「婚外子」の相続|もしパートナーに隠し子がいたらどうする!?

結婚していたパートナーが亡くなったあとに、驚くかもしれません。実はパートナーには、ほかの相手との間に生まれた子どもがいたのです。この子どものことは「婚外子(こんがいし)」と呼ばれています。その婚外子は果たして、亡くなったパートナーの遺産を相続する権利を持っているのでしょうか?わかりやすくお伝えします。



そもそも婚外子ってなに?

そもそも婚外子(こんがいし)とは、どういう子どものことをいうのでしょうか?婚外子の相続についてお話をするまえに、まずは婚外子についての説明をします。単純な内容ですが、知らないとあとで大変なことになるかもしれません。

もしものときのために、ぜひ、参考にしてみてください。

結婚していない相手との子ども

婚外子とはその漢字のとおり、「結婚していない相手との間に生まれた子ども」のことです。そのままですね。

たとえば、A夫さんはB子さんと結婚しているとします。しかし、A夫さんがC美さんと浮気をしたとします。そして、A夫さんとC美さんの間に、D菜ちゃんという子どもが生まれたとします。このとき、D菜ちゃんは「結婚していない相手との間に生まれた子ども」なので、婚外子となります。

婚外子は他にも、「隠し子」や「非嫡出子」とも呼ばれています。「隠し子」と聞くと不思議とイメージがわきやすいですね。ちなみに、「結婚している相手のとの間に生まれた子ども」は「嫡出子」とよばれます。

ひょっとしたら、「隠し子なんてドラマの世界だけの話じゃないの?自分には関係のないんじゃない」と思っている人もいるかもしれませんね。しかし、ひょっとしたら、あなたも婚外子にかかわる可能性もあるかもしれません。

実際、厚生労働省の人口動態統計によれば、2011年から、毎年2万人以上もの婚外子が生まれています。毎年生まれる子どもの約2%が婚外子なのです。つまり、「50人に1人以上は結婚していない相手との間にできた子ども」なのです。婚外子全員が隠し子というわけではないでしょう。しかし、「実は隠し子いた」という経験をする人も、中にいるのではないかと個人的には思います。

家族観の変化重視、「個人の尊厳」優先 婚外子差別は違憲  :日本経済新聞
参照元:日本経済新聞(2015年12月時点、著者調べ)

嫡出子と非嫡出子とは?
参照元:相続税・贈与税・遺言(2015年12月時点、著者調べ)



婚外子の相続についての制度

さて、婚外子がどういった子どものことを指すのかご理解いただけましたか?次は、婚外子が自分の親の遺産を相続できるのかどうかについて解説をしていきます。

結婚していないとは人との子といえ、亡くなった人(被相続人)とは血のつながりのある実の親子です。被相続人の遺産を相続することはできるのでしょうか?

この点は、平成25年12月に民法が改正され、婚外子の相続に関する制度が変わりました。ここでは、民法の改正前と改正後の両方の制度を見ていきましょう。

民法改正前の制度

結婚していない男女の間に生まれた婚外子でも亡くなった人(被相続人)との血のつながりは存在するため、被相続人の遺産を相続することができます。ただし、結婚している相手との間に生まれた子どもと同じ権利は持っていませんでした。

民法では、非相続人との関係によって、どの割合で遺産を相続するのかという法定相続分というものが定められています。被相続人の結婚相手(配偶者)は遺産の1/2です。結婚している相手との間に生まれた子ども(嫡出子)は遺産の1/2です。それに対して、民法が改正する前は、相続できる遺産の割合が結婚している相手の子どもの1/2となっていました。つまり、結婚している相手との子どもの半分しか遺産を相続できないのです。

たとえば、遺産が6,000万円あったとします。その場合の遺産の分け方は以下の通りです。

・配偶者:3,000万円(6,000万円の1/2)
・嫡出子:2,000万円(6,000万円の2/6)
・婚外子:1,000万円(6,000万円の1/6)

結婚をしていない相手のとの間のこというだけで、嫡出子の半分しか相続できないわけです。
このれらの条件については「婚姻(結婚)関係を尊重する」という考えの下の処置で、民法第900条第4号によって定められていました。

民法第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

出典:

www.moj.go.jp

民法の改正後の制度

同じ親の子どもなのに、相続できる遺産が半分というのはなんだかかわいそうな気もしますよね。「嫡出子の1/2しか相続できない」ということが定めてある民法第900条第4号ですが、改正がされました。日本国憲法によって、定められた平等の原則に違反しているという判決が最高裁判所で出されたからです。

平等の原則については、日本国憲法第14条によって定められています。つまり、「親同士が結婚していないからといって、相続できる遺産が1/2になるのは、平等の原則に反する」と判断されたわけです。

日本国憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

出典:

law.e-gov.go.jp
これにより、民法が一部改正となりました。婚外子でも、親の遺産を嫡出子と同じ割合で相続できるようになったのです。そのため、現在では、以下のような取り分になります。

6,000万円の遺産を、結婚している相手(配偶者)、結婚している相手の間にできた子(嫡出子)、結婚していない相手の戸間にできた子(婚外子)で相続する場合。

・配偶者:3,000万円(6,000万円の1/2)
・嫡出子:1,500万円(6,000万円の1/4)
・婚外子:1,500万円(6,000万円の1/4)

つまり、婚外子にも結婚している相手の子と同じ権利が認められたということです。

法務省:民法の一部が改正されました
参照元:法務省(2015年12月時点、著者調べ)

婚外子の相続を左右する認知とは?

ただし、婚外子の相続が認められない場合もあります。それは、婚外子の存在を親が認知していない場合です。

認知とは、法律用語で、「この子は私の子どもです」と父親が認めることをいいます。母親の場合は、自分で出産しているの、自分の子どもに間違いないですよね。しかし、父親の場合は他の男性の子という可能性もあるので、このような手続きが設けられているようです。

この認知が行なわれていない婚外子は遺産を相続する権利が認められません。したがって、どんな認知の種類があるのかをご説明します。

婚外子の認知の種類1|任意認知

もっとも一般的な方法です。父親が市町村役場に認知届(市町村役場においてあります)を提出して、「この子は自分の子どもです」と認めるやり方です。

婚外子の認知の種類2|遺言認知

その名のとおり、遺言で「この子は自分の子どもです」と認めるやり方です。「実は私には愛人と間にできた子どもがいます」と記載するわけです。

婚外子の認知の種類3|裁判認知

父親が「自分の子どもではないです」と否定している場合に行なうやり方です。父親を相手にして、「自分をあなたの子どもだと認めてください」という裁判を起こすやり方です。

婚外子の認知の種類4|強制認知

DNA鑑定を使って、科学的に父親の子であると確認するやり方です。DNA鑑定のつながりが出れば、父親が否定していたとしても、裁判所によって認知が完了します。

ただし、「強制」とはいっても父親に無理やり「DNA鑑定をするので、血液を提出してください」と言うことはできません。また、父親が亡くなってから3年以上経っている場合は強制認知を行なうことはできません。

愛人の子、婚外子(非嫡出子)は相続することができるのか?
結婚をしていない男女の間に生まれた子のことを『非嫡出子』(ひちゃくしゅつし)と呼びます。非嫡出子(愛人の子)がいる場合、相続時にどんな問題があるのでしょうか? 参照:相続情報ラボ 2015年12月4日時点 著者調べ

「入籍しないし認知もしない」男性に子どもを「強制認知」させる方法とは?|弁護士ドットコムニュース
参照元:弁護士ドットコムNEWS(2015年12月時点、著者調べ)



婚外子の親は遺産を相続できるのか?

婚外子に遺産を相続する権利があることはわかりました。では、婚外子の親はどうなのでしょうか?結婚していない愛人や浮気相手は法律的に相続が認められるのでしょうか?それとも、遺産を相続するのは、認められないのでしょうか?

基本的には婚姻関係が尊重されます

婚外子の親は基本的には遺産の相続の対象にはなりません。結婚をしていない上に、被相続人とは婚外子と違い血のつながりもないため、相続する権利がないとされています。

しかし、例外があります。非相続人の遺言に、「婚外子の親にも遺産を相続させる」という旨が書かれていた場合は、遺産を相続できるとされています。

ただし、被相続人の遺書に「婚外子の親にすべての遺産を相続させる」という旨が書かれていても、結婚している人は遺留分(最低限度の相続分)を請求することができます。

相続できるのは誰?(内縁の妻など特別縁故者が受取るには?)−やぶき行政書士事務所−
参照元:やぶき行政書士事務所(2015年12月時点、著者調べ)

婚外子の調べ方

縁起でもない話ですが、自分のパートナーに婚外子がいるかどうかを調べたい場合はどうすればいいのでしょうか?

