相続税申告書、どう作ればいい?あせてやりたい手続きも解説!

家族が亡くなったら、相続が発生します。そして、最終的には相続税を計算、申告、納付しなければいけません。つまり、相続のゴールは「相続税申告書を書いて、税金を納付すること」ともいえるでしょう。このゴールにたどり着くためにやるべきことと、その他に平行してやるべきことを徹底的にまとめました。これで相続は怖くない?



相続税に関する基本的な事項

申告書の書き方について学ぶ前に、相続が起こった場合、どんなスケジュールで物事が進むかについて、まずは確認しておきましょう。

大まかなスケジュールのまとめ

次のスケジュールで物事が進みます。尚、被相続人=亡くなった人、相続人=遺族、とお考え下さい。

1)死亡:死亡届を提出し、葬儀の手配をする。葬儀が終わったら、遺言書の有無、相続人を確認する。また、必要に応じて税理士などの専門家の手配も行う。

2)相続の仕方を決める:単純承認、限定承認、相続放棄のどれを選ぶか決める。場合によっては相続人同士の合議、家庭裁判所への手続きが必要なので注意。

3)相続人の青色申告の届出:被相続人が事業を営んでおり、相続人がそれを引き継ぐ場合、青色申告の届出をする。詳しいことは税務署に問い合わせるのがベター。

4)準確定申告:被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得の申告を行う。亡くなった日から4か月以内に行う。

5)相続税の申告・納付:被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に、申告書と納付書を提出し、実際に税金を納める。亡くなった日から10か月以内に行う。

6)税務調査:必ず行われるわけではないが、税務署による調査が入る場合もあるので、注意が必要。相続税の申告・納付が終わってから1年以内がほとんど。

7)各種名義変更:期限は特にないが、もれがないようにすることが必要。

大体、こんな感じです。特に高齢の家族がいる場合、(縁起悪くて恐縮ですが)立て続けに相続が……ということもあり得ます。できる借り、やれることは早めにやりましょう。

No.4202 相続税の申告のために必要な準備|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、筆者調べ)



相続税申告書を書いてみよう

結局、相続は何が一番ヤマかというと、申告書を出して、実際に税金を納付することかもしれません。ここまでたどり着ければ、とりあえずはゴールが見えてきた、と言っても過言ではないでしょう。そこで、申告書の書き方と実際の納付方法について、解説します。

次のステップを踏みます

相続税の申告書を書くには、次の9つの手続きを押さえましょう。

1)生命保険金、死亡退職金の金額を計算し、記載します(第9・10表)。

2)相続財産に関する記載を行います(第11表)。
具体的には、次の財産に関する情報を記載しましょう。
・土地
・家屋
・現預金
・有価証券
・その他財産

3)小規模宅地の特例を利用する場合、必要事項を記載します(第11・11の2表)。

4)債務、葬式費用に関する記載を行います(第13表)。
葬儀会社、寺院などからもらう領収書を参考にして書きましょう。

5)生前贈与、相続時精算課税制度の対象となった財産を記載します(第14表)。
もれがあると後々大変なので、しっかり情報を網羅しましょう。

6)課税財産をすべて記載したら、遺産分割協議書や遺言書に従って配分を計算し、各相続人が取得する財産、負担すべき債務を計算します。

7)相続人に配偶者がいる場合、配偶者控除を計算します(第5表)。

8)相続人ごとの金額を計算し、相続税を算出します(第1表)。

9)被相続人、相続人の住所、氏名、電話番号、職業、その他必要事項を記載します。その上で、印鑑証明登録書に登録されている実印を使い、印を押せば完成です(第1表)。

出来上がったら納付しよう

さて、申告書が出来上がったら、実際に相続税を納付しましょう。相続税の納付に必要な情報をまとめました。

・納税する場所:被相続人の住所地を管轄する税務署、または金融機関(銀行等)の窓口
・納付期限:相続の開始があったことを知った日=亡くなった日の翌日から10か月以内
・納税義務者:被相続人から、相続、遺贈、生前贈与(相続時精算課税制度を想定)で財産を受け取った人

これらの条件を踏まえ、相続税の「(納付書)領収済通知書」を書きます。税務署や金融機関の窓口に行けば出してくれますので、安心してください。

なお、相続税は現金で一括納付するのが基本です。期限に間に合わなかった場合、利息(=延滞税)が取られてしまうので、注意が必要です。それでも、現金で一括納付できない場合もあるでしょう。このような場合の救済措置として、延納と物納が認められています。それぞれについてみてみましょう。

