養子の相続は?実子との結婚は?養子縁組の基礎と疑問を徹底解明

養子とは養子縁組手続きで結ばれた子供のことです。養子は養親の相続ができるのか?実の親との関係はどうなるの?暮らしている内に養親の実子に恋してしまったら結婚はできるの?相続の疑問から素朴な疑問まで、養子の基礎を交えつつお答えします。



<養子>とは?

「養子」とは、養子縁組手続きにより生み出された子供のことです。
養子の一般的な印象として、自分の血の繋がった子供ではないけれど、手続きを踏んで自分の子供にするといった印象があると思います。いえいえ、それだけではないのです。実は自分の子供も養子にできるってご存知ですか?自分の子供を養子にした場合、当然ですが実子でもあり養子でもあるという関係が成り立つわけです。

実子であり養子でもあるってどういう意味?
養子ってそもそも何?
養子は相続できるの?
実子と養子は結婚できるの?

世にあふれる「養子」の疑問を優しく解説します。

養子は二種類

養子という言葉には「普通養子」と「特別養子」という二つの種類があります。
世間的にはどちらも養子であることに変わりはなく、養子という言葉自体がどちらの意味も含んでいるようです。しかし、法律上では普通養子と特別養子には大きな違いがあります。まずは法律上の二種類の養子についてざっとご説明します。



普通養子

「普通養子」とは、養子の一つの形です。後にご紹介する「特別養子」より条件が比較的緩く、養子縁組の手続きをすることにより養子と養親の関係となります。養子というと血が繋がっていない印象がありますが、血の繋がっている人物を養子にすることもできるので一概には言えません。「普通養子縁組はできません」という条件に該当しなければ、自由に養子縁組をすることができます。

普通養子の条件

■条件①養親は成年でなければいけない(民法792条)
養親になる者は二十歳以上でなければいけませんが、十代のうちに婚姻し成年擬制(成年同様の法律行為や親権の行使ができるようになること)がある場合は十代でも養親になることができます。

■条件②直系尊属を養子にはできない(民法793条)
直系尊属とは自分の親や祖父母、曾祖父母といった、家系図でいえば自分の真上にあたる直系の親族たちのことです。自分の父親や母親、おじいちゃんやおばあちゃんは養子にすることができません。ただし、傍系は駄目とは法律には書いていないので、叔父が姪を養子にすることは可能ですし、姉が弟を養子にすることも可能です。

■条件③自分より年上を養子にはできない(民法793条)
自分より年上の人間を養子にはできません。年上の子供、年下の親、ちょっと違和感がありますよね。

■条件④後見人が被後見人を養子にする場合は裁判所の許可が必要(民法794条)
後見人が自分が後見をしている子を養子にする場合は裁判所で手続きの上で許可をもらうわなければいけません。許可を欠いた場合は縁組の取消事由になります。

■条件⑤配偶者のある人が未成年を養子にする場合は、配偶者とともに養子にしなければならない(民法795条)
夫婦が養子をとる場合は夫婦そろって養子縁組をする必要があります。そうしなければ夫は養親なのに、妻は子供とは赤の他人、あるいは夫は養子と赤の他人なのに妻は養親という家庭内で奇妙な関係が生まれてしまうことになるからです。ただし、夫婦の片方が重度の病気でずっと眠ったままで意思表示ができないなどの理由があればこの限りではありません。

■条件⑥配偶者のある者が縁組をする場合は、もう片方の同意を得なければならない(民法796条)
結婚している人が養子縁組をする場合は夫(妻)の同意を得なければいけません。養子縁組をすることによって相続状況から家庭環境までがらりと変わるわけですから当然ですね。夫(妻)がある日いきなり「今日からうちの養子」と子供を連れて来たら驚きますよね。事前にちゃんと言いなさい!こっちの意見も聞きなさい!となると思います。法律は当たり前のことを定めていると言えます。ただし、この場合も夫婦の片方が意思表示できない理由があればこの限りではありません。

