相続の手続きは面倒?覚えておきたい預金の相続3つのポイント

相続というと何となく難しくて面倒な印象を受ける人がいるのではないでしょうか?この高齢化社会、いつ自分が相続に直面するか分かりません。今回は、いざという時に慌てなくてすむ相続の手続きに必要なポイントを3つに分けてご説明します。



1.亡くなる直前に慌てないように

相続って何?実際にどんな手続きが必要なの?友人から聞いたけど面倒なんでしょ?という人は非常に多くいます。お葬式の前後などはばたばたして相続どころではなく、気持ちの上でも相続に手が回らないこともあるかと思います。しかし、今から相続について知っておけば、親が急に亡くなって慌てるようなことはなくなります。

交通事故でもない限り、亡くなる数日前には長くないということは親族は分かるものです。その時からいざという時の準備をできるだけしておけば、いざ相続をする時にとても楽になります。そこでいざという時のための予備知識としてポイントを解説いたします。

亡くなる前に慌ててお金を下ろすのは難しい

今は本人確認法と犯罪収益移転防止法によって本人以外が預金を下ろすのが非常に困難になっています。亡くなるとわかっているような状態で本人が銀行窓口に来れるような可能性は考えにくいです。

委任状があれば預金の払い出しに応じてくれる金融機関は多くありますが、委任状も記入できるような状態ではないかもしれません。

相続の手続きは面倒だという先入観から、相続を避けるために亡くなる前に親の預金を下ろしたいという方が多くいますが、本人確認が徹底している今は難しいと言わざるを得ません。

今後は贈与がバレてしまう可能性あり

仮に、委任状等の書類が記入できて預金を引き出せたとしても、今後はその引き出しが贈与なのではないかと疑われてしまう可能性があります。マイナンバーと銀行口座の紐つけです。

2016年1月から稼働するマイナンバーシステムは2020年ころに銀行口座と紐つけを行う方針を政府は決定しています。マイナンバーと銀行口座が紐つけられれば預金者の口座の動きを番号で管理でき、子供の口座の動きも把握できます。

今まではA銀行で払い出した親の預金をB銀行の子供名義の口座に入金すれば本格的な税務調査でも入らない限りは贈与が発覚するような心配はありませんでした。違う銀行間の取引は贈与が分かりにくかったのです。しかし、今後は番号1つですべての金融機関の口座の動きを把握できます。

今までのような贈与は発覚してしまうでしょう。

心配な人は亡くなる前に保険にしておく

相続が今から心配だと言う人は、預金を保険に変えておくことをおススメします。保険であれば死亡した時に本人の戸籍謄本(除票)と受取人の本人確認書類を提出すればそれだけで2週間もすればお金が受取人に振り込まれます。預金のような相続手続きをとる必要はありません。

今は、高齢者でも相続用に加入できる保険や告知なしで加入できる保険が増えています。保証はなく利回りも低いですが、元本保証で死亡時の手続きが楽という商品です。相続人へメッセージがついた預金のような意味合いの商品です。

相続で子供がもめたり、子供に相続で負担をかけるのが嫌だという人は今から預金を保険に変えてしまうという方法がオススメです。

お薦め商品:一時払逓増終身保険|東京海上日動あんしん生命保険(2015年12月筆者調べ)
参照元:東京海上日動あんしん生命保険(2015年12月、筆者調べ)

銀行は亡くなったことを知っているの?

よく「亡くなったその日の朝にはもう口座が凍結されていた」などの話があります。銀行は亡くなった情報を持っているわけではありません。特別なルートがあるわけでもありません。情報源とすれば新聞のお悔やみ欄くらいです。銀行は大口取引先が亡くなった場合に弔電を打ったりするために、新聞のお悔やみ情報を毎朝チェックしている場合が多いです。

知ることができるとすればその程度です。基本的には遺族が申告するものです。

銀行が亡くなったことが分かった時点で払い出し禁止になる

亡くなったことが新聞等で分かった時点で銀行は払い出し禁止の措置を取ります。口座を凍結した状態にします。これによって相続の手続きが完了するまではお金を引き出すことはできなくなるでしょう。

仮に、本人は死亡しているのに銀行口座が使える状態の時、カードでお金を引き出すことはできます。しかし相続の時には亡くなった日付が記載されている書類を提出しますので、なりすましによる引き出しが発覚してしまうことになります。



2.相続の手続き中の費用はどうする?

