<相続放棄>10分で分かる「相続放棄申述書」の書き方と手続き

相続放棄をする時に提出する「相続放棄申述書」は自分で書くことができます。内容も難しくありません。手続きと他の必要書類と合わせて気になるポイントを解説します。



借金相続の有効手段、相続放棄

父親が亡くなって遺産を相続することになったけれど、財産はほとんどなく借金ばかりだった。こんな時はどうすればいいでしょうか。今まで地道に働いて小額ながらお金を貯め、やっと自活も軌道に乗った。しかしそんな時に父親が亡くなり、1,000万円の借金を相続した。さあ、どうしよう?

唯一の遺産は実家だけれど、売却しても1,000万円には遥かに届かないだろうし、そもそも不便な土地だから売れるかすら分からない。さあ、どうしましょう?

そんな時こそ相続放棄

誰かが亡くなると相続が起きます。

相続というと高額な不動産や莫大な預金が転がり込むといった印象があることでしょう。しかし、世の中のほとんどの相続はドラマや小説で遺産をめぐって殺人や傷害が起こるような大金や不動産とは無縁です。相続税さえ発生しないケースがほとんどと言えます。

そのほとんどの中には、プラスの遺産に対しマイナスの遺産である借金が多いというパターンも少なくありません。自分の作った借金でないとしても、相続したからには債務者として返済しなければいけません。しかし、理不尽だとは思わないでしょうか。こんな借金いらないと考えないでしょうか。

また、遺産のことで兄弟姉妹が骨肉の争いを繰り広げているケースならばどうでしょう。1,000万円の遺産を巡って兄弟同士で争い、諍いは兄弟姉妹の家族にまで波及している。このままでは子々孫々まで禍根を残してしまう。こんな時はどうでしょう。

確かに1,000万円の遺産が転がり込んでくると考えれば、自分が自分がと欲に駆られてしまうかもしれません。しかし、物の価値、考え方は人それぞれです。お金よりも平穏が欲しい、トラブルには関わりたくないと考える兄弟がいないと言い切れるでしょうか?

会ったこともない遠縁の親族の相続人だったようでいきなりその親族が死の寸前まで住んでいた家が「相続財産です」と言われたけれど、会ったこともない人の財産を受け継ぐのは抵抗がある。こんなこともないとは言い切れません。特に核家族化が進んだ現在は親族同士で連絡を取っていないケースも決して少なくなく、叔父や甥といってもほとんど顔も見たことがないということも珍しいことではなくなりました。

さあ、こんな「遺産はいらない」「相続は困る」という時はどうすればいいのでしょう?こんな時こそ相続放棄の出番です。

裁判所|ご存知ですか,相続放棄!
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

相続放棄の特徴

相続放棄とは、文字通り、相続を放棄することです。裁判所で手続きをすることで可能です。

相続放棄をすると最初から相続人ではなかったことになりますので、相続財産のプラスもマイナスも一切相続することがなくなります。よく多額の借金を相続した場合は相続放棄が有効という話を聞きますが、多額の借金を相続したくない場合だけでなく、相続のトラブルに巻き込まれたくない場合やプラスの財産でも相続はしたくないという場合は、手続きをとることで相続人ではなかったことになりますので、受け継ぐことがなくなります。

「遺産は一切受け継ぎません」「プラスもマイナスもいりません」「相続人ではなかったことにしてください」これが相続放棄です。

裁判所|相続の放棄の申述
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

遺産放棄との違い

相続放棄は裁判所でしかできません。相続人同士で遺産の取り分を話し合う時に「遺産はいりませんと放棄しました」と主張した、だから相続放棄だと勘違いしてしまうことがあります。ですが、相続放棄は裁判所でしかできませんので、これは厳密には放棄であっても相続放棄ではありません。

相続放棄は相続権自体を放棄することにより相続人ではないことにする手続きです。対し相続人たちの話し合いの席で放棄をした場合は相続権は放棄していませんので相続人には変わりありません。相続人でありながら遺産の取り分は零というだけです。

借金を相続したくない場合は特にこの違いを押さえておくことは重要です。なぜなら、相続人同士の話し合いの席(遺産分割協議)で放棄をしても債権者に対し「放棄したから払わない」と強く出ることはできないからです。あくまで「私は遺産の取り分零の相続人だから他の人に返済を迫ってくれないかな?」とやんわり言えるくらいです。

裁判所で手続きをすることにより始めて「相続人ではないので借金を消す必要はありません!」と強く出ることができますので要注意です。

相続放棄をすると?

