【年金の分割手続き】離婚したら半分もらえる?手続きは煩雑?

平成19年から離婚時に年金の分割ができるようになりました。とはいえ、単純に半分もらえるとも限らないようです。また、老齢基礎年金分は分割されないため、国民年金は対象ではないということを御存知でしょうか?厚生年金のみが対象となる年金の分割について簡単にまとめました。



離婚したら年金の分割

多忙なご主人と暮らす薫子さん。友人の涼子さんとランチしながら話しているのは年金のことのようです。

一緒に築いたお金だから

涼子(以下:R):出た!薫子の「離婚する詐欺」の話。

薫子(以下:K):だって、本当にやっていく自信がないのよ。家のことは私に任せて仕事、仕事。義実家へ行ったときだって姑に嫌味を言われる私をかばってくれることもないし。老後くらいは一人で気楽に過ごしたい。

R:同居話を恐れる気持ちはわかる気がするけど…。

K:そうよ。旦那がかばってくれないのに、毎日あの姑と顔を突き合わせる暮らしなんて無理!「同居」を言い出したら離婚するつもり。だって、年金だって分割してもらえるのでしょう?

R:そう。年金でも夫が働いて築いた分は妻の支えがあってのことだからね。分割はできるみたいよ。うちの両親の熟年離婚危機のときに調べたのよ。

K:そんな話もあったわね!落ち着いて良かったけど、涼子のお母さんがまさかそういうことを言いだすタイプとは思わなかったからビックリした。

R:亭主関白家庭だったからね。父もびっくりしたと思うわ。静かに不満を溜めているタイプの方が、薫子みたいに「離婚、離婚!」って言っているタイプより怖いものかもって感じたわ。



どのくらい分割されるのか?

基礎の部分は分割されない

R:薫子は「年金の分割」について、ご主人の年金総額を単純に半分くらいもらえるというイメージでいるでしょう?

K:違うの?

R:違うのよ。年金ってね、老齢基礎年金という基本の部分があって、そこは自営業者でも会社員でもみんな共通の部分なの。ここは分割対象外。そして、薫子のご主人みたいに会社員の場合はその上に厚生年金分が上積みされる仕組み。この厚生年金分が分割されるということなの。

K:厚生年金分の分割。

R:そう。薫子は薫子で老齢基礎年金が受給できることになっているわ。それは、ご主人が納めていることで「第三号」にあたる薫子は基礎年金分の支払いをしなくていいことになっているからなの。「第三号」って言葉は聞いたことがあるでしょう?

K:そうねぇ、あまり意識はしたことないけれど。

R:自営業者のような人達が第一号、主な年金が老齢基礎年金という人達ね。そして、薫子のご主人みたいに会社員の人は第二号。老齢基礎年金の他に厚生年金を受給する人達。そして、薫子のように第二号の人の配偶者が第三号なの。収入が130万円以上あったら第一号となり自分で年金保険料を納める必要が出てくるけれど。ここまではOK?

K:そういう風に並べてもらえるとわかりやすい。

公的年金の種類と加入する制度|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

国民年金だけだと分割なし

K:あら?ということは、ご主人が自営業などの場合、「分割できる年金分」はゼロってこと?

R:そういうこと。分割分はないのよ。そもそも、国民年金、つまり老齢基礎年金分しか年金保険料を払っていないでしょう?夫婦それぞれ老齢基礎年金をもらうだけだわ。国民年金基金や付加年金といった上乗せ分があるケースにしろ、離婚による分割は「厚生年金分だけ」だから関係なし。

K:離婚による年金分割って厚生年金に関係ある人達だけの話なのね…。

公的年金の種類と加入する制度|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

妻から夫に分割されるケースも

夫が自営業、妻が会社員の場合

R:例えばご主人が自営業をずっとやっていて、奥さんが会社員として外で働いた分はどうなると思う?

