相続権利って何ですか?えっ?ウソ!身近に起こる意外な盲点

相続権利って何?自分には関係ないと思っていた遺産相続。それがいつの間にか自分が相続することになってしまった。なぜ?どうして?確かに、亡くなった人は自分の親族には違いないけれど、いつの間にか相続のお鉢が回ってきてしまった。どういう場合に相続人か変わってしまうのか、今回は実際起こりうる相続権利の移動について解説しましょう。



相続権利について

法定相続人の義務

亡くなった人がいれば、そこには「遺産相続」という問題が発生するといえます。

遺産相続とは、亡くなった人の財産や、一切の権利、義務を承継することをいい、それらを承継する人のことを「相続人」といいます。亡くなった人の財産や、一切の権利、義務は基本的に放置することが許されていません。誰かが、その財産や、一切の権利、義務を承継しなければならないといえます。

亡くなった人の戸籍を調べても、本当に承継する人がいなければ、その人の財産や、一切の権利、義務は国に帰属することになりますが、民法上の相続する権利を持っている人がひとりでもいれば、その人は、亡くなった人の財産、一切の権利、義務を承継することになってしまいます。

亡くなった人が遺した一切のものを承継する人のことを「法定相続人」といいます。法定相続人は、相続に関するすべての権利を有しており、特別な手続きをしない限り、その立場から逃れることはできないといえます。

被相続人(亡くなった人)の遺した財産や、一切の権利、義務には性質の良いものから悪いものまでいろいろありますが、法定相続人は相続する財産や、一切の権利、義務を選ぶことができませんので、基本的にすべてを承継することになります。

被相続人(亡くなった人)の遺したものには、家や土地などの不動産や現金、預貯金、株券、債券など、誰が見ても価値のある、いかにも「財産」と呼べるものと、住宅ローンや自動車ローン、その他の借金や税金の支払いなど、悪いイメージを持った価値の無いものも含まれることになります。前者の価値のある財産のことを「プラスの財産」といい、後者の価値のない負の財産のことえを「マイナスの財産」といいます。

法定相続人は、プラスの財産もマイナスの財産も両方承継することが求められています。このことは、民法第896条によって条文化されています。

民法
参照元:法務省(2015年12月、著者調べ)

法定相続人とは誰か

では、いったい誰人が法定相続人となるのでしょうか。被相続人(亡くなった人)の親族なら誰でも法定相続人になることはできません。民法第886条から第890条にその規定があります。具体的には、以下の人が法定相続人になることができます。

・被相続人(亡くなった人)の配偶者が妊娠している場合は、その胎児。
ただし、その胎児が死産であった場合は、相続人になることはできません。

・被相続人(亡くなった人)の配偶者
・被相続人(亡くなった人)の子
場合によっては、被相続人の孫やひ孫なども含まれます。

・被相続人(亡くなった人)の直系尊属
直系尊属とは、被相続人の親や、祖父母、曾祖父母のことをいいます。

・被相続人(亡くなった人)の兄弟姉妹
場合によっては、兄弟姉妹の子、つまり、被相続人からみれば、甥や姪

民法上では、以上の親族が法定相続人となることができます。被相続人が書き遺した遺言書に、相続人の指定があれば、その人は親族でなくても相続人となることができますが、民法上の法定相続人とは違ってきます。

民法上、以上の親族は法定相続人になることができ、相続する権利を持つことになります。しかし、法定相続人のすべてが、被相続人(亡くなった人)の財産や、一切の権利、義務を承継することはありません。法定相続人の中から、実際に被相続人(亡くなった人)のすべてを承継する人が決まることになります。

相続順位

相続するには、順位というものがあり、その順位にしたがって相続することになっています。被相続人(亡くなった人)の配偶者は常に相続人となりますので、順位には関係ありません。

・第1位:被相続人の子
場合によっては、孫、ひ孫も同じ順位で相続人になります。

・第2位:被相続人の直系尊属
直系尊属とは、親や祖父母、曾祖父母のことをいいます。

・第3位:被相続人の兄弟姉妹
場合によっては、兄弟姉妹の子が代わりに相続することもあります。

以上が、法定相続人が相続する場合の順位となります。同じ順位でも、実際相続することができるのは、被相続人(亡くなった人)から見て近い順になります。例えば、第1位は子孫ひ孫の順となり、第2位は親祖父母曾祖父母の順、第3位は兄弟姉妹甥や姪の順番となります。

