生活保護費認定条件から受給金額文化的な最低限度の金額とは

生活保護費、生活保護、と聞いてあまり良いイメージを持つ人はそう多くはないでしょう。確かに不正受給についての問題は少なくないともいえます。しかし、働きたくても病気が理由で働けない人は、どうしても生活保護に頼らざるを得ないのが現実です。生活保護制度の手続きから実際に受給できる金額まで真剣に考えてみました。



生活保護費:概要

生活保護とは

生活保護とは、生活保護法という法律によって、経済的に困窮している人に対して、国が健康的で文化的に生活できる最低限度の生活を送れるように、生活にかかる費用を負担する公的な扶助制度のことです。

この制度は、憲法第25条の基本原則に基づいて定められた生活保護法により、生活に困窮する程度に応じて、必要最低限度の保護と、生活保護費を受給している人の自立を促すことを目的として成り立つものです。

国民は、憲法第14条に定められている「法の下の平等」により、生活保護法第2条の無差別平等の原則に沿って、生活困窮者に対し無差別かつ平等に、またその理由を問うこともなく、過去における生活も職歴も関係なく、現在において最低限の生活を維持できるように保護されています。

日本国憲法
参照元:法務省(2015年12月、著者調べ)

生活保護法

生活保護の種類

生活保護は、保護を必要とする人の年齢や性別、生活状況を考慮し、以下の8種類から構成されており、必要に応じて、2つ以上の扶助が行われています。

・医療扶助
保護を必要とする人は国民健康保険からは脱退するため、保険料の納付は必要ありませんが、病院にかかった際の治療は保険料を納めている人と差別なく行われています。けがや病気で医療を受ける際には、生活保護法指定医療機関のみにおいて有効とされ、投薬される場合はジェネリック医薬品を可能な限り利用することになっています。医療費は全額扶助されますが、通院にかかるタンクシー代については、自治体によって異なるようです。

・生活扶助
保護を必要とする人が、文化的な最低限度の生活を維持するために必要な費用を支給されます。この生活扶助は2階建てとなっており、個人ごとに必要な食費や被服費などの生活費と、世帯として必要な光熱費とに分けて支給されています。また、必要に応じて、加算される手当があり、母子加算や、児童養育加算、介護保険料加算などがあり、民間の交通手段を使った(タクシー代)も含まれています。

・教育扶助
保護を必要としている家庭において、その児童が義務教育を受けるために必要な額を支給されています。

・住宅扶助
保護を必要としている人に、家賃や、その維持費(更新手数料や火災保険)を支給されています。

・介護扶助
保護を必要としている人が、要介護認定された場合に、一般の介護保険と同額の給付を受けることができます。

・出産扶助
保護を必要としている人が、出産するときに支給されますが、医療機関での出産においては、児童福祉法の制度を優先して行われるため、生活保護の出産扶助については、主に自宅での出産の場合にのみ支給されます。

・生業扶助
自営業を営むために必要な資金や、資材の仕入れにかかる費用、または技能習得にかかる費用、運転免許証の取得にかかる費用を支給されます。また、高等学校の就学にかかる費用もこの生業扶助に含まれています。

・葬祭費用
保護を必要とする人が、家族の葬儀を行うために必要な費用を支給されています。

生活保護基準の体系等について
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)

生活保護の相談・申請

生活保護の相談や申請する窓口は、自分の住民票のある地域を管轄している福祉事務所になります。福祉事務所は市町村役場に隣接している場合が多いようです。

福祉事務所の設置は、市や都道府県が設置するようになっていますが、住んでいる市町村に福祉事務所がない場合は、役場の福祉担当課でも相談や生活保護の申請ができるとされています。

生活保護と福祉一般:福祉事務所一覧|厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)



生活保護費を受けるための要件

周りに援助者がいない

保護を受けようとする人が、たとえ無職で無収入であっても、一緒に生計を共にしている家族がいて、その家族に十分な収入を得ることのできる人がいる場合は、生活保護を申請しても認められないでしょう。

生活保護を申請しますと、福祉担当者は住民票などを調べ、申請者の親や兄弟、3親等以内の親族宛に「扶養照会書」という書類が送られてきます。この書類は、生活保護を申請している人の経済的な支援ができるかどうかを親族に確認するための書類です。

