相続人って誰がなるの?ドロドロした相続争いを避けるには?

相続人が誰なのかと考える前に、家族や親族は通夜の準備や火葬の手配、告別式、納骨と忙しい日々が続きます。初七日や四十九日が終わったころ「そろそろ相続しなきゃいけないね」と動くころでしょうか。しかし相続についての手続きの期限は亡くなった日の翌日から3カ月です。期限が迫ってから慌てないように、しっかりとした準備が必要ですね。



相続の基本

相続の基本

亡くなった人の財産や、財産の一切の権利や義務を受け継がなければならない人のことを「相続人」といい。その範囲については民法第886条から第890条に規定されていますが、これに規定されている人は必ず「相続人」とならなければならない、というわけでもありません。あくまでも「相続する権利」を持っている人、というだけのことです。

相続する権利を持っていても、相続するかしないかは本人の意思で決めることができ、所定の手続きをすれば相続人にならなこと選択するのは間違った考えではありません。他にも、本人の意思以外でも、相続人になれない場合や、相続する権利自体を奪われてしまうこともあります。

一般的には、亡くなった人の家族や近しい親族族が相続する権利を持ち、相続人となる場合が多いようですが、亡くなった人が遺した遺言書に、相続人とする旨の人の名前が書いてあった場合は、遠い親族でも相続人となることもあります。または、全くの他人が相続人となることもあり得ますので、一概に誰が相続人になるのか、ということは簡単に論ずることが難しいといえます。

民法
参照元:法務省(2015年12月、著者調べ)

相続財産の範囲

相続する権利を持っていながら、相続人にならなければ、誰か他の人が相続することになります。

相続人にならない人の1つの理由として考えられるのが、被相続人(亡くなった人)の遺した財産や、それに関する一切の権利や義務をまるごと受け継がなければならないことにあります。民法第996条の条文は簡潔に書かれているため、「財産」について分かりにくいところがありますので、何を相続しなければならないのかをまとめてみましょう。

受け継がなければならない財産には、歓迎される財産と歓迎されない財産の2つがあります。前者の財産のことを「プラスの財産」といい、後者の財産のことを「マイナスの財産」といいます。

■プラスの財産とは
・家や土地、田畑や山林などの不動産
・現金や預貯金、株券や国債などの債権
・貴金属や宝石類
・高価な絵画や美術品、骨董品

以上の財産は、誰が見ても価値があり、相続財産として歓迎したくなるようなものといえます。一方、マイナスの財産には以下のものがあります。

■マイナスの財産とは
・住宅ローンや車のローンなどの残金
・クレジットカードの利用残金
・キャッシングなどの残金
・個人や消費者金融からなどの借入金
・税金の未払い分や滞納分
・他人の借金の連帯保証人

これらマイナスの財産は、相続しなくないと思ってしまうものばかりです。しかし、相続人となる人は以上の財産を全部相続しなければなりません。プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多ければ、相続しようとは考えず、いっそのこと相続を放棄してしまうことも視野に入ってしまうでしょう。

民法第939条に規定されているように、相続を放棄した人は相続人ではありませんので、相続人が代わってしまう理由の1つになります。

相続財産(遺産)とは? | 遺産相続・遺言作成ネット相談室
参照元:遺産相続・遺言作成ネット相談室(2015年12月時点、著者調べ)



相続人は誰になるのか

基本的な相続人

相続人の規定は民法第886条から第890条に規定されており、被相続人(亡くなった人)の家族やごく近しい親族となっています。以下に例をご紹介します。

・被相続人(亡くなった人)の配偶者
・その配偶者が妊娠している場合は、胎児
ただし、胎児が相続人になるには、死産ではなく生きてうまれてくることが条件です。

・被相続人(亡くなった人)の子
・被相続人(亡くなった人)の親
・被相続人(亡くなった人)の兄弟

以上が、基本的に相続人となることができる人です。

遺言書による相続人

相続人となれる人には、被相続人(亡くなった人)の家族や近しい親戚だけではありません。突然名も知らない人が相続人になる場合もあります。それは、遺言書です。被相続人は、自分の財産を誰がどのように分けるかを指定することができます。