<延納>
相続税を分割して払う方法。利用には次の条件が設けられている。また、利子税がかかる。
1)相続税が10万円を超えている。
2)金銭で納付するのが困難である理由があり、かつ、金額も納付が困難であると認められる範囲である。
3)担保の提供ができる(延滞税額が100万円以下で、延納機関が3年以下の場合、担保は必要ない)。

<物納>
延納も困難な場合、現物で納付する方法。物納に使える財産は次の3つ。
1)国債、地方債、不動産、船舶
2)社債、株式、証券投資信託、貸付信託
3)動産(不動産以外のすべての財産)

ただし、延納、物納をしたいと思っていても、認められるとは限りません。申請自体が却下されてしまえばおしまいです。そのため、相続が発生しそうになったら、それなりの納税資金を確保することをオススメします。

相続税申告書の書き方 | 相続税申告手続きガイド
参照元:税理士法人チェスター(2015年12月時点、著者調べ)

No.4211 相続税の延納|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月時点、著者調べ)

あせてやりたい手続き

相続税の申告と並行して、やっておきたい手続きもいくつかあります。ここでは、そういった手続きの種類と具体的な方法について、解説します。

預貯金の名義変更

被相続人が銀行などの金融機関に口座を持っていた場合、亡くなったことが金融機関に通知された時点で凍結されてしまいます。つまり、お金を引き出すことができなくなるのです。凍結を解除するためには、名義変更の手続きを踏むことが必要になります。

ゆうちょ銀行以外の金融機関では、次の流れでことが進む、と覚えておきましょう。
1)金融機関へ連絡:口座名義人が亡くなったことを伝え、口座の凍結を行います。現金を引き出す場合、先に引き出しておきましょう。
2)残高を把握する:亡くなる直前に葬儀費用として多額の現金を引き出した場合などは、残高証明を請求するのが確実です。請求するために知っておきたい事柄をまとめました。残高証明依頼書、戸籍謄本など相続関係が確認できる書類を金融機関に提出します。なお、所定の手数料がかかることにも注意してください。
3)所定の届出用紙を受け取る:これと並行して、口座を相続するために必要な届出用紙を請求しましょう。窓口に行って「相続をしたいので」と言えば、必要な書類を揃えてくれ、手続きも教えてくれるので便利です。
4)必要書類を集め、提出する:次の書類を集め、金融機関に提出します。遺言書の有無によって若干異なるので、注意しましょう。

<遺言書がない場合>
・相続届(銀行所定の用紙)
・被相続人の除籍謄本、戸籍謄本、又は全部事項証明書
・相続人全員の戸籍謄本、又は全部自公証明書
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書

<遺言書がある場合>
・相続届(銀行所定の用紙)
・遺言書
・検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
・被相続人の除籍謄本、戸籍謄本、又は全部事項証明書
・預金を相続する人の印鑑証明
・その他所定の書類

<共通>
・手続きを行う人の身分証明書
・通帳、証書
・キャッシュカード
・貸金庫の鍵

なお、ゆうちょ銀行の場合、手続きが少し異なります。以下の通りです。

1)相続確認表を提出する:最寄りのゆうちょ銀行、郵便局で相続確認表を入手しましょう。必要事項を記入したら、提出します。

2)「必要書類のご案内」の受取:相続確認票を提出して1~2週間程度で、代表相続人に「必要書類のご案内」が届きます。

3)必要書類の準備、手配:必要書類のご案内にそって書類を手配し、相続確認表を提出した窓口へ出向き、提出します。その後、払い戻しの場合は払戻証書が、名義書換の場合は新しい通帳が送られてきます。

相続・死亡による銀行預金口座(定期預金)の解約・名義変更
参照元:司法書士よしだ法務事務所(2015年12月時点、著者調べ)

不動産の登記

被相続人が不動産を所有している場合、相続の手続きをすることが大前提となります。後々、不動産を売ることが決まっている場合でも、被相続人の名義のままではできません。遺言書がある場合はそれに従いましょう。遺言がない場合、次の手順で手続きを行います。

