夢のローン0円住宅|これからどうなる?売電収入

「ローン0円住宅」は大容量太陽光発電による売電収入により住宅ローンを相殺するという考え方から生まれた夢の住宅です。制度開始以降、買取単価引下げの連続で幻になりつつありますが、売電収入によるローン軽減効果は高いと思われます。売電収入だけに目を奪われず、省エネ性能の高さも考えたうえで取り入れを検討されてはいかがでしょうか。



ローン0円住宅とは

売電収入をローンに充当するという考え

ローン0円住宅とは「10kw以上の大容量太陽光パネルを家屋の屋根やガレージ屋根などに搭載し、全量買取契約を電力会社と結ぶことで20年にわたる売電収入を得る→それを住宅ローンに充当し、ローンが実質0円になる」という考えで提唱されている住宅だということです。

しかし、住宅ローンといってもその家によって住宅価格は違いますし、ローンが必ずしも0円になるわけではありません。まず住宅ローンに土地価格も含まれている場合は、ローン0円住宅にはなることはないと思われます。では建物価格だけならローン0円で建てられるということなのかというと、これも家の大きさ、載せる太陽光パネルの容量によって変わってきます。

つまりローン0円住宅とは必ずしもローンが0円になるとはいうものではなく「パネル容量とローン借入額によってローンが0円になる場合もある」ということなのではないでしょうか。「ローン0円」と聞くと、なんだ?と気になりますよね。誰だって住宅ローンを返済していくのは不安なものです。

住宅メーカーは顧客をまず引き寄せ、顧客の家選びの土俵に上らないことには話になりません。「ローン0円住宅」という文句は、悪い言い方をすれば客寄せのために大げさに表現された「エサ」のようなものではないかと思われます。

0円住宅
参照元:イシンホーム住宅研究会(2015年11月:著者調べ)

住宅ローン0円の理由 | 福岡×0円住宅
参照元:株式会社ハウスフィールド(2015年11月:著者調べ)

1,000人の女性が考えた! 家事と家計にやさしい住まい
参照元:アキュラホーム(2015年11月:著者調べ)

ローン0円住宅は誇大広告か

では、ローン0円住宅というのは誇大広告なのかというと、それもまた微妙なのです。実際に住宅ローン以上の金額を発電している家はあるからです。ただこれは本国における、太陽光発電システム固定価格買取制度開始当初の税込42円という買取価格だからこそ実現しているとも考えられます。

しかし住宅ローンは自己資金も返済期間も人によってそれぞれですので、月々5万円程度のローンであれば売電収入で支払っていくことも十分可能だと思われます。ただ借入額が少なくても、家賃程度の支払いをして早めに完済しようとする方が多いと思われますので、8~9万円のローンとなると難しいかもしれません。

2015年7月より改定された価格では10kw以上の買取単価は27円となっており、よほどの大容量パネルを載せないことには平均的なローン借入額の返済は難しいのではないかと思われます。ちなみにわが家も10.36kwの太陽光全量買取をしていますが、34.56円の単価の契約で1カ月当たり(少なく見積もって)33,000円ほどとシミュレーションされています。

実際は1月あたり4万円ほどのことが多いですが、それでも毎月のローン返済額の半分程度ですので、0円住宅とは言えません。2015年7月以降の単価では、10kw程とするとそれ以下になるのは間違いないと思われますので、これから建てる方にとってはローン0円というのは少々誇張しすぎの感は否めません。

なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度
参照元:経済産業省資源エネルギー庁(2015年11月:著者調べ)



まだ期待される売電収入効果

売電収入の効果

2012年頃の太陽光固定価格買取制度開始当初に建てられた家では、かなりの売電収入ができており、Web上でも入居者の売電伝票が公開されています。ガレージ屋根を含み20kw以上の積載が実現しているお宅では月額9~18万円もの売電収入があり、売電額がローンを上回るケースもあるようです。しかし固定買取価格の引き下げが進む中、ここまでの収入を得ることは今後難しいと思われます。

わが家の売電伝票大公開!! 岡山 | イシンホーム住宅研究会 | 家事と経済の負担を1/2にする家づくり
参照元:イシンホーム住宅研究会(2015年11月:著者調べ) 10.4kwの太陽光パネルが搭載されたお宅の売電伝票をもとに、2015年7月以降の全量買取単価27円で計算した場合、年間売電額は税込384,154円となりました。単純に20年でコンスタントに売電できると考えると760万円を超える計算となります。年々太陽光パネルが劣化し2%ずつ発電効率が落ちると考えても、20年で630万円以上となりました。

買取単価が27円と、買電価格と同等になってもなお、10kw以上の全量買取売電収入はかなりローン軽減の材料となりそうです。今後、電力が自由化され売電額も有利になる可能性もありますし、消費税が10%になったらその分収入が増えることになります(年間1,000万円までは消費税納税は不要:2015年11月現在)。

