相続に絶対必要な配偶者控除|相続税を【0円】にする方法

相続する際、配偶者控除、上手に利用しいていますか?相続税を気にする前に、配偶者控除を考えてみましょう。相続争いにならない親子だけの相続なら、賢く利用しないともったいないですよ。相続税法上、最大にして最高のパフォーマンスを引き出す方法といっても過言ではないでしょう。もしもの時に今から考えておきましょう。



配偶者控除について

配偶者控除とは

細かい説明は後に回して、結論からいいますと、「配偶者控除」というのは、被相続人(亡くなった人)の財産を相続する際、被相続人(亡くなった人)の配偶者が相続した財産、1億6,000万円までは相続税はかけない、という「特別優遇措置」といえるのもです。

これが配偶者でなければ、仮に1億6,000万円の財産を相続すれば、税率40%で控除分1,700万円となり、1億6,000万円x40%-1,700万円=4,700万円もの相続税を納めなければならないのを、全額非課税、つまり相続税がかからない、という大胆な国税庁の計らいともとれる制度です。

普通のごく一般的な標準家庭なら、配偶者の財産の取り分は1億6,000万円なんて、そうそうないことだといえますよね。それも、生身の1億6,000万円ではなく、相続する財産から差し引くことのできる控除分は他にもあるわけですし、相続分割された後の、正味の金額ですから、被相続人(亡くなった人)が遺した財産は、3億円以上はあったと考えても良さそうです。

法定相続分に応ずる取得金額/税率 /控除額
1,000万円以下/10%/-
3,000万円以下/15%/50万円
5,000万円以下/20%/200万円
1億円以下/30%/700万円
2億円以下/40%/1,700万円
3億円以下/45%/2,700万円
6億円以下/50%/4,200万円
6億円超/55%/7,200万円

出典:

www.nta.go.jp
先ほど計算した相続税額は、国税庁が正式に公表している「相続税の速算表」に基づて計算したのですが、相続金額1億6,000万円というのは、上記の表でいえば、うえから5番目の「2億円以下/40%/1,700万円」を見て計算したわけです。

この表は、各相続人が実際相続した正味の財産額に対応するもので、例えば、相続した金額が、1,000万円なら、1000万円x10%(控除なし)=100万円が相続税となり、相続した金額が6億円ならば、6億円x50%-4,200万円=2億5,800万円が相続税となるという計算になるわけです。

配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額

 この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。

出典:

www.nta.go.jp
上記した1億6,000万円の控除額の他に、(2)にある「配偶者の法定相続分相当額」についても全額非課税、つまり、相続税はかかりません、とういう優遇措置もあります。「法定相続分相当額」という言葉も、法律用語になりますので、なかなか分りにくい部分ですが、後々ゆっくりご説明しますので、今は「ああ、そうゆうものね」とだけ理解してくれれば良いです。

被相続人(亡くなった人)の財産を分ける方法には2つの方法があり、1つは民法上で分割する「法定相続分」ともう1つは相続人同士の話し合いで決める「遺産分割協議」で分ける2つの方法があります。そのうち、配偶者控除として認められているのは、民法上で分割した「法定相続分」の金額には、相続税はかけない、というものです。

この金額が仮に10億円でも100億円でも、相続税は全くかけないという国税庁の懐の大きさを表しているともいえますが、まあ、一般標準家庭では考えられない数字ではあります。

当初から結論から述べさせていただきましたが、詳しいことはこれからご説明させていただくとして、配偶者控除というものは決して無視のできない特別優遇措置である、ということだけをまずは知っておいてください。

No.4158 配偶者の税額の軽減|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

法定相続分とは

配偶者控除が法定相続分の額には、相即税はかからないことをご説明しましたが、では「法定相続分」とは何なのか考えてみましょう。各個人が相続した財産にかかる相続税を計算するためのは、必ず「法定相続分」という方法で、財産を分割しなければならないことになっています。

では、「法定相続分」とは、どのような分割方法なのでしょうか。民法第900条にその答えがあります。

■民法(法定相続分)
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

出典:

law.e-gov.go.jp
この第900条、もっと簡単にまとめてみましょう。

①相続人が配偶者と子の場合は1/2ずつ
②相続人が配偶者よ親の場合は、それぞれ2/3と1/3ずつ
③相続人が配偶者と兄弟姉妹なら、それぞれ3/4と1/4ずつ

以上のように読み替えると簡単です。④については、子や親、兄弟が何人かいる場合は、相続した財産は山分けにしてください、という意味です。また②の「直系尊属」とは親や祖父母、曽祖父母といった、直系の先祖のことです。

なお、基本的に配偶者は財産をすべて相続できず、他の相続者と共同で相続することになっています。しかし、他に相続人がいない場合や、遺言書で「すべての財産は、○○(配偶者)に相続するなどという文言が書いてあれば、また別の話となりますが。

