あの1/2って何だっけ?それは法定相続分!計算の方法教えます

相続、遺産と聞けば何となく頭に浮かぶ分数。1/2、1/3、1/4……で、この数字って具体的に何だっけ?相続の基礎である法定相続分について覚えやすく解説します。



法定相続分は相続のポイント

法定相続分とは、法律で定められたそれぞれの相続人の遺産の取り分のことです。よく「配偶者は1/2」なんていう言葉を聞くと思います。あの分数で定められている取り分こそが法定相続分です。

法定相続分はそれぞれの相続人がまったく別の数字で定められており、その数字(取り分)というのは整数ではなく分数です。なかなか覚え難いところもあるのではないでしょうか。しかし、簡単な計算をしてみれば相続の基礎も合わせて簡単に覚えることができてしまいます。今回は法定相続分にスポットをあてて、相続の基礎と計算方法をご紹介します。

No.4132 相続人の範囲と法定相続分|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



相続にはきちんと役目がある

人が亡くなると相続がおきますが、そもそもなぜ相続が起きるように定められているのでしょう。財産はそのままではいけないのでしょうか?法定相続分を覚える上で必要な相続の役目を簡単におさらいします。

相続の役目1

亡くなった方はいくらお金を持っていてももう自分では使うことができませんし、大きなお屋敷を所持していても自分で住むこともできません。持ち主が亡くなれば財産は使う人もなく管理する人もなく宙ぶらりんの状態になってしまいます。宙ぶらりんの状態だと、誰かがその大きなお屋敷を購入したいと思っても売買の申し入れもできません。また、銀行側は預かっているお金の手続きや連絡を誰にお願いすればいいのでしょう?

この財産を宙ぶらりんの状態から脱却せしめるのが相続の役割の一つです。

相続人がきちんと手続きし新たな持ち主になってくれれば、屋敷の購入をしたければ新しい不動産の持ち主になった相続者に申し入れをすればいいですし、銀行側も新たな財産の管理者である相続者に連絡すれば良いですね。相続の役目の一つが宙ぶらりんの状態の財産を新しい持ち主のもとで管理させ、安定させることです。誰が持ち主か分からない状態だと契約も何もできないわけですから、日本経済を考える上でも不利益であると言えます。

法定相続分の分数を覚える上では「誰が管理したらやりやすいか」「やっぱり身近な人ほど管理しやすいものではないか」「事情を分かっている人ほど管理しやすいだろう」という部分に着目すると、分数という無味乾燥な存在に意味が生まれて覚えやすくなると思います。

相続の役目2

相続の役目の二つ目が、遺族への生活保障です。不動産が父親名義になっていて、預金も全て父親名義。そして父親が仕事をしてお給料を家に入れていたけど、突然の事故で亡くなってしまった。こんな時、遺族は今後の生活をどうしたら良いでしょう。生活を支えていた父親は亡くなり、財産は父親名義ですから勝手に使うこともできません。そんな時は正しく相続を行うことで遺産を遺族の生活費にすることができます。

法定相続分を見ても、配偶者や子供といった亡くなった人と同居し生計を同じくしている可能性の高い人ほど取り分が多く設定されていることが分かります。なぜそうかというと、遺産には遺族の今後の生活がかかっている、生活費としての性質も帯びているからだと言われています。

これから法定相続分を細かくご紹介しますが、「同居している可能性が高いから」「生計が一緒の可能性が高いから」という二点に着目すれば、覚え難い分数も納得して覚えることができるのではないかと思います。

役目を踏まえた上でいくら必要?

上記のような相続の役目を踏まえた上でどのくらいの遺産が必要だろう?と法律は考え、法定相続分というものを定めています。子供だけに相続させると配偶者の生活が危うい。けれど、配偶者と子供だけに相続させると今度は同居している寝たきりの両親はどうなるの?生活は?となるわけです。

もちろん100万円の遺産と1000万円の遺産では生活費としての意味や価値が異なりますが、法律は個々の家の事情まで詳細に把握しているわけではありません。ですからざっくりと分数で取り分を定めることにしました。ただし、この法定相続分には例外があります。場合によっては法定相続分に優先するものがあるのです。

