婚姻費用の算定表で見えてくる?離婚に向けての生活費の目安…!

3組に1組は別れる、などと言われる日本の離婚…別れの理由は様々ですが、離婚を考えているあなた、修復したいけれど別居中のあなたも、婚姻費用として生活費を請求することができるのです。離婚に踏み切る前に、まず当面の生活費の目安を立ててみませんか?算定表から明らかになる、婚姻費用の相場とは!?



もう離婚するしかない…?その前に考えるべきこと

いまや離婚大国といわれる日本、夫婦関係が破綻しても冷静に協議を重ね、お互いが納得のうえでスッキリとお別れ…!なんて話は、ある意味ラッキーなケースといえるのではないでしょうか。

離婚に到達する前にどちらか一方が家を出て生活の拠点を移した、または同居していても家庭内別居状態、自分ひとりの収入では暮らしていけないのに生活費を渡してもらえない、そんな苦境に追い込まれることも少なくはないようです。
兵糧責めで困らせて自分に有利な離婚条件を引き出そう、と考えるひとがいるのは残念ながら事実のようです。

けれど、泣き寝入りをすることはありません。
民法752条には、以下のように定めらています。

第七百五十二条  夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

出典:

law.e-gov.go.jp
すなわち、別居となった場合に、夫婦の一方の生活だけが成り立てばいいのではなく、配偶者が経済的に弱い立場であれば、相手方の生活も保持する義務があるのです。

自分の人生を大きく左右する出来事となる離婚。その決断をする前に、現状の生活水準をしっかり確保してから、今後の人生や生活設計を考える必要があるのではないでしょうか。



婚姻費用分担請求ってなに?

同居していて良好な夫婦関係であれば、どちらか一方しか収入がない、または多くても、その収入を共通の生活費として消費していたでしょう。しかし、夫婦関係が破綻してしまうとかわいさ余って憎さ百倍?!金銭を渡したくなくなる、それも人情なのかもしれません。

別居、あるいは関係が破綻したとしても夫婦である限り、収入のない、または少ない側が生活を保持するための生活費を一方が負担する義務があるのだと理解し、話し合いでお互いが合意すれば良いのですが・・・金額の折り合いがつかないことが多いようです。

「婚姻費用分担請求」とは、収入がない、または少ない配偶者の生活費=婚姻費用を負担することついて、話し合いで合意ができない場合や、話し合いすら応じてもらえない場合に、家庭裁判所に対して調停を申し立てる手続きのことです。

収入が多い方が主導権を握りがちな生活費、その公平な分割は司法に委ねることによって確保することができるのです。

裁判所|婚姻費用の分担請求調停
参照元:裁判所(2015年12月時点、著者調べ)

婚姻費用で請求できるのはどんな費用のこと?

婚姻費用とは、家族が社会生活を維持するために必要な生活費のことを差し、夫婦の他に未成年の子供がいる場合は、子供にかかる費用も含まれます。

家族全員の生活を維持するために必要な費用としては、住宅費、光熱費や食費などの生活費には相応の娯楽費や交際費も含まれ、その他に医療費や子供の学費なども含まれるようですが、その額は財産や収入、あるいは社会的地位による生活レベルに応じた金額になるようです。

Q1. 「婚姻費用」には,どのような費用が含まれるのですか。

A. 婚姻費用には,衣食住の費用のほか,出産費,医療費,未成熟子の養育費,教育費,相当の交際費などのおよそ夫婦が生活していくために必要な費用が含まれると考えられています。

出典:

www.courts.go.jp

調停ってどんなことをするの?

婚姻費用の調停は夫婦間の紛争ですから、性別の違いによる心情を理解できるように配慮されていて、男女1人ずつの調停委員が選任されます。

調停委員は、双方の主張を聴取し、希望に隔たりがあればときにアドバイスや譲歩を求めながら、合意できる金額が成立するように仲介役を果たしてくれます。
調停委員が正当な主張だと判断すれば、相手方を説得してくれることもあるようです。

例えば、浮気相手と一緒に暮らし始めた夫が離婚を迫って生活費を渡さなくなってしまったとか、理由もなく勝手に別居を始めてしまったのに生活費を極端に減額されてしまったなど、相手方の一方的な理由で困窮しているとしたら、金額の算定に少なからず影響がありますから、しっかりと伝えることが重要です。