K:あ…。そういうケースもあるわよね。その場合、奥さんの厚生年金分が分割対象?!つまり、奥さんからご主人への分割になる…。

R:そうよ。「夫婦で築いた年金財産」だから。夫が働いた分であろうと、妻が働いた分であろうと一緒よ。

K:二人とも会社員だった場合は合わせて、その総額を分割することになる。

R:そういうこと。



結婚前の厚生年金分は対象外

対象は結婚後の分のみ

K:例えば、長い間会社員として勤めてきた女性が年をとってから結婚したとするでしょう?相手が自営業。ところが、3年くらいで破綻。そんなときに長年築いてきた厚生年金分を分割しなくてはいけないと、なんていうか、損、よね…。

R:そこは大丈夫。「分割対象」はあくまでも婚姻期間中、つまり「結婚している間の分のみ」。だから、そのケースだと3年分が分割されるだけ。

K:そうね~。だったら納得。

離婚時の年金分割|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

年金分割は2種類あります

平成20年以降は合意がいらない

K:そもそも、離婚のときってお互いのことをよく思っていないケースが多いと思うのよね。円満離婚って少ないのでは?

R:そうね~。そうでしょうね。

K:だとすると、「年金分割して!」「嫌だ!」ってトラブルになりそうじゃない?

R:有り得るわ、十分に。そのためか、年金分割には2種類あってね、平成20年4月1日以後の分に関しては「合意のいらない年金分割」が可能になっているのよ。

離婚時の年金分割|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

合意なしでOKの「3号分割制度」

K:合意なしってことは、分割してほしい側が「分割したい」と言えばOKということ?

R:そうなの。あくまでも平成20年4月1日以後の婚姻期間のみが対象だけれど。その前の分に関しては「このくらいの割合で分割しましょう」という合意が必要なのね。でも、平成20年4月1日以後の分は一律50%にできるの。分割してほしい側が申請すればOK。

K:いい制度ね!だって、一緒に築いた財産と言えるもの。

R:そうね。トラブルが減るからいいと思う。ただ、まだ新しい制度でしょう?平成20年以降からの分だけで済む人の方が少ないのではないかしら。そこでもう一方の分割方法が大事になってくるわけ。

第3号被保険者期間の厚生年金の分割|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

合意分割制度は合意が前提

K:その大切だけど大変な分割方法ってどんな感じ?

R:分割の割合をね、「夫婦の合意」あるいは「裁判手続き」により決める方法なの。「合意分割制度」というのよ。つまり、話し合いで決まれば問題なし。決まらなければ裁判所で決めるということ。

離婚時の厚生年金の分割|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

合意分割をするまでの流れ

まずは情報提供を請求

K:こじれている場合は嫌な雰囲気になりそうね。お金の絡む話でもあるし。

R:そうね。離婚は結婚より大変というけれど、こういうことも含まれてのことかも。

K:で、合意分割するときはどうしたらいいの?

R:まずは「年金分割」をするために情報提供してもらうよう請求するところからスタートするの。この請求はね、夫婦でしてもいいし、どちらかが一人でしてもいいの。

K:情報って年金がいくらかってこと?

R:年金見込み額の試算も請求できるのは、「50歳以上で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていること」が前提。その条件に該当すれば老齢厚生年金の見込み額を試算してもらえる。受給資格期間は25年ね。近いうちに10年に短縮されるという話もあるけれど。それから、「年齢関係なく障害厚生年金を受けている人については障害厚生年金の見込み額」を試算してもらえる。その2つの条件以外のケースでは年金額試算はなし。具体的な試算がなくてもこの期間が対象ですよ、とかそういう基本情報が分割の元になるでしょう?

K:なるほど。で、その後は?

R:「年金分割のための情報通知書」が交付される。夫婦で請求した場合はそれぞれに送られてくるの。この配慮がさりげなく親切よね。そして、一人で請求した場合については2通りになるの。既に結婚している場合は請求した本人と元配偶者側にも送られてくる。離婚前だと請求した人にだけ送られてくる。

K:あれ?その方法だと…。こっそり一方が調べることも…。

R:ビンゴ!可能なのよ。

合意分割制度の手続きはどのような流れになるのですか。|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

合意に向けての話し合い

K:その情報を元にいよいよ話し合い?

R:そうなの。合意分割適用期間の「年金分割」のための条件は「分割請求をすること」「合意すること」となっているから、ここが大事なところ。

K:話し合いでスムーズに決まったらOK?

R:そう。合意したことを記載した書類を年金事務所に持って行けばいいの。もっときっちりした形をとって合意内容を記載した公正証書の謄本、抄録謄本あるいは私署証書を添付してもいいわ。こうしたしっかりした書類の手続きは公証役場というところでできるのだけれど。

K:問題は、合意できないとき…よね?

