労災保険の休業補償給付・療養保障給付のわからないを徹底解説!

労災保険ってどんな時が対象になるのかわかりにくいですよね。そしてその休業補償給付や療養保障給付についてはもっとわかりにくいものです。そのわからないを徹底的に解説していきます。



労災保険って何?

労災保険とは、「労災保険法」に基づく制度であり、業務上の災害や通勤時の災害によって、労働者がケガをした場合・病気になった場合・障害が残ってしまった場合・亡くなってしまった場合に、その被災した労働者やその遺族に対して保険給付がされる制度になります。

また、この他には被災した労働者の社会復帰への促進や、遺族への援助なども行っています。

労災保険への加入について

業務上の災害というのは、企業などで働く人が就業中に、その業務などを原因とした災害のことになります。業務上の災害があった場合、そのケガや病気について、使用者が療養の補償やその他の補償をしなければならないことが、労働基準法で定められています。

労働者を1人でも労働に使用している事業は個人事業であっても、適用事業として労災保険の加入手続きをして(保険関係成立届を提出する)労災保険料を納付することになります。ちなみに、労災保険料については、全額が事業主の負担となります。

労働者は事業主の下で働くことで、自動的に労災保険の適用者となるのです。

健康保険と労災保険

保険制度には、健康保険もありますね。健康保険法では、労災保険で規定している業務上の災害のケガや病気・死亡については、保険給付は行われないと定められています。つまり、健康保険は業務上以外の補償となり、業務上での災害については、労災保険が保障をします。

健康保険と労災保険は一緒に使用することはできないため、業務上の災害で病院へ言った場合は、健康保険証は使用できませんので注意して下さい。

労災保険とは|公益財団法人 労災保険情報センター
参照元:公益財団法人 労災保険情報センター(2015年12月、著者調べ)



労災保険の種類

労災保険の保険給付の内容はさまざまです。その種類は大きく8種類に分かれています。

【1】療養(補償)給付:
療養給付と療養の費用の給付に分かれています。

・療養の給付は:業務上の災害や通勤中の災害での傷病について、労災病院もしくは労災指定の医療機関で療養する場合に支払われます。
・療養の費用の給付:労災病院もしくは労災指定の医療機関以外での医療機関で療養する場合に支払われます。

【2】休業(補償)給付
業務上の災害や通勤中の災害での傷病について、その療養のため働けず賃金が受取れない時に、その日数が4日以上かかった場合に支払われます。

【3】障害(補償)給付
障害(補償)年金と障害(補償)一時金とに分かれています。

・傷害(補償)年金は業務上の災害や通勤中の災害での傷病について:それが治癒したときに、1~7級の障害等級に該当する障害が残ってしまった場合に支払われます。
・障害(補償)一時金:8~14級の障害等級の場合に支払われます。

【4】遺族(補償)給付
遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金とに分かれています。

・遺族(補償)年金は:業務上の災害や通勤中の災害で死亡した場合に支払われます。
・遺族(補償)一時金:遺族(補償)年金を受取る遺族がいない場合などに支払われます。

【5】葬祭料(葬祭給付)
業務上の災害や通勤中の災害で死亡した人の葬祭などを行う場合に支払われます。

【6】傷病(補償)年金
業務上の災害や通勤中の災害での傷病が、1年6ヶ月以上続いた場合、その日もしくはその日以降になっても治癒せず、障害の状態が傷病等級に該当した場合に支払われます。

【7】介護(補償)給付
障害(補償)年金もしくは傷病(補償)年金を受取っている人で、介護を必要とする場合に支払われます。

【8】2次健康診断等給付
会社などで行った健康診断で、直近の検査結果において血圧・血中脂質・腹囲またはBMIの全てについて異常があると診断された場合に支払われます。(脳血管疾患や心疾患などの症状がないと認められることが条件です)

労災保険とは|公益財団法人 労災保険情報センター
参照元:公益財団法人 労災保険情報センター(2015年12月、著者調べ)

