扶養控除等申告書はしっかり提出すべし!【笑えない乙欄の悲劇】

「扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」はサラリーマンなら年末調整の時期になると会社から渡されますよね。とくに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をうっかり出さないととんでもないことになるかも知れません。ベースアップしたはずの給料なのになぜか手取りが減っているような事態にもなりかねません。今回はそんな笑えない話や書類の記入についてご説明したいと思います。



扶養控除等申告書は大切

年末調整に関係する書類

会社に勤務している方は年末調整時期になると「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」の2種類の書類を渡されると思います。社員はその2種類の書類に記入し必要に応じ生命保険の控除証明書やその他の書類を添付し会社の担当者へ提出していることでしょう。

もちろんこれらの書類はその年の所得税や翌年の住民税額を決めるために必要であることもご存じでしょう。「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」は生命保険料控除や社会保険料控除、地震保険料控除や配偶者特別控除などを受けるために自己申告する書類で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は扶養控除や配偶者控除などを受けるために申告するものです。

年末調整は個人事業主などが確定申告する手続きを会社が代わりに行う確定申告と思って差し支えないでしょう。場合によっては払い過ぎた税金を返還してもらえる方や、逆に税金の不足分を納める方もいると思います。

しかし中には「扶養家族がいない」や「民間の保険に加入していない」との理由で提出期限までに出さないでいると思ってもいない事態になる可能性がありますよ。

[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|源泉所得税関係|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

総務省|地方税制度|個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」等について
参照元:総務省(2016年1月、著者調べ)

乙欄って何?

会社が社員に給料を支給するときに徴収する所得税額は、給料を支給する度に「給与所得の源泉徴収税額表」に照らし合わせ計算しています。この税額表には日給、月給、ボーナスの所得税が支払われた給料の額に対してあらかじめ計算されており、会社の担当者はこの表に基づいて税金を徴収します。

徴収する所得税は税額表にある「甲欄」や「乙欄」、「丙欄」で税額を求めることになっています。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されているなら「甲欄」を参照し提出されていないときは「乙欄」を参照して税額を決めます。「丙欄」は給料が日払いの場合や短期アルバイトの方から税金を徴収するのに使用するようになっています。

また2カ所以上の会社から給料の支払いがある方は、主たる給料の支払いを受けている会社は「甲欄」を使用し、もう1つの会社は「乙欄」を使用します。またはWワークしている方も「乙欄」で所得税額が計算されていますが、給与がパート収入のみのときは「甲欄」または「丙欄」を使用しているようです。

よって「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していないと「乙欄」により税額が決まることになるのです。

No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収|源泉所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

No.2514 パートやアルバイトの源泉徴収|源泉所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

甲欄と乙欄の違い

所得税が「甲欄」で計算される方は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していますので、年末調整時に「給与所得控除」や「扶養控除」、「配偶者控除」などの所得控除の適用を受け所得税の再計算を行い所得税の清算を行いますが、提出していない方は所得税を再計算する資料が何もないため各所得控除の適用を受けることができないことになります。

また会社側としても社員の各控除が計算できないため、税金の徴収不足にならないように控除は一切ない状態で所得税を計算せざるを得なくなります。翌年の所得税は年末調整時に計算された税額を使いますので1月の給料明細を見てビックリすることになるでしょう。

No.2662 年末調整のしかた|源泉所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)



扶養控除等申告書は必須

税金の違い①:パート篇

パート収入のみの方は働く先で継続してどのくらいの期間働くのかによって参照する「欄」が変わります。働く期間があらかじめ2カ月以内と決まっているのなら「丙欄」を使用し2カ月を超えれば「乙欄」を使用します。では「丙欄」や「乙欄」でどのくらいの差があるのか見てみましょう。

■月の収入が3万円の場合(20日勤務)
・1カ月目(丙欄):所得税:0円
・2カ月目(丙欄):所得税:0円
・3カ月目(乙欄):所得税:0円

実は月収3万円では丙欄でも乙欄でも所得税は0円です。20日勤務で月額3万円の収入ということは日額にして1,500円です。パート収入のみの場合は日額で2,900円以上から所得税がかかる仕組みとなっており、20日勤務なら2,900円x20日=5万8,000円以上になると所得税が差し引かれるようになります。

■月の収入が6万円の場合(20日勤務)
・1カ月目(丙欄):所得税:0円
・2カ月目(丙欄):所得税:0円
・3カ月目(乙欄):所得税:100円
勤めて試用期間2カ月という契約の場合は3カ月目から所得税が給料から差し引かれることになり、給料が6万円なら1日100円の税金です。月額にすれば20日勤務ですから100円x20日=2,000円になります。

しかし勤務期間が2カ月以上と決まっている場合は通常月額表で所得税を計算し、月額表では1カ月の収入が8万8,000円以上になると所得税が3,200円差し引かれることになります。なお年収103万円以下は所得税がかからないことