被扶養者異動届の基礎知識を解説【間違いやすい資格や条件】

被保険者異動届は社会保険に加入している方(被保険者)に結婚や子どもが生まれた、妻がパートで働き出して結構な収入がある、または離婚したなどの理由で扶養家族(被扶養者)の数の増減があったときに勤務先をとおして提出する書類です。しかし扶養に入る条件や扶養から外れなければならない条件が良く分からないという方や、夫婦共稼ぎの場合子どもをどちらの扶養家族に入れた方が良いのかなどの解決策を考えてみましょう。



被扶養者異動届について

どんなときに提出するの?

サラリーマンなどの給与所得者は社会保険に加入していることが多いと思います。また社会保険は健康保険と厚生年金に大きく分けることができ、「被扶養者」の認定条件を細かく定めているのは健康保険になります。扶養家族を経済的に支えている人を健康保険制度の上では「被保険者」といい、被保険者が扶養している家族のことを「被扶養者」といいます。

結婚や子どもの出産、離婚または配偶者がパートで働いて見込の収入が一定以上となる場合や、逆に収入が減り一定以下になるなど被扶養者に変更が合った場合に、被保険者は会社の事務担当者へ「健康保険被扶養者(異動)届」を添付書類とともに提出するように定められています。

提出を受けた会社はその届けを加入している健康保険組合に提出するように規定されています。年金の加入制度については健康保険の加入条件がそのまま適用されていますが。加入条件は健康保険組合によって若干異なっていますので、今回は中小企業の多くが加入しているといわれる「協会けんぽ」のルールを例にしてご説明したいと思います。

被扶養者に変更があったとき

被保険者に扶養家族の増減があった場合は「健康保険被扶養者(異動)届」を被保険者が会社へ提出し、会社側が日本年金機構へ提出することになっています。

「健康保険被扶養者(異動)届」は新たに扶養家族が増えた場合や扶養家族の条件を満たさなくなった場合の両方に共通した書類で記入に間違いのないように書かなければなりません。とくに新たに扶養に配偶者を入れる際は配偶者の基礎年金番号の漏れがないように注意しましょう。

以下に「健康保険被扶養者(異動)届」の留意事項をご紹介します。

(1)健康保険被扶養者(異動)届の3枚目は、複写で被扶養配偶者の国民年金第3号被保険者該当届となっています。従業員の配偶者が20歳以上60歳未満であり、厚生年金保険(共済組合等)の被保険者(組合員等)でない場合は、原則、国民年金の第3号被保険者となりますので、従業員に配偶者が、この届書を提出するようご連絡をお願いします。

(2)国民年金第3号被保険者該当届の提出先は、勤務する配偶者の事業所となります。従業員から、この届書の提出がありましたら、事務センター(年金事務所)へ提出くださいますようお願いします。

(3)健康保険被扶養者(異動)届や国民年金第3号被保険者該当届を提出される際は、記載内容に誤りが無いようご注意ください。特に、国民年金第3号被保険者該当届の基礎年金番号について記入漏れが無いようご確認をお願いします。

出典:

www.nenkin.go.jp

従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月、著者調べ)

被保険者となれる人となれない人

被扶養者についての条件をご説明する前に、被保険者となることができる条件について軽くご説明したいと思います。一般のサラリーマンの方は被保険者になれます。

ただし、以下の人は被保険者になれない場合もあるようです。

■被保険者になれない人

・個人事業主
法人になっていない個人経営している事業主は被保険者にはなれません。この場合国民健康保険に加入することになり、国民健康保険には被扶養者の概念がありませんので被保険者ともいいません。国民健康保険は個々に加入するか世帯で加入する仕組みになっています。

・実習生や見習い社員
実習期間や見習い期間終了後にその会社就職する場合は被保険者となることができますが、就職できない場合は被保険者となることができません。

・短時間労働者
パート労働者などの短時間労働者は収入の多い少ないに関係なく、勤務している社員の労働時間の3/4以上でないと被保険者になることができませんが、1週間の労働時間が30時間以上になると社会保険に加入しなければならないとされています。1週間に5日働くとすれば1日あたり6時間以上の勤務なら被保険者となることができます。