遺言書の効力は民法第985条によって守られており、前述した、被相続人(亡くなった人)の家族や近しい親族を飛び越え、遺言書に書き記してある人に相続する権利を与えることができるようになっています。例えば、遠い親戚や愛人、またはその子、何かとお世話になった人など、血縁があろうとなかろうと一切関係ありません。あくまでも、被相続人が財産を相続させたい、と考えた人を自分の意思で決めることができるのです。

相続する順位

相続する権利のある人については、前述の通りとなりますが、相続人となるのには順位というものがあります。被相続人(亡くなった人)の財産を、家族や、近しい親族のみんなで分ける、ということはありません。相続には常に順位によって、誰が相続人になるのかが、民法第887条から第890条に規定されています。

■相続順位
・第1位:被相続人(亡くなった人)の子
・第2位:被相続人(亡くなった人)の親
・第3位:被相続人(亡くなった人)の兄弟姉妹

■同順位に入る人
・第1位:孫、ひ孫などの直系の子孫
・第2位:祖父母や曾祖父母などの先祖
・第3位:甥や姪

■順位に関係ない相続人
・被相続人(亡くなった人)の配偶者
・遺言書に記名されている人

配偶者は単独で相続人となることができません。第1位から第3位の人たちと共同で相続人となることができます。ただし、他に相続人がいない場合は、配偶者が単独で相続することができます。

例えば、第2位の人が相続するような場合は、第1位の人が、相続開始の前に既に亡くなっている場合で、第3位に人が相続するようになるには、第2位の人が、相続開始前に既に亡くなっている場合になります。ただし、相続放棄や相続人の欠格、または相続人の廃除が合った場合は、順次相続人が代わることもあります。

代襲相続

相続する際に、仮に、相続順位の第1位である、子が既に亡くなっている場合や相続する権利を失っている場合は、同じ順位である孫が相続することになります。このように、その人に代わって相続することを「代襲相続」といいます。ちなみに、代襲相続人であった孫も既になくなっている場合は、ひ孫が代わりに相続人となりますが、この相続のことを「再代襲相続」いいます。

相続開始の時点で、生きている限り、直系の子孫はどこまでも再代襲することができます。このことは民法第887条に規定されております。また、兄弟姉妹にも代襲相続が認められています。相続人となった兄弟姉妹の中に、既になくなっている人がいる場合は、その子(甥や姪)が代わりに相続することができますが、その甥や姪が既に亡くなっている場合は、再代襲は認められれいません。兄弟姉妹の場合は、甥や姪までが相続人となることができます。

相続順位第2位の親の場合は、代襲相続はありませんが、親が既に亡くなっている場合、存命なら祖父母が相続人になることができます。また、祖父母も既に亡くなっている場合は、存命なら曾祖父母が相続人になることはできます。

また、被相続人(亡くなった人)の配偶者にも代襲相続する権利はありません。相続できるのは配偶者までで、義理の親や兄弟は財産を相続することはできません。

No.4132 相続人の範囲と法定相続分|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月時点、著者調べ)

相続の権利のない人

相続の欠格者

相続する権利を持ちながら、相続人になれない人がいます。その人のことを「相続人の欠格」といいます。どのような理由で相続できなくなるかを簡単にいえば「犯罪絡み」に関係した人になります。民法第891条に規定があります。

・自分が早く相続人になりたくて、存命中の被相続人を殺害したり、毒を飲ませるなどして殺害しようとし、逮捕され刑を処せられた場合
・自分の相続順位を上げる目的で、他の相続人をを殺害したり、毒を飲ませるなどして殺害しようとし、逮捕され刑を処せられた場合
・存命中だった被相続人が殺害されたことを知っていながら、警察などに告訴しなたっか場合
・存命中の被相続人を脅迫したり、騙すなどして遺言書を書かせたり、取りやめさせたり、または、遺言書を書き換えることを妨害した場合
・存命中の被相続人を脅迫したり騙すなどして、遺言書を変更させたりした場合
・遺言書を偽造したり、書き換えたり、破ったり、隠したりした場合

以上のことを行った人は、相続する権利を失い、自分の相続する権利は他の人へ移ることになります。

相続人の廃除

自分が相続人だと強気になっていると、とんだしっぺ返しを受ける場合があります。存命中の被相続人の意思で、相続人から外してしまうことができるのです。これを「相続人の廃除」といいます。