この民法第900条の割合で、財産を相続した場合は、配偶者の相続額がいくらあっても相続税はかからない、というのが、配偶者控除の特権といえるでしょう。そもそも1億6,000万円以内の相続に関しては全額非課税、法定相続分で相続した財産も全額非課税。どちらか一方した選択できないとしても、場合によっては、本来納税しなければならない相続税を払わないで済む場合もあるといえますが、それもだんだんにご説明します。

ここまでて、配偶者控除の全般的な内容をお分かりいただけましたでしょうか。

No.4158 配偶者の税額の軽減|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



相続税に配偶者控除を使うために

①:借金を引く

相続するのに、配偶者控除をどの場面で利用するのが良いのかをこれ以降ご説明します。相続税を計算するには「課税遺産総額」を求めなければなりません。また、その「課税遺産総額」を求めるには「課税価格」というものを計算しなければなりません。なんかちょっと雲行きが悪くなってきた、と思われる方もいるかも知れませんが、これからご説明します通りに計算していけば、一気に晴れてきますので、しばらくお付き合いください。

相続人となった人たちは、民法第996条により、被相続人(亡くなった人)の財産はすべて相続しなくてはなりません。

■民法(相続の一般的効力)
第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

出典:

law.e-gov.go.jp
相続は、この法律から始まるといってもいいでしょう。被相続人(亡くなった人)の財産には、価値のあるものと価値のないものがあります。価値のある財産は、不動産や預貯金などで、価値のない財産は、簡単にいえば「借金」などの負債です。民法第900条は、それら全部まとめて相続するように求めていますので、法律にはしたがうしかありません。仕方ありませんが「課税価格」を計算することから始めます。

①価値のある財産-借金=A
このように差し引きしてAを計算しましょう。例えば、価値のある財産が2億円で借金が2,000万円あれば、Aの金額は1億8,000万円です。

②:死亡保険金

被相続人が生前加入していた生命保険、この保険金は直接被相続人(亡くなった人)の遺した財産ではありません。受取人が保険会社へ請求して初めて支払われるお金ですから、相続とは関係ないような感じもしますが、相続税法上は「みなし財産」として、相続財産の中に含められてしまいます。

しかし、この保険金には一定の非課税枠が設けてありますので、その金額を保険金から差し引いて良いことになっています。計算式は、以下の通りです。

・控除額=500万円x相続人の数

つまり、相続人が2人なら1,000万円、3人なら1,500万円を差し引くことができるのです。今回、相続人になった人は、配偶者と子ども2人としましょう。

②死亡保険金3,000万円-1,500万円=1,500万円が課税対象となります。これをBとしましょう。①で求めたAは8,000万円でしたので、ここまでの財産合計は9,500万円です。

No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

③:死亡退職金

被相続人が在職中に亡くなった場合に、勤務先の会社から退職金や功労金が支払われる場合があります。このお金も「みなし財産」といして相続税の課税対象になりますが、このお金にも一定の非課税枠はあり、その金額から差し引くことができます。その計算式は以下の通りです。

・控除額=500万円x相続人の数

②で設定した相続人の数は3人でしたので、1,500万円が控除されることになります。仮に、退職金が1,500万円でしたら、差し引きゼロですね。

③死亡退職金1,500万円-1,500万円=0これをCとします。

ここまでのおさらい。

①借金を引いた残り:A=8,000万円
②保険金の残り:B=1,500万円
③退職金:C=0円

No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

④:葬式代

葬式のかかった費用は、被相続人(亡くなった人)の借金と同じ扱いとなし、財産から差し引いて構いません。故人を忍んで、「本葬式」と「お別れ会」と2回行っても、その費用は控除の対象となります。しかし、葬式にかかった費用でも、控除できるものとできないものがあります。

1 葬式費用となるもの

 遺産総額から差し引く葬式費用は、通常次のようなものです。

(1) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用
(3) 葬式や葬送などを行うときやそれ以前に火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
(4) 葬式などの前後に生じた出費で通常葬式などにかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
(5) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用

2 葬式費用に含まれないもの

 次のような費用は、遺産総額から差し引く葬式費用には該当しません。

(1) 香典返しのためにかかった費用
(2) 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
(3) 初七日や法事などのためにかかった費用

出典:

www.nta.go.jp
ただし、葬儀にかかった費用は、被相続人の財産から支払いに充てることはできません。あくまでも、相続人が立て替え払いすることが条件となります。これは民法第936条に規定されている通りです。

