「借金の時効って何?」実はよくある話?!を現役金融マンが解説

借金に時効ってあるんでしょうか。先日友人に貸したお金が返ってこないって電話したらもう時効だっていわれちゃったよ。確かに貸したのはずいぶん前のことだけどなんか釈然としないんだよね。そいつは転勤で遠くに行っちゃったから直接会って直談判もできないし困った。誰が教えて借金の時効のこと。分かりました、現役金融マンがお答えします。



借金の時効とは

時効ってあるのでしょうか

刑事事件の犯人が、警察の追手から逃れ何年間か経つと逮捕できなくなるというのは、私たちがは良く聞ききます。それが時効です。では別に罪を犯したわけでもない、ただお金を借りた人に時効というのはあるのでしょうか。やはり、借金にも時効というのがあるのです。民法第166条により定められています。

犯人が逃亡している期間と、借金を返さない期間の期間という意味合いは若干違いますが、借金もある一定の期間支払いもしなければ、金融業者(以下、消費者金融、カードローン会社、銀行を含みます)からの支払い請求もなかった場合は、その借金は時効となってしまい、借主はその借金に対する支払い義務がなくなるのです。

お金を貸した貸主にしても、時効になってしまった場合は、借主にもう借金を請求できなくなってしまうのです。ですから、学生時代に友人に貸して何年か経ってしまったり、会社の同僚にお金を貸してその同僚が転勤で移動し、何年か経ってしまうと同じように時効となり、借主への請求はできなくなります。

同じようなケースで、飲み屋でいつもツケで飲んでいた客が突然来なくなり、しばらくするとそのツケを請求できなくなってしまいます。商店からの買い物代もツケ払いにしていた場合も同じように、時効を迎えてしまいますと、そのツケ代を払って欲しい、といってもお客から時効だから払わないといわれれば店主は、それ以上何もいえなくなってしまうのです。

よって、借金の時効は、お金を借りた側は恩恵を受けますが貸した側は損害を被ってしまうということになりますので、金融業者はともかく個人的にお金を融通した方や飲み屋、飲食店、商店を経営している方は、案外時効についての知識を持っていないと思われますので注意をしたほうがいいでしょう。

しかし、借金にしてもツケにしても、ただその期間を過ぎてしまえば時効が成立するわけではないのです。日本は法治国家ですから、時効を成立させるには法律的な要件を満たさないといけないのです。

というわけで今回はお金を貸した側、借りた側の知っておくべき時効についてご説明しますので、是非参考にしてください。

民法
参照元:法務省(2015年11月、著者調べ)

時効の期間

お金を貸した側、お金を借りた側によく知って欲しいのが時効には、何通りかの期間が定められているということです。お金に関して時効が一律決まってはいるわけではありません。例えば大きく分けるといかのようになります。

■お金を借りた時
・個人からの借入(借金)においては10年
・法人からの借入(借金)においては5年

この期間については、民法第167条、及び商法第522条により定められています。当然ながらお金を貸した側も決まっています。以下に例を上げます。

■お金を貸した時
・個人か貸したお金においては10年
・法人が貸したお金においては5年

大別しますと、個人と法人の2通りがあるというわけですね。では、もう少し私たちが日常で起こりうるお金の貸し借りについて主な例を以下にあげてみます。

・個人からの借金は10年
・車などのローンは5年
・慰謝料は3年
・病院の診療代は3年
・商品のツケは2年
・床屋代のツケは2年
・クリーニング代は2年
・飲食店のツケは1年
・ホテル(旅館)のツケは1年
・レンタルDVDの料金は1年

これらは、全て民法で定められており第166条から第174条に規定があります。

友人、知人、会社の同僚など個人からお金を借りた、または貸した場合は10年と比較的長い方だとおもわれますが、商品や、飲食店、ホテルなどは2年、1年、1年と結構短いですから、黙っていても払ってくれるだろうと安易に考えていますとあっという間に時効になってしまいますので、ホテル経営者、商店主、飲食店主は特に注意しておいた方が良いと思われます。

ではその時効はいつからカウントされるのでしょう。主な例を以下にあげます。

■時効の起算日
・返済の期日を決めていない契約で、1回も返済していない場合は契約日の翌日
・返済の期日を決めている契約で、1回も返済していない場合は最初の返済日の翌日
・返済の期日を決めていない契約で、1回でも返済している場合はその返済日の翌日
・返済の期日を決めている契約で、1回でも返済している場合は次回の返済日の翌日
・親が残した借金を相続した場合は相続を開始した日