R:そう。夫婦どちらかが家庭裁判所に申し立てをすることで、按分割合(つまりどのくらい分割するかということね)を決めることができるの。審判手続き、調停手続き、離婚訴訟における附帯処分の手続きを利用することになる。

K:面倒ね…。でも、離婚後の生活がかかっているものね。

R:そう。そこさえ越えてしまえば、あとは年金分割の請求をしておしまいよ。

K:請求はすぐ?

R:そうね。夫婦で一緒に行っても一方だけでもいいのだけれど、年金事務所で「標準報酬改定請求書」を提出するの。そのときに按分割合がわかる書類を添付するという流れ。

K:それで終わりね?

R:そう。その後年金事務所で「厚生年金の保険料納付記録の改定」が行われる。その改定が反映された「保険料納付記録」が夫婦それぞれに通知されてくるだけ。これで完了。

合意分割制度の手続きはどのような流れになるのですか。|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

両方の分割が含まれる場合

K:そういえば、合意分割期間と3号分割期間が両方含まれるケースもあるでしょう?

R:そうね。多いと思う。

K:その場合は、2回申請が必要?

R:合意分割分の申請をすることで3号分割分も申請したことになるの。スムーズに対応してもらえるのよ。

離婚時の厚生年金の分割|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

「2年」の申請期限に注意

過ぎると請求できなくなる

K:合意分割は疲れそうね。早目に済ませておきたいことかも。

R:そうね~。あとは、感情的な問題だけでなく「申請に期限がある」という点からも早目の手続きが大切なの。

K:え?離婚した後しばらく経ってから、やっぱり分割したいとなったらNGなの?

R:2年という期限があるから、それ以上遅くなったら申請できないわ。

K:離婚時には「仕事があるからいいわ」と思っていたものの、その後リストラなど事情があって職を失い「やっぱり年金分割」って思うこともありそうだけど…。

R:そうね。そういうことも想定して、「年金分割しておくかどうか」を離婚時にしっかり考えておく必要がある。2年というのはね、離婚届を出した日の翌日から起算して2年よ。

合意分割制度の手続きはどのような流れになるのですか。|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

事実婚でも年金分割

第三号であるかどうかがポイント

K:結婚、離婚って本当に大変なことなのね~。

R:そうね。離婚問題のうちの一つでしかない年金分割の問題を考えるだけでも大変だもの。一方が割合に納得してくれない場合とかね。でも、事実婚の場合も年金分割問題はあるからね。

K:事実婚でも年金分割できるの?!

R:そうなの。ただ、事実婚の場合は婚姻した日付とかはっきりしたスタートがわからないでしょう?一緒に住んでいても同居人だけの関係の人もいるのだし。だから、一方がもう一方の扶養に入って「第三号」となった期間で年金分割が認められるらしいわ。

K:事実婚が解消されたら扶養も外すものね…。

R:そうなの。そうすれば、「第三号でいた期間」とわかりやすいから、年金分割対象期間となるという仕組み。解消してから申請期限が2年以内という条件も一般の離婚と一緒よ。

第3号被保険者期間の厚生年金の分割|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月時点、著者調べ)

年金分割は厚生年金分だけです

K:なんとなく、思っていたより分割分って大した金額ではないのかなって気がしてきた。

R:そうね。一人暮らしと二人暮らしではかかる費用が単純に2倍ではないもの。居住費も大きいしね。二人で分けるってことは、そういうリスクもあるということ。

K:なるほどね~。本気で離婚を考える人はきちんと仕事をしていく気合いがあるのかな。

R:そうね。薫子は気軽に「離婚、離婚」って口にするから気を付けた方がいいわ。私はガス抜きのためにと思って聞いてあげられるけれど、ご主人の前で口にするのは控えてね。男性って「離婚って言葉を出すほどしんどいの。その気持ちをわかって。」という思いで口にしているとは捉えられない人が多いわ。男性と女性って言葉の捉え方が違うの。「本当に離婚したいみたいだな。」って思われてしまう可能性があるから。

K:涼子はちゃんとわかってくれるのにね。

R:ほら、やっぱり「離婚する詐欺」だ!自白したな?!

K:しまった…!