泣き寝入りしないで!【遺留分の計算】と知って得する相続の権利

遺留分って?請求するためには?その計算方法とは?相続で泣き寝入りしないための遺留分減殺請求について、知っているといざという時に役に立つ基礎知識をお伝えします。



遺留分減殺請求とは

被相続人は遺言により、相続財産を自分の意志で相続分与を決めることができます。しかし、民法上では法定相続人には、一定割合の相続財産を受け継げるということが定められています。相続では基本的に、遺言が優先されるのですが、それが遺族にとって不都合な状況となる場合があります。

例えば、遺言で財産を全て1人に委ねてしまい、残された遺族には何も残らないなどの場合、心理的にも経済的にも不都合が生じることが多いのです。

そこで、民法では遺言によって侵しかねない相続財産のうち、最低限度の遺留分を請求できることを定めています。遺留分とは、この最低限度の相続人が相続できる割合のことを言います。

民法の相続制度の概要|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

遺留分の割合と計算

遺留分は相続財産のうち、法定相続人の最低限度の相続分となりますので、通常の法定相続分よりも少ない割合となります。その割合は
・直系尊属のみの法定相続人の場合は相続財産の1/3
・それ以外の場合は1/2
となります。

この1/3や1/2というのは、個々の相続人の相続分割合ではなく、例えば、子が2人いる場合は、1/2を2人で分けるため、1/4という割合になるということです。

わかりにくいですね。
つまり、全体の財産に対して、遺留分の割合で割ります。
■遺留分の法定相続分
・直系尊属のみの法定相続人の場合は相続財産の1/3
・それ以外の場合は1/2

この遺留分の法定相続分での割合に、さらに法定相続分をかけます。
■法定相続分
・配偶者と子=配偶者1/2:子1/2
・配偶者と親=配偶者2/3:親1/3
(兄弟姉妹は遺留分の相続人にはなりません)

例えば、法定相続人が配偶者と両親(父母)であった場合、
・配偶者:遺留分の法定相続分1/2×法定相続分2/3=1/3
・両親(父母):遺留分の法定相続分1/2×法定相続分1/3=1/6
このようになります。

もう一つ例をあげてみましょう。
法定相続人が、配偶者と子2人であった場合、
・配偶者:遺留分の法定相続分1/2×法定相続分1/2=1/4
・子2人:遺留分の法定相続分1/2×法定相続分1/2×子の人数1/2=1/8

どうでしょうか?理解できましたか?遺留分は、遺留分の法定相続分に、さらに通常の法定相続分をかけた割合を、請求する事ができるのです。

遺留分の減殺請求

このように、遺留分は最低限の相続分を請求できる権利のことをいいます。そして、遺言で相続分を減少させられてしまったとしても、この遺留分については、遺言で相続した人に対して請求ができるということなのです。

この、遺留分を遺言などで相続した人に対して請求することを「遺留分減殺請求」といいます。

例えば、被相続人に配偶者と長男と長女がいたとします。被相続人は、長男に経営上必要な財産を渡すことにしました。そうなると、配偶者と長女の相続分が減少することになります。この場合、配偶者と長女は、長男に対して「遺留分減殺請求」をすることができます。

・配偶者は、遺留分の法定相続分1/2×法定相続分1/2=1/4を請求できます。
・長女は、遺留分の法定相続分1/2×法定相続分1/2×1/2=1/8を請求できます。

民法の相続制度の概要|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



遺留分の権利者

遺留分を認められて遺留分減殺請求の権利のある人を「遺留分権利者」といい、遺留分を請求される人を「遺留分義務者」といいます。

この遺留分権利者となる人は、民法上で定められており、法定相続人(配偶者・子・直系尊属)となっていますが、兄弟姉妹には遺留分の請求権利はありません。また、法定相続人の代襲相続人と遺留分権利者からの承継人が遺留分権利者となります。

遺留分は、法定相続人に相続の最低限度を確保するための制度になりますので、この遺留分権利者は基本的に法定相続人となります。しかし、全ての法定相続人というわけではなく、兄弟姉妹を除く法定相続人のみになりますので注意してください。