婚姻費用の調停では、生活弱者となっている側の日々の暮らしが窮地に追いやられ破綻しないよう、早期の解決を目指すことが一般的です。調停委員が仲介しても双方の主張に歩み寄りがなく、合意が難しいと判断されると、裁判官が直接判断を下す「審判」に移ります。

調停委員には裁判官のような決定権はありませんが、調停委員が聴取した内容は裁判官に伝えられ、「審判」で重要な役割を果たします。そのため、調停では自分の正当性を共感してもらえるよう、別居の経緯や主張を裏付ける資料を提出しましょう。

DV、モラルハラスメント、あるいは配偶者の不貞などの被害を受けてきた場合は、心に酷い傷を負わされていますから感情的になってしまうのは無理もありません。しかし、調停においては感情を抑えることが必要です。心を落ち着け整理して伝えましょう。

審判になると、どうなるの?

調停では交互に部屋に呼ばれ、調停委員に対して個別に主張をしたり書類を提出したりしましたが、審判では裁判形式で一同に介されます。主張は裁判官に対して述べ、裁判官から直接、質問が投げかけられますので、裁判官に対して応答します。ひと通りの質疑応答を経てから、裁判官は夫婦の財産や収入・支出、子供がいる場合の養育費など全ての状況を考慮して判断するのです。

審判においても、いたずらに審議が長引くことはないようです。婚姻費用を負担する側は極力少ない金額を、請求する側は少しでも多くの金額を望む…裁判官はどうやって具体的な金額を短い期間で決定するのでしょうか?

東京・大阪の裁判官の共同研究の結果として作成されている「婚姻費用算定表」を指標として費用を算定しているのです。婚姻費用算定表は、所得に応じた生活費の標準が想定されていて、早見表のようにグラフ化されています。裁判所のサイトにアクセスすると、PDF資料が公表されています。

裁判所|養育費・婚姻費用算定表
参照元:裁判所(2015年12月時点、著者調べ)

私のケース、婚姻費用算定表はどこを見ればいいの?

裁判所のサイトに公表されている算定表には、養育費と婚姻費用が掲載されていますが、婚姻費用については表10から表19に渡り算定されています。10ページに渡る算定表には、夫婦のみの場合と子供がいる夫婦の場合に分かれており、子供の人数やその年齢に応じて細かく分類されています。

子供の人数は3人まで、年齢においては0歳から14歳、15歳から19歳と区分されています。表の縦軸には、費用を負担する義務を負う側、横軸には請求する権利がある側の年収が、それぞれ自営業者・給与所得者別に段階づけられています。

注意が必要なのは「年収」が判断基準である、ということです。

給与所得者であれば、税金や財形貯蓄、生命保険の天引きなどがなされる前の金額であり、自営業者であれば、課税される所得金額に青色申告控除・基礎控除等を足した金額で確認してみましょう。

表には、0から1万円、1万円~2万円、それ以上は2万円刻みで金額が表示されています。縦軸と横軸、それぞれ該当する収入額にラインを引いてみるとわかりやすいかもしれません。2つのラインが交錯する箇所に示された金額が、裁判所が指標としている算定額ですから、大体の予測がつけられるのではないでしょうか。

婚姻費用算定表の金額が絶対なの?

支払義務者の収入が、婚姻費用算定表の上限額の範囲内であれば、双方によほどの事情がない限り、裁判官は算定表が示す範囲内を限度に決定することが多いようです。ニュースを賑わす芸能人や海外の話題のように桁外れの金額になることは、ほとんどないといえるでしょう。

ただし、暴力や不貞など一方に大きな過失があるとか、収入の他に大きな資産がある場合、高額な診療費を要する持病がある場合などは、増額や減額の対象となるようです。

子供の年齢は19歳までの表示となっていますが、学歴社会の昨今、大学の進学は一般的になっていますので、19歳を超えていても学費の負担分が考慮されることはあるでしょう。また、支払う義務のある側の収入が算定表に示された金額を超えている場合は、同居中の生活レベルを参考に算定されると思われます。

審判へと移行した場合は、根拠となる資料の提出が重要な鍵を握るといって良いでしょう。

婚姻費用分担費用義務ってどういうこと?絶対もらえる?
参照元:はじめての離婚(2015年12月時点、著者調べ)

自営業者は予想外なことも・・・!

