奨学金の返還免除を狙うには?競争は入学前から!

奨学金が返還免除になった、半額免除になったという話を聞いたことがありませんか?「え?自分が学生の時はそんな制度なかったと思うけど?」いえいえ、節約と同じで、返還免除を受けるにもコツと戦略があるのです。今回は、私が返還免除の奨学金を獲得したエピソードと、半額免除に合格したエピソードに、友人のケースを加えて紹介します。



奨学金とは?世界と日本の違いも解説。

日本における奨学金の歴史は、1943年の大日本育英会の設立に始まりました。戦後、大日本育英会は日本育英会への改名、2001年の解体を経て、2004年の日本学生支援機構設立に至りました。現在、日本国内で最も利用者数・利用金額が高い奨学金制度が、この日本学生支援機構によるものでしょう。
一方で、世界における奨学金制度はどのようなものでしょう。例えばアメリカでは、低所得層を対象に学費の6割を補助する制度、日本学生支援機構の奨学金相当の利子付き貸与であるスチューデントローン、特に優秀な学生のみが返還を免れるスカラシップと3段構えになっています。
実は日本にも、アメリカでいうところのスチューデントローンとスカラシップの2種類の奨学金があります。日本語では、貸与奨学金と給付奨学金という言われ方をする場合もありますが、両者の制度は、そしてそれらを受給できる条件は、どのように違うのでしょうか?

日本学生支援機構の沿革-JASSO
日本学生支援機構(2015年11月)



貸与と給付、制度の違いと返還免除を受けるまで。

上述のように、基本的にはスカラシップ(給付奨学金)のみが返還義務のない奨学金となります。つまり、奨学金への応募の時点で返還免除が受けられるかどうかはほぼ決まっているのです。
しかし、例外もあります。貸与奨学金の手続き後に、ある条件を満たすことにより、返還を免れる方法です。以下では、私、私の家族、友人の体験したケース、それ以外に想定されるケースについて紹介していきます。

貸与→免除ケース

①:学生支援機構の半免・全免

日本学生支援機構の奨学金貸与後に、返還が免除される場合があります。大学院生が、「優秀な成績を修めた」として担当教官、次いで学長が推薦し、それが認められた場合です。
では、「優秀な成績」にカウントされる実績はどのようなものでしょうか?

■論文投稿数が多い・論文投稿雑誌のインパクトファクターが高い
■受賞歴がある・多い
■学会発表数が多い
■学会・研究会などでの発表が多い

対象が大学院生であるため、本分である研究においてどれだけの成果を上げたのかが問われます。しかし、先に述べたように推薦の入り口は担当教授です。たとえ論文投稿や受賞歴が無くても、権威ある学会での発表など教授の目に留まる活躍があれば、教授から研究科長へ、研究科長から学長へと、推薦の道が開けることもあるでしょう。

かくいう私も、論文投稿はチャレンジしたものの修士課程のうちに論文がアクセプトされることはありませんでしたし、研究発表はたったの3回でした。しかし、担当教官の助力もあり、修士在学時の学費のうち半分を免除して頂くことができましたし、国立大学出身の友人には学会発表のみで全額免除を受けた強者もいます。

特に優れた業績による返還免除-JASSO
日本学生支援機構(2015年11月)

②:私立大学を首席卒業した姉の場合

貸与というよりは一度納付した学費が返還されたケースの紹介です。私の姉は、大学を首席で卒業したことで4年分の学費(私立ですので480万円ほど)の一括返還を受けました。

私達は母子家庭で育ったこともあり、同学年の友人達の多くと比較すると、学費の工面については考え方がシビアだったと思います。姉の場合、国立大学受験に失敗し、下に私が控えていたため自分は浪人できないし…、ととても悩んだとお互いが就職した後になって聞かされました。

姉なりに免除を受けられる可能性が広がるように、研究室選びや科目選択、資格取得や学会発表、ボランティアに就職先と、周囲に実績として納得されること、客観的に見て優れていることを指標に、時には担当教授の指導を仰ぎながら努力したようで、それが教授、学部長、そして学長への奨学生推薦につながったようです。
こうした対応は私立学校のさらに一部の大学や学部に限られるかもしれませんが、利用できる制度が無いか、一度大学の掲示板や募集要項を確認してみると良いと思います。

③:就職先限定奨学金

上記は、主に医師、看護師、介護士などの職業に就く場合に見られる制度です。私の親戚には、病院付属の看護師専門学校を卒業し、その病院に3年間勤めることで学費全額の免除を受けた方が居ます。
国立・公立大学の看護学部においても、学部ごとの掲示板や学内イントラネットにおいて私立病院からの就職先限定奨学金制度の募集案内は比較的良く掲示があったと記憶しており、私の友人にも利用した子が居ました。

就職先が限定されること自体も、マイナスと受け止めるよりは就職活動の手間が省けるため割と好意的に受け止められる場合が多いと思われ、良くできた制度と感じています。
ただし、国家試験に不合格であった場合は不採用・支払い義務が生じる場合が多いため、注意が必要です。

④:免除職に就職した場合

免除職と呼ばれる、教育機関の教員(大学教授から小学校教諭まで様々です、詳細は下記のリンクを参照してください)が、在職期間を含む一定の条件を満たすと受けられる免除制度です。

条件は、以下のようなものです。

****条件****
■大学院に2年以上在籍
■大学院を修了後、2年以内に免除職に就職
■在職は通算5年以上、15年間必要

あ、私は今「免除職」に就いてる!ラッキーと思った方、残念です。事前・事後に次の手続きが必要となります。

****就職前****
■修了1ヶ月以内に「奨学金返還特別猶予願」に出身大学長の証明を受けて願い出る
■猶予は基本1年、延長して2年
※2年の猶予期間中に特別な理由(研究や留学)に該当した場合は5年

****就職後****
■就職後2年以内に、「免除職就職届」を提出
■異動などに伴い、「免除職在職・異動届」を提出
■15年の在職期間満了後に送られてくる「奨学金返還特別免除願」を提出

ちなみに、途中で退職するなどにより資格が無くなった場合は、その時点から普通に返還が始まります。

返還特別免除のてびき-JASSO
日本学生支援機構(2015年11月)



入学前から免除

①:地方自治体の奨学金

地方公共団体の奨学金にも、スチューデントローン(貸与)だけではなく、スカラシップ(給付)の制度があり、①居住区限定、②居住区を限定しない、の2パターンあります。
それぞれの場合と特徴について簡単に紹介します。

■居住区限定の場合
進学先の地方自治体限定の場合(県外進学OK)の場合と、生まれ育った土地であり、本籍地であること、本人に加え保護者も数年以上居住しているなど、県内進学のみが認められる場合の2つがあります。

■居住区を限定しない場合
出身県、進学先を問わずに利用できますが、成績や進学先の大学・学部に制限があります。
例えば、県立大学の看護学部に首席で入学し、県内の病院に就職するという条件がつく、などです。

■給付期間
多くは進学期間中、1年毎に給付される制度になっています。

■金額
金額は数十万円(入学金援助程度)~数百万円(4年間の学費+通学費用程度)と幅広くあります。

■応募時期
多くは高校在学中ですが、進学後でも間に合うものもあります。

②:採否には家庭の事情もありますが…。

1つ前に紹介した地方自治体のスカラシップ(給付奨学金)ですが、応募要項をご覧いただくとお分かりいただけるように、各自治体ごとに1~数名しか採用されない非常に狭き門です。私の友人に、これに採用された子が居ますので、そのエピソードを紹介します。

私と彼女が出会ったのは高校の級長会です。クラスは違ったのですが、家庭環境が似ていることもあり、すぐに仲良くなりました。お互い学年トップの成績だったので、テストはいつも勝負!といった感じでしたが、彼女は表向き天才タイプで飄々としており、私は頭の固い優等生然としていたと思います。

そんな私と彼女に県の奨学生応募の話が来たのは、高校3年の6月だったと記憶しています。私の高校では毎年1名が県の特別奨学生に採用されるのがほぼ通例となっており、推薦されれば9割方4年間400万円の奨学金を受けることができました。学校は、私か友人かどちらかを推薦したい、成績も申し分ないし、考慮される家庭環境もある、というのです。

家庭環境を示すための戸籍謄本を添えた応募用紙の提出から1ヶ月程たって、推薦は友人が受けること決まりました。奨学生候補は交通遺児や片親家庭出身者がほとんどで、面接では、母子家庭なら進学しないで働けば?という質問もあったそうです。彼女が面接で授業を休んだ日、クラスメイトが彼女が奨学生候補になったのは、母子家庭出身だからだ、という噂話をしているのを聞きました。

私もそうだよ、でも選ばれなかった。あの子は凄いんだよ、塾にも行かずにいつもトップの成績で、それを鼻に掛けずに気さくで、とっつきやすくて…。

私は反論したかったのですが、言葉が出てきませんでした。母子家庭で育つということは、やはりマイノリティーなのでしょう。それでも、私がわかって欲しいと考えているのは、確かに、奨学生に採用されるには家庭環境が有利に働くこともあるけれど、前提として、何らか光る才能・実力が無いとステージに上がることすら許されない、社会は才能や将来性への投資として、奨学金制度を準備しているのだ、ということです。

③:私立大学の学費免除入試制度の利用

入学時の成績に応じ、入学金や学部1年目の学費相当程度の金額を免除するタイプの奨学金制度を用意している私立大学もあります。特殊な入試制度を利用するため、応募時期は願書提出時期です。

多くの進学校では、願書は高校側で粗方用意してくれると思いますので、上記の制度を利用したい場合は早めに担任の先生に相談されるのが良いでしょう。私の友人は、自分の入学した私立大学に入学時の成績による学費免除制度があるというのを入学後にTVCMで知ったという子が居ました。彼女は一般入試での成績が首席ではないもののかなり上位だったようで、高校のうちに知っていれば…、という後悔はあったようです。