遺留分の制度は、被相続人と生活をともにしてきた人の生活の保障や、相続財産の形成をするのに貢献していたということで、その相続財産に対しての受け取る権利があるということで、認められているのですね。

代襲相続人と権利者からの承継人

【代襲相続人】
代襲相続人とは、例えば、法定相続人である子が亡くなっていた場合に、その子の子供、つまり孫が子に変わって相続を受けることを言います。

代襲相続人の遺留分減殺請求権は、もともとの法定相続人である被代襲者の権利が、その被代襲者の子に渡るということになりますので、この遺留分に関しては、兄弟姉妹はもともと権利がないため、兄弟姉妹の代襲者も遺留分権利者にはなりません。

また、法定相続人が遺留分を放棄した場合、その代襲者であったとしても、遺留分減殺請求権はなくなります。

【遺留分の権利者からの承継人】
承継人とは、親や第三者から権利などを引き継ぐ人のことを言います。
遺留分の法定相続人やその代襲相続人から、遺留分の権利を継承された人も、遺留分権利者となることができます。

この継承人となる人は、遺留分の権利者の相続人などだけでなく、個別的にその権利を譲り受けた人も特定承継人となることができます。

民法の相続制度の概要|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

遺留分の計算方法

遺言によって相続を大きく侵された場合に、兄弟姉妹を除く法定相続人は最低限の相続財産を受け取るために、その相続を侵した人に対して遺留分の減殺請求をすることができます。この遺留分の計算には、どのような割合で認められるかをしっかり理解しておくことが大切です。

【総体的遺留分】
遺留分については、民法で割合が定められています。これを総体的遺留分といいます。総体的遺留分は以下の通りです。

・相続人が直系尊属のみの場合:基礎財産の1/3
・相続人が上記以外の場合:基礎財産の1/2 【個別的遺留分】
総体的遺留分だけではなく、これに本来の法定相続分の割合をかける必要があります。これが個別的遺留分となります。
<総体的遺留分×法定相続分の割合=個別的遺留分>

遺留分計算の基礎となる財産

遺留分を計算するには、その基礎となる財産がいくらなのか算出する必要がありますね。遺留分の基礎財産は以下のように計算します。

<被相続人の積極財産+贈与財産価額-被相続人の債務=遺留分の基礎財産>

積極財産とは、プラスの資産や財産のことになります。また、そこに贈与財産を足します。贈与財産とは、特別受益の生前贈与・相続開始前1年間の贈与などのことをいいます。

(イ) 特別受益とは

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与や遺贈を受けているときの利益をいいます。
相続人の具体的相続分を算定するには、相続が開始したときに存在する相続財産の価額にその相続人の相続分を乗ずればよいはずです。しかし、特定の相続人が、被相続人から利益を受けているときは、その利益分を遺産分割の際に計算に入れて修正を行うことが公平といえます。
特別受益が認められる場合には、その受益分を相続分算定にあたって考慮して計算することになりますが、この受益分の考慮を「特別受益の持戻し」といいます。

出典:

www.ac-souzoku.jp
また、贈与だけではなく、遺留分権利者にたいして損害を与えることを知っていた、特別受益にあたらない贈与も、基礎財産に加算をします。

そこから、マイナスの財産いわゆる債務などを差引いたものが、遺留分の基礎となる財産になります。

減殺請求できる額の計算

遺留分の基礎財産が算出されたら、それを元にして遺留分の金額を計算していきます。遺留分の金額は、基礎財産に個別的遺留分の割合をかけたもになります。

<遺留分の額=遺留分の基礎財産×個別的遺留分>

これが基本的な計算式となりますが、遺留分権利者が相続や特別受益・遺贈などを受けている場合は、それを差引いた金額となってきます。もし、この差引いた金額が遺留分の額よりも多かった場合は、遺留分の減殺請求はできないということになりますね。

民法の相続制度の概要|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



遺留分減殺の請求手続き

遺留分の減殺請求は、その遺留分を侵している相続人にたいして行うことになります。この手続きについては、遺産分割の場合などのように、特別な方法などは特に決められていません。

ですので、その遺留分を侵している相続人に直接の交渉や請求をしても良いですし、裁判所での訴訟を起こすのでも良いのです。その方法は自由でなのですね。

請求の方法

裁判所などを通さない場合は、遺留分を侵している相続人に対して、直接の交渉や請求となります。その方法というのは、その相手との話し合いがまず第一でしょう。それで成立すれば遺留分の請求はできますね。

