遺産相続で壊れる兄弟の関係?相続前にできること

遺産相続における分割方法は法律で決まっていますが、決まっているからと言って納得できるものでも、簡単にできるものでもありません。両親の遺産で揉める前に家族でできることを考えます。



相続から始まる兄弟姉妹の亀裂

小さな頃から一緒に遊んで、時に喧嘩して、それでもやっぱり仲の良かった兄と弟。お姉ちゃんが怒る!うちの妹、私の言うことぜんぜん聞かないんだもん!なんて言いながら、一緒に買い物に行くのを楽しみにしていた姉妹。父母の目から見ても仲が良かった兄弟姉妹はやがて社会人になり別々の家庭を持ちました。

実家に子供や夫、妻を連れて顔を見せる時は、三つ子の魂百までとはよく言ったもので、兄弟で酒を酌み交わし、姉妹で母親特有の悩みごとなどを話しながらケーキを食べたり。何だかんだ言っても兄弟姉妹仲はかなり良かったと思うし、このまま「仲のいい兄弟姉妹でいる」のだろうと父母は自分の子供たちを見ていました。

だがしかし、ある日、突然関係に亀裂が走ったのです!お父さんが亡くなり、遺産相続がおきたことが切っ掛けでした!そんな、仲の良い関係を引き裂く遺産相続問題と、兄弟姉妹仲を守るために、また、ずっと仲良くしてゆくために、相続に関してできることをご紹介します。

ポイントは「一欠けらのケーキを現実的にも心情的にも分け合えるか?」です。



遺産相続と兄弟姉妹

自分の親が亡くなった場合、父か母のどちらかが存命だった場合は遺産の半分を受け継ぎます。もう半分は子供である兄弟姉妹が半分を均等に分け合うことになります。遺言があれば遺言に従いますし、遺産分割協議(相続人で話し合って遺産の分割の割り合いを決める)をすれば遺産分割協議で決まった遺産分割方法をとりますが、何もしない場合は法律で決まった分割方法になります。

「父親が亡くなった」という前提で、子供である兄弟姉妹の遺産分割を確認します。これが法律で定められた相続と遺産分割の割合です。

■父親の遺言があれば、遺言が最優先の分割方法になる
■遺言がない場合は遺産分割協議を行い、兄弟姉妹で遺産を分けることができる
■遺言があっても兄弟姉妹が全員同意すれば遺産分割協議で分けることができる
■母親が存命の場合は、母親が遺産の1/2を相続し、子供である兄弟姉妹で1/2を均等に分ける
■母親が既に亡くなっている場合は、父親の遺産全てを子供である兄弟姉妹で均等に分ける

兄弟姉妹が親を亡くして遺産相続をする場合の基本として、まずはこれらの要点をご確認ください。

遺産相続と兄弟、トラブルの根

分割の割合が法律に定められており、相続はその通りに行わなければいけないとは分かっていても、「現実的にできるか」と「納得できるか」は別問題です。現実の問題に加えて心の問題、そしてこれらに「遺産の魔力」という問題が加わります。

長年とても仲の良かった兄弟姉妹が相続で急に仲違いしてしまう原因は主にこの三つである言えます。

分割できるの?

一つ目の兄弟姉妹の相続トラブルの原因は、「現実的に分割できるのか」という問題です。兄弟で100万円の預金を分割するなら話は簡単です。親の遺産を相続する場合は兄弟は平等に分ければいいので、兄と弟で50万円ずつ分ければいいことになります。ですが、遺産に預金や現金はほとんどなく、実家の家と土地だけが残された場合はどうでしょう。

あるのは土地と一軒家。これを兄弟で半分こすることになります。仲良く家と土地を二分の一ずつ分けることも、相続登記では可能です。しかし、兄はお金が欲しいので家と土地を売却すべきと主張し、弟は思い出の実家なのだから売らずに相続すべきと主張したならどうでしょう。意見の違いです。兄が売却しようとしても同じ相続人である弟も同意の上で手続きに協力しないと売却はできません。

また、兄弟が実家を売却して売却したお金を半分に分けようと合意しても、土地と一軒家は簡単に買い手がつくものではありません。売れずに延々と残った場合、どちらかが不動産を相続し、もう片方に相続分である半分を金銭で渡そうという話になります。ですが、土地一軒家は高額です。弟も兄も、もう片方に即金で数百万、数千万を渡すような手持ちはありません。