亡くなってから相続が完了するまでには時間がかかります。その際には葬儀費用等の様々な費用が発生します。そのお金はどうしたらよいのでしょうか?生きている間に現金で用意しておいたり、喪主になる人に渡しておいたり、中には葬儀屋さんに費用を支払っている人もいるようです。そのような準備を親がしてくれてあれば残された子供が困ることはないでしょう。

しかし、そうでないことがほとんどです。死亡に伴う費用について解説します。

電気料金などの公共料金は口座引落できなくなるの?

口座が凍結されると、口座からの自動引き落としも決済できません。口座が凍結されたおかげで電気やガス料金の支払いができなくなったということがないように公共料金の引き落としを継続する手続きを取ることができます。ただし、相続人が自分で銀行に赴き手続きを申請する必要があります。

また、親名義で契約した公共料金を親名義の口座から引き落としをしていた場合、基本的には契約者名義も引き落とし口座名義も子供の名前に変更する必要があります。しかし、自宅を誰が相続するか決まっていないので、そのままにしてほしいような場合には、公共料金の引き落としは相続が確定するまでは、亡くなった人名義の契約で亡くなった人名義の口座から引き落とすことができます。

葬儀費用は払い出しできないのか?

葬儀費用については相続が確定するまでは相続人の誰かが立て替えて、相続時に立て替えた人がその分を多く受け取るという方法が一般的です。しかし、葬儀費用は高額です。葬儀屋さんに払うお金、お寺に払うお金などを合計すると200万円を超えることも珍しくないようです。

これだけのお金を立て替えることができない人も多くいます。そのような場合は、葬儀屋さんの請求書を銀行に持っていけば、凍結している亡くなった人名義の口座から支払いを行ってくれます。ただし、基本的にはその銀行からの支払いが条件で、領収書のコピーは銀行が保管してお金の管理を徹底しているようです。

亡くなる前の入院費用の清算はどうするの?

亡くなる前の入院費も基本的には、相続人が立て替えて払い、相続時に清算する方法が一般的です。しかし、立て替えが難しい時には、葬式の時と同じように請求書を持参すれば、凍結されている亡くなった人の口座から支払ってくれます。この際も銀行からの振込で確実に相手に支払うことが求められます。銀行は凍結している預金を確実に管理します。

葬儀費用も入院費用も亡くなった人が生前使っていたクレジットカードの利用残高などは、被相続人(亡くなった人)の債務です。この債務は亡くなってから預金などの資産から差し引くことができます。これを債務控除と言います。

亡くなってから相続までにかかる費用で債務控除されるものは他にも税金などが考えられますが、とにかく何でも立て替えたら領収書を取っておくことをおすすめします。

相続で使用する書類の取得費用はどうするの?

相続には様々な書類が必要になります。金融機関によっては相続の手続きが終了しても原本を返却してくれないようなところもあるようなので、同じセットが何セットも必要になることもあり、数千円から1万円を超える金額となることも珍しくありません。

この金額は被相続人(亡くなった人)の口座から払い出すことはできるでしょうか?一般的には引き出すことはできません。被相続人の戸籍を取得した人が多くの費用を負担することになりますが、その費用の分だけ他の相続人より多く相続することで、無くなった後に清算することはあるようですが、凍結した口座から引き落とすことは一般的にはできないようです。

3.相続の手続きに必要な5つのもの

預金の相続は必要な書類だけ覚えてしまえば手続きはそれほど面倒ではありません。遺言がない場合は相続人全員の実印と書類が必要になります。また、印鑑証明は居住地(住民票がある場所)、戸籍謄本は本籍地で取得する必要があります。本籍地と居住地が異なる場合は面倒ですので、相続人の代表になるような人は必要な書類を覚えておくと、兄弟などに書類を頼む時に不備がなくて済むでしょう。 遺言書がない場合、相続に必要な公的書類は5つだけです。

①被相続人(亡くなった人)の戸籍の除票
②被相続人の改正原戸籍
③相続人(相続する人)全員の戸籍謄本
④相続人の全員の印鑑証明書
⑤遺産分割協議書

①で何月何日に死亡したと確認が取れます。
②で亡くなった人の戸籍を確認します。元奥さんとの間に子供がいて、相続人が他にもいないかなどの確認を改正原戸籍で行います。
③の戸籍謄本で相続人側から見た被相続人との関係性が確認できます。(父:○○というように)
④で印鑑が実印であることの確認を行います。
⑤は相続人が遺産の分割に納得したということを示す書類です。預金配分に対して相続人がそれぞれ納得していることを銀行が確認できます。相続人全員の署名実印が必要です。ひな形は銀行でもらえます。