※この具体例は民法第138条から第144条にある条文を基に解釈されたものです。

商法
参照元:法務省(2015年11月、著者調べ)

時効の成立要件

時効の援用をするためには、内容証明郵便で送るのが良いと思われます。この方法ですと文書の内容も郵送した日付もはっきりしますので、後で裁判になった時の重要な証拠となります。また最近はインターネットで24時間受付できますので便利になりました。

■内容証明郵便の出し方は?
・取り扱い郵便局
内容証明を扱っている郵便局は限定されており、集配している郵便局か、郵便会社が指定した郵便局だけとなりますので、郵便を出す前に郵便局に確認することをお勧めします。

・差出すのに必要なものとして
1,内容文書
2,上記の謄本2通
3,差出人及び受取人の住所氏名を記入した封筒を1つ
4,内容証明の料金と郵便料金

また、内容文書に使用できない文字がある場合は、削除しなければなりませんの印鑑を持っていくといいでしょう。

■料金は?
内容証明郵便は、書留料金+430円が必要になります。この430円は文書が1通の場合となり、2枚目からは+260円づつの加算になります。

e内容証明
参照元:日本郵便(2015年11月、著者調べ)

内容証明 ご利用の条件等
参照元:日本郵便(2015年11月、著者調べ)



借金の時効の阻止

時効の中断

借主が借金やツケを支払わずにそろそろ時効だ、と思って喜んでもいられない事情があります。時効には成立させないような方法があるのです。それを時効の中断といいます。時効を中断するということはそのままの意味で、時効が進むのを止め今まで進んできた時間はなかったことにする、ということになります。

例えば時効が進んで11カ月経ったとします。飲み屋のツケは1年(12カ月)ですから後1カ月で時効だと喜んでいたら、飲み屋の店主がある方法を取ってくると、それまでの11カ月間はなかったことになってしまうのです。そんなあ、と悔やんだところでどうしようもありません。そもそもツケを払わない方がいけないのです。

では時効を止める方法について説明します。

その方法

まず民法の第147条を見てみましょう。

■時効の中断事由
第147条  時効は次に掲げる事由によって中断する。
1,請求
2,差押え、仮差押え又は仮処分
3,承認

このように、大まかに定められていますので以下に具体例をあげましょう。

■請求
・貸主が訴訟をおこす
多くの貸主が行う訴訟として、少額訴訟があります。一回の審理で結審することと、費用が安いため利用される方が多いと思われます。この時点で時効は中断します。

・貸主が支払督促などを申し立てる
やはり貸主が裁判所に申立て、借金の存在を認めてもらい、裁判所から借主に支払命令が送付されることになります。この文書が借主に届いた時点で時効は中断してしまいます。さらに、30日以内に仮執行宣言の申立てをされると時効は完全に中断することになります。

・内容証明郵便で督促状を送られる
郵便が借主に届いてから、6カ月時効が延長されます。ただし、この方法は1回のみ有効ですので貸主はその間に裁判所などに申立てを行うことが考えられます。

・貸主の姑息な手段
他に、貸主や店主が現れて、代金を半額にするから、ここに名前を書いて押印することを依頼する場合があります。また、1,000円でもいいから払ってよと懇願する場合もあります。どちらの方法も借主の良心の呵責をついてくる作戦ですが、これをやってしまうと借金があることを認めることになってしまいます。また、半額にするからといって出された書類は、ただの請求書と、支払います、ことの内容だけっだったりしますので、どちらも安易に受け答えしないことをお勧めします。

貸した側からすればこの方法で成功すれば時効は、リセットされますので非常に有効な手段となります。

■債務名義の取得
貸した側が公証人役場にいって、確かに借主には借金があることを認めてもらうことで、時効がリセットされ10年に延長されてしまいます。債務名義を持っていると、差し押さえや強制執行などの手続きが可能となりますので、借主にとっては怖いものです。

少額訴訟
参照元:裁判所(2015年11月、著者調べ)

債務名義とは何ですか。
参照元:裁判所(2015年11月、著者調べ)

時効の針が動き出す

例え時効が中断したとしても、その後貸主が何もしてこないと再び時効の時計が動き出すことになります。先ほどの例からいえば、飲み屋の店主から内容証明郵便で督促状を送ってきても、6カ月なにもしなければ、時効が始まります。しかし、裁判所の確定判決が出されてしまいますと全ての時効が10年に延長されてしまいます。