法定相続分に優先するもの

「遺言」と「遺産分割協議」は法定相続分に優先します。

遺言

遺言とは、亡くなった人の意思です。もともと財産は亡くなった人のものだったわけですから、亡くなった人が分割方法や割り合い、贈与や使い道の指定をするならそちらを法律に優先させようというわけです。

遺言があった場合は相続においては基本的に遺言が最優先となります。もちろん、遺言の内容が「借金だけ長男に相続させる!」といった不平等な内容の場合は最優先といっても回避する術はきちんと用意されているのでご安心ください。詳しい回避方法に関しては今回は触れませんが、遺言が基本的に最優先ということは頭に入れておいてください。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人たちが全員で話し合って遺産分割を決める方法です。物々しい名前がついていますが難しい手続きをするわけではなく、ただ単に相続人が「遺産どうする?」「実家はお兄ちゃんでいいよね?」「うん、じゃあ俺が実家をもらうよ」「皆、それでいい?」「賛成」「いいよ」という感じで話し合うだけです。背広を着て裁判所で難しい顔をしてする必要はなく、こたつに入って蜜柑を食べながらでもできることです。もちろん、相続人同士の仲が良い場合という断り書きはつくでしょうが。

基本的に最優先は遺言です。遺言がなかった場合にこの遺産分割協議を行えば法定分割に優先することになります。亡くなった人が特に意思表示をしなかった、けれど亡くなった人に近しいかつ事情を知っていそうな相続人たちが決めるならそちらの方が良いと法律は考え、法律で定められた法定分割分に遺産分割協議で定めた分割が優先します。

以上を踏まえての法定相続分

基本的な相続における優先や相続の意味を頭の片隅に置いていただいた上での法定相続分です。

法定相続分とは、世間一般で相続や遺産という言葉から「あれ、1/2だっけ?」と連想するあの分数に他なりません。分数を覚えておけば計算はできますが、分数だけ覚えても無味乾燥というものです。だからこその「残されたものの生計」や「遺産管理は誰がしたら良いか」という相続の意味を合わせることにより単なる分数だったものが途端に生活感にあふれるわけです。

(2) 法定相続分

イ 配偶者と子供が相続人である場合
 配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2
ロ 配偶者と直系尊属が相続人である場合
 配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
ハ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
 配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

 なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
 また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

出典:

www.nta.go.jp
国税庁より引用しました。以上が法定相続分です。

法定相続分の多い少ないの意味

配偶者や子供の取り分が多いのは、亡くなった人と同居して生計を同じにしていた可能性が高いからです。今後の生活費や財産管理のしやすさを考えて多く設定されています。

次に、配偶者がいて子供がいないまたは手続きにより相続人にならない場合に相続人になる亡くなった人の両親も、兄弟姉妹より多く取り分が設定されています。これは、両親も病気などにより亡くなった人と同居している可能性がある他、援助を受けて生活していた可能性があるからです。

その点、兄弟姉妹の相続分が少なくなっているのは、ある程度の年齢になると兄弟姉妹は別々の家族を持って別に生計を維持している可能性が高いからです。遺産は、生計という面でも生活という面でも亡くなった人と近ければ近いほど取り分が多く設定されていると解釈されています。

法定相続分はこの1/2や1/3といった分数ではあるのですが、より掴みやすくするために幾つか簡単な計算をしてみましょう。その方が自然と身につくのではないかと思います。



法定相続分の計算練習

法定相続分の問い1

お父さんが亡くなり、お父さん名義の預金が1000万円遺されました。相続人は奥さんと子供です。法定相続分はそれぞれいくらになりますか?

答えは500万円ずつです。配偶者と子供が相続人になる場合は遺産の法定相続分はそれぞれ1/2になります。1000万円を半分こして500万円ずつが相続分になります。

では、預金が1000万円遺されて、他にお父さん名義の家と土地が残された場合はどうでしょうかちょっとした応用問題です。

この場合も預金は500万円ずつでいいのですが、問題は土地と家ですよね。土地が1000万円で家が500万円と価値が分かっている場合は単純に計算すればいいのですぐに出るのですが、金額が出ない場合はどうすればいいのでしょう。

答は、奥さんと子供それぞれ、家1/2、土地1/2、預金500万円ずつになります。不動産の場合は登記の際に持分を設定できます。一つの家を二人の人間が1/2ずつ所有することができるんです。不動産の相続登記では持分を設定しての登記がけっこうな頻度で行われています。不動産の場合は金額換算して計算しなくても分数で持分が設定できることを覚えておきましょう。

法定相続分の問い2

Aさんが亡くなり、900万円の預金を遺しました。相続人はAさんの奥さんとAさんの両親です。900万円を法律通り分けた場合の金額はそれぞれいくらでしょうか?