裁判所できちんと相続放棄の手続きをすることにより最初から相続人ではなかったことになります。ですから、遺産のプラス(預金や不動産、有価証券)とマイナス(借金や義務)を受け継ぐことがなくなります。最初から相続人でなかったのですから当然ですね。

相続放棄の効果は絶対的です(最高裁判所の判例より)。他の相続人に対しても、債権者に対しても、赤の他人に対しても「私は相続人ではありません」「放棄しました」「借金は払いません」とはっきりと言うことができます。手続きを終えると裁判所から手続き終了の証明書「相続放棄申述受理通知書」が届きますので、それをもって強く出ることができます。相続放棄が借金相続に有効と言われるゆえんですね。



相続放棄の手続きとは?

相続放棄をするには裁判所で手続きをする必要があります。手続きは、管轄の家庭裁判所に必要書類を提出するところから始まります。

■相続放棄申述書
■戸籍謄本
■被相続人の住民票の除票(戸籍附票)
■印紙(800円)
■切手(場所や状況により異なる)

以上の書類が必要提出書類になります。相続放棄申述書は裁判所のサイトからダウンロードできます。自分で相続放棄の手続きをする場合はまずは他の書類を用意してしまうのが良いと思います。他の必要書類は「戸籍謄本」「亡くなった人(被相続人)の除票」です。こちらは役場で取得できます。相続関係によって必要な戸籍謄本が変わりますので、裁判所の相続放棄の手続き項をよく確認してください。

戸籍謄本は相続関係により異なります。印紙は一人の手続きに800円分必要になります。相続放棄申述書に貼り付け欄がありますので、そちらに貼って提出します。

切手に関しては場所や状況により必要な切手が異なりますから、手続きの際に裁判所に問い合わせることをお勧めします。裁判所には相続放棄などの手続きの問い合わせ窓口を設けていますので、自分で相続放棄をしたい人は確認してみるのも良いでしょう。

裁判所|家庭裁判所で代表的な手続について,予納郵便切手の内訳等をご案内します。
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ) 自分で手続きをする場合は、必要書類は自分で集めなければいけませんし、相続放棄手続きの申込書のような「相続放棄申述書」も自分で記載する必要があります。

相続放棄申述書の記載自体は難しくありません。多くの人が一番手間取るのは、相続関係を証明するために提出する戸籍謄本のようです。もし取得し難い古い戸籍が含まれている場合や相続人自体が誰になるのかよく分からない場合は、確認の意味も含めて弁護士か司法書士に依頼するのが無難です。また、裁判所でも手続きに関しての相談窓口を設けています。

裁判所|家事手続案内
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

期間は?

相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」にする必要があります。「亡くなってから」ではなく「知ってから」である点に注意してください。期限が迫っている時は伸長する手続きもありますが、念のために専門家に相談することをお勧めします。

裁判所|相続の承認又は放棄の期間の伸長
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

提出先は?

相続放棄の手続きの管轄は家庭裁判所になります。相続人の家の近くにある家庭裁判所ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所での手続きになります。手続き内容や書類について質問する場合は最寄りの家庭裁判所でも教えてくれますよ。

各地の家庭裁判所は裁判所のリンクから検索できます。

裁判所|裁判所の管轄区域
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

相続放棄申述書の書き方

相続放棄申述書の雛型は裁判所のホームページからダウンロードできます。

相続放棄申述書は裁判所で記載例を用意しています。成人の場合は成人の記載例を、未成年の場合は未成年の記載例を確認してください。自分の名前と被相続人の名前を記載し、なぜ相続放棄を希望するのかなどにチェックを入れるだけです。自分の住所氏名はお分かりでしょうし、被相続人の氏名・住所欄には亡くなった方のことを記載すれば問題ありません。もし亡くなった方とほとんど縁がないという場合は、必要書類の一つである除票などで確認しながら記載することになります。