労災保険の認定の定義

労災保険では、業務上の災害や通勤中の災害などの保護を対象にしていますので、その会社内、もしくはその労働の過程での業務をきっかけとした災害が対象となります。

その定義については、会社内での場合は「業務遂行性」、その労働の過程での場合は「業務起因性」といいます。つまり、どのような場所でどのような状況の場合かによって、労災保険が適用されるかが決まるということです。

会社内で作業をしている場合

例えば、会社内で仕事に当たっているときや、作業中の水分補給やトイレなどは、その会社自体が事業主の管理する建物内となり、業務上と認められるので基本的に労災適用となります。

ただし、就業中の私用行為・いたずら行為が原因となった災害、故意に災害を起こした場合、個人的恨みからの暴行を受けた場合、天災が原因の災害などは、業務上と認めるには難しいものになります。

社内での休憩中の場合

例えば、会社内で昼休み休憩の食事をとっているとき、休憩室で休んでいるとき、会社構内でスポーツをしているときなどの場合、事業主の管理する建物内ですので、業務を行っていないのですがこれも労災適用となります。

ただし、昼休みにランチで外出した時の災害については、社内での災害ではないため労災は適用されません。また、通勤用の交通機関に乗っているときは、業務をしていませんが労災は適用となります。

出張や配達などの場合

例えば、業務として出張や配達をしているとき、営業での外回りなど、会社内にはいないものの業務には従事しているということになりますので、これは、特に否定するような事情がなければ、基本的に業務上となり労災適用となります。

業務災害の認定|公益財団法人 労災保険情報センター
参照元:公益財団法人 労災保険情報センター(2015年12月、著者調べ)



療養補償給付または療養給付について

労働者が業務上でのケガや病気などで療養が必要な場合に「療養補償給付」が行われます。また、通勤中でのケガや病気などで療養が必要な場合に「療養給付」が行われます。

どちらも同じ内容となりますのでここでは「療養給付」とさせていただきます。

療養の給付とは

療養の給付は、業務上や通勤中にケガや病気などで病院で治療を受けた場合に、治療費を無料で受けられるという、いわゆる現物給付の制度になります。ただし、通勤中の療養給付については、治療費の一部負担(200円)をする必要があります。

この療養の給付が受けられるのは、労災病院か都道府県の労働局長が指定した病院や診療所・薬局・訪問看護事業所に限られます。また、治療に関する医療措置や訪問看護などの政府が必要と認めるものが対象となります。

療養の給付はケガや病気が治癒して治療が必要でなくなるまでです。
・治癒とは、症状が残っていても、治療の効果が期待できない状態のことになります。ですので障害が残ってしまいったとしても、療養の必要が無くなったとみなされます。
・一度治癒したとしても、再発により再度療養が必要になった場合には、再び療養の給付は受けることができます。

療養の費用の給付とは

療養の給付は、労災病院や労災の指定病院での治療でしたが、療養の費用の給付の場合は、それ以外の指定されていない病院で治療を受けた場合に、その費用を被災労働者が一旦実費で支払い、後で現金で給付されます。また、その範囲や期間などについては、療養の給付と同じになります。

療養給付等|公益財団法人 労災保険情報センター
参照元:公益財団法人 労災保険情報センター(2015年12月、著者調べ)

休業補償給付・休業給付について

業務上のケガや病気などの療養のために仕事を休業することとなり、そのため賃金がもらえない場合に「休業補償給付」を支給します。また、通勤中のケガや病気などの療養のための仕事の休業については「休業給付」を支給します。

「休業補償給付」「休業給付」ともに、給付基礎日額の60%相当額が1日につきの額となります。またこれは、休業の4日目からの支給となり、3日間は待機期間です。

この3日間の待機期間については、事業主が平均賃金の60%を休業補償として行います。ただし、通勤災害の傷病については、事業主は補償義務がないため支払われません。

休業特別支給金

休業特別支給金とは、労災保険の休業補償給付、または休業給付の上乗せとして、これらの給付を受けられる人に、休業の4日目から給付基礎日額の20%が支払われるものになります。

