奨学金は「借金」!明るい未来のために知っておくべきこと

大学進学のために奨学金を借りるという人は少なくありません。お金がないから行きたい大学に行けない、という人にとって、奨学金は非常に有効な手段です。しかし安易に考えてはいけません。日本の奨学金の多くは、利息付きの「借金」なのです。卒業後には月々の返済が何十年にも渡って続き、最近では返済できなくなってしまう人も増えているという現実をきちんと知っておかなければいけません。



奨学金は借金であるという事実

大学進学の際に奨学金を利用することを検討するご家庭も多いでしょう。何らかの奨学金を借りている学生はなんと2人に1人。近年大学の授業料値上げが続いており、教育費が増加していることに伴って奨学金に頼らざるを得ない家庭が増えています。

最も代表的な奨学金は、日本学生支援機構が行っている奨学金制度。学校を通じて申請をして、審査に通れば奨学金を受けることができます。

同機構が行っている奨学金は国内大学への進学の場合、全て返済が必要な「貸与型」で、すなわち「借金」になります。利息は無利息の「第一種」と、利息が必要な「第二種」がありますが、第一種は条件と審査が厳しく人数も限定されているため、多くの学生は第二種を利用しています。

覚えておかなければいけないのは、貸与型の奨学金は借金であるということです。利息は他の金融機関でのローンと比べて非常に低い(上限3%)か無利息ですが、大学卒業直後の給与が低いうちから毎月返済していかなければならなくなるのです。

第二種(利息が付くタイプ)
参照元:文部科学省(2016年1月時点、著者調べ)



卒業後の返済の現実

返済の滞納者が約2倍に

多くの学生は卒業後に返済が開始して初めて、奨学金=借金という現実を知ります。

就職難を背景に、日本学生支援機構の奨学金返済を3ヶ月以上滞納している人は10年前と比べて約2倍になっています。

かつては大学卒業後に安定した就職が期待できていましたが、現在では正規雇用に就くことも容易なことではありません。たとえ就職できたとしてもサラリーマンの平均年収は10年前に比べて減少しており、返済の余裕がなくなってきています。

事実、日本学生支援機構の奨学金を3か月以上延滞している人のうち、46%の人は「非正規労働者又は職がない」状況にあり、83.4%が「年収300万円以下」となっています。

奨学金の返還者に関する属性調査
参照元:文部科学省(2016年1月時点、著者調べ)

4年間で借入総額は膨らむ

奨学金は毎月口座に振り込まれ、卒業後に返還します。

月々5万円ずつ借入していると奨学金の合計は4年間で240万円。卒業と同時に高級外車が買える金額の借金を背負うことになるのです。

年利が上限の3%だった場合、15年で返還すると月々約1万7,000円、返済総額は約300万円になります。

月々10万円ずつ借入する場合奨学金の総額は480万円。新卒の学生が負う借金の額としてはかなり大きな額になります。

3%の金利を20年で返済すると月々約2万7,000円の返還で、返済総額はなんと約650万円にもなります。現状では適用金利は1%を切っている状態が続いていますが、たとえ金利が0.5%だったとしても返済総額は505万円。25万円分を利息として支払う必要があります。

月々の返還金額を見るとあまり負担がないように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、22歳で卒業したとして15年かけて返還すると、完済する頃には37歳。20年で返済すると42歳になっています。結婚して家庭を持っているとすれば自分の子供の教育にお金を貯めるべき時期。そんな時に自分の奨学金の返還をしなければいけないことになるのです。

奨学金貸与・返還シミュレーション
参照元:文部科学省(2016年1月時点、著者調べ)

住宅ローンに影響する可能性も

奨学金=借金という感覚が薄く、振替口座に入金を忘れていたというケースは実は多いようです。しかし、ついうっかりという程度の認識で返還を滞納していると大変な目にあうこともあるので注意してください。

まず、延滞金として平成26年3月31日までは年10%、平成26年4月1日以降は年5%の延滞利息が付加されます。利率は引き下げられることとなりましたが、奨学金の利率と比べると未だにかなり高い設定になっています。

そして3ヶ月以上返済を延滞していると、債権回収会社から督促の電話がかかって返済を請求されます。奨学金=借金という感覚が薄いと、この時点でかなりびっくりするようです。連帯保証人がいる場合、連帯保証人にも返済の請求が行われます。

