労災保険とは?通勤中のケガでも貰えるその補償について

労災保険とは、「労働保険」の1つであります。勤務中に、その業務が原因で病気になったり、ケガをした場合に下りる補償です。もし、通勤途中に駅の階段から転げ落ちても、大丈夫。それは、補償の対象になるでしょう!みなさんの身近に起こるかもしれない「労働災害」。それに備える「労災保険」について、その補償内容を調べてみました。



労働保険とは?

労働保険とは、「労働者災害補償保険(労災保険)」 と「雇用保険」を「総称」したものです。人を雇って事業をする場合においては、一部の例外を除き、必ず加入が義務付けられています。しかし、労働者を1人でも雇用する事業でも、

(例外)
・個人経営の農業
・水産業で労働者数5人未満
・個人経営の林業で労働者を常時雇用しない

この場合は、労働保険加入の対象から外れますので、注意が必要です。

雇用保険は、みなさんもご存知の「失業保険」がその代表たるものです。そして、「労災保険」は、労働者が勤務中にケガを負った、または、病気を発症した場合に補償される保険制度になっているのです。

ですが、公務員の場合だと、

・国家公務員災害補償法
・地方公務員災害補償法

この2つの法律に基づき、公務中(仕事中)の災害や、通勤途上の災害(公務災害)が補償されています。国家公務員退職手当法と、地方公共団体の条例により、退職手当が支給される制度となっていることから、労働保険については、適用外になっていると言えるでしょう。

労災保険・雇用保険の特徴:厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年11月時点、著者調べ)



労災保険について

みなさん、「労災」という言葉は、よく耳にする言葉では無いでしょうか?例えば、仕事中に激務で倒れてしまったり、落ちてきたものに当たったりなど、勤務中に起きた災害を補償するのが、「労災保険」です。

実は、私も会社勤めをしていた頃、何度か労災の補償を受けました。
その①通勤途中に、雪道で滑って転びまして。
その②仕事中に会社の階段から落ちまして…。

その節は、大変お世話になりました。このような場合において、医療費を「労災保険」が負担してくれる保険と言った方が一番解かりやすいかもしれませんね。

具体的に「労災保険」について、みていきましょう!

どんな場合が「労災」なの?

労災保険とは、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく制度となります。仕事中に起こった「業務上の災害」又は、通勤途中に発生した事故などにより、労働者が、

・ケガした場合
・病気にかかった場合
・障害が残った場合
・死亡した場合

被災した労働者、又は、その遺族へ保険の給付を行う制度となります。

業務上の災害とは、労働者が就業中にその「仕事が原因」となって発生した「災害事故」を指しています。業務災害には、労働基準法により、雇用者がその労働者へ「補償」をしなければならないことになっているためです。下記の点に重きを置いており、労災保険制度が設けられていると言って良いでしょう。

■労働者が「確実に」補償を受けられるようにすること
■事業主の「補償負担の軽減」すること

もし、被災労働者が労災保険による「補償給付」を受けた場合は、「雇用者」は、労働基準法の補償義務を「免除」されることになる仕組みとなっているのです。これは、雇用する側にとってもメリットがある制度であることが解かりますね。

制度の加入について

労働者を1人でも雇用すれば、強制的に適用事業としていますが、制度への加入手続を行わない「未手続事業」の数は、全国でも「約54万件」に上ると言われています。

このため、もし仕事中にケガをした場合でも、労働保険に「未加入」の会社であれば、労災は「下りない」ことが考えられますので、確認する必要があるでしょう。また、仕事中に負ったケガについては、健康保険も適用外(治療が出来ません)となりますので、注意です!(その点については、別途説明します)

労働保険の保険料については、全額「事業主負担」となっており、労働者は負担がありません。その加入についても、法律上、各企業ごとに行うことになっており、そこで働く労働者であれば、仕事中に起きた災害や、通勤中の災害でのケガは、労災保険の受給ができるようになっているのです。

ここで言う「労働者」とは、正社員だけでなく、パート、アルバイトも含めた「すべての従業員」を指しています。ですので、「私は、アルバイトだから出ない」ということはありません、ご心配なく!