休業補償給付または休業給付では給付基礎日額の60%・休業特別支給金から20%の支給となるので、あわせて80%の給付が受けられるということになります。

給付基礎日額について

給付基礎日額とは、平均賃金に相当する金額のことです。この金額については、その傷病などの被災した日から直前の3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の日数で割った1日あたりの額となります。

また、傷病などの被災した日から上下10%以上の賃金変動があった場合は、その変動率に応じた金額に変更されることになります。更に、休業給付基礎日額には年齢階層別の最高・最低限度額があります。

年金形式の保険給付(労災の傷病(補償)年金・障害(補償)年金・遺族(補償)年金)についても同じ基準となります。

休業給付等|公益財団法人 労災保険情報センター
参照元:公益財団法人 労災保険情報センター(2015年12月、著者調べ)

労災保険と他の制度の関係

労災保険と健康保険はそれぞれ別になるので、同時に給付は受けられませんが、労災保険と国民年金保険・厚生年金保険については、同時に受けることができます。この負担割合は、一定の方法で調整されます。

労災保険の年金については、規定の調整率をかけてその分を減らした額となります。社会保険の年金については、そのまま全額が支給となります。

保険給付と他の制度との関係|公益財団法人 労災保険情報センター
参照元:公益財団法人 労災保険情報センター(2015年12月、著者調べ)

労災保険に関する事例

労災保険は業務上や通勤中のケガや病気などの場合に、さまざまな保障が受けられます。しかし結構複雑で難しいですね。

では、実際にこんな場合はどうなるのかを、業務上のケガの事例をもとに、解説をしていきます。

通勤途中の事故についての事例【1】

【事例1】
Q:通勤中に交通事故にあいました。相手の任意保険で100%の休業補償を受けた場合、労災保険の休業補償給付は受取れるでしょうか?ちなみに、軽症ですが有給休暇で7日間を使用して、その後完治しています。

A:相手のいる第3者労災の場合、同じ補償部分の自動車保険と労災保険の2重保障は受けられません。また、有給休暇を使用しているため、給与が発生しています。その為、労災の休業給付・休業特別支給金は受取れません。

有給休暇を使用していなければ、会社からの給料を受けていないことになり、任意保険の保険会社から100%の休業補償を受けていたとしても、休業特別支給金からは休業の4日目から、平均賃金の20%を受け取ることができたでしょう。

今回の場合は、有給を使用しているため労災保険からの支給はありません。

勤務中にケガをした場合の事例【2】

Q:勤務中のケガで入院をし、退院後は自宅での療養をしています。労災保険からは休業補償を受けています。もうあと数日で仕事へ復帰するのですが、まだケガの治癒までには時間がかかり、通院は必要な状態です。休業補償は終了となりますが、療養給付については継続できるのでしょうか?

A:仕事に復帰されるということは、給料の支払いが発生しますので、休業給付についてはそこで終了となります。しかし療養給付については、まだケガが治癒していないので継続して受け取ることができます。

療養給付は、治療が継続している間は仕事の復帰の有無にかかわらず、治癒や症状の固定がないのであれば給付が受けられるということになっています。

まとめ

労災保険はなんとなくはわかっていても、詳しい内容は知らないことも多かったと思います。業務上のケガや病気については、健康保険を使うことなく無料で治療を受けられたり、仕事を休んで給与がもらえない時の補償もしてもらえるものです。

基本的に労災保険は事業主が働く人に対して、加入しなければならない制度で、支払いも事業主に発生するものになります。仕事をする上でこういった補償があることを知っておくことで、いざという時に役に立つことがあるかもしれません。

しかし、やはりケガや病気はつらいものですので、日頃から気をつけて過ごしていきましょう。 本記事の情報は、一般的または筆者個人の調査によるものです。法令などの改正、前提事実や個人状況の違いや変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。 従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。