ふるさと納税に潜む問題点|話題の節税制度について考えてみた

平成21年度から始まったふるさと納税。豪華な特産品がもらえるなどのお得な一面が強調されますが、物事には何でも長所と短所があるというもの。ここではふるさと納税に絡む問題点を取り上げてみることで、私たちがどのように行動することがよりよい結果につながるのかを考えてみたいと思います。



そもそもふるさと納税って?

そもそもふるさと納税って何でしょうか?今一度、その内容について確認してみましょう。

まず、「納税」という言葉がついているふるさと納税ですが、実際には、都道府県、市区町村に「寄附」をするというものです。ふるさと納税では原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が所得税・住民税の控除の対象となります。

さらに大きな特徴として、ということが挙げられるでしょう。

・寄付したい自治体を自分で選ぶことができる。
・寄付の使い道を選択できる場合がある。

制度導入時の平成21年度には、3万人が利用し、73億円が寄付されましたが、平成26年度には利用者数は13万人、寄付額は142億円にまで増えています。

ふるさと納税の理念は「地方創生」

それでは、どうしてこのような制度が設けられたのでしょうか。

総務省のふるさと納税ポータルによれば、ふるさと納税は、税制を通じてふるさとへ貢献する仕組みができないか、との想いのもと導入されました。

ふるさと納税には3つの大きな意義があるとのことです。

第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。

第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。

第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります

総務省|ふるさと納税ポータルサイト|ふるさと納税で地方創生
ふるさと納税の理念について 日本では、給与所得者の場合自分で確定申告書を作って納税する機会が極めて少ないため、実際に自分がいくら納税しているかを認識している人は少ないかもしれません。そうなると、その税金の使われ方にも関心が低くなりがちです。そんな中、自分で納税先を選択すれば意識が高まるという第一の意義は、分かりやすいと思われます。

そして、実際にふるさと納税を行う納税者が、第二の意義を理解して納税先(寄付先)を選択すれば、ふるさと納税の理念の実現に近づくというわけです。

ふるさと納税の仕組みはどうなっているの?

上にも書きましたが、ふるさと納税では寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。「原則として」とあるように、家族構成と収入によって、控除の上限額が定められています。 総務省のふるさと納税ポータルには、全額控除されるふるさと納税額の年間上限額の目安が掲載されています。この控除額は平成27年度に2倍に増額されており、さらにこの制度を促進させようという意図がうかがえます。

総務省|ふるさと納税ポータルサイト|ふるさと納税のしくみ|税金の控除について
参照元:総務省(2015年10月時点、筆者調べ)

寄付をすると控除以外にも特典が!

そして今一番話題になっていると言えるのが、寄付した自治体からもらえる特産品です。これは自治体の義務ではないのですが、わが自治体への寄付を増やそうと各自治体が趣向をこらした特産品をお礼で寄付者に送るというのが慣行になってきています。

わずか2,000円の負担で各地の特産品が楽しめ生活費も節約できるとあって、これは利用しない手はない、そう思うのももっともだと思います。

ふるさと納税ポータルふるさとチョイスでは、寄付先をお礼の品から選べるようになっています。検索カテゴリランキングを見てみますと、一番人気は牛肉、2位は米となり、宿泊券や電化製品も上位にランキングされています。

ふるさと納税ポータル「ふるさとチョイス」で特典・特産品選び!使い道まで選べる、ふるさと納税ならふるさとチョイス! | ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」
参照元:ふるさと納税ポータル(2015年10月時点、筆者調べ)



ふるさと納税の何が問題なの?

税金が減り、その上各地の特産品まで楽しめる、そんな制度にも問題点があるのでしょうか。よく言われる問題点について、ここで見て行きましょう。

確定申告をしなくてはいけない

ふるさと納税で税金の控除を受けるには、確定申告をしなくてはいけません。給与所得しかない人の場合、確定申告をすることはまれですし、最近ではインターネットで申告書を作成できるようになったとは言え、所得税の基本的な知識がないとなかなか難しいものです。このために、ふるさと納税を利用しないという声もあるようです。

これに対応するために、平成27年度から確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」というのが導入されました。しかしながら、これを活用するには条件がつけられています。

その条件とは、

・ふるさと納税を行う際に各ふるさと納税先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出する。
・特例の申請にはふるさと納税先の自治体数が5団体以内である。

となっています。

5団体以内、というのはともかく、特例の適用に関する申請書を提出するとなると確定申告の代わりとしてのステップが必要となるため、この制度がどれだけ利用されるか注目されると思います。

その他の注意点としては、

・平成27年4月1日以降の納税のみが対象となり、平成27年1月1日から3月31日までの間に行われたものは対象外である。
・その他の理由で確定申告が必要な人はこの制度を利用できない。

というのがあります。

かえって複雑でめげてしまう人も出てきそうです。

豪華なお礼には課税される?

特産品はお礼なんだからいただいて終わり、と思っていたのに課税されると言われたら、あせってしまいますよね。ただ、安心してください。これに該当するケースはそうそうないと思われます。

国税庁のウェブサイトを見ますと、「寄附者が特産品を受けた場合の経済的利益は、一時所得に該当します」とあります。所得税は、その課税の目的を達成するために所得をいろいろな種類に分類して、それぞれに課税方法を定めているわけですが、簡単に言って経常的に発生しないものについては一時所得としています。そして、一時所得は50万円を超える部分に課税されます。実際、特産品の価額はすぐには分からないものが多いと思われますが、50万円を超えるような特産品を受けることはそう多くはないでしょう。

ただし、同じ年に生命保険の一時金などその他の一時所得がある場合に、合算して50万円を超える場合には申告しなければなりませんので、注意が必要です。この場合に、特産品の価額がはたしていくらなのか、自治体は答えてくれるのでしょうか。

「ふるさと寄附金」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係|所得税目次一覧|国税庁
参照元:国税庁(2015年10月時点、筆者調べ)

過熱するお礼の品競争

これがメディアで一番問題として挙げられている点ではないでしょうか。

たとえば、ふるさと納税ポータルでは、寄付金額で納税先を検索することができます。この機能を利用して1,000,001円~というのをクリックしてみると、非常に高価な(と思われる)磁器や家具、和牛定期便や牛一頭、フェリー貸切など、まるでネットショッピングの高級品ページを見ているかのような錯覚に陥ります。

ふるさと納税ポータル「ふるさとチョイス」で特典・特産品選び!使い道まで選べる、ふるさと納税ならふるさとチョイス! | ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」
参照元:ふるさと納税ポータル(2015年10月時点、筆者調べ) ふるさと納税の第二の意義は、「生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります」というもの。しかし、実際には特産品競争が過熱し、本来の趣旨から逸脱した特産品目当ての寄付という実態になっているという批判が起こっています。

実際、「特産品がほしいからどのように寄付をしたらいいか」という問い合わせを受ける自治体もあるようです。

「ふるさと納税 還元率ランキング」で検索すると、多くのウェブサイトが独自に還元率を計算し、ランキングを掲載していることがわかります。還元率は、10,000円を寄付した場合に3,000円相当のお礼がもらえれば30%と考えればいいでしょう。

一個人としては、還元率が高ければ高いほどコスパがいいということになり、それだけお得になります。しかし、寄付額を活用して地域を活性化するというのが趣旨ならば、還元率が高いほど自治体に残るお金は少なくなるわけで、さらに特産品業者だけが潤うといった偏った構造にならないか懸念されます。また、特産品を提供する地元業者と自治体との癒着を指摘する声もあります。

制度拡充へ 競争過熱|特集まるごと|NHKニュース おはよう日本
参照元:NHK(2015年10月時点、筆者調べ) 自治体としては、少しでも手元に残れば…という考えなのかもしれません。しかし、中には還元率100%を超える自治体もあるようで、こうなると収支逆転で本末転倒のように思えてしまいます。

第三の意義には「自治体間の競争」とありますが、特産品を餌に寄付獲得の競争をするというのはその理念の趣旨を取り違えているのでは、との意見も聞かれます。 この点についてはメディアでもたびたび取り上げられ、平成27年4月には、総務省より「返礼品(特産品)送付への対応についての総務大臣通知」が公表されました。これを見ますと、

「各地方団体においては、(省略)返礼品(特産品)の送付等、ふるさと納税に係る周知、募集その他の事務について、寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応を行うこと。また、各都道府県においては、域内市区町村の返礼品(特産品)送付が寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応となるよう、適切な助言・支援を行うこと。」

との記述があります。

ただこれは自治体の良識にゆだねられている点で、どこまで実効性があるか疑問視する声もあります。

総務省|ふるさと納税ポータルサイト|関連資料
参照元:総務省(2015年10月時点、筆者調べ)

結果的に納税額が減少してしまった自治体も

ふるさと納税は、現在住んでいる自治体に本来払うべき税金を他の自分が選択した地域に移転する結果になります。自分の住んでいる自治体にも同じように寄付が集まらないと、減収につながってしまいます。

現実にそのようなことが起こっており、そうなると住民サービスの低下などといった事態につながりかねません。

豪華な特産品で自分は潤ったけど、その結果自分の暮らす町が収入不足で貧しくなる…なんだか淋しい気分になります。

今後ふるさと納税をするときには

このお礼合戦を止めるには、規制しかないかもしれません。ミクロレベル、つまり個人の経済合理性からすると自分のニーズに最も合い、なおかつ経済的利益の大きいものを選択して寄付をするというのは全く合理的な行動だと思います。それに、自治体が少しでも多くの寄付を得ようとする行動も経済合理性にかなっているからです。個人や自治体のモラルだけに依存するのは限界があるでしょう。

ただ、自分の拠出したお金が何に使われるのかを考えることは、ふるさと納税の第一の意義「その使われ方を考えるきっかけとなる制度」にかなうものとも言えるのではないでしょうか。

各自治体は、寄付の実績やその使途について報告を行っており、ウェブサイトで確認することができます。また、総務省のふるさと納税ポータルサイトでは、「ぴっくあっぷ!ふるさと納税」のページでふるさと納税を活用した事業について、簡単な紹介を見ることができます。

総務省|ふるさと納税ポータルサイト|ピックアップ!ふるさと納税
参照元:総務省のふるさと納税ポータル(2015年10月時点、筆者調べ) 今回調べてみて特産品が一目でわかる以上に、各自治体の活用報告も自治体別にすぐに見ることができれば、本来の趣旨にかなう寄付先の選択、そして使われ方を考えることにつながるのではないかと思いました。

ふるさと納税の第二の意義には、「人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります」とあります。成熟国家の市民として、自分のお金の使い方で社会が変わるということを考えてみるのもいいかもしれませんね。  ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。