・法人会社の役員や社長
法人から報酬をもらっている社長や取締役、理事などの執行役員も法人会社の社員とみなされ被保険者になることができます。また民間の法人でなくても社団法人や財団法人や組合の会長や理事なども報酬を得ている場合は被保険者となることができます。

厚生年金の適用を短時間労働者に拡大する場合の対象者数の推計
参照元:厚生労働省(2016年1月、著者調べ)



被扶養者異動届を出す要件

被扶養者の収入

基本的に被扶養者は被保険者に収入によって生計を維持していることが条件となります。簡単にいえば扶養される方に十分な収入があると、自活できると判断され被扶養者にはなれないということです。被扶養者は被保険者の収入がなければ生活していくことができない状態である必要があります。

具体的には以下の収入条件となります。

年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ

・同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
・別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

出典:

www.nenkin.go.jp
年齢や同居しているか別居しているかで判断に違いはありますが、年間収入130万円未満が基本線になります。ただし年間収入の考え方は所得税のような年間の総額で判断するのではなく、毎月ごとに判断されることに注意が必要でしょう。

これから結婚して扶養に入る、またはパートで働く場合に扶養でいれるのか扶養から外れてしまうのかの判断が難しいといえます。扶養から外れるのか入れるのかわからないと、健康保険被扶養者(異動)届を出すべきかどうか判断ができませんよね。

そこで、収入に考え方を以下にご紹介しましょう。

※年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。)また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれますので、ご注意願います。

出典:

www.nenkin.go.jp
これから扶養に入るための収入条件は、以上のように被扶養者になろうと思ったとき、または被扶養者として認定された時点以降の「将来の年間収入」によって判断されることになっています。

・これから扶養に入る方
:今まで収入がなかった場合
扶養に入ろうと思ったその月に収入がなければ、向こう1年間の見込年収は0円x12カ月=0円となり収入的には条件を満たします。

:会社を退職する場合
「過去の収入」が130万円を超えていても、扶養に入ろうと思ったその月に収入がなければ条件を満たしますが、扶養に入ろうと思った月の給料が20万円あった場合の向こう1年間の見込年収は、20万円x12カ月=240万円と計算され130万円以上と判断されるためその月は扶養に入ることはできません。扶養に入る条件を満たすにはその月の収入が10万8,333円以下にならないと認定されません。

:結婚後も仕事を続ける場合
このときも見込年収の考え方は同じで、その月に10万8,334円以上の収入があれば被扶養者として認定されません。

・これからパートで働く方
今後のパート収入が月に10万8,333円以下なら引き続き扶養に入っていることはできますが、残業や休日出勤などの手当がついて10万8,334円以上の収入になるといったん扶養から外れないと不正行為とみなされる可能性があります。

保険組合によっても違いがあるようですが定期的に被扶養者の収入をチェックしているようですので、たまたま1カ月だけ10万8,334円以上の収入でその後は10万8,333円以下であれば大目に見てもらえるかも知れませんが、引き続き10万8,334円以上の収入があると何か通知がくることもあるかも知れませんので注意した方が良さそうです。

社会保険の扶養になるメリット

被保険者が負担する社会保険料はその年の4月、5月、6月に支払われた手当を含む給料の平均額に一定の料率を乗じた金額になりますので、扶養家族がいてもいなくても変わりはありません。仮に扶養家族が配偶者と子ども3人いても給料が同じなら負担する社会保険料は同じという仕組みです。

健康保険の料率は都道府県により多少の違いはありますが概ね10%と考えて良いでしょう。例えば平均給料が30万円なら健康保険料は30万円x10%=3万円となり、この額を会社と折半しますので3万円x1/2=1万5,000円を負担します。