1)相続方法を決める:不動産の名義を変更するには、相続人全員で話し合いをするのが大前提です。話し合いの上で、誰の名義にするかを決めます。これを踏まえ、遺産分割協議書を作成してください。

2)登記申請をする;不動産の名義変更の手続きに入っていきます。その不動産を管轄する法務局に登記申請書を提出しましょう。なお、申請する際に、次の書類が必要になるので、忘れずに用意するようにしてください。

・登記申請書
・亡くなった人の戸籍謄本等(出生時~死亡時まで、すべて用意)
・亡くなった人の除籍謄本等
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票の写し
・遺産分割協議書
・その他状況に応じた必要書類(窓口で聞きましょう)

なお、このときに登記申請費用として、固定資産評価額の0.4%を登録免許税として払うことも併せて押さえてください。

3)登記識別情報の発行:登記が完了すると、所有者となる相続人に対し、登記鑑別情報が発行されます。これが権利書と考えておいていいでしょう。

相続の登記 :よくわかる相続の基礎知識
参照元:すがぬま法務事務所(2015年12月時点、著者調べ)

保険金請求手続き

被相続人が生命保険に加入している場合、どう手続きを進めていけばいいのでしょうか。ルールとして覚えておいていただきたいのは、「受取人が指定されているかどうかで扱いが変わる」ということです。

つまり、受取人が1人指定されていたら、その人が手続きを進めていけばいいだけです。しかし、具体的に受取人が指定されていなかった場合、相続人全員で手続きを進めることになります。誰が受取人になっているか確認した上で、進めていきましょう。

具体的な手続きの流れについて、まとめてみました。

1)死亡
2)生命保険会社への連絡:保険契約者又は保険金受取人が行う。電話でOK。
3)生命保険会社から必要な書類と手続の案内が送られてくる:営業担当者が持参する場合もある。
4)請求手続き:保険証券に記載されている保険金受取人が手続きを行う。一般的に請求に必要とされている書類は次の通り。
・死亡保険請求書
・被保険者の住民票
・受取人の戸籍抄本
・受取人の印鑑証明
・医師の死亡診断書、死体検案書
・保険証券
・その他所定の必要書類
5)生命保険会社による書類受付、支払可否の判断:一定の期間がかかる。詳しくは各保険会社に確認のこと。
6)保険金の受け取り

また、保険金の受け取りについて、次のトピックも併せて押さえておきましょう。

<受取人が死亡していたケース>
生命保険の死亡保険金の受取人は、契約時に指定するのが普通です。そのため、受取人に指定されている人が先に亡くなり、契約者が新しい受取人を指定しないまま亡くなってしまった場合はどうすればいいのでしょうか?

これに関しては、保険の約款、遺言の記載を見て、最終的な判断をするしかないですが、一般的には死亡した受取人の相続人が引き継ぐものとされています。

例えば、契約者(被保険者)が父親、受取人を長男としていた契約があるとしましょう。長男が先に亡くなり、名義変更の手続きもせずに父親が続いて亡くなった場合、長男の相続人である長男の妻、子どもが受け取ることになるのです。

<被相続人が保険に加入していることを知らなかったケース>
離れて住んでいる家族の場合、知らないうちに生命保険に入っていた、というのもあり得ない話ではありません。そのため、亡くなってすぐは生命保険の存在を知らず、落ち着いたころにのんびりと遺品整理をしていたら、見たことがない保険証券が……というケースもあるのです。こういう場合、どうすればいいのでしょうか?

まず注意してほしいことがあります。生命保険の保険金等を請求できる権利には、一定の期限があります。目安は3年です。それを過ぎると時効によって消滅してしまいます(保険法第95条)。

もし、「亡くなった父の名義の生命保険で、実は死亡保険金の請求していなかった」などという場合、まずは年数を計算しましょう。3年過ぎていなかったら、すぐに手続きを進めてください。もし3年たっていても、あきらめずに、保険会社のサポートセンターに連絡してみましょう。場合によっては、対応してくれることもあります。不謹慎な言い方かもしれませんが、お金はあって困るものではありません。しっかり請求しましょう。

生命保険の受取手続き|遺産相続の全てがわかる|司法書士法人花沢事務所
参照元:司法書士法人花沢事務所(2015年12月時点、著者調べ) 「本記事の情報は、一般的または筆者個人の調査によるものです。法令などの改正、前提事実や個人状況の違いや変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。 従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。」