世帯分離して扶養に入れる?介護保険料が下がるって本当?

「世帯分離したら介護保険料が下がる」なんて話、聞いたことありませんか?実際のところ介護保険料が下がる場合もあります。それに伴って、様々なメリット・デメリットも生まれます。今回は同居している親と世帯分離をした場合のお金について、調べてみました。



世帯分離とは?

【世帯分離】という言葉、聞いたことはありますか?世帯分離とは、同じ家に住んでいる人の中で住民票上での「世帯を分ける」という手続きのこと。

例えば、Aさんと妻Bさんと子どもたち・Aさんの父と母がみんなで「1つの世帯」として1つの家に住んでいるとしましょう。このときAさんの父だけが「世帯主」となっています。

しかしAさんと妻Bさんと子どもたちが【世帯分離】の手続きをすると、Aさんの父とAさんの2人が「世帯主」となりますね。そしてAさんと妻Bさんと子どもたちが「1つの世帯」・Aさんの父と母が「1つの世帯」となるでしょう。 親と同居したまま結婚した場合や2世帯住宅に住んでいる方などに多い【世帯分離】。世帯分離をするとお金の面でメリット・デメリットがあります。

お金に関すること以外でも、例えば役所から手紙が来たときに「世帯主宛て」に来てしまうと内容を見られてしまうなどの点も解決することができるそう。 そして、世帯分離と扶養との関係も気になるところ。「自分や配偶者の親を扶養に入れているよー」という方、多いのではないでしょうか。「地方に住んでいる親を扶養に入れている」「同居していて扶養に入れている」など、扶養の形態も様々ですよね。今回はそういった<世帯分離と扶養>についても考えていきましょう。

また「扶養」といっても【税法上の扶養と健康保険上の扶養】は全く別物。だから分けて考えてくださいね。ではまずはその「扶養」について考えます。



扶養と世帯の意味

税法上の扶養とは?

1年の所得税を計算する確定申告・年末調整の際に必要なのが「税法上の扶養親族」がいるかどうかということ。納税する人に「税法上の扶養」となる家族がいる場合には、所得控除として一定額が差し引かれた上で、所得税額が計算されることになっていますね。

「税法上の扶養」になれるかどうかの条件として、配偶者以外の親族であること・納税者と生計を一にしていること・年間所得金額が38万円以下であることなどがあげられます。 この場合の「生計を一にする」というのは、納税者から生活費を仕送りしていたりといった納税者の収入を主として生活をしているということ。

「税法上の扶養」に関しては、同居でも別居でもどちらでもOKとされているとか。たとえ同居していてもそれぞれがそれぞれの家計の中でやりくりをしていることが明らかな場合には「生計を一にしていない」ということになるので、「税法上の扶養親族」とはなれないと言えるでしょう。

No.1180 扶養控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月現在、著者調べ) わかりやすい例で言うと、Aさんが単身赴任で県外に住んでいる場合、妻と子とは「世帯は別」となりますが妻と子がAさんの収入で生活しているのであれば「税法上の扶養」にできると言えますね。

また、両親と同居をしているBさん。同じ家の中で父とBさんがそれぞれ世帯主として住民票に届け出をしている場合、両親の世帯とAさんの世帯とで「世帯分離」をしていると言えます。しかし生計を一にしていて親の所得が38万円以下なら、「税法上の扶養」にはなれるはず。

社会保障制度における「世帯」の在り方について
参照元:鳥取県(2015年12月現在、著者調べ)

健康保険の扶養とは?

「健康保険の扶養」というのは、例えばAさん(=被保険者)が会社勤めをしていて会社の健康保険に加入している場合に、同じAさんの保険に被扶養者として一緒に入れるというもの。それぞれの健康保険によっても、扶養になれるかどうかの条件は変わってきますので、注意してくださいね。

「健康保険の扶養」で出てくる<同一の世帯>というのは、「同居して家計を共にしている状態」という意味。「住民票が一緒かどうか」という世帯とは違う意味で考えてくださいね。

健康保険に係る被扶養者の認定要件の見直し
参照元:総務省(2015年12月現在、著者調べ) まず被保険者の直系尊属や配偶者、子や孫などに関しては「主として被保険者に生計を維持されている」ということが一般的な条件の一つ。この「主として被保険者に生計を維持されている」というのは、被保険者のお金で生活ができているということ。親と子が別居している場合でも、子が親からの仕送りで生計を立てている場合には、これにあてはまりますね。

この場合、収入が130万円未満・60歳以上であれば180万円未満であること、被保険者からの仕送り額よりも収入が少ないことという条件も加わるそう。 また、上記以外の親族の中でも、後期高齢者医療制度に当てはまらない三親等以内の親族や配偶者の両親の場合には、「被保険者と同一世帯(同居していて家計も一緒にしている)で、主として被保険者の収入により生計を維持されている」という条件に当てはまっていれば扶養になることができるそう。

同一世帯の親族の場合には収入が130万円未満・60歳以上であれば180万円未満で、被保険者の年収を上回らないことという条件も加わります。

扶養と世帯の関連性は?