また厚生年金の料率は17.474%で30万円の給料なら30万円x17.474%=5万2,422円の半額負担ですから2万6,211円となります。健康保険と厚生年金の合計は1万5,000円+2万6,211円=4万1,211円、この金額が被保険者1人分の社会保険料となります。

被保険者がいるおかげで扶養家族は健康保険料を負担することなく医療を3割負担で受けることができますので、これは大きなメリットといえるでしょう。また配偶者は健康保険料の他にも年金保険料の負担もありません。扶養に入れば自動的に国民年金の第3号被保険者になります。

国民年金保険料は月に1万5,590円です。配偶者はこの保険料の負担もありません。被保険者が支払う厚生年金保険料2万6,211円の中に配偶者の分も含まれることになります。だからといって被保険者の将来受け取る厚生年金額が減ることはありませんので、その仕組みはちょっと不思議な感じもしますね。

仮に夫が個人事業主の場合は国民年金の第1号被保険者となっているわけですが、国民健康保険には扶養家族の考えがありません。よってその配偶者や家族は扶養に入るというメリットを受けることができないことになります。

健 康 保 険 ・ 厚 生 年 金 保 険 の 保 険 料 額 表
参照元:協会けんぽ(2016年1月、著者調べ)

国民年金保険料|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月、著者調べ)

共働きの場合を考える

夫が自営業の場合

夫が個人事業主で妻が年間収入130万円以上の場合、妻は夫の扶養に入ることはできません。夫は国民健康保険に加入し妻は社会保険に加入することになるでしょう。その夫婦に子どもが生まれればどちらかの健康保険に加入しなければなりません。

夫の国民健康保険に追加させれば、生まれたばかりの子どもでも国民健康保険料を支払わなければならないため夫の負担額が増えることになります。子どもが他にもいればますます夫の負担額は大きくなるでしょう。しかし社会保険には扶養の制度がありますので、妻の扶養に入れた方が負担なしで子どもも保険証をもらえます。よって子どもは妻の扶養に入れた方がオトクになりますね。

しかし加入する健康保険組合では納めてくれる健康保険料が総額1万円(年収130万円の場合)しか入ってこないのに、扶養家族が増えた分だけ出費が増え損得を考えれば合わないと思うでしょう。よって妻は勤務先に「健康保険被扶養者(異動)届」を提出しても子どもを扶養家族に認定されないこともあるようです。

一般的に健康保険では夫と妻の両方に収入がある場合は収入の多い方に扶養家族をつけるということが多いようです。この場合夫の収入が妻の収入よりも多ければ夫の国民健康保険に追加される可能性もありますね。妻の社会保険の扶養に入れる際に夫の確定申告書のコピーの提出を求められるのは収入の状態を知りたいことが背景にあるようです。

子どもを扶養に入れる親がシングルであれば無条件で親が被保険者として扶養にいれることができますが、夫婦でどちらにも収入がある場合は収入のチェックが入ることになるでしょう。

とりあえず妻は勤務先に「健康保険被扶養者(異動)届」を出し認められれば何も問題ありませんが、認められなければ夫の国民健康保険に追加するしかなさそうです。

健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2016年1月、著者調べ)

夫婦とも被保険者の場合

健康保険の被扶養者は、その家族が主として被保険者の収入で生計を維持していることが条件です。夫婦共稼ぎでどちらも被保険者の場合子どもや親の面倒をどちらが見るのか、協会けんぽではある程度の柔軟性を持って判断しているようです。

夫婦が共に被保険者のときは、単に収入の多さで判断するのではなくその家族の状況や社会通念などを基に総合的に判断するようです。また収入の少ない方に扶養家族を入れる届け出があった場合でも、主として収入の少ない方が生計を維持していると判断されるような場合は収入の少ない方を被扶養者にすることの考えもあるとされています。

この判断の背景にはライフスタイルの多様化によりどちらの収入によってその家族の生計の柱となっていることを判断することが難しくなっていることがあるからでしょう。夫婦が共に被保険者なら基本は年収の多い方が扶養者とはなりますが家族の実態を勘案し認定するそうです。