時効の効果

時効のメリット

時効の援用によるメリットとして以下があげられます。
・借金の支払い義務がなくなる
・貸主から逃げ隠れしないでいい
・飲み屋周辺を歩くことができる

このくらいでしょうか。一番大きいのは借金が無くなることですね。

時効のデメリット

時効の援用によりメリットよりデメリットの方がキツイともいえます。以下に例をあげます。

・個人信用情報に傷かつく
当然金融業者なら事故情報として登録しますので、今後車をローンで買うとかクレジットカードが作れない、または新たに借金をすることができないことが考えられます。ということはこれから生活していく上での買い物は全て現金で済ませる必要がでてくることになりそうです。

・友人関係にひびが入る
借りた側は意外と忘れてしまうものですが、貸した側は忘れることはないと思われますので、どこかで出合っても思わず逃げてしまうことになりそうです。

・やはり飲み屋周辺には行けない
時効が1年だから相手も諦めているだとうと、勝手に判断しても店主からすれば食い逃げと思うことでしょうから追いかけられる可能性があります。

時効の援用

時効の期間が到来したからといって、そのまま何もせずにいても何の法的恩恵を受けることはできません。時効を法律的に合法化するには、時効の援用という手続きが必要となります。

●民法第145条(時効の援用)
「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」

となっています。ちょっと難解な上短文ですので簡単に説明しますと、当事者(借主)が時効の恩恵を受けるには、仮に裁判所が時効の援用ができることを知っていても、裁判所としては勝手に時効ですと判断はしませんよ、という意味です。

借金には、民法により時効が決まっているのになぜ?という疑問が出ることとおもわれますが、それは時効の援用を希望するのは全部の人ではないからです。時効の援用をするかどうかは個人の判断で、する人もいればしない人もいるというわけです。

よって、時効の援用して借金の支払い義務がないことを明確にするには、借主本人が積極的に貸主に宣言する必要があるのです。この場合、貸主やツケのある商店主などに電話などで口頭で伝えても法的効力はありません。なぜなら伝えた日付を客観的に証明できませんので、逆に貸主や商店主などから裁判所に訴えられてしまうことも考えられます。

ではどうすれば、時効の宣言を相手側に伝えればいいのでしょうか。ひとつだけ手があります。それは内容証明郵便で送ることです。この方法ですと、自分の借金は時効であると文書で宣言できますし、郵送は書留になりますので日付を証明できるのです。

■内容文書の具体例
御社との平成〇〇年〇〇月〇〇日に交わした〇〇万円の金銭消費貸借契約書に対し、民法で定めるところの時効が成立しましたので、ここにわたくし自ら時効の援用を宣言いたします。今後、御社よりのわたくしに対する支払請求をされても、時効の援用により借金は消滅しました。よってわたくしは一切支払う意思はありません。よろしくお願いいたします。

このような文面を内容証明郵便で送ってやれば時効は成立することになります。

■内容証明郵便とは
郵便局側が第三者の立場で、そのような文書をいつ、誰が誰に送ったのかを証明する郵便のことをいいます。またインターネットでも送ることができます。

■内容証明郵便を出すにあたって
内容証明を受付できる郵便局は決まっており、集配郵便局、日本郵便があらかじめ指定した郵便局となっています。郵便局ならどこでもいいというわけではありませんので、郵便を出す前に前もって確認することをお勧めします。

■必要なもの
1,内容文書
2,上記の謄本2通
3,差出人と受取人の住所氏名を書いた封筒
4,内容証明の郵便料金

以上が必要となります。また、内容文書に使用制限されています文字は使うことができませんので、印鑑を持って行った方がいいかと思われます。また、内容文書についても市販のものでもいいですし、用紙については制限はありません。また何で書いても大丈夫です。ただし、字数や行数の制限がありますの、であらかじめ郵便局へ確認しておくことをお勧めします。

最後に寄せて

いかがでしたでしょうか。

金融業者数社から多額の借金を抱えているのなら、運よく時効までこぎつけることができれば援用を宣言するのもいい方法かも知れませんが、友人や同僚、飲み代くらいならそんなに大きな額でもないと思われます。街を歩くのも人目を気にしなければなりません。

そんな思いをするくらいなら、何とか話し合いで解決した方が気分が良いのではないかと考えられます。また、ツケ払いを許しているお店も時効があることを念頭において、こまめに請求するなどしないと損をする結果となってしまいますので、十分にご注意することをお勧めします。

※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。