ここでは、カンタンにできる方法をお伝えします。しかし、「婚外子がいるかどうかを調べている」ということをパートナーが知ったら気分を害する恐れがあると思います。なので、もし実際に調べる場合は、パートナー本人に知られないようにこっそり行なうのがいいのではないかと私は考えています。

戸籍謄本の取得する

婚外子がいるかどうかを判断する一番カンタンな方法はパートナーの戸籍謄本を取得することです。もしも、婚外子がいた場合は、戸籍謄本にあなたの知らない子どもが記載されているかどうかで判断することができます。

戸籍謄本は結婚している相手のものであれば、取得することができます。また、自分の親に婚外子がいるかどうかを調べたい場合は、自分の親の戸籍謄本をするといいでしょう。

ただし、父親の場合は、婚外子がいたとしても、認知(この子は自分の子ですと認める手続き)をしていない場合は、戸籍謄本には名前が記載されません。

戸籍謄本は1通あたり、約450円で取得できます。くわしい費用は、お近くの市役所や区役所に確認してください。

戸籍の証明書の種類・手数料:新宿区
参照元:新宿区役所(2015年12月時点、著者調べ)

法務省:戸籍における嫡出でない子の父母との続柄欄の記載の変更について
参照元:法務省(2015年12月時点、著者調べ)

お金の動きを調べる

心当たりのない相手に振込みをしているかどうかで、婚外子を判断する方法です。銀行預金の通帳をみて、毎月知らない相手に仕送りをしていないかをチェックします。ただし、心当たりのない相手へ振込みをしているからといって、必ず婚外子がいるわけではないでしょう。なので、早合点をしないようにしたほうがいいかと思います。

探偵に依頼する

戸籍謄本もお金の流れもチェックしたけど、婚外子がいるかどうか心配という人も中にはいるかもしれません。そういう人には最後の手段があります。かなり本格的な方法ですが、探偵に婚外子がいないかどうかを調査してもらうという方法です。個人的には、ここまでくると少しやりすぎという気もします。ただし、費用がかかりますので、相談をする前に見積もりを出してもらいましょう。

まとめ

もしかしたら、「夫婦で一緒に作ってきた遺産を結婚していない相手との子に奪われるのはイヤ」と感じる人もいるかもしれませんね。しかし、婚外子は好きで婚外子に生まれてきたわけではありません。

たしかに、結婚相手に実は隠し子いたら誰でもそうとうショックを受けると思います。しかし、婚外子には何も罪はないと思います。「自分は婚外子に生まれてこようと決めていた!」という人はおそらくいないでしょう。

万が一、婚外子が現れても悪者扱いをしないことを個人的にはおすすめします。遺産相続をするためには、「遺産を誰がどれだけ相続するのか?」を決める遺産分割協議という手続きを完了する必要があります。この手続きを完了するためには、遺産を相続する資格を持っている人(相続人)全員の「この遺産のわけ方で大丈夫」という合意が必要です。

しかし、婚外子を悪者扱いして、「あなたには遺産をちょっとしかあげません」という対応をしてしまうと当然、婚外子は「この条件では、合意はしません」となります。

実際、「京都の紅茶王」と呼ばれた福永兵蔵さんの遺産相続をめぐって、遺族は、福永兵蔵さん婚外子の人と10年以上、相続争いをしているそうです。血を分けた兄妹と、10年間以上も相続争いをするのは、想像したくないほど苦しいですよね。

突然、現れた婚外子に遺産を相続させるのは、複雑な気持ちになると思いますが、婚外子に罪はありません。なので、婚外子を交えた遺産相続は、できれば穏便に終わらせられるといいと私は思います。

遺産分割協議/相続の基礎知識/遺言相続支援センター
参照元:遺言相続支援センター(2015年12月時点、著者調べ)

京都の紅茶王 「遺産バトル」の怪
参照元:東スポWeb(2015年12月時点、著者調べ) ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。