3ヶ月以上返済を延滞していると信用情報にも影響してきます。クレジットカードが新しく作れなくなったり、住宅ローンを組むことが難しくなる可能性があるのです。

もちろん、ついうっかり延滞してしまっただけでなく、収入がなくなって返済ができなくなってしまう場合もあるでしょう。その場合は奨学金返済猶予や減額・免除が受けられる可能性もあります。所定の書面を提出して審査を受けましょう。

延滞した場合
参照元:文部科学省(2016年1月時点、著者調べ)

借りなくても済むように対策を

子供が小さいうちに貯金する

子供の進学に必要な資金はできるかぎり奨学金にたよらなくても良いように、子供が小さいうちから貯蓄をしておきましょう。

たとえば、児童手当を全て貯蓄しておけば約200万円にもなります。国公立大学であれば4年間の授業料をほぼ賄える計算です。

また、親に万が一のことがあっても進学に支障がないように学資保険を利用して積立貯蓄をしておくこともおススメします。学資保険は子供が一定の年齢に達した時に満期資金が支払われる保険ですが、積立期間中に親が死亡した場合にはそれ以降の払込金が免除されます。満期金は払込金以上になるものがほとんどなので、是非活用していただきたい商品です。

なかなか貯金ができない、という方には財形貯蓄を活用して給与天引きで貯蓄をしていくというのもおススメですよ。

子供にも自覚を

多くの場合奨学金の手続きは親が行うので、子供には奨学金=「自分の」借金という自覚が少ない状況です。事実上は親が返済する予定の家庭もあるかもしれませんが、子供の名義で借り入れる以上は直接返済義務を負うのは子供です。奨学金を借りるのであれば、子供がそれを自覚したうえで進路を決定し、大学生活の送り方を考える必要があります。

例えば生活費が抑えられれば、奨学金を借りなくてもよくなるかもしれません。自宅から通える範囲の大学にすれば生活費はかなり抑えられます。一人暮らしの必要がある場合でも、都心より地方の大学の方が生活費は抑えられます。他にも寮に住むという方法もあります。

私立大学ではなく国公立大学に通えるように勉強を頑張ることができるかどうか、というのも本人次第です。また、本人のアルバイトで賄える金額もあるでしょう。

卒業後に子供が奨学金返済の重い負担に後悔をしなくてもよくなるように、本人にもしっかりと奨学金の意味を理解させておく必要があるのです。本当に必要な進学かどうかを本人に考えさせるいい機会にもなりますね。

教育資金贈与という選択も

祖父母から教育資金の贈与を受けるため、「教育資金贈与」を利用するという方法もあります。これは子や孫へ教育資金を贈与する場合、一括で贈与しても1,500万円までならば贈与税が非課税となるという制度です。制度を使わずに1,500円を贈与場合は470万円の贈与税がかかりますので、上手に使えばかなりの節税になります。直接孫に資金を贈与することで、相続税対策にもなります。

ただし教育資金として使いきらなければならないという条件や、一括して贈与したことで祖父母の老後資金不足などにもつながるといった問題もあります。

教育資金贈与を利用しない場合でも、毎年110万円までの暦年贈与であれば贈与税や相続税もかかりませんし、そもそも大学の入学金などを支払いが必要な時期に祖父母が支払うことは日常に必要な費用の支払いであり、贈与税の対象となりません。祖父母が元気なうちはこういった方法を取ることも有効でしょう。

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし|パンフレット・手引き|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月時点、著者調べ)



学費を抑える制度も活用

給付型奨学金

前述のとおり、日本学生支援機構が行っている奨学金制度では、日本の大学への進学に給付型の奨学金制度はありません。しかし日本には企業や財団が行っている奨学金制度が複数あり、その中には給付型の奨学金も用意されていますのでご紹介しましょう。

■三菱UFJ信託奨学財団一般奨学金
日本のメガバンクグループに属している三菱UFJ信託銀行が運営する財団です。指定大学への進学者に奨学金が給付されます。

財団では「学資給与規則」及び「留学生特別学資給与規則」を定めて奨学事業の運営を行っています。奨学生の採用は、当財団が指定する日本全国の指定大学48校(別表参照)、特別留学生は海外の5大学(別表参照)に推薦された候補者の中から、理事会から決定権限を委譲された財団の奨学事業選考委員会が決定し、学校長等を経て本人に通知されます。 最近は毎年度合計150名程度を採用しています。