売電収入をローン審査に含める金融機関も

わが家も10kwの太陽光パネルを載せるということになったとき、身内から反対意見はありました。そんなものあてにならないと言うのです。確かに太陽光による発電は天気によってムラがあるため安定した収入とは言えないかもしれません。わが家は売電収入をローン返済に充てようとまでは思っていませんでしたが、維持費程度にとは考えていました。

なにしろ毎月3~5万円程度の収入は、パート代以下かもしれませんが有り難いものです。10kwの太陽光発電システムの初期費用がわが家の場合300万円強だったので(2014年12月現在)、きちんと貯めていれば20年で700万円以上にもなると思うと、維持費程度どころかローンの繰り上げ返済などに充てればかなり大きな削減になります。

しかも昨今では太陽光発電による売電収入がローン審査時の年収に加算される場合があるということなのです。フラット35でもそのような対応が取られていることは意外でした。正規の機関にきちんと収入として認められるほど売電収入というものは幻の存在ではないということです。このように売電額を収入として見なすことは別段軽率というわけではないようです。

太陽光発電の売電収入について:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】
参照元:住宅金融支援機構(2015年11月:著者調べ)

みずほ銀行:太陽光発電システム搭載の新築住宅のご購入をお考えのお客さまへ
参照元:みずほ銀行(2015年11月:著者調べ)

ハウスメーカーの大容量太陽光発電

イシンホーム

0円住宅といえば、まず一番に出てくるのがイシンホームです。こちらは全国にフランチャイズ契約している工務店があり、一括仕入れすることでコスト削減が実現しているということです。坪単価は50~53万円と言われており、太陽光パネル1kwあたり29.8万円~とされています。

評価したい点は太陽光だけに重点を置かず、YKKのAPW330クラスの樹脂サッシと複層Low-eガラスを標準採用するなどし、省エネ等級4の断熱性能を実現していること、全室LED照明を標準装備としているところです。水回りの標準設備などはトイレ以外は第一線の大手メーカーのものではないですが、その分サッシや断熱材などの省エネ性能に力を入れているのは大きなメリットだと思われます。

心配な点はフランチャイズのため、工務店の当たり外れが大きいことが考えられます。実際の口コミを見ても評価はバラバラです。しかし実績のある工務店であれば、比較的安価でクオリティの高い住宅を建てることができると期待できます。

ishinhome_takamatsu

イシンホーム住宅研究会 | 家事と経済の負担を1/2にする家づくり
参照元:イシンホーム住宅研究会(2015年11月:著者調べ)

一条工務店

こちらも初期投資0円で住宅ローンとは別に一条工務店から太陽光発電システムの費用を借り入れ、売電収入によって返済するという独自の「夢発電システム」が取られているほど、太陽光に力を入れているメーカーです。同社の太陽光パネルの平均搭載量は14kwと言われており、屋根と一体化しているため固定資産税の評価対象になります。

建物の坪単価は最も人気の高いismartで56万円~とのことで、ほぼ標準装備だということを考えると大手メーカーより割安です。ただ高気密高断熱に欠かせない「ベタ基礎」が標準ではないこと、網戸が標準で付いていないことなどを考えると、30坪程度の家の場合数十万円アップすると思われます。太陽光パネルの1kwあたりの単価は29万円と割安です。

一条工務店の気密性と断熱性はハウスメーカーでもトップクラス(なので何故ベタ基礎が標準でないのかだけが疑問…)で、建築業者間でも「ハウスメーカーの中では最も住宅性能が高い」と言われているという情報もあります。もちろんオール樹脂サッシで、中空層にアルゴンガスを注入した複層Low-eガラスという従来のアルミサッシの4倍の断熱性能を誇る最高レベルです。

難点はトイレを除く住宅設備から外壁までほとんどが自社施工のため、設備の選択肢があまりないことが挙げられますが、75年ノーメンテナンス住宅とも言われており「機能性を重視するなら一条」とよく言われるようです。

nissiii_22

家は性能。こだわりの家づくりなら一条工務店|住宅メーカー(ハウスメーカー)
参照元:一条工務店(2015年11月:著者調べ)

パナホーム

パナホームは坪単価70~80万円の大手ハウスメーカーです。わが家の近隣で大容量太陽光パネルを搭載している住宅は半数以上がパナホームの家です(次点が一条工務店です)。材料・設備はほぼPanasonicとなり、当然太陽光パネルもPanasonic製ということで安心感があるのは高い評価ポイントであると思われます。

が、イシンホームや一条工務店と比較するとパネル単価も45万円以上と高価になるようです。こちらも太陽光パネル自体が屋根となっているため固定資産税の評価対象となります。しかし、26坪などの比較的少ない延床面積の住宅でも大容量パネルを搭載することを実現されているのは魅力でしょう。

パナホームの最大の魅力はキラテックタイルという光触媒の総タイル外壁ではないかと思われます。外壁はタイルが最も高耐久で優れていますので、外壁メンテナンスの費用がかからないのは家づくりの上で大変重要なことだと思われます。

ただ最も室内温度に影響する窓がアルミ樹脂複合サッシとなっており、断熱性能が少々劣るところがマイナス点ではないかと思われますが、大手メーカーのほとんどは樹脂サッシを標準としていないためパナホームが特に断熱性能が低いというわけではないようです。

kackey_

パナホーム株式会社 | 住宅・不動産・リフォーム・土地活用(ハウスメーカー)
参照元:パナホーム株式会社(2015年11月:著者調べ)



これからのローン0円住宅

ローン0円住宅はもはや夢?