入学後免除

①:居住区限定の企業奨学金ハンターだった友人Y。

私と同じ大学・学科の友人に、毎年1つの返還免除奨学金に採用され、計240万円を稼いだ強者が居ました。彼女の進学・奨学金への考え方は、とても戦略的だったので紹介します。

まず、彼女の基本思考は以下のようなものでした。

■地元企業の奨学金に応募する。
■特に、「地元出身者限定」の奨学金に応募する。
■論述・面接では、あえて「地元と他県の違い」にフォーカスし、他の応募者と差別化する。

私も大学入学後に知ったのですが、国立大学に比べ県立大学には、多くの県内企業からの奨学生募集が届きます。しかも、それらの3分の1は県内出身者を対象としたもの、他は留学生や出身県問わずのものですので、県内出身者というだけで競争率がぐっと下がるのです。彼女は、高校在学時からこのような奨学金制度を調べていたのでした。

しかも、県内出身者だからこそ、応募後の競争の中では目立つように「地元ヨイショ」せず、問題提起側に回った思考をしたというのですから、非常に戦略的だと思いました。普通、選ぶ側の企業も過去に他社から同じような奨学金を受けていると知ったら、「じゃぁ別の子に…」と考えると思うのですが、彼女の緻密な計算にはそうした考えを覆すものがあったということですね。

②:とっつきにくい課題で競争率を下げる

大学1年の時、「将来の夢は?」という題材の奨学金に応募し、落選しました。出身県も学年にも縛りのないその奨学金への応募数は500人以上だったと聞きますので、採用されるには本当に狭き門、しかも、「夢」とはまた差別化がしにくい課題です…。

このとき、私は「あ、これなら書けそう…」という理由で応募する奨学金を選んでしまったのですが、これは大きな失敗だったと、1つ前に紹介した友人に、「私のほう応募者2人だけだったよ」と言われて気がついたのです。

翌年から、私が気をつけていたことは以下の通りです。

■あえて、文系課題に理系から応募(たとえば、経営論やコーポレートガバナンスです)
■その分野について勉強した上で、理系的視点(化学や研究)・データ考察を入れる

これらに気をつけたおかげか、大学2、3年において、私は「物流網構築」と「企業におけるCSRのあり方」という2つの題材で奨学生に採用されることが出来ました。振り返ってみると、自分の競争相手となったのは経済学部や情報学部の学生が主だったため、私は応募書類の学部の欄時点で、視覚的にやや目立つことが出来ていたのだと思います。

もちろん、何を書き・主張するかが最も大事だと思いますが、より差別化するために利用できる条件は利用し、あえて他者の専攻分野に攻め入る、というのも有効な戦略と言えるのではないでしょうか。

③:奨学金付き留学制度の利用

小・中学校の同級生に、現在通訳・翻訳家としてフリーランスで生活している子が居ます。彼は大学の時、外国語学科だったのですが、奨学金付きの留学制度を利用してアメリカに留学していました。

留学生向けの奨学金制度にも、先に紹介した奨学金と同様に、国・地方公共団体・企業・大学各々が主体となる奨学金制度があるようですが、彼が利用したのは大学の交換留学生制度です。大学2年と3年の2年間留学先の大学で単位を取りつつ勉強をするというもので、留学先での滞在費相当の奨学金を受けられたと聞きました。

これには、交換留学生に選ばれるための学内選抜に通らなければならなかったようで、倍率は50倍ほど、入学後は勉強のためにバイトも出来ないほどだったそうです。また、留学先はほとんどが9月が新学期開始の時期であるため、彼は結果的に足掛け5年大学に在学することになり、1年分の学費が追加で必要になったため、留学を考える際は注意するべきだと言っていました。

奨学金に採用されるには…

ここまで、様々な事例を紹介してきましたが、未返還の奨学金に採用されるにはどうしたら良いのか、まとめていきたいと思います。

申し込み時期を逃さない!

事例の通り、奨学金には入学前から、入学後、卒業後まで、様々な応募時期・採用時期のものがあります。応募時期が一定しないからこそ、自分が狙う奨学金の応募時期を調べて、出遅れないようにしなければなりません。

とっつきやすさと採用されやすさは別モノ!

奨学金の採用試験では、大学学部相当程度の知識や論述を求められることもあります。自分の専門分野と違って、小論文や面接にとても合格できない、と思ってしまうと、応募自体を辞めてしまうこともあると思います。

しかし、その「とっつきにくさ」が「倍率の低さ」につながり、結果競争力を下げることにつながることもあります。無理だと思わずに、チャレンジすることから奨学金の返還免除がはじまります。

仮に不採用でも…。就職活動や就職後に役立つことも。

返還免除の奨学金の採用試験では、論文・履歴書を書いたり、面接を受けたりする機会があります。高校までに経験した受験用の面接とは違い、先生や親の助力なしに、自分で考えて自分の強み・考えをPRする場です。たとえ奨学生に採用されなかったとしても、次の年の奨学金応募時、就職活動に役に立つ時もきっとあるはずです。 本記事の情報は、一般的または筆者個人の調査によるものです。法令などの改正、前提事実や個人状況の違いや変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。 従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。