婚姻費用算定表は、双方の収入の結果という事実を大前提にしています。給与所得者の収入は、勤務先の会社が発行する源泉徴収票がすべて、その金額は隠し立てのしようがありません。昇格や降格などで多少の違いがあっても正確な数字は弾き出すことができます。

しかし、自営業、特に中小企業の会社役員の場合はどうでしょうか?

役員報酬というのは、会社の業績にかかわらず設定が自由です。原則として、役員報酬の改定は事業年度開始日から3カ月以内でなければならないという縛りがありますが、会社の増益による課税を避けるための増額=脱税を阻止することが主要であり、減額に関しては期の途中であっても比較的寛容なのだそうです。

中小企業でワンマン経営の代表取締役であれば、比較的簡単に操作できてしまうと考えられるでしょう。実際に、調停を申し立てられてから間もなく役員報酬を何十万も下げる、などという手段をとるひともいるのだそうです。

悪意に満ちた操作が目に見えているようであっても、既成事実を作られてしまうと、実際に改定された低い役員報酬で算定せざるを得ないのが実状のようです。

別居時に婚姻費用算定表を正しく利用して請求できる金額を計算する方法
参照元:ベリーベスト法律事務所(2015年12月時点、著者調べ)



婚姻費用算定表から考えるこれからのライフプラン・・・!

婚姻費用請求の調停を申し立てるということは、生活費をめぐり夫婦間に紛争が起きているということでしょう。婚姻費用の請求は、生活費を確保するための戦いといっても過言ではないのかもしれません。

戦いに勝利するには、戦略を練ることが一番重要です。

ここまでは、調停を申し立てたケースをご紹介しました。しかし、協議が可能であれば、具体的な生活費を請求する根拠として婚姻費用算定表の数字をあげて交渉してみる、それも1つの戦略かもしれません。突然、裁判所から通知が届くのでは相手方の態度が硬化する恐れもありますし、早期解決を目指しているとはいえ、司法に仲裁を委ねると数か月の時間を費やすことになってしまうからです。

協議の余地がない、全く主張を取り合ってくれない場合は、なるべく早く生活を保持する行動を起こすことをお勧めします。迅速な行動…それもまた、離婚に向けての1つの戦略といえるでしょう。

離婚に向けたマネープラン、そして離婚後のライフプランを・・・!

調停が不成立になり審判に移行したとしても、基本的には公表されている婚姻費用算定表の金額の範囲内に落ち着くことが多いのが現状のようです。前項で、婚姻費用の確保は夫婦間の戦いともいえる、そうお話しました。戦いには勝ち負けが付いてまわるものですが、もし、算定結果があなたの希望する金額より少なかったとして…それは戦いに負けたことになるのでしょうか。

生活費がいつ途絶えるか判らない、金額を勝手に変更されるかもしれない、婚姻費用の決定で、そういった不安から逃れることができる…あなたが真に勝ち取らなければならないのは、一方的に途切れることのない安定した収入がある、という安心感なのではないかと思います。

離婚するまでの間は、毎月固定の金額を確保できる…ということは自立するまでの生活設計、マネープランが立てやすいということでもあるのです。

社会保険制度には雇用保険の被保険者が離職した際、失業中の生活を心配せずに、新しい仕事を探し、再就職するために支給される失業保険給付の制度がありますが、婚姻費用の確保も少し似た性質があるように思います。失業保険は被保険者であった期間に応じて一律に給付期間が決まっていますが、婚姻費用の期間に一律の期限は決められていません。

期限は、原則として別居が解消するか、離婚するまで。

婚姻費用の確保によって、じっくりと離婚について考える、これから自分がどうあるべきか考える…そんな時間を勝ち得た、と捉えることができるのではないでしょうか。

共に同じ道を進んできた夫婦生活、すぐ先に分岐点があるのは見えています。いずれは婚姻費用に頼らずに生活していかなければならない、そう考えて自立に向けて動きだしませんか?

新しく仕事を得る、資格を取得することも良いでしょう。活き活きと輝いて颯爽と生きていく、これから先の自分のために、与えられる時間を有効に利用してみましょう…!

分岐点の向こうに晴れやかな景色が待っていることを信じて。

婚姻費用算定表に基づいた計算機/弁護士実務
参照元:河原崎法律事務所(2015年12月時点、著者調べ) ※本記事の情報は、一般的または筆者個人の調査によるものです。法令などの改正、前提事実や個人状況の違いや変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。 従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。