■条件⑦未成年者を養子にする場合は家庭裁判所の許可が必要(民法798条)
未成年を養子にする場合は、未成年者保護のために裁判所の許可が必要になります。ただし、未成年者を養子にする場合でも、自分や配偶者の子供や孫を養子にする場合は許可不要です。

裁判所|未成年者を養子にしたいと思います。どうすればよいでしょうか。
参照元:裁判所(2015年11月、著者調べ)

裁判所|養子縁組許可
参照元:裁判所(2015年11月、著者調べ)

普通養子の補足

養子縁組できない条件に触れなければ、本人達の意思で自由に養子縁組をすることができます。結婚の場合は男子が18歳、女子が16歳と定められていますが、養子縁組は遺言と同様に子供が15歳になれば親の代諾は必要なく自分の意思で養子になることができます。

養子縁組は自分の兄弟姉妹とも可能ですし、実子とも可能です。自分の子供が非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子供。嫡出子以外の子)だった場合は養子にすることによって嫡出子にすることができます。自分の実の子供を養子にするというのはちょっと不思議な気分ではありますが。

不思議ついでに申し上げますと、夫婦なのに兄妹もしくは姉弟になることもできます。Aというおじいちゃんの養子に夫婦でなった場合は、現在進行形で夫婦だけど兄妹、姉弟でもあるという複雑な関係が生まれます。これもちょっと複雑と申しますか、不思議な気分ではあります。

普通養子の場合、養子縁組をしても実親との関係は切れません。実の親と養親が同時に存在することになります。養子縁組をすることにより、養子と養親とその血族の間には親子関係が生じることになります。養親は養子を扶養する義務がありますし、養子は普通の親族と同じように親の面倒を看る必要があります。

特別養子

特別養子はもう一つの養子形態です。普通養子では、養子縁組をしても実親との関係は切れませんでしたが、特別養子の場合は実親との関係が切れ、実親方面との親族関係もぷつんと切れます。実親に対する扶養義務も相続権もありません。実の親とは親族ではなくし、完全に養親を親とするための手続きです。

戸籍上も実子と同様に扱われます。養子になる子供の籍を実親の戸籍から抜き、その子を筆頭者にした戸籍を作ることで実の親との関係を消します。実の親との関係や義務含め何もかもを消すのが特別養子なのです。養子になる子を守るために特別に必要だと裁判所が判断した場合にのみこの養子形態が認められます。特別な場合に認められる養子縁組だからこそ、その要件は厳格です。

特別養子の要件

■要件①養子になる子供は6歳未満でなければいけない(民法817条)
6歳より上になってしまえば、実親と養親の区別がつきそうだという考えからです。特別養子は実親との縁を完全に切る養子縁組なので、小さければ小さいほどいい、実親のことを覚えていなければその方がいいということです。基本的に6歳未満でなければいけませんが、6歳になる前からその子を養親が養育していれば8歳未満まで認められます。

■要件②養親は夫婦に限る。なおかつ夫婦の片方が25歳以上でなければならない(民法817条)
普通養子は独身でも可能です。ですが特別養子の場合は夫婦でかつ片方が25歳以上でなければいけません。

■要件③裁判所の審判によらなければならない(民法817条)
裁判所が特別養子の必要性を認め、審判を行うことが必要です。つまり、特別養子の場合は絶対に裁判所が関わるということです。

■要件④養親による6カ月以上の監護の実績がある(民法817条)
実親との関係を完全に切るので、「養子にしたけどやっぱり駄目でした」では済みません。本当に親子としてやって行けるかのお試し期間のようなものが必要になります。

裁判所|特別養子縁組成立
参照元:裁判所(2015年11月、著者調べ)