以上を見てみると、「扶養しているから世帯を一緒にしないといけない」という条件はないということがわかりますね。住民票では別世帯で別居していても扶養に当てはまる場合もありますし、また同居して住民票では同じ世帯であっても、扶養に入れられない家族もいるといえますね。

介護保険と世帯分離の関係

同居している親と世帯分離をするかどうかで、変わってくるものがいくつかあります。その中でも特に最近話題になっているのが<介護保険料>についてなんです。

「高齢の親を扶養に入れている・同居して同世帯にしている」という人と、「親は一人暮らし・年金で生活している」人とを比べると、同じ介護サービスを利用していても自己負担額にかなりの差が出る場合があります。また、収入や年金受給額が同じなのに毎月支払う介護保険料が異なることもあるんです。いったいどういうことなんでしょうか。 介護保険は「65歳以上で介護が必要な人・40歳~64歳で一定の病気から介護が必要になった人」が受けられるとされていますよね。介護保険で利用できるサービスは、介護の段階によって【要介護1~5、要支援1~2】の7つに分けられています。

その段階によって「利用限度額」というのが決められていて、その利用限度額以内であればサービスにかかった料金の1割(一定の収入がある人は2割)を負担するだけで済みます。もし利用限度額を超えてサービスを利用した場合には、全額自己負担となります。 しかし、その1割分の自己負担額においても【自己負担限度額】というのが決められているんです。「世帯が住民票非課税者で、課税年金収入と所得が80万円以下」の場合には、自己負担額は個人で15,000円まで。「低所得者等以外」では世帯合算で37,200円まで。「住民税世帯非課税者等」では世帯合算で24,600円までとなっており、それ以上に支払った場合には<高額介護サービス費>として支給されることになっているそう。 例えばAさんと親が住民票で同じ世帯になっている場合には、親の所得が0円だとしてもAさんが「低所得者等以外」であれば親の負担額として37,200円を支払わないといけません。

しかしBさんと親が世帯分離をしている場合、Bさんにいくら収入があったとしても親の所得が0円であれば15,000円までしか払わなくて良いということになるでしょう。

介護保険 : 知るぽると
参照元:金融広報中央委員会(2015年12月現在、著者調べ) さらに【介護保険料】も、世帯の収入によって段階があります。自治体によって異なる介護保険料ですが、例えば渋谷区の場合。第1段階の「生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で世帯全員が区民税非課税」であれば1年で30,400円ですが、第5段階の「本人が区民税非課税で世帯に区民税課税者がいる」方は、本人の収入が第1段階と同じであっても47,300円を支払わなければならないことになるでしょう。

つまり、先ほどのAさんと親のように世帯を一緒にしている場合では、Aさんは区民税課税者となっているため介護保険料は47,300円となるのに対し、Bさんの親では世帯分離しているため30,400円の支払いで済むということになってしまうそう。

渋谷区/保険料
参照元:渋谷区(2015年12月現在、著者調べ) また自治体によって「生計困難者等に対する利用者負担軽減制度」というものを取り入れていることもあります。例えば、東京都世田谷区の場合。条件すべてに当てはまる人であれば、介護保険料の一部を助成してくれる制度があるのだそう。

条件には「住民税が非課税の世帯であること、単身の場合年間収入150万円以下で預貯金等が350万円以下であること、扶養してもらえる親族がいないこと」などがあります。そして軽減できるサービスを受けられる事業者も、申請をしているところでないといけないので、この制度を利用したい人は事前に確認することをおすすめします。

同居していることで世帯を分離していても「扶養してもらえる親族がいる」とされる場合もあります。どうしても扶養してもらえない場合は、きちんとその事を担当者に説明するのが良いでしょう。

生計困難者等に対する利用者負担軽減制度(さくら証) – 世田谷区
参照元:世田谷区(2015年12月現在、著者調べ)



国民年金と世帯分離の関係

国民年金も、「本人・世帯主・配偶者」の前年の所得が少ない場合には全額免除・一部免除の特例を受けることができるそう。収入の少ない方でも、ただ払わないでいるよりも免除の申請をしておいた方が、年金を受給するときに有利になることが多いのだそう。

世帯分離をすると、自分の世帯だけの所得を考慮すればいいことになるので、所得が一定額以下になり特例の条件に当てはまる可能性があるという人も増えるのではないでしょうか。

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月現在、著者調べ)

国民健康保険への影響は?

