようですね。



世帯分離を知っていますか

世帯収入も分離

「世帯分離」を「支出を減らす」ために行おうとする動きがあり、批判を浴びているようです。さて、「世帯分離」とはどういうことでしょうか。川崎市役所の案内をご紹介します。

・「世帯分離」
引越しすることなく、ある世帯から一部の人を別の世帯として分けるときに届出するものです。引越しにより一部の方が別の世帯となる場合には、世帯分離届ではなく、転居届等が必要となります。

つまり、同じ家で同居していながら「世帯を別にする」ということのようですね。例えば二世帯住宅に住んでいる親世帯と子世帯が全く別のやりくりをしているのであれば「世帯が別」という感覚は自然かもしれません。

・「居住をともにする夫婦の世帯分離について」
居住と生計をともにする夫婦の場合には、民法で協力・扶助の原則があるため世帯を分離することはできませんが、実態として生計が別であることを確認できれば世帯を分離することができます。

基本は「夫婦は同世帯であるべき、しかし生計が別ならできる」となっています。夫婦でも世帯を分離している人がいるということが伺えます。

川崎市:世帯分離届(世帯を分けるとき)
参照元:川崎市(2015年11月時点、著者調べ)

介護保険料が安くなる?

世帯分離により、保険料等が安くなるケースがあるためそれを理由に「世帯分離」しようとする人もいるようです。しかし、そもそも保険料減額のために設けられた制度ではないですから窓口で「保険料を下げたいので、今までと生活実態は変わらないのですが世帯分離をするにはどうしたらいいですか。」と言ったところで、自治体によっては無理な申請と判断し却下、受理されない可能性もあります。

保険料がどのくらい安くなるから「世帯分離」をしようとする人がいるのでしょうか?自治体により保険料は変わるので横浜市の例でご紹介しましょう。

【介護保険料(65歳以上):横浜市の場合(平成26年度)】

●第1段階 :27,000円
・生活保護を受給している人
・市民税非課税世帯の、老齢福祉年金を受給している人
・中国残留邦人等支援給付を受給している人
●第2段階 :27,000円
・本人が市民税非課税
・同じ世帯にいる人全員も市民税非課税
・本人の「公的年金等収入額」と「合計所得金額」の合計額が年間80万円以下
●第3段階 :35,100円
・本人が市民税非課税
・同じ世帯にいる人全員も市民税非課税
・本人の「公的年金等収入額」と「合計所得金額」の合計額が年間120万円以下、かつ第2段階以外の人
●第4段階 :39,000円
・本人が市民税非課税
・同じ世帯にいる人全員も市民税非課税
・上記以外の人
●第5段階:57,000円
・本人が市民税非課税
・同じ世帯に市民税課税者がいる人
・本人の「公的年金等収入額」と「合計所得金額」の合計額が年間80万円以下の人
●第6段階(基準額):60,000円
・本人が市民税非課税
・同じ世帯に市民税課税者がいる人
・上記以外の人
●第7段階:66,000円
・本人が市民税課税
・本人の「合計所得金額」が150万円未満
以降第8段階の75,000円から第13段階の147,000円まであります。

例えば市民税非課税の親と同居しているとしましょう。「本人は市民税非課税」ですから第2段階から第6段階のいずれかに該当しますが、「同じ世帯の人の収入状況」(本人の収入額にもよりますが)で保険料が変わります。27,000円から60,000円までと変わりますのでその差は小さいとは言えないかもしれません。

保険料のしくみ:横浜市 健康福祉局高齢健康福祉部 高齢者福祉の案内
参照元:横浜市(2015年11月時点、著者調べ)

国民健康保険料はケースによる

国民健康保険料(国民健康保険税)は自治体によって異なります。一例として相模原市のケース(平成27年度)をご紹介しましょう。

保険税=医療分(1)+支援金分(2)+介護分(3) 

国民健康保険税は、上記医療分、支援金分、介護分(被保険者に40歳か64歳の人がいる場合)ごとに加入者(被保険者)それぞれについて計算した(1)の額、世帯の加入者数に基づき計算した(2)の額、世帯にかかる(3)の額を合算し、その合計額を合算した金額です。

(1)医療分
次の1から3の合計額が一年間の国民健康保険税(医療分)となります。
※合計額が52万円を超える場合は52万円を限度とする
1.所得割額
(前年の総所得金額等ー基礎控除33万円))×5.15%
2.均等割額
被保険者数(加入者数)×2万3,000円
3.平等割額
1世帯につき1万9,200円

(2)支援金分
次の1から3の合計額が一年間の国民健康保険税(支援金分)となります。
※合計額が17万円を超える場合は17万円を限度とする
1.所得割額
(前年の総所得金額等ー基礎控除33万円)×1.85%
2.均等割額
被保険者数(加入者数)×1万円
3.平等割額
1世帯につき4,800円