太陽光発電の10kw以上の全量固定買取価格は制度開始当初より3割以上減額され、2015年7月より27円(税別)となりました。今後、電力自由化でどういう流れになるのかは分からないですが、海外の例から考えても太陽光発電による売電のピークは過ぎたと言わざるを得ないかもしれません。

一般的な広さの住宅では、売電収入で住宅ローンをすべてカバーするといった0円住宅は大変難しくなってくるのではないかと思われます。ただ2015年7月以降の新価格改定後でも、10kw以上の太陽光パネルを搭載することで得る利益は20年間にすると700万円とも言われており、初期費用を300万円と考えてもローン軽減効果は十分であると思われます。

夢しぼむ「稼ぐマイホーム」 太陽光の売電住宅  :日本経済新聞
参照元:日本経済新聞(2015年11月、著者調べ)

今後はゼロエネルギー住宅が主流?

ゼロエネルギー住宅(ZEH:ゼッチ)とは、太陽光などによる創出電力量≧電力消費量というように、年間のエネルギー収支がゼロになる住宅ということだそうです。日本政府は2020年までに新築のゼロエネルギー住宅標準化を目指すと掲げているとのことです。

それには省エネ性能の高い住宅であることが必須であると言えますが、欧州では樹脂や木製サッシがほとんどであるのに対し、日本の大手ハウスメーカーのほとんどは寒冷地域以外アルミ樹脂複合サッシ、またはアルミサッシでアングルピースのみ樹脂が標準となっています。

通常のアルミサッシに比べれば断熱性能は高いとはいえ、寒冷地域でなくても真冬の屋外は0度以下となるのになぜオール樹脂サッシにしないのかが個人的には疑問でなりません。大手ハウスメーカーもゼロエネルギー住宅を提唱するならば、最低限ベタ基礎標準、断熱サッシと複層Low-eガラス標準とすべきではないでしょうか。

住宅のゼロ・エネルギー化推進事業
参照元:一般社団法人環境共生住宅推進協議会 (2015年11月:著者調べ)

ゼロ・エネルギー住宅(ZEH)とは|ミサワホームのゼロ・エネルギー住宅|ミサワホームのゼロ・エネルギー住宅®
参照元:ミサワホーム(2015年11月:著者調べ)

世界基準のパッシブハウス

日本の家は短寿命で断熱性能も低い上に高額すぎると言われています。高い費用をかけて使い捨てのような家を建てたい人などいません。欧州諸国のように高性能で長寿命の住宅を日本の風土に合ったものにカスタマイズすれば理想的なのではないでしょうか。

そこで注目されているのがパッシブハウス建築です。ドイツで生まれた、極力エネルギーを使わず暮らせる魔法瓶のような高性能住宅、パッシブハウス建築はまさに次世代を担う住宅だと言っても過言ではないかもしれません。室内の温度差をなくし、カビや結露の発生を抑えることで家から健康になれる住宅、今後はこのスタイルが日本でも主流になってほしいと願っております。
※画像はイメージです

パッシブハウスとは • PASSIVE HOUSE JAPAN
参照元:パッシブハウス・ジャパン

まとめ

もはや「ローン0円住宅」は2012~2013年頃の太陽光バブルのころだったからこそ叶った夢の住宅となってしまったのかもしれません。これから新築する場合は、太陽光の売電収入で住宅ローンを相殺するという考えは難しいと思われますが、売電収入によりローンを軽減するのは可能であると言えるでしょう。

日本人の多くは働いている間住宅ローンを返済し続けています。定年後も返済に追われる場合もあります。「ローン0円住宅など浅ましい、太陽光発電は自給自足のためのもの」との意見も多いですが、自分の生涯収入の大部分を費やす「家」に対する負担を少しでも軽減したいと思う心の何が浅ましいのでしょう。

ローン0円住宅は夢と化したかもしれませんが、ローンを軽減する目的で適度な太陽光を取り入れるのは軽率なことではないと思われます。ただ、それにばかり目を奪われず、まず住宅性能に目を向けてみていただきたいのです。太陽光収入でローンが軽減されても、家自体が長持ちしなくては本末転倒です。あなたの大切なお金を費やす価値のある家が建つように心からお祈りいたします。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。