労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度の強化:厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年11月時点、著者調べ)

労災給付の種類

労災補償については、数多くの給付の種類がありますが、その中でもよく申請されるであろう給付について、みていきたいと思います。

労災と「認定」されるためには、その「支給条件」を満たしている必要が出てくると思います。その条件について、厚生労働省のガイドラインから、確認してみることにしましょう!

<給付の種類:支給条件>

■療養(補償)給付
・療養給付:指定医療機関にて、傷病が治癒するまで受けられるもの。
・療養費用の支給:指定外医療機関にて治療を受け、そのかかった治療費、通院にかかった交通費を労働基準監督署へ請求するもの。

■休業(補償)給付:労災による傷病の療養により労働が出来ず、賃金を受けていないこと。休業「4日目」から支給の対象となる。

出典:

www.mhlw.go.jp
療養給付は、指定機関での受診になるため、かかる費用が直接病院へ支払われることから、個人的な支払いが発生しません。

反対に、「指定機関外」で受診をした場合は、治療費は、一旦自己負担で支払い、その後、「かかった医療費」を労働基準監督署へ「請求申請」することになるでしょう。

そう考えると、請求申請する必要の無い、「指定医療機関での受診」が、最も簡単な方法であると言えますね。

■障害(補償)給付障害年金:労災による傷病が治った時に、障害が残った場合。障害等級に応じて受けられる年金、または一時金。

(障害等級:障害給付/特別支援金/特別年金)
第1級:給付基礎日額313日分/342万円/算定基礎日額313日分
第2級:給付基礎日額277日分/320万円/算定基礎日額277日分
第3級:給付基礎日額245日分/300万円/算定基礎日額245日分
第4級:給付基礎日額213日分/264万円/算定基礎日額213日分
第5級:給付基礎日額184日分/225万円/算定基礎日額184日分
第6級:給付基礎日額156日分/192万円/算定基礎日額156日分
第7級:給付基礎日額131日分/159万円/算定基礎日額131日分

(障害等級:障害給付/特別支援金/特別一時金)
第8級:給付基礎日額503日分/65万円/算定基礎日額503日分
第9級:給付基礎日額391日分/59万円/算定基礎日額391日分
第10級:給付基礎日額302日分/39万円/算定基礎日額302日分
第11級:給付基礎日額223日分/29万円/算定基礎日額223日分
第12級:給付基礎日額156日分/20万円/算定基礎日額156日分
第13級:給付基礎日額101日分/14万円/算定基礎日額101日分
第14級:給付基礎日額56日分/8万円/算定基礎日額56日分

出典:

www.mhlw.go.jp
治療が終った後、その労災により、障害を負った場合は、その障害の度合い(障害等級)によって、補償給付が受けられるようになっています。その「障害等級」が上位にあれば、「特別年金」として支給されるようになっており、下位になると、「一時金」としての給付となるでしょう。

■遺族(補償)給付
・遺族年金:仕事または通勤が原因で死亡した場合の補償。
(請求対象者:その被災労働者の収入により、生計を共にしていた家族)

・遺族一時金
①遺族年金を受け取る遺族がいない場合
②遺族年金受給者が失権し、他に遺族年金を受ける遺族がいない場合、すでに支給された年金合計額が、給付基礎日額の1000日分に「満たないとき」。

■葬祭料(葬祭給付):遺族が葬儀を行う場合、一定額を支給。

出典:

www.mhlw.go.jp
労災によって、その労働者が亡くなった場合の補償です。請求対象者は、生計を共にしている、配偶者・子ども・孫・父母・兄弟姉妹の範囲内となっています。

こちらについても、「遺族年金」または、「遺族一時金」として、支払われる形になるでしょう。その他、お葬式にかかる費用についても、一定額の給付がされるようです。

■傷病(補償)年金:労災による傷病が「1年6か月」経過した後も治癒しておらず、傷病による「障害の程度」が重い場合に受けられる年金。
(傷病等級:傷病年金/一時金/傷病特別年金)
・第1級:給付基礎日額313日分/114万円/算定基礎日額313日分
・第2級:給付基礎日額277日分/107万円/算定基礎日額277日分
・第3級:給付基礎日額245日分/100万円/算定基礎日額245日分

■介護(補償)給付:労災により、重い後遺症が残り、家族や介護サービスが必要となる場合。
・常時介護:月額56,790円~104,570円
・随時介護:月額28,400円~52,290円