出典:

www.scholarship.or.jp

奨学事業 | 公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団
参照元: 公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団(2016年1月時点、著者調べ) ■公益財団法人 旭硝子奨学会
国内最大手の硝子メーカー、旭硝子が運営する奨学金制度です。日本国内の指定大学20校に在籍する大学院修士、博士課程の学生が受けることのできる給付型の奨学金です。

公益財団法人旭硝子奨学会は、国内外の社会に有用な人材を育成することを目的とし、昭和32年(1957年)の設立より、経済的な援助を必要とする優れた日本人学生及び外国人留学生に対して奨学金を支給しています。また、平成24年度(2012年度)より、東日本大震災で被災された高校生に対する支援も開始しました。(東日本大震災奨学金は、平成26年度(2014年度)をもって新規採用を終了しました)

出典:

www.agc.com

AGC旭硝子|公益財団法人 旭硝子奨学会
参照元:公益財団法人 旭硝子奨学会(2016年1月時点、著者調べ) ■朝日奨学会
朝日新聞社が運営する奨学金制度です。朝日新聞販売所で新聞を配達しながら進学を叶えるための給付型奨学金を受けるというユニークな内容です。その他にもさまざまな特典があります。

<おススメのポイント!>
①返済不要の奨学金(増額しました!)
②無料の宿舎提供
③毎月の給与支給
④教材費も支給(朝日だけです!)

出典:

shingaku.mynavi.jp

朝日奨学会 | マイナビ進学
参照元: マイナビ進学(2016年1月時点、著者調べ) この他にも多数の給付型奨学金があります。

基本的には在学する学校を通して申請します。給付成績が優秀であることや親の収入制限や様々な条件や厳しい審査がある場合もありますが、強く進学を希望される方は是非挑戦してください。

大学が行う奨学金・学費免除・補助

近年では年々上昇する大学の学費を支払えずに退学をする生徒も増加しています。そのような事態を避けるため、対策として給付型の奨学金や授業料免除や減額などの制度も充実してきています。

ここでは有名な制度をいくつかご紹介します。

■早稲田大学「めざせ!都の西北奨学金」
早稲田大学の給付型奨学金は、年間1,200人も対象となります。年額40万円の支給を受けることができます。

「めざせ!都の西北奨学金」は、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)以外の国内高等学校出身者で、学業成績が優秀であるにもかかわらず家計の事情で早稲田大学への進学を断念せざるを得ない受験生を対象にした奨学金です。

この奨学金は、入学試験の出願前または出願期間中に奨学金を申込んでもらい、書類選考により奨学金採用候補者として認定された場合、入学前に入学後の奨学金を予約採用する制度です。(奨学金採用候補者は、入学試験に合格・入学することで奨学金に正式採用されます。)

出典:

www.waseda.jp

めざせ! 都の西北奨学金(入試出願前に申請する奨学金)
参照元: 早稲田大学(2016年1月時点、著者調べ) ■慶應義塾大学「学問のすゝめ奨学金」
慶應義塾大学が用意する奨学金制度です。毎年審査を受ける必要がありますが、年額60万円の給付型奨学金を受けることができます。

本奨学金は、慶應義塾大学の学部第1学年に入学を強く希望する日本国内(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県を除く)の高等学校等出身者で、人物および学業成績が優秀であるにもかかわらず、経済的理由により本学への入学に困難を来している受験生に対し、経済支援を行うことを目的とします。選考については、一般入学試験前に申請を受け付け、候補者を決定します。その後、一般入学試験に合格し、入学後に所定の手続きを行うことで奨学生として採用されます。また、道・府・県をブロック単位に分け、地域ブロックごとに給付人数を設定することで、地域の偏りをなくしている点も大きな特徴です。奨学金額は年額60万円(ただし医学部は90万円、薬学部薬学科は80万円)で、毎年の申請・審査により2年目以降も継続受給が可能です。

出典:

www.gakuji.keio.ac.jp

慶應義塾大学-塾生HP-「学問のすゝめ奨学金」
参照元:慶應義塾大学(2016年1月時点、著者調べ) ■広島大学「フェニックス奨学制度」
旧帝国大学の広島大学でも奨学金制度を設けています。選考基準はかなり厳しいですが、支給される金額毎月10万円で、入学金と授業料も免除されます。

支援内容
入学料全額免除, 在学中の授業料全額免除 および 奨学金給付(毎月額10万円)