今まで夫の収入が多く扶養者となっていてもいろんな事情により収入が減った場合、妻の収入に頼る部分が増えることから、妻の収入が家族の生計の柱になっているといえる場合もあるでしょう。そのときは妻が扶養者として認定されるようです。

夫より妻の年収が低い場合

夫が国民健康保険に加入し妻が社会保険に加入しているときで、妻の収入の方が夫の収入よりも少ない場合、保険料の負担を考えれば子どもは妻の扶養に入っていた方が経済的には有利ですが、子ども(16歳以上)の所得税の扶養控除を夫と妻の両方で使っているのではないかと税務署側から疑いを持たれてしまうこともあるようです。

一般的に扶養者は所得税と健康保険の両方の扶養者となっていることが多いことから、妻の会社で扶養控除を受けている可能性もあるでしょう。所得税の扶養と健康保険の扶養は分けることができます。ただし毎月の入れ替えはできず年度ごとの入れ替えになりますので、子どもの扶養に関してはきちんと区別しておくことが必要でしょう。

子どもが生まれたらどっちの扶養に入れるか

夫婦共稼ぎでどちらも被保険者の場合子どもが生まれたらどちらの扶養に入れた方が良いのか考えて見ましょう。基本的には収入の多い方へ入れることになっていますが、協会けんぽの場合はある程度の柔軟性があるようですので試してみるのも良いのではないかと思います。

以下の家族構成、年収で妻の各税金の差を筆者が概算で計算してみます。

■家族構成
・夫の年収500万円
・妻の年収200万円
・長男10歳
・次男0歳

■子ども2人を夫の扶養に入れた場合
・所得税は約3万9,000円
・住民税は約8万9,000円
*妻が支払う税金の合計額は12万8,000円

■子ども2人を妻の扶養に入れた場合
・所得税は約3万9,000円
・住民税は約4,000円
*妻が支払う税金の合計額は4万3,000円 ■差額
12万8,000円-4万3,000円=8万5,000円

子ども2人を妻の扶養に入れることで年額8万5,000円の節税になります。

なぜこのような逆転現象が起こるのか。個人住民税では一定の所得の方には扶養家族の人数によって非課税となる制度があるためです。ただし住民税の均等割(年額4,000円)は除かれますが所得割に適用されます。

扶養親族数/均等割非課税/所得割非課税
0人/合計所得 280,000円以下/総所得等 350,000円以下
1人/合計所得 728,000円以下/総所得等 1,020,000円以下
2人/合計所得 1,008,000円以下/総所得等 1,370,000円以下
3人/合計所得 1,288,000円以下/総所得等 1,720,000円以下
4人/合計所得 1,568,000円以下/総所得等 2,070,000円以下
5人/合計所得 1,848,000円以下/総所得等 2,420,000円以下

出典:

www.city.hanamaki.iwate.jp
以上の表で扶養家族の数と所得金額を照らし合わせると分かりやすいです。妻の年収200万円の所得金額は筆者の計算では122万円です。この場合扶養家族に16歳未満の子どもも入れることができ、非課税となる所得金額を求める計算式は以下のようになります。

・所得金額=35万円x(1+扶養人数)+32万円

計算の例では子どもが2人ですので、35万円x(1+2人)+32万円=137万円となり、妻の所得金額が122万円ですので見事に所得割が非課税となるわけです。

個人住民税の非課税限度額とは | 花巻市
参照元:花巻市(2016年1月、著者調べ)



まとめ

いかがでしたでしょうか。夫の扶養になる収入の条件や扶養から外れる条件は判断が難しいといえ扶養に入ることができればメリットは大きいのですが、扶養から外れるとなると負担が増えてしまいます。夫婦とも被保険者の場合どちらに扶養をつけるかでも税金の負担額が大きく変わります。

収入の多い方に扶養をつけるという考えもあるようですが、収入が少なくても社会保険に加入している方に扶養がつけられるならさらなる節税にもなりそうです。