特別養子の要件補足

他に、特別養子の場合は、裁判所側から子供をどんな部屋に住まわせるのか、どのように育てるのかという厳しいチェックがあります。やはりこれも実親と関係を切り、「元からその夫婦の子供だったことにして育てる」ためには必要なことです。普通養子ではここまでの厳しいチェックはありませんし、養子縁組の際は未成年や被後見人を養子にするのでなければ裁判所は関与しません。

また、本来、養子にする者が未成年の場合は親権者の代諾が必要です。普通養子の場合もそうでした。ただし、15歳になっていれば自分の意思でOKでしたね。特別養子の場合は6歳未満という年齢の要件があるため、15歳の子供が特別養子になることはできません。ですから子供の意思で養子になることができないのです。ですが、特別養子は実父母に承諾をもらうことができないケース(虐待や遺棄など)も多いため、裁判所が厳格に判断するということもあり、父母の同意がなくても良いとされています。



養子縁組と縁組意思

養子縁組をする場合は、きちんと縁組意思を有していることが条件になります。税金の控除を受けたいから、ですとか、家を継がせたいから、という理由では養子縁組は認められません。きちんと親と子になる=家族になるという意思が必要になります。これは普通養子、特別養子のどちらにも共通することです。

また、肉体関係のあった男女の縁組意思と養子縁組の無効を争った事例があります。最高裁判所で昭和46年10月22日に判決が出た争いです。男女関係があれば夫婦同然の関係ではないのか!そんなの親子じゃない!と争われました。

この場合も人目をはばかる関係であれば縁組意思が欠けているとはいえないと判断しました。最高裁は、男女の関係があっても、このケースでは養子縁組を認めるという立場をとったわけです。それぞれの裁判にそれぞれの当事者の事情があるので同じようなケースでも別の判決が出る場合もあります。ですが、縁組意思を考える上で参考になる判例です。

養子の謎Q&A

養子は相続できるの?

普通養子、特別養子とも養親の相続が可能です。普通養子の場合は実親との関係も切れませんから実親の相続も可能です。特別養子は実親との関係が切れますから、実親の相続はしません。

普通養子の場合は実親と養親どちらの遺産も相続することができます。実の両親との縁は切れないわけですから当然ですね。ただし、親が増えるということは子供の親に対する義務も増えるということです。養子は実の親、養親、どちらに対しても扶養する義務があります。「相続の時に実親と養親、どちらの遺産ももらえてラッキー!」ではないということです。

養子縁組をすると、法律上の親子関係が生じます。ですから、養子だから遺産の取り分は少ないということはありません。養子だろうが実子だろうが同じ子供なのだから、遺産の取り分は同じです。

例えば、亡くなったAが900万円の預金を残し、実子B、C、養子Dが相続人になる場合は、三人が等しく300万円ずつ相続することになります。また例えば、配偶者Bと養子Cが相続人だった場合は、900万円を450万円ずつ相続することになります。遺産分割協議(相続人の話し合いで遺産の取り分を決める)や、遺言(亡くなった人の意思で遺産の取り分を指定する)があった場合の取り扱いも実子と養子では変わりません。遺留分も養子には認められます。

ただし気をつけなければならないのは、民法と税金で養子に対する規定が異なっているという点です。民法では養子が何人いても等しく遺産を相続することができますが、税金では、相続税の算定の際に養子を含める場合は、実子がいれば一人まで、実子がいなければ二人までと規定されています。養子をどんどん増やして相続税の控除額を増やすことで相続税逃れをすることを防ぐためです。

特別養子の場合は実子と同じ扱いですので、例えば特別養子が三人いても「二人までです」と言われることはありません。三人きちんと計算に含めることができます。税金の計算と民法の遺産分割はこのように養子に対し一部異なる扱いを定めています。

No.4170 相続人の中に養子がいるとき|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

養子と実子は結婚できるの?