この手順としては、その相手に遺留分の減殺請求書を送付すると良いでしょう。この場合、内容証明郵便で送付するのが一般的になります。もちろん、送付しないで話し合いで済むのであれば、それに越したことはありませんね。

話し合いがついたら、合意書は取り交わしておいた方がよいでしょう。こうして書面化しておくことで、もしその相手が遺産相続の分割協議などを行う場合に、必要になると思います。

また、書面化することで、言った言わないなどの争いは避けられることでしょう。

裁判手続きでの請求

直接の請求で上手くいかない場合などは、裁判所での審判が有効です。「遺留分減殺請求による物件返還調停」と、「訴訟」という方法があります。

まずは調停での話し合いを行い、それで話がつかなかった場合は、訴訟を起こしての審判となってきます。この場合、一般の民事訴訟となりますので、家庭裁判所へではなく地方裁判所への提起となるようです。

この訴訟を起こす前には、必ず調停を行ってからとなっています。ですので、まずは調停の申し立てを行います。

注意すべき点は、この遺留分の減殺請求の権利は1年間と短いことです。もし請求をする場合は、早い行動が必要となります。

裁判所|遺留分減殺による物件返還請求調停
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

遺留分減殺の請求権の期間

遺留分の減殺請求ができる期間は、いつまでも大丈夫というわけではありません。その期間は定められていて、以下のようになっています。
【1】遺留分権利者が、その相続の開始や減殺請求が、できることを知った日から1年間
【2】相続の開始から10年間

まず、【1】の減殺請求権については、その相続開始を知った日もしくは、減殺請求ができることを知った日から始まります。知らなければ、この1年のカウントダウンはされません。しかし、【2】の期限は相続の開始から10年となっていますので、たとえ知らなかったとしても、この期限は変わりません。

ただし、【1】の期間内に1度でも遺留分の減殺請求をすることで、それ以降はこの時効の期間はストップします。これは、【2】についても同じで、はじめの1年の間に行動を起こしていれば、【2】の期間もストップするということです。

しかし、そんなに長引くような争いはあまりしたくないものですね。

裁判所|遺留分減殺による物件返還請求調停
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

遺留分の放棄について

遺留分は、法定相続人に認められた最低限の相続分として保障されているものです。相続人の中でこの「遺留分を侵している人に対して、遺留分の減殺請求ができるわけですが、必ず請求しなければならないわけではありません。

当然、自らの意志によってその権利を「放棄」することもできます。ただし、この遺留分の放棄については、被相続人が生きている間での場合は、家庭裁判所での許可が必要となってきます。

これはどういうことなのでしょうか?

実は、被相続人が遺留分の権利者に対して、遺留分の放棄を要求しないために、生前の放棄についは許可が必要となっているのですね。そして相続開始前は自由にその遺留分の放棄をできないようになっているのです。

しかし、相続開始後の遺留分の放棄については、家庭裁判所での許可は不要となっています。請求の時効が1年ですので、時期が来れば消滅してしまいますね。

とはいえ、仮に遺留分を放棄したとしても、相続自体を放棄したわけではありませんので、法定相続人の立場が消えるわけではありません。

裁判所|遺留分放棄の許可
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

まとめ

遺留分は、法定相続人の最低限の相続財産を確保するためのものですね。いままで一緒に生活をしてきた、また生計を共にしてきながら、その財産の形成に貢献した人が法定相続人にあたるのですから、これは当然の権利といえます。

遺言というのは、相続の上で一番効力のあるものですが、それによって不当な相続が起こってしまうと、納得がいかないのも当然でしょう。そのために、遺留分の減殺請求ができるようになっているのですね。

その計算方法も、わかりづらいものの、それほど難解ではなかったかと思います。しかし、こういった請求をするときは、専門家に相談をするのが一番安心だと思います。

相続で泣き寝入りしないように、こうした知識は身につけておくと安心ですね。 本記事の情報は、一般的または筆者個人の調査によるものです。法令などの改正、前提事実や個人状況の違いや変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。 従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。