特に疑問を覚えると予想される部分だけ簡単に項目別に説明します。

相続放棄申述書(DL用pdf)
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

相続放棄申述書(記載例・成人)
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

相続放棄申述書(記載例・未成年)
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)



相続放棄申述書、記載の注意点

相続放棄申述書の書き方は簡単です。年齢で例が異なりますのでその点は注意してください。人によっては戸籍謄本を集めるほうが難しかったという方もいらっしゃるかもしれません。

年齢で用紙が異なる?

相続放棄申述書自体は年齢問わず同じものを使います。ただ、書式例では成人と未成年に分かれているだけです。未成年の場合は「法定代理人」の欄の記入を要しますが、成人していれば記載不要です。

印鑑は実印?

相続放棄申述書に使う印鑑は実印でなくてもOKです。もちろん、実印を使っても問題ありません。

一つだけ注意することは、実印以外を使った場合はどの印鑑を使ったかきちんと覚えておくということ。相続放棄申述書の提出後も手続きは続きますので、「あれ、どれだっけ?」とならないようにきちんと使った印鑑を覚えておきましょう。

財産記載はどこまで正確に?

相続放棄申述書を記載する上で一番迷う欄は「相続財産の概略」の部分ではないかと思います。財産を記載しろと言われてもどこまで細かく書けばいいのだろう?と。

嘘を書くのはいけませんし、故意に相続財産を隠してもいけません。その時に知っている負債やプラスの財産を分かる範囲で素直に書いてください。1円単位まで細かく書かなければいけないというわけではありませんのでご心配なく。

印紙は貼って提出?

印紙は相続放棄申述書に貼り付けて提出します。申述書の上の方に「ここに印紙を貼ってください」という欄がありますので、そこにぺたっと貼り付けします。切手は申述書に貼り付けるのではなく、手続きの際に裁判所と手紙をやり取りしますので、その際に使用します。ですから申述書には貼り付けないように注意してください。

相続放棄申述書の提出後

書類提出後に裁判所から「相続放棄の申述についての照会書」が届きますので、その書類の記載をして直接または郵送で提出し、無事に放棄が認められれば相続放棄終了となります。手続き終了の証明として「相続放棄申述受理通知書」が届きます、

手続き自体は法律の専門家にしてもらってくださいという決まりはないので個人でもできます。また、裁判所に最初に提出する「相続放棄申述書」も自分で書ける書類ですので、自分でやってみようと思う方は挑戦してみてください。

最後に

相続放棄は裁判所に必要な書類と切手と印紙を提出し、その後に照会が届き、記載して提出し、受理証明書を受け取れば無事に手続き終了です。相続放棄申述書の書き方について特にスペースを割いてご説明しましたが、実際は相続放棄申述書の記載はそれほど難しくないと感じる方が多いようです。疑問点が解消すれば5分くらいで書けてしまうかもしれません。

対し、本当に難しいのが書類集めです。特に戸籍謄本は相続関係を証明するためには裁判所に提出しなければならない書類ですが、相続放棄をする人と亡くなった人を結びつけ、他の相続人との関係も確認するため、家系図を作るつもりで集めなければならないようです。

父親が亡くなって相続人は自分一人という場合ならまだしも、相続権が兄弟姉妹の子供にまで飛んでいる場合はかなり大変なのではないでしょうか。最近はあまり見なくなりましたが、一昔前の世代は兄弟がかなり多い家庭もありましたから、戸籍謄本集めも一大事業とさえ言える大変さであったでしょう。書類集めに比べれば、相続放棄申述書の記載の方が負担は少ないはずです。

自分で記載してみたけれど心配だという場合は、事前に無料の法律相談や各市町村で設置している相続専用の相談窓口、裁判所の家事手続き案内で確認してもらえば安心かと思います。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。