 ※本学の大学院に進学した場合は,奨学生として支援を継続します。
 ※在学期間中は,大学が定める成績基準を満たす必要があります。

採用人数
学部新入生10人程度

出典:

momiji.hiroshima-u.ac.jp
この他、国立大学では文部科学省によって入学料や授業料が免除される制度が定められています。もちろん成績優秀であることが前提となりますので、日々勉強に励む必要があります。

授業料免除選考基準の運用について:文部科学省
参照元:文部科学省(2016年1月時点、著者調べ)

奨学金を借りるなら

色々と準備を行っていても進学にお金が足りない場合もあります。その場合に奨学金を借りることはとても有効です。奨学金を借りる場合に気を付けるべきことや、返済時に知っておくべきポイントをいくつかご紹介します。

第一種奨学金を目指す

日本学生支援機構の奨学金を借りるのであれば、まずは利息のつかない第一種奨学金を目指しましょう。

第一種奨学金には学力基準(高校の成績3.5以上、在籍する学部学科の上位1/3以内)と家計基準があり、更に人数も限定されていますので必ずしも受けることができるわけではありません。しかしまずは学力基準をクリアして申し込みができるようにすることが大切です。

第一種
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

返済予定を確認しておく

奨学金を借りる際に月々の返済金額と返済期間を確認しましょう。日本学生支援機構の場合、返済金額と期間は以下のように決定されます。

月賦返還 借用金額を「奨学金返還年数算出表」に定める割賦金の基礎額で割って得た返還年数(小数点以下切り捨て)の12倍した回数となります。

出典:

www.jasso.go.jp

(例)毎月3万円の奨学金を4年間(48か月)貸与を受けた(総額144万円)場合
  貸与総額144万円 ÷ 割賦金の基礎額11万円 = 13.09 → 156回(13年間)で返還

出典:

www.jasso.go.jp
住宅ローンなどと違い、返済期間や返済金額を自分で決めることはできません。月々の返済金額は決して高くありませんが、その分返済期間は長くなります(最長20年)。そして前述したとおり返済期間が長くなれば長くなるほど総返済額が増えることを理解しておきましょう。

返還期間(回数)
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

繰り上げ返済で返済期間短縮

上記のような問題を解消するために有効なのが繰上返済です。日本学生支援機構ではインターネットなどを利用して繰上返済を行い、返済期間を短縮することが可能です。口座振替を利用すれば手数料もかかりません。

繰上返済をして返済期間が短縮された場合、支払済みの保証料が返還されるという利点もあります(機関保証を選択していた場合)。資金に余裕がある時期に是非利用してください。

繰上返還
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

延滞する前にできる対応

どうしても返還が難しくなってしまった場合、延滞する前にできることがあります。延滞利息が発生したり信用情報に影響が出る前に対応を行いましょう。日本学生支援機構では以下のような制度があります。

■減額返還
月々の返済額を減らし、その分返済期間を延長する方法です。

減額返還制度は、災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方の中で、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方を対象としています。
一定期間1回当たりの当初割賦金を2分の1に減額して、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長します。毎月の返還額を減額するため、無理なく返還を続けることができます。
願い出るためには、提出いただく証明書が、一定の要件に合致しなければなりません。
適用期間は12か月(6か月分の割賦金を12か月で返還)で最長10年(120か月)まで延長可能です。

出典:

www.jasso.go.jp
■返還期限猶予
収入が全くなくなってしまった場合などに、一定期間返還を待ってもらうことができる制度です。待ってもらえる期間は審査で決定されます。

災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合は、返還期限の猶予を願い出ることができます。そのような状態になった場合は、延滞する前にすみやかに手続きをおこなってください。
申請には所定の書類の提出が必要です。審査により承認された期間については返還の必要がありません。適用期間後に返還が再開され、それに応じて返還終了年月も延期されます。 ただし承認されない場合は返還を継続する必要があります。
※返還期限の猶予は、一定期間返還期限を延期する制度であり、返還すべき元金や利息が免除されるものではありません。

出典:

www.jasso.go.jp
■返還免除
極めて限定的な条件ですが、返還が免除される場合もあります。

死亡又は精神若しくは身体の障害により返還ができなくなったとき。

出典:

www.jasso.go.jp
いずれも日本学生支援機構に所定の用紙を提出することで願出ができます。詳細は日本学生支援機構のホームページで確認してください。

返還中の願出・届出
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

卒業後の未来のために

奨学金は大学卒業後の未来を明るくするためのものです。子供の将来に影を落とすようなことはあってはなりません。そのためにも制度をきちんと知り、本当に必要な額だけを借りるようにしてくださいね。