この照会書が返送され、内容を精査し、福祉担当者が経済的な援助をする親族がいないと判断すれば、生活保護を受けることのできる要件のひとつとなるといえます。

無資産であること

家や土地などの不動産や、車や現金、預貯金などの資産を持っている場合は、それらの資産を処分したり、現金や預貯金を生活のために活用したりしても、経済的援助を受けなければ文化的な生活を送ることができない場合が、生活保護を受けるための要件のひとつといえます。

つまり、生活に十分な現金や預貯金を持っておらず、住んでいる家も賃貸住宅でないと、生活保護を申請しても認められないといえます。しかし、車については、現在住んでいる地域に、公共的な交通手段がなく、車がないと仕事を探すことも、病院へ行くこともできないようであれば、福祉担当者の判断により所有を求められる場合もあるでしょう。

パソコンの所有については、それが文化的な最低限の生活のために、必要かどうかの判断になっていましますので、福祉担当者の判断になってしまうことになるといえます。

働いていない

文化的な最低限の生活をするには、収入が必要となるといえます。その収入を得るには仕事をしなければならないでしょう。しかし、年齢的な条件や、病気やケガなどで、働きたくても働くことができない場合は、生活保護が認められるでしょう。

それ以外、例えば、働ける健康的なからだや年齢であるにもかかわらず、単に「働きたくない」という理由では、福祉担当者も生活保護を認めることは難しいといえます。

支給される生活保護費

資産もなく、経済的な援助者もおらず、働くこともできないなどの正当な理由があって、生活保護を認められるといえます。なお、世帯の収入が少額あったとしても、厚生労働大臣の定める最低生活費よりも少ない場合は、その差額が支給の対象になります。

収入の金額としては、働いて得る収入と、公的年金や児童扶養手当など社会保障制度に基づく手当の両方が合算されます。

生活保護を申請するには

事前に相談

生活保護を申請するには、生活保護制度の内容や、他の社会保障制度の活用についてのアドバイスがありますので、まずは、福祉事務所の担当者と相談することをお勧めします。生活保護が認められますと、さまざまな制限がありますので、他に活用できる生活福祉資金や社会保障制度があれば、そちらの利用も考える必要があるでしょう。

申請

生活保護を申請するために必要な書類は特にはありません。ただし、申請後に資産を調査するために、世帯の収入が分かるもの(給与明細など)や、預金通帳ののコピーの提出を求められる場合もあります。以下に、生活保護を申請した後の、福祉担当者が行う調査についてご紹介します。

・家庭訪問
福祉担当者は、生活保護申請者へ家庭訪問し、生活状況などを確認するための調査を行います。

・資産の調査
生活保護申請者に預貯金や、加入している民間の生命保険や損害保険、不動産が他にあるかどうかの調査を行います。

・援助者の調査
3親等以内の親族に対して、生活保護申請者へ経済的な援助が可能かどうかの調査を行います。

・年金受給の調査
公的年金や、その他の社会保障制度の基づく手当を受給しているかどうかの調査を行います。

・就労の調査
生活保護申請者が、仕事をしているかどうかや、収入がどのくらいあるのかの調査を行います。

・就労が可能かどうかの調査
生活保護申請者が、実際に働くことができない理由などの調査を行います。

生活保護費の支給

生活保護の申請をした後の、福祉担当者による各調査に何も問題点がなければ、厚生労働大臣が定める文化的に生活のできる最低生活費から、年金の受給額や給与所得を引いても、不足分があれば、その額を生活保護費として支給されることになります。

なお、生活保護費を支給されている人は、以下の義務及び、協力が求められます。

・毎月の収支状況(家計簿のようなもの)の申告
・福祉担当者による、年数回の家庭訪問
・就労に向けたアドバイスや指導
病気やケガで仕事ができなかった生活保護者が、その後働ける状態になった際の仕事のあっせんを福祉担当者が行うことがあるといえます。

生活保護制度 |厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)



生活保護額の計算

生活保護費の内訳

生活保護費は、世帯の人数によって一律に支給されるものではありません。住んでいる地域や、その世帯に必要な各扶助や加算額、及び一時的な扶助の額によって差があります。この額の基になっているのが、生活保護法第8条となります。計算式は、以下のようになります。

・生活保護費=扶助+加算額+一時扶助

この計算方法で、国が定めた額を世帯の構成に当てはめることになります。

生活保護法
参照元:法務省(2015年12月、著者調べ)

計算事例①:両親と子ども2人

一般的に標準家庭とされる、両親と子ども2人の4人暮らしの場合、生活保護費がいくらになるのかを計算してみましょう。

■年齢の条件は以下のように設定します。
・北海道札幌市在住
・父35歳
・母29歳
・長男10歳
・長女7歳

■計算方法
①「級地一覧表」で、住んでいる級地を調べます。
一覧表でみると、札幌市は「1級地-2」ということが分かります。

②個人別の生活扶助費を「生活扶助基準表」で調べます。
・父35歳は、3万9,580円
・母29歳は、3万9,580円
・長男10歳は、3万3,480円
・長女7歳は、3万3,480円
であるとわかります。この合計額、14万6,120円が、「扶助」の額になります。

③世帯の、扶助費を同じく「生活扶助基準表」で調べます。
4人世帯になりますので、5万4,210円ということが分かります。

④加算額を調べます。
この世帯の場合は、児童養育加算のみになりますので、小学3年生1人の5,000円です。

⑤住宅扶助額を調べます。
北海道で、4人世帯ですので、3万7,000円です。

⑥②から⑤までの金額を合計します。
14万6,120円+5万4,210円+5,000円+3万7,000円=24万2,330円

計算の結果、24万2,330円がこの世帯の場合、生活保護費として毎月支給になるといえます。また、この金額の他に、他の扶助が必要な場合はさらに加算となります。

級地一覧
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)

生活扶助金額一覧
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)

住宅扶助について
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)

「生活保護制度の現状等について」(厚生労働省提出資料)
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)

計算事例②:身体障害者(ひとり暮らし)

次は事故で身体障害者となり、1級の認定を受け、ひとりで暮らしている場合、生活保護費がいくらになるのかを計算してみましょう。

■年齢の条件は以下のように設定します。
・愛知県名古屋市在住
・30歳

■計算方法
①「級地一覧表」で、住んでいる級地を調べます。
一覧表でみると、古屋市は「1級地-1」ということが分かります。

②個人別の生活扶助費を「生活扶助基準表」で調べます。
・本人30歳は、4万1,440円

③世帯の、扶助費を同じく「生活扶助基準表」で調べます。
1人世帯になりますので、4万4,690円ということが分かります。

④加算額を調べます。
加算額は、障害者加算1級ですので、2万6,310円となります。

⑤住宅扶助額を調べます。
愛知県で、1人世帯ですので、3万7,000円です。

⑥②から⑤までの金額を合計します。
4万1,440円+4万4,690円+2万6,310円+3万7,000円=14万9,440円

計算の結果、14万9,440円が生活保護費として毎月支給になるといえます。また、この金額の他に、他の扶助が必要な場合はさらに加算となります。

生活保護者の各種免除

国民健康保険料

生活保護受給者は、国民健康保険から脱退し、生活保護の「医療扶助」の対象になりますので、国民健康保険料の支払いが免除されます。よって、病院にかかった際の医療費を支払う必要がなくなるといえます。

手続きの方法は生活保護の「認定通知書」と印鑑を役場の国民健康保険の担当へ提出するだけです。

国民年金保険料

生活保護受給者は、国民年金保険料について全額免除になります。免除されていた期間も、老齢年金の受給資格の期間に算入されますので、生活保護された期間が300カ月あったとしても、年金を受け取ることができるといえます。

手続きの方法は生活保護の「認定通知書」と印鑑を役場の国民健康保険の担当へ提出するだけです。

介護保険料

生活保護者受給者は、生活保護の医療扶助を受けていますので、介護保険料は請求されないといえます。手続きは特に必要はありません。

NHK受信料

NHKの受信料も生活保護受給者は免除の特例があります。ただし、福祉事務所に用意されている申請書を提出する必要があります。NHK側は、その世帯が生活保護を受けているかどうかの判断ができませんので、免除申請がどうしても要ることになるといえます。

生活保護者の国民年金はどうなるの? | 生活保護の総合情報(条件 申請 基準 他)サイト
参照元: 生活保護の総合情報(条件 申請 基準 他)サイト(2015年12月時点、著者調べ)

NHK受信料の窓口-放送受信料の免除について
参照元:NHK受信料の窓口(2015年12月時点、著者調べ)

生活保護8つの扶助と免除されるもの一覧・もらえる種類は? | 手続きの窓
参照元:手続きの窓(2015年12月時点、著者調べ)

まとめ

いかがでしたでしょうか。生活保護を受けるかどうか迷ったら、まずは福祉事務所の担当者と相談することから始めることをおすすめします。保護を申請する理由がどうであっても、現実的に生活に困っているのであれば、迷うことなく相談することが良いといえます。

※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。