また、第1位から第3位までのすべての人が相続することはなく、第2位の人が相続するのは、第1位の人が、相続開始前に既に亡くなっていることが条件となり、第3位の人が相続するのは、第1位も第2位も相続開始前に既に亡くなっていることが条件となります。

なお、遺言書がある場合で、相続順位についての記載がある場合は、遺言書に書かれた順位が優先されます。法定相続人の相続順位については、民法第889条に条文化されており、遺言書については民法第985条に条文化されています。



相続権利の無い相続人

相続人の死亡

法定相続人であっても、相続開始前に既に亡くなっている場合は、相続の権利はありません。その場合は、同じ順位の中で、相続人を決めることになります。もし、同じ順位に相続人がいない場合は、下位の順位の人が相続する権利を持つことになります。

相続人の欠格

例え相続人であっても、場合によっては相続する権利を奪われることがあります。

・自分が相続人になりたい、という理由で存命中の被相続人を殺害、または殺害しようとして逮捕され処罰された場合
・自分の相続順位を上げる目的で、他の相続人を殺害したり、殺害しようとして逮捕され処罰された場合
・存命中の被相続人が殺害されたことを知っていながら、告訴しなかった場合
・存命中の被相続人を脅迫したり騙すなどして、遺言を書かせたり、破棄させたり、または遺言書の内容を変更することを妨害した場合
・存命中の被相続人を脅迫したり騙すなどして、遺言書を変更させた場合
・遺言書を偽造、変更、破棄したり、隠したりした場合

以上のことをした場合は、相続する権利が奪われ、同じ相続順位の中で相続人を決めることになります。もし、同じ順位に相続人がいない場合は、下位の順位の人が相続する権利を持つことになります。このとこは、民法第891条に条文化されています。

相続人の排除

相続する権利を失う条件に、「相続人の排除」というものがあります。それは、被相続人が存命中に、その相続人から虐待されたり、重大な侮辱を受けた場合、被相続人はその相続人から相続する権利を奪うことができます。しかし、被相続人が自分で考えるだけでは効果がなく、家庭裁判所に申し立て、審理の結果妥当であると認められた場合に、その効力を発揮することができるようになります。

また、被相続人が亡くなった場合でも、遺言書にその旨が書いてあれば、その相続人は相続する権利を奪われることになりますが、この場合も、相続人の代表者がその遺言書を証拠として、家庭裁判所へ申し立てる必要があり、審理の結果妥当であると認められた場合に、その効力を発揮することができるようになります。このことは民法第892条及び第893条に条文化されています。

この場合も、相続する権利が奪われ、同じ相続順位の中で相続人を決めることになります。もし、同じ順位に相続人がいない場合は、下位の順位の人が相続する権利を持つことになります。

相続放棄

相続を放棄した場合も、相続する権利を失います。相続放棄した人は、初めから相続人でなくなり、プラスの財産もマイナスの財産もどちらも相続することはありません。ただし、相続を放棄するためには、自分の心の中で思っていても放棄したことにはならないでしょう。だからといって、他の相続人の相続を放棄することを明言しても、また、便せんなどに自筆で相続放棄する旨の文章書いて、署名押印しても効果はないといえます。

相続放棄を正式に行うには、自分で家庭裁判所に行き相続放棄の申し立てをする必要があります。そこで、審理され審判を受けることで、初めて相続放棄したことになります。

裁判所|相続の放棄の申述
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

非嫡出子と養子

非嫡出子の相続する権利

戸籍上、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子を嫡出子といい、内縁関係や愛人との間に生まれた子を非嫡出子といいます。嫡出子は被相続人の実の子ですから、相続する権利を持っています。では、非嫡出子は相続する権利を持っているのでしょうか。

平成25年9月4日の最高裁の判決により、非嫡出子にも、嫡出子と同等の相続する権利が認められました。それ以前の民法では、非嫡出子の相続割合は、嫡出子の1/2とされていましたが、最高裁の判決後は民法第900条の一部が改正されています。

法務省:民法の一部が改正されました
参照元:法務省(2015年12月、著者調べ)