廃除される側にそれなりの理由は必要ですが、例えば、存命中の被相続人に常日頃から虐待を繰り返したり、重大な侮辱をするなどの非行を働いてしまいますと、家庭裁判所に相続人の廃除申請が出され、それが認められると、相続する権利を失ってしまうことになります。

また、被相続人が亡くなった後でも、遺言書にその旨が書いてあった場合は、相続人の代表や代理人が、その遺言書を証拠として、家庭裁判所に相続人の廃除申請が出され、それが認められると、相続する権利を失ってしまうことになります。

これにより、相続する権利を失った人の代わりに、他の人が相続することになります。このことは民法第891条から893条に規定されています。

相続欠格、推定相続人の廃除 :よくわかる相続の基礎知識
参照元:すがぬま法務事務所 (2015年12月時点、著者調べ)



非嫡出子の相続する権利

非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とう言葉をご存知でしょうか。戸籍上婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことです。もっと簡単にいえば、内縁関係(愛人など)にあったときに生まれた子になります。この非嫡出子には相続する権利があるのでしょうか。

もちろん、その子の母親が亡くなった場合は、母親の財産を相続する権利はありますが、問題になるのは、その子の父親が亡くなった場合に、相続人となれるのかどうかですね。民法の第772条にある、いわゆる「300日規定」と関係があります。離婚後、300日以内に生まれた子は前の夫の子となる、というものです。

子どもが生まれた場合は、普通は市町村役場に「出生届」という書類を提出し、この子を自分の子として戸籍にいれますが、離婚した場合、300日以内に生まれた子は前の夫の子とすることになりますが、民法第774条に規定により、前の夫はその子を自分の子ではないと否認することができるのです。

否認された子は「推定されない嫡出子」という父親が誰か分からない子として、母親の戸籍に入るしかありません。その「推定されない嫡出子」の父親が誰なのかを証明するには、母親が裁判を起こすなどの行動をしないと、その子には相続する権利は与えられないことになります。

また、未婚で生まれ、出生届けを200日以内に出さないと、その子は「非嫡出子」として母親の戸籍に入ることになり、この場合も、父親がはっきりしていないため、父親と思われる人が亡くなっても、当然相続する権利はありません。

このどちらの場合でも、父親の「認知」があれば、相続する権利が与えられ、相続人となることができるようになります。認知されれば、実の子と同等の扱いを受けることもできるのです。

非嫡出子(婚外子)の相続とはどのようなものか | 誰でもわかる相続ガイド
参照元:誰でもわかる相続ガイド(2015年12月時点、著者調べ)

相続人を確定しよう

どうすれば相続人を確定できるのか

誰が相続人であるのか、を確定されるためには、被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本が必要になります。何も問題なく、相続の手続きを終えることができそうであれば、戸籍謄本があれば十分といえます。しかし、被相続人に過去において離婚歴があった場合、それも数回あったなら、戸籍謄本だけでな不十分といえますし、隠し子がいることが疑わしいなども場合も考え、除籍謄本も取っておいた方が安心でしょう。

改製原戸籍も必要

現在、市町村で戸籍謄本、住民票を申請しますと、それらの書類は、電算化された書類になっており、新戸籍謄本などといわれています。しかし新戸籍謄本には記載されない、各個人の除籍になっている人の情報については登録されていない、という欠点があります。本籍が何度も変更されている場合は、現在の書類では詳しいことがわからず、手書きたっだころの戸籍謄本もあるとより確かな相続人を探すことができそうです。その手書きのころの戸籍を「改製原戸籍」といいます。

改製原戸籍でも、本籍の場所が変更になっている場合は、以前の市町村役場から、また、改製原戸籍を取り寄せる必要がありますので、本格的に調べるにはそれなりの苦労も考えておきましょう。

改製原戸籍、除籍謄本とは? – 相続戸籍相談センター
参照元:相続戸籍相談センター(2015年12月時点、著者調べ)

まとめ

いかがでしたでしょうか。相続する際に、誰が相続人となるのかをきちんと調べておかないと、全然知らなかった人が現れる可能性も否定はできないでしょう。しかし、相続人を決めないことには、手続き上3カ月という期限がありますので、前もって調査するなどの行動も必要かも知れません。

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