今回かかった費用を200万円としましょう。すると、今までの仕分けは以下の通りとなりますね。

①借金を引いた残り:A=8,000万円
②保険金の残り:B=1,500万円
③退職金:C=0円
④葬儀代:D=200万円

No.4129 相続財産から控除できる葬式費用|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

⑤:課税評価額の決定

ここまで①から④までで、「課税評価額」を決定することができますが、配偶者控除についてはもう少し出番が遅くなります。

①借金を引いた残り:A=8,000万円
②保険金の残り:B=1,500万円
③退職金:C=0円
④葬儀代:D=200万円

・課税評価額=A+B+C-D=9,300万円

被相続人(亡くなった人)が遺した財産額は、⑤9,300万円となり、これを課税価格(E)といいます。

⑥:基礎控除

ここまでで、⑤まで計算できました。今回は課税価格から、「課税遺産総額」の計算をしなければなりません。そのためには、「基礎控除額」を計算する必要があります。

■相続人は、配偶者と子ども2人の合計3人です。
①借金を引いた残り:A=8,000万円
②保険金の残り:B=1,500万円
③退職金:C=0円
④葬儀代:D=200万円
⑤課税価格:E=9,300万円

基礎控除額は、課税価格から差し引くことができる非課税枠のことで、正味の遺産額を計算するための最終段階となります。計算式は以下の通りです。

・基礎控除額=3,000万円+(600万円x相続人の数)

今回の設定では、相続人は上記の通り3人ですので、以下の計算となります。

・3,000万円+(600万円x3人)=4,800万円(F)、よって基礎控除額4,800万円を差し引くことができることになります。

⑥課税遺産総額=⑤(E)9,300万円-(F)4,800万円=4,500万円

今回、被相続人の遺した正味の財産額は4,500万円となったことになります。

No.4152 相続税の計算|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

相続税の配偶者控除の利用

配偶者控除を利用しない場合

相続人と子どもの仲が悪く、課税遺産総額4,500万円を、法定分割した場合を考えてみます。民法では、配偶者と子どもの相続割合は1/2ずつですので、以下のように分割します。

・配偶者:4,500万円x1/2=2,250万円
・子ども:(1)4,500万円x1/2/2=1,125万円
・子ども:(2)4,500万円x1/2/2=1,125万円

法定相続分に応ずる取得金額/税率 /控除額
1,000万円以下/10%/-
3,000万円以下/15%/50万円
5,000万円以下/20%/200万円
1億円以下/30%/700万円
2億円以下/40%/1,700万円
3億円以下/45%/2,700万円
6億円以下/50%/4,200万円
6億円超/55%/7,200万円

出典:

www.nta.go.jp
それぞれの金額を、上記の表に当てはめて計算しましょう。ただし、配偶者に関しては、法定相続割合で分割した場合は、全額非課税ですから、配偶者は相続税のことを気にする必要ないといえます。よって、相続税がかかるのは、2人の子どもだけです。計算は以下の通りです。

・子ども1:1,125万円x15%-50万円=118万7,500円
・子ども2:1,125万円x15%-50万円=118万7,500円

それぞれ、118万7,500円の相続税を支払うことになりますね。2人で237万5,000円です。親子との関係が悪ければ、仕方ないといえます。

配偶者控除を利用した場合

もし、親子関係が良いのなら、配偶者控除をフルに利用するのが、相続税を賢く節税する方法となります。配偶者控除は2つの方法がありましたが、1つの方法に1億6,000万円が控除されるのを覚えていますでしょうか。この非課税枠を利用しない手はないでしょう。

財産を分割する方法は、法定で分割する方法と「遺産分割協議」で分割する方法がありましたね。配偶者控除を利用するには、「遺産分割協議」により、相続割合を変えてしまえば良いことになります。

■民法(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条  共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

出典:

law.e-gov.go.jp
民法でも認められていますので、相続人同士で、話し合いにより自由に財産の相続割合を変更しても構わないのです。

今回の例では、課税遺産総額が4,500万円でした。この財産の相続割合を配偶者100%とし、子どもは0%とする旨の文書を作成してしまえば、4,500万円はすべて配偶者が相続することにより、配偶者控除額以内に収まりますので、相続税はかからないといえます。これにより、本来納める相続税237万5,000円を節税した、といえるでしょう。

なお、子どもの相続分については、贈与という形で、税金がかからない年間110万円x2人を毎年渡す(これを暦年課税という)とか、住宅取資金制度を利用すれば2,000万円までの贈与は非課税ですので、相続税の申告が終わったらゆっくり相談するのも良いと思います。

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



まとめ

いかがでしたでしょうか。相続において配偶者控除の果たす役割というのが、いかに大事なものかお分かりいただけたと思います。親の財産を、家族内で争っていると、相続税については、被相続人(亡くなった人)の配偶者良いですが、子どもたちは不利になってしまうといえます。被相続人(亡くなった人)を悲しませないためにも、常に仲の良い親子関係でいたいものですね。

※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。