不動産を兄弟どちらも相続したくないというケースだって考えられます。「お前が相続しろよ」「兄ちゃんが相続したらいいよ」と延々に譲り合い、話が決着しません。どちらかが相続放棄すれば話は早いのですが、放棄をすれば何も手に入りません。どちらかが家を相続してもう片方にお金を渡せば解決ですが、兄弟のどちらも自分が家を相続するのが嫌なのです。

色々な理由により話がつかない。分けられない。売れない。こういった問題は相続に際して兄弟仲に亀裂を生じさせる原因になります。

遺産の魔力

売却できず、話し合いも決着しない。だから揉める。兄弟のどちらかが「俺はいいからお前がケーキを食べろよ」と全て譲るか放棄するか、あるいはどちらも相続したくないならどちらも放棄すれば分割の問題は片がつくのですが、そう簡単に心は決まらない。なぜでしょう。簡単です。根底に「遺産の魔力」があるからです。

遺産相続のトラブルといって真っ先に想像するのは多額のお金や不動産だと思います。遺産にはそういった印象が付きまといますし、真実、それは正解です。相続税が発生するくらい多額の遺産を相続するケースは少ないですが、相続は確実にお金や不動産を手に入れることができます。遠縁からいきなりお金が転がり込むことがあることから「笑う相続人」なんていう言葉もあります。

譲り合えればトラブルの解決は簡単なのですが、遺産の魔力の前には簡単に諦めることはできません。宝くじは買わなければ当たらないし、買っても当選する確率は低いものです。しかし相続は被相続人(亡くなった人)が預金や不動産を所持していれば「確実に手に入る」からこそ簡単に諦めきれないという現実があります。

どちらも譲り合わない。譲り合うにしても、確実なものを諦めきれない。遺産の魔力により、仲の良かった兄弟仲がこじれるのはよくあることです。

納得できるか

いざ分割という話になっても、気持ちが納得できないということもあるでしょう。長年、兄夫婦は体を壊していた父親の介護をしていたのに、遠方に住んでいる弟夫婦は資金援助はおろか何もしなかった。こんな時は、「相続になったら急に出て来るな!」という気持ちや「ずっとこっちは苦労してきたんだから多く取るべきだ」という気持ちが生まれます。

弟夫婦が介護をしていた兄夫婦に対し感謝と労いの気持ち、そして介護費用や労力に対し理解を見せればトラブルもその分減るのですが、相続の時はちゃっかりと自分の取り分をきっちり主張すると、対立を招きます。確かに法律では兄弟二人が相続人ならば半分と決まっているのですが、労力や金銭的な背景が見合っていないことから、仲の良い兄弟でも喧嘩になります。

また、他所に住んでいる兄弟が親と同居している兄弟に対し、親の財産を使いこんでいるのではないかという疑念を持つことがあります。介護にかこつけて父親の金を使いこんでいるのではないか、だったら遺産は別に住んでいた自分たちが多く取るべきだという思考です。

法律では決まっている取り分ですが、気持ちが納得できないという問題です。

■現実の支出や労力の不平等
■分割できない
■押し付け合いや、自分が良い方を取ろうとする
■使い込みへの疑念

このような理由から、仲がよかったはずの兄弟の仲にはあっさりと亀裂が生じます。



兄弟関係と相続の対策

問題の根っこがお金と心情である以上、完全な解決方法も対策方法もありません。ただし、対策を立てることでトラブルの緩和が可能です。

話し合いをしておく

人が死ぬことにより相続が始まりますので、相続の話はどうしても死と結び付けられて考えられがちです。人によっては不吉だと嫌がる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、後に諍いを生まないために話し合いをしておくことが重要です。親が生きている間に話し合いをすることにより兄弟だけで遺産の話をすることを避けることができますし、親が間に入って仲を取り持つこともできます。

家と土地をどうするのか、子供が相続したいと思っているのか、介護の問題をどうするか、同居するのかしないのかを話し合い、相続トラブルの発生を抑えることが望ましいと言えます。

遺言

話し合いの結果は遺言に残すことが大切ですが、いざ親が亡くなり遺言の出番となった時に第三者を介在させることも望ましいと言えます。できれば遺言を作成する段階で、親と兄弟の言い分をそれぞれ聞いて書面に生かす専門家がいた方が、書面の中身と実行の際にトラブルにはなり難いことでしょう。