社会保険の被保険者や被扶養者とならない方は、国民健康保険に加入しますよね。国民健康保険料も世帯によって保険料が変わってくることがあります。ただ、国民健康保険に関してはメリットだけでなくデメリットもありますので、注意が必要です。 国民健康保険の保険料は、扶養という考え方がありません。世帯主の人が社会保険に加入していても、その世帯分の国民健康保険料は、世帯主が払うことになっているんです。また、保険料は世帯単位での上限額が定められているそう。

東京都の場合で考えていきましょう。保険料の計算は4つの組み合わせで成り立っています。世帯加入者の所得によって計算される所得割、世帯加入者の資産によって計算される資産割、世帯加入者の人数によって計算される均等割、一世帯あたり設定されている平等割です。そして特別区と市町村によってそれぞれの組み合わせ方や税率も異なっているんだとか。 また東京都北区の場合には、前年の総所得金額が33万円以下の世帯だと保険料の均等割額が7割軽減されるという特例も。この計算は世帯ごとに計算されることになっているため、世帯の全体の所得が関連してきます。

例えばAさんが会社の健康保険に加入していて、同じ世帯に住んでいるAさんの両親が国保に加入しているとしましょう。Aさんの両親の所得が33万円以下の場合、世帯分離をしていたら軽減の特例に当てはまりますが、世帯が一緒になっているとAさんの所得も一緒に計算されるため軽減措置に当てはまらなくなりますよね。 しかし、先ほど保険料には上限があると言いましたが、例えばAさんと両親が同一世帯で上限額いっぱいの保険料を納めていた場合。両親と世帯分離をしてもAさんの保険料がそれでも上限額いっぱいである場合には、両親世帯の保険料がまるまる納める必要が出てくる場合もあるそうなので注意しましょう!

また、世帯ごとに計算される【平等割】の保険料も1世帯分が増えてしまうため、保険料がUPする場合もあるそう。

自己負担額の上限も変わります!

国民健康保険に加入している人で医療費の自己負担額が高額になった場合「高額療養費」として上限が決められています。その上限額も世帯の所得によって変わることになっているんだそう。その「世帯」とは、住民票上で同じ世帯であり、その中でも国保加入者の所得を合わせた金額が基準となるんだとか。

平成27年度からは、所得金額901万円以上の場合には「252,600円+(医療費-842,000円)×1%」が上限に。所得金額210万円~600万円以下では「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」。世帯主・国保加入者全員が住民税非課税の場合には35,400円が上限額となるそう。 例えば所得1000万円のAさん夫婦と、年金も受給していなく他の収入もわずかしかないというAさんの父、みんなが国民健康保険に加入しているとしましょう。3人が同じ世帯になっている場合、Aさんの父だけが病院に通っていたり、入院をしていたりした場合でも、約252,600万円は医療費を支払わなければなりません。

しかしAさん夫婦と父が世帯分離をしている場合。Aさんの父の所得から考えると、医療費の上限は35、400円となるでしょう。

また、70歳以上の場合には自己負担額の上限は変わってきます。Aさんの父の場合「低所得1」に該当するため、外来では8,000円・入院をしたとしても15,000円が自己負担となるでしょう。

横浜市 健康福祉局 国民健康保険 高額療養費支給制度
参照元:横浜市健康福祉局(2015年12月現在、著者調べ)

おわりに

いかがでしたか?世帯分離をすることで、様々なメリット・デメリットも生まれることがわかりましたね。

世帯分離をするためには役所で「異動届」にチェックするだけですみます。しかし最近では、実際の生活は同一世帯であるにも関わらず、税金や介護保険料を減額するためだけに世帯分離をする方も増えているそう。すると、正しく届けている人との不公平が生まれてしまいますよね。そのためチェックが厳しくなっている自治体も増えているそう。

また、ここに書いていない他のメリットやデメリットも様々あるんだそう。「介護保険料が下がるから!」という理由で安易に世帯分離をすると、後々困ることや負担が増えることもありますので、しっかりと調べてから行いましょうね。

正しい届け出で、自分たちの生活で少しでも余裕が持てるように考えることをオススメします! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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