できます。普通養子、特別養子関係なく養親の実子と結婚することが可能です。

養親と養子は法律上「親子」の関係です。実子と養子が結婚すれば、同じ親の子供同士が結婚することになります。法律では兄弟姉妹の結婚を禁止していますので、これはちょっとおかしいのではないか?と思われることでしょう。しかし、養親の実子と養子の結婚を法律は禁止していません。

養子と養親は結婚できるの?

普通養子、特別養子ともに養子縁組を解消したとしても養親とは結婚できないことになっています。養子が養親と血縁がある場合だけでなく、血縁がない場合に離縁したとしても法律は元養親との結婚は許していません。また、養親の両親とも結婚は許されません。これは主に道徳や倫理の問題だと言われています。

養親の実子と結婚できることは前項で触れました。その他に、養親の兄弟姉妹、孫とも結婚は可能です。

養子縁組は解消できるの?

できます。

養子縁組の解消の場合、養子縁組をする場合よりも手続きはいささか難しくなっています。普通養子の場合は養親と養子の協議がそろえば養子縁組の解消が可能です。そろわない場合は裁判所で決着をつけることになります。

特別養子の場合は養子と養親の協議での離縁は認められていません。絶対に裁判所で話しをつけることになります。特に特別養子は、実親との関係を切った上で養子縁組をしたという事情があります。その分、離縁するにも手続きが厳しく定められています。

親子関係というものは、人間関係の中で最も近く、本来は切っても切れないものです。「親子の縁を切る!」という言葉から連想するのはただ事ではない事情ではないでしょうか。一度親子になったのですから、その関係も当然近く、切っても切れないものであるはずなのです。「親子の縁を切る」ことはただ事ではないからこそ裁判所がなぜ親子関係の解消を望むのかを見定めた上で特別養子縁組の解消に許可を与えることになります。

特別養子縁組をして、養親は一生懸命、学費もかけ、愛情を尽くして養子を育てたとします。養親は親子関係を結んだ以上、養子を扶養する義務があります。しかし養子はそろそろ養親の介護が必要なのではないかと察し、相続するような財産もほとんどないし、養うのが面倒なので養子関係を解消しようと考えました。親が子を扶養しなければならないのと同様に、養子も養親を援助する義務があります。義務から逃れようと養子は考えたのです。

あるいは、養子縁組をした後に子供が難病にかかりました。養親は法的には養子の親ですから、養子であっても実施にように扶養する義務があります。しかし、難病ですので看病も大変だし、治療にお金もかかるから養子縁組を解消しようかな、そうすれば親子関係ではなくなるから看病も治療も自分がしなくていいな、と考えました。

さて、こんな場合はいかがでしょうか。簡単に離縁ができてしまえば、不道徳な結果にならないでしょうか。旗色が悪くなったら簡単に離縁しようとする輩もでることでしょう。離縁の手続きが難しめに設定されているのは、こういった結果を憂慮してのことです。

最後に

養子縁組という制度を考える上でのポイントは「手続きにより親子関係を創り出す」という点です。この親子関係は紙切れ一枚で繋がっているという軽いものではなく、養親を「本当の親の一人」とし、養子を「本当の子供の一人」とするという重い意味を持ちます。

重ねての説明になりますが、手続きによって養子縁組をする場合は「親子になる意思」が必要でした。家を継がせるため、税金の控除額を増やすためという理由ではいけません。親子として生きるためという意思がなければ養子縁組は認められません。

きちんと親子として生きる意思があれば、要件さえ満たして手続きをすれば養親、養子の関係が生まれます。世の親子のように相続もできれば扶養義務もある、法律上では当然の親子、家族です。

ただし事情によって特別養子と普通養子の二つの種類に別れており、種類によって税金計算上の扱いが多少異なっている点で注意が必要です。民法上では法定分割分は同じですので、実子と養子で扱いの差はありません。実子に認められることはほぼ養子にも認められていると思っていいです。

家族ではあるけれど、手続きによって家族になった存在だからこそ話が少し複雑になっている。それが養子であり、養子縁組です。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。