この場合は奥さんが2/3ですから600万円です。両親が存命の場合は合わせて300万円ですから、Aさんのお父さんとお母さんそれぞれは150万円となります。不動産の場合も問い1と同じように分数で持分を設定できます。

法定相続分の問い3

Aさんが亡くなり、1000万円の預金を遺しました。相続人はAさんの奥さんとAさんの兄と姉です。遺産を法律通り分割した場合のそれぞれの金額はいくらになるでしょう?

この場合は奥さんが3/4ですから750万円。兄と姉は合わせて1/4ですから250万円。250万円を二人で分けて125万円ずつになります。不動産の場合は問い1、2と同じように分数で持分を設定することができます。

相続人が変化することがある

遺言が相続の最優先で、その次は遺産分割協議が法定相続分に基本的に優先するということは最初の方でお話しました。遺言で指定すれば子供が二人いるのにそのうちの一人にだけ相続させることもできます。法定相続分でいけば1/2ずつですが、遺言によって変化させることができるわけですね。遺産分割協議をした場合にも、「実家はお兄ちゃんが相続していいよ」「分かった、じゃあそうする」と相続人同士で決めることができますので法定相続分に左右されません。本来であればこの兄妹も実家を1/2ずつ分割するはずでした。

遺言や遺産分割協議で法定相続分と異なる形で相続が行われることがある他、相続人が入れ替わってしまうことも有り得ます。子供二人が相続人だったのにそのうちの一人が相続放棄をした場合は、相続放棄をした子供は初めから相続人ではなかったことになりますので遺産は子供一人の総取りです。1/2だったものが相続放棄の手続きを完了することにより1/1になってしまうわけですね。

また、相続人がお母さんと子供の二人だった場合に子供が相続放棄をすることにより初めから相続人ではなかったことになり、配偶者と兄弟姉妹が相続人になるパターンに変化することもあります。子供と奥さんが相続人だった場合は1/2ずつでしたが、一つの手続きによりがらりと相続人関係自体が変わって、結果、法定相続分も変化せざるを得なかったケースです。

手続きにより法定相続分が変化する場合もありますし、手続きによって相続人自体が変わってしまうことによって相続人関係が変わってしまって計算が変わる場合もあります。相続関係は複雑です。計算に応用を求めれば、真実は小説より奇妙なものと言いますから、きりがないということになります。

基礎的な法定相続分を覚える段階では、手続きのせいで相続分が変わることがある、相続人関係が変わることがあると覚えておきましょう。

No.4132 相続人の範囲と法定相続分|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

裁判所|相続の放棄の申述
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

最後に

分数自体を暗記するにしても、法定相続分は暗記量も少ないのでさほど苦労はしないかもしれません。しかし、試験を受験する際や、ドラマを見ていてふと相続の話が出た時は「配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は……どっちが3/4で、どっちが1/4だっけ?」と記憶が混ざってしまうこともあると思います。そんな時は、「なぜその数字なのか」を考えるとすんなり答えが導き出せる場合があります。

配偶者は亡くなった人と同居して生計を同じくしていた可能性が高い、今後の生活のこともあるから取り分は多く設定されている。だから3/4。兄弟姉妹の場合はある程度の年齢になると別に家庭を築いていることが多いだろうから、取り分が少なくても生活していける、だから1/4。こんな感じです。

法律の中には法定相続分の他にも色々な数字が出てきます。なぜその数字?誰に配慮しているの?このような数字の背景を知り簡単な計算を何度か繰り返せば、自然と記憶に繋げることができるようになると思います。

法定相続分についてご説明しましたが、法定相続分だけでなく、相続に関係のある他の数字に関しても「なぜ?」と考えてみてくださいね。きっと単なる数字だったものがとても記憶しやすい実生活に即したものに変化すると思います。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。