必要な書類はこの5つです。
①②は相続人の代表が役所に行ってとればいいですが、③と④は相続人がそれぞれの居住地や本籍地の役所に行って取得する必要があります。⑤は相続人同士で話し合って、納得した内容をもとに相続人の代表が作成する必要のが一般的です。ひな形があり、そこに名前と金額を入れればいいだけですので作成自体は面倒ではありません。

金融機関によって必要な書類は異なることがありますが基本的には必要な書類は以上です。
また、これとは別に亡くなった人の預金通帳、預金証書、キャッシュカードすべてを提出しなければなりません。どこにあるか分からないような場合は、喪失の手続きを取ることもできます。

相続必要書類
参照元:全国銀行協会(2015年12月、筆者調べ)

亡くなった時点で、遠方の兄弟には書類を用意してもらう方がベター

相続人の代表者以外の相続人は基本的には上記③④の書類を用意して、遺産分割の協議書と相続依頼書(銀行に相続の手続きを依頼する書類)に署名実印をもらうだけですので、面倒ではないでしょう。

相続がもめないような場合は、亡くなった時点で印鑑証明と戸籍謄本を取ってきてもらい、49日などの兄弟が集まる機会に実印を持参してもらった方がよいでしょう。

郵送でのやりとりも可能ですが、遺産分割協議書や相続依頼書などは1枚の紙に相続人全員の署名実印が必要になるため、兄弟が何人もいるような場合は時間がかかったり、途中で紛失するリスクがあるためです。

また、③④の書類は金融機関によっては手続き終了後に返却してくれないところもあるようですので、数部用意してもらった方がよいでしょう。

また、返却してくれるところも、手続き終了後の返却になる場合があります。そのため、すべての金融機関の相続手続きを同時に行うには、被相続人が口座を持つ金融機関の数と同数の書類を用意する必要があります。

実印もお忘れなく

先ほどから述べているように、相続というのはすべての印鑑に実印が必要です。そのため、必要書類を持参してもらうような場合は実印も忘れないようにして下さい。遠方に兄弟などの相続人がいるような場合はなお忘れないように注意しましょう。繰り返しになりますが、相続の書類を郵送でやり取りするのはリスクが高いためおすすめできません。

最も面倒なのは改正原戸籍の取得

上記②の改正原戸籍というのは被相続人(亡くなった人)の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍の履歴です。ここには親や兄弟はもちろん結婚歴、離婚歴、子供まで、すべての記録がされています。銀行はこれを確認して、他にも相続人がいないかなとをチェックします。よくあるのが離婚した元奥さんとの子供が相続人から漏れているような場合です。

この改正原戸籍を取得するのが面倒な場合があります。戸籍というのは本籍地で管理しています。そのため、生まれてから1度も本籍地が変わっていない人は1か所の役場で取得が可能です。しかし、転居や結婚などで何度も変わっているような場合は変わった数だけ必要になります。

例えば…
・生まれてから20歳までは渋谷区
・20歳から40歳までは横浜市
・40歳から亡くなるまでは千葉市

と本籍地が変わっていた場合は、渋谷区、横浜市、千葉市の役所で改正原戸籍を取得しなければ、生まれてから亡くなるまでの戸籍がつながりません。遠方の役所に行かなければならない場合は、郵便局で費用分の為替を購入して役所に連絡の上送付すれば郵送で送ってくれます。相続の事務手続きで一番面倒な手続きが「改正原戸籍」の取得だといわれています。

戸籍の収集について
参照元:相続戸籍相談センター(2015年12月、筆者調べ)



まとめ

何となく面倒なイメージから敬遠されがちな相続の手続きですが、必要な書類は相続人が印鑑証明と戸籍謄本、被相続人が改正原戸籍と戸籍の除票だけです。遺産分割でもめるようなことがなければ、手続きは面倒ではないでしょう。

亡くなる前に何が何でも預金を払い出して、相続を回避しようとする人がいますが、贈与が発覚した時の贈与税と相続税は比較になりません。相続税には(3,000万円+600万円×法定相続人の数)という非課税枠もあります。また贈与はマイナンバーが銀行口座に紐つけられれば発覚してしまいます。

手続きは決して面倒ではないですので、亡くなる前に焦って払い出すくらいなら、相続の手続きを行うことをおすすめします。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。