■2次健康診断等給付:会社が実施する健康診断で、1次健康診断において、異常があった場合。
・脳、または、心臓に関する項目で、異常の所見がみられること。

出典:

www.mhlw.go.jp
労災による、治療が長引いた際に受けられる年金です。但し、「1年半以上」の経過が支給条件となっていますので、かなり重症のケガや病気が対象となるでしょう。

また、労災により、後遺症が残った場合においての介護費用に関しても、補償されるそうです。その他、会社で実施された健康診断において、異常があった場合の給付もあるようです。但し、脳疾患、または、心臓に関する異常であることが条件となるでしょう。 このように、労災が起こった場合に受けられる補償が多くあることが判りましたね。

しかしながら、自分でもある程度、その基本知識を持っていないと、受けられない可能性もあるでしょう。もし、会社の担当者が雇用保険に関して「無知」だった場合、何の連絡も来ないことが予想されるためです。

私が労災を申請する際も担当者が「わからないので、労災申請したことある人に聞いて下さい」と言われた記憶があります。多くの労災申請を経験している担当者であれば、知識も豊富であることが考えられますが、そうでないと、私の時のような事態が起こりえるでしょう。

そのため、自分から「雇用保険の補償にある」ということを認識しておくことが、必要だと思います。

労災補償関係:厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年11月時点、著者調べ)

健康保険との違いは?

普段の生活の中で、ケガや病気などの保険制度としては、「健康保険」を考える方もいらっしゃるでしょう。

しかしながら、「健康保険」は、労働者の「仕事中におきた以外」の事情による病気やケガ、死亡に対して「保険給付」を行うことになっております。そのため、仕事中の災害においては、健康保険を使った治療を受けることが出来ません!それは、気をつけなければいけないポイントになると言えるでしょう。

そのため、診療を受ける際には、「仕事中に起きたケガ(または、病気)である」という旨を医師へ伝える必要があるのです。

労災に関するQ&A

ここでは、「労災に関する疑問」をYahooの知恵袋から、何点か拾ってみましたので、それに回答する形でみていきたいと思います。

労災保険に入ってない?
建築の仕事で親方と2人で仕事しているものです。

前に足場から落ちて腕の筋を痛めて1週間休んだことがあります。そのとき親方から病院行ってこいと1万渡されました。最近では朝の自転車での出勤中にひき逃げされました。とりあえずヤバイと思い親方を呼んだらこれで病院行けとたったの1万だけもらいました。前歯4本と首と股関節を痛め仕事もまだ行けない状態です。

友達から聞いたのですが、これって普通、労災保険が降りるんですか?前に聞いたときはお前の労災は入ってると言われたんですけど、毎回現金手渡しなので怪しいです。

どう思いますか?

出典:

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
これは、どう考えても「労働保険」に未加入のパターンではないでしょうか?まず、「病院へ行って来い!」と言ってお金を渡されていますよね?労災の場合、労災認定医療機関での受診は、前にも書きましたように「無料」です。

かかる医療費は、労災保険から「直接」病院へ支払われるため、個人が払わずに済む仕組みであり、もし認定外医療機関で受診するのであっても、検査等で「1万円」以上かかることは、間違いないでしょう。この親方は、「健康保険」の利用を想定した「3割負担」として、1万円を渡したように思います。

もし、労働保険を払ってないことが判明すると、遡って保険料を納めることになるほか、ペナルティとして追徴金も発生することが予想されるため、未加入を隠そうとする事業所の方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、ケガの治療が長引けば、その分、損するのは自分であることを考える必要もあるでしょう。

不安な場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。

労災について質問です。

職場の事故で腕を痛めてしまったのですが、一月経っても痛みが治まらないため病院に行こうと思い、職場に労災の手続きをお願いしました。
職場の説明では、まず病院で診断を受け、労働基準監督署の調査が入り、認定されたら労災が下りるとの事です。

一カ月も前の事なので、病院の診断次第では労災が下りない事もあると言われました。

疑問に思った事は2つです。

何の書類も持たずにまず病院で労診断を受ける事が正しい手順なのでしょうか。
そして病院の診断次第で労災が下りない事が有り得るのでしょうか。

出典:

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
1カ月前に、勤務中に傷めた部位についての質問になっていますが、労災の給付の対象となるかどうか?これは、ちょっと微妙かもしれません。なぜなら、1カ月も時間が経っているため、それが本当に労災によるものであったことを証明するのが、難しくなるためです。

労災かどうか?を認定するのは、会社で言われたとおり、「労働基準監督署」になります。そのため、個人的な判断は、出来ないでしょう。病院の診断を受ける際は、書類を持っていかなくてもいいはずです。私が労災で受診した際も、後日、書類を病院へ提出する形だったと思います。

ですが、もし労災認定がされなかった場合、自己負担となることが予想されますので、その覚悟も必要になるでしょう。もし可能であれば、労働基準監督署などへ確認してから受診することをおすすめします。

2週間ほど前、会社のお昼休み中に歩道で転んで足をひねってしまいました。
会社の本部宛の書留を出す為に郵便局へ行く途中の出来事です。
2週間近く足の腫れがひかず、痛みもあるため病院へ行こうかと考えています。
この場合、労災に該当しますか?

以前、同じような怪我をした際、治療が長期間に及んだ事もあり(費用負担もそれなりでした)心配になっています。

出典:

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この場合は、お昼休み中に会社の郵便物を出しに行く途中にケガしたということで、労災の対象になると思われます。これは、業務の一部でありますので、業務の範囲内での負傷となるでしょう。ですが、この場合は、「会社の郵便物を出す」ということがポイントになるはずです!

これがもし、お昼休みに「ランチへ行く途中」に転んで負傷したものであれば、それは労災の対象にならないでしょう。休憩時間は、労働基準法により、「労働者が自由に行動すること」が許されており、その時間内については、「個人的行動」であるとみなされる可能性が高いためです。

なかなか、その線引きが難しいところですが、労働基準法により、その認定基準が決まっているでしょう。そのため、自分では、それが「労災」申請できるかどうか?解からない場合は、労働基準監督署へ電話して聞いてみるのが早いかもしれませんね。

パワハラや長時間残業などが原因で、うつなどの精神病になり労災申請し、労災が認められた場合、これは会社側に責任があった、という証明になるのでしょうか?

その後に慰謝料などを請求、裁判などになった場合、労災の判定を鬼に金棒のように使えるものでしょうか?
普通はどうしているのでしょう?慰謝料の請求なんかしないのでしょうか?

出典:

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これは、最近よくニュースに出てくるパターンの労災申請ですね。「パワハラ」によるうつ病発症ということは、証拠を集めることにより、労災認定されることは可能だと思います。しかしながら、裁判でそれを盾に勝てるかどうか?というのは、また別の話になってくるかもしれません。

以前、ヤマダ電機の「社員過労死事件」で話題になりましたが、覚えていらっしゃいますか?亡くなった社員の死亡前1カ月の残業時間が「106時間」。それが原因ということで、労災認定されました。

しかし、ヤマダ電機側は、「労災認定そのものが誤った結論で、遺族の主張は失当」と主張しており、裁判所へ「遺族の請求」を「棄却」するよう求めている事件です。これもまだ解決してないと言えるでしょう。なかなか難しい裁判になっているようです。

同僚と組んで、集団で訴訟を起こすのであれば、裁判も多少は有利な方向になるような気もしますが、1人で起こすとなると、その限界もあるかもしれませんね。こればかりは、頼む弁護士さんの力量にもよると思われます。もし、訴訟をお考えであれば、まずは、弁護士さんへ相談してみることをおすすめします。



まとめ

ここまで、労働保険の中の「労災保険」について、みてきましたがいかがでしたでしょうか?私の労災申請の記憶を辿ってみたのですが、申請書類には、その災害の「目撃者」の名前を記入する欄があり、驚いたことを思い出しました。認定されるのには、そのようなはっきりした状況証拠が必要になると思います。

この保険制度は、とても便利であることが判りましたが、やはりケガや病気をしないことが一番であると実感しますよね。

また、「パワハラ」だけでなく、「マタハラ」という言葉も、最近よく耳にするようになりました。そのため、「労災保険」は、絶対に「知っておくべき制度」であると私は思います。自分を守るための手段として、相手に立ち向かうことも可能にする保険と言えるかもしれません。労災保険とは、弱者を守るための制度です。ぜひ、参考にしてみて下さい。

※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。