(3)介護分
次の1から3の合計額が一年間の国民健康保険税(介護分)となります。
※合計額が16万円を超える場合は16万円を限度とする
1.所得割額
(前年の総所得金額等ー基礎控除33万円)×1.25%
2.均等割額
被保険者数(加入者数)×6,900円
3.平等割額
1世帯につき5,400円

そしてここがポイントとなりますが、「均等割額・平等割額軽減判定割合」という軽減が存在します。前年所得での判定となります。

【均等割額・平等割額軽減判定割合】
●軽減割合:世帯所得判定基準
・7割:33万円以下
・5割:33万円+(26万円×被保険者数)以下
・2割:33万円+(47万円×被保険者数)以下
※世帯主の人が国民健康保険に加入していなくても、軽減判定所得には世帯主の人の所得を含めて判定

個別の国民健康保険料に関しては上記計算式によるので、各世帯の収入に応じて変わってきます。しかし、軽減基準が「世帯主の所得を含めて判定」となっていることから世帯分離をすることにより国民保険料が安くなる可能性はあるようです。

一方、健康保険や共済に加入している子が親を(負担が増えることなく)被扶養者とすることで国民健康保険料を払う必要がなくなりますから、そのような手段も考えられるでしょう。どの程度の人を被扶養者とできるか(「被扶養者」の資格認定基準)は各「保険者(保険の運営者)」が独自に定めた規準によって異なりますので確認が必要と言えます。

国民健康保険税の税額計算 | 相模原市
参照元:相模原市(2015年11月時点、著者調べ)

医療費自己負担限度額も変わります

国民健康保険の医療費自己負担限度額も所得によって変わりますので、世帯分離で世帯所得が低くなると限度額が低くなるということになるようです。一例として東京都中野区の場合をご紹介しましょう。70歳未満の場合と70歳以上で区分が異なるようです。

【所得区分:70歳未満の自己負担限度額(月額)】

・総所得金額から33万円を差し引いた金額が901万円を超える世帯
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%(過去12ヶ月の間で4回目以降は、140,100円)

・総所得金額から33万円を差し引いた金額が600万円を超え、901万円を超えない世帯
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%(過去12ヶ月の間で4回目以降は、93,000円)

・総所得金額から33万円を差し引いた金額が210万円を超え、600万円を超えない世帯
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%(過去12ヶ月の間で4回目以降は、44,400円)

・総所得金額から33万円を差し引いた金額が210万円を超えない世帯
57,600円(過去12ヶ月の間で4回目以降は、44,400円)

・住民税非課税世帯
35,400円(過去12ヶ月の間で4回目以降は、24,600円)

【所得区分:70~74歳の方の外来の限度額(月額):70~74歳の方の自己負担限度額(月額)】

●一定以上所得者世帯
・44,400円
・80,100円+(総医療費-267,000円)×1%(過去12ヶ月の間で4回目以降は、44,400円)

●一般世帯
・ 12,000円
・ 44,400円

●住民税非課税世帯2(※1)
・ 8,000円
・24,600円

●住民税非課税世帯1(※2)
・ 8,000円
・15,000円

※1 世帯主および国民健康保険加入者全員が住民税非課税世帯の人
※2 世帯主および国民健康保険加入者全員が非課税で、世帯員の各所得が0円になる人

このように、所得によって医療費が変わるようです。また、入院中の食事代も変わります。世帯分離をすることによって負担が下がるため、「払いきれない」など困った場合に世帯分離を相談することがあるようです。

国民健康保険の給付内容 自己負担限度額及び限度額適用認定証等について | 中野区公式ホームページ
参照元:中野区(2015年11月時点、著者調べ)

国民年金保険料の免除

国民年金の保険料も所得によって免除や納付猶予の基準があります。ご紹介しましょう。

(1)全額免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

(2)4分の3免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(3)半額免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(4)4分の1免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(5)若年者納付猶予制度
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

世帯分離をすることによって国民年金保険料の免除に該当する場合があると言えそうですね。

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年11月時点、著者調べ)

保険料を安くしたいから、はNG

いかがでしたか?世帯収入では平均額や世帯別の違いもご紹介しました。また、世帯分離について保険料にどのような影響があるのかについてご理解いただけたかもしれませんね。

「保険料を安くしたいから」といった理由で世帯分離をしようとすると自治体に受け付けてもらえないようですので注意しましょう。「世帯分離」がそのための制度ではないためです。

確かに「世帯分離」で親の介護費用を節約するということが可能ですので、同じような所得世帯が親の面倒を見ている場合に「世帯分離をするかしないかで介護費用に差がある」という矛盾が起きていることはあるようです。数々の福祉に関する法律の改正が続いていますので、今後この矛盾も改正されるときが来るかもしれません。

「ただ税金を安くしたくて」世帯分離を考える人には批判も多いようです。社会保障費の増加は問題にもなっていますから、生活保護で不正が行われて法改正が行われたように、公平な法整備がいずれはされることでしょう。 *本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。