遺言を作る時に法律家に話を聞いてもらい作成すること、相続の際には遺言執行人に手続きを代行してもらうこともトラブル発生を防ぐ良い方法です。

寄与分を認める

介護に際し労力を払った兄弟や金銭の負担をした兄弟に対し寄与分を認めるという方法があります。寄与分とは、被相続人の介護や事業の手伝いに尽力した相続人に対し相続分を多めに分割することができます。兄弟が1千万円を相続する場合は基本的に500万円ずつとなりますが、寄与分を認めれば親の介護をしたり、会社に手伝ったりした方の兄弟に対し800万円を相続させ、もう片方に200万円の相続ということも可能です。

子供たちの内の誰かが尽力した場合は寄与分を活用することにより兄弟間の不平等感を解消することができます。

信託の活用

親の介護費用に関して兄弟どちらかが負担しなければならないとなった場合の不平等感を解消する方法として、信託の活用も方法として挙げられます。遺産の魔力やお互いが遺産相続の段になった際に話し合いが決着しないとなった場合は遺言や事前の話し合いで対策を練るこおが必要ですが、どちらかが親に対し大きな負担をする場合は寄与分だけでなくこの信託の活用や、制度の活用が解決のために役立ちます。

親と子供の間で信託契約を結び、親が意思表示できず財産の処分に難が出たら子供に信託をしてもらうようにすれば、子供が親の介護費用のために親の家を処分し、その金銭を介護に役立てることができます。つまり、子供の金銭の負担を抑えることができるということです。

信託に関しては財産の処分や使い道に関して厳しい監視が働きます。同居している子供でも使いこみはできないということです。これなら兄弟の亀裂も金銭負担の問題も抑えることができるのではないでしょうか。

制度の活用

不動産を将来的に相続したくないと子供が言うのであれば、制度を活用することも一つの手です。

全ての自治体で行っているわけではありませんが、リバースモーゲージという制度があります。この制度は、家を自治体の抵当にすることで生活費を支援してもらう制度です。家を担保に生活費をもらうわけですから、親が亡くなれば担保の不動産は制度を行っている団体のものになります。

老いた親の生活費問題、家の問題を解決するためには制度の活用も不可欠です。

まとめ

ケーキが一つしかない場合、「お前、ケーキ食べたい?」「食べたい」という問答が交わされることは十分にあり得ることですが、問題はこの後です。それが例え分割し難いケーキであったとしても兄弟同士で分けようと四苦八苦し、上手く分割できなかったけれど仲良いままいるのか、あるいは「分割し難いなあ」と片方が零した時点で「じゃあ兄ちゃんが食えよ」と答えるのか。それとも「分割し難い、俺が食べていい?」「ずるい、俺だって食べたい!」と兄弟喧嘩へと発展するのか。

最初の問答の時点で「どうせ一個しかないから俺がもらってもいいよな」「親父の面倒を看たのは俺たちなんだから、このケーキは俺のものだな」と考えるかどうかも一つの分岐点です。おやつの問題を相続の問題とひとくくりしするのはどうかとも思いますが、目の前の物が欲しくて諍いに発展するという点では似ていると言えます。

法律では相続の際の取り分が決められています。遺言があれば遺言が優先で、遺言がなくて相続人同士で決めようという場合は遺産分割協議をするのが基本です。どちらもなければ法律で定められた取り分で遺産を分割することになります。

ですが、遺産の取り分がある、法律で決まっている、そう分かっていても、世の中なかなか上手くいかないものです。兄弟間の場合、①親の面倒は自分が看た②家一軒をどうやって分けるんだ!?③勝手に遺産を取ってるんじゃないだろうな?こんな感情のせいで遺産相続が大いなる諍いへと発展することがあります。「相続は争続」という言葉がありますが、まさにです。争続が、今まで仲の良かった兄弟姉妹の仲に亀裂を生じさせてしまいます。遺産……お金や不動産の魔力とは本当に恐ろしいものです。

もしあなたにお子さんたちがいるなら、お子さんたちの顔をじっと見てみてください。この子たちが将来、遺産という名のケーキを奪い合うことになると想像するのは悲しくならないでしょうか。うちの子に限って、とは、親はやはり考えるのでしょうが、しかし、世に兄弟姉妹同士で遺産を巡る諍いは多くあります。判例をひも解くと、その多さに驚くくらいです。

できれば争って欲しくない。そのためには何をすべきか。自分の子供たちを「この子たちなら大丈夫」と信じてあげると同時に、将来に火種を残さないことが重要です。相続は死と直結することで不吉と思われるかもしれませんが、子供たちともしものために話し合い、できることをしておくことが大切なのではないでしょうか。

遺産を曖昧にしておくとその分火種が増えます。火種が増えると燃えやすくなります。話し合いやできることを前々にしておくことで、火種を消すこともできるのだとお伝えしたいと思います。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。