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

養子の相続する権利

養子は、民法第727条により、養子縁組をした日から被相続人の子として認められていますので、実の子同様に相続する権利を持っています。ただし、以下の場合は相続する権利がありません。

・養子縁組をした後に生まれた養子の子には、相続する権利があります。
・養子縁組をする前に生まれた養子の子には、相続する権利がありません。

良くある例として、被相続人の子の配偶者を養子縁組をして、相続税の対策をする場合がありますが、被相続人の配偶者に連れ子がいる状態で、その配偶者を養子にしても、連れ子には相続する権利がありません。子の配偶者を養子にした後に生まれた子には、相続する権利があります。

相続全般 | 弁護士による相続相談
参照元:ソレイユ法律事務所(2015年12月時点、著者調べ)



遺留分による相続

遺留分とは、法定相続人のうち、配偶者と相続順位が第1位の人と第2位の人に与えられている、最低限の相続する権利のことです。相続順位が第3位の兄弟姉妹には認められていません。

亡くなった被相続人の遺した遺言書に、全財産を愛人に相続すると書いてあった場合、民法上では遺言書が優先され、法定相続人の相続順位や相続割合は無視されてしまいますが、残された配偶者や子にとっては非常に可哀想な結果となってしまいます。

その場合、民法第1028条において、無視されてしまった相続人を救済するために、一定の割合で相続する権利を認めています。配偶者や子は1/2を相続する権利が与えられ、親などには1/3を相続する権利が与えられています。

しかし、この遺留分を獲得するためには、黙っていても何ももらうことができません。被相続人の遺した遺言書に書かれている相続人に対して「遺留分滅殺請求」をしなければなりません。この請求も相続人に請求するだけでは効果が薄い場合もありますので、家庭裁判所に申し立てて調停をしてもらうのと同時に、相手方へ内容証明郵便で、遺留分減殺の請求を送ることも必要になります。

家庭裁判所では、双方の意見を調整し、間に入って話し合いを進めることになります。

裁判所|遺留分減殺による物件返還請求調停
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

代襲相続による相続

代襲相続によっても、相続する権利は移動します。

代襲相続とは、本来、相続人となるはずだった人が、相続開始前に亡くなっている場合、その人に代わって相続することをいいます。ただし、法定相続人でも代襲相続が認めらている相続人と、認められていない相続人があり、認められている場合も制限かある相続人と制限の無い相続人とに分かれています。以下にまとめてみました。

■代襲相続が認められている相続人
・被相続人(亡くなった人)の子
被相続人の子が既に亡くなっている場合は、相続する権利は、孫へ移動します。仮に、その孫も既に亡くなっている場合は、ひ孫へ相続する権利が移動します。

・被相続人(亡くなった人)の兄弟姉妹
被相続人の兄弟姉妹の中で、既に亡くなっている人がいる場合は、その人の子、被相続人から見れば甥や姪に、相続する権利が移動します。

■代襲相続が認められていない相続人
・被相続人の配偶者
残念ながら、配偶者が既になくなっている場合は、配偶者の親や甥、姪などには相続の権利は移動しません。

・被相続人の親
親が既に亡くなっている場合で、祖父母が存命ならば相続する権利は移動しますが、この場合、代襲相続とはいいません。

・相続放棄した相続人
相続した相続人は、初めから相続人でなくなるため、その子や孫には相続する権利がなくなります。

■代襲相続の制限がない相続人
・被相続人の子
被相続人の子や孫のことを直系卑属といいますが、子から孫、孫からひ孫、という具合に相続する権利は可能な限り移動することができます。

■代襲相続の制限がある相続人
・被相続人の兄弟姉妹
被相続人の兄弟姉妹の中で、既に亡くなっている人がいる場合は、その人の子、被相続人から見れば甥や姪に、相続する権利が移動しますが、これより先に進むことはなく、甥や姪で打ち切りとなります。

この代襲相続に関しては、民法第887条に条文があります。

民法
参照元:法務省(2015年12月時点、著者調べ)

まとめ

いかがでしたでしょうか。相続する権利というものは、場合によっては思いもしない人へと移動するといえます。自分は関係ないと、相続に関心を持たないでいると、いつの間にか相続の一員となることもあるといえます。

これを機会に、少しでも相続に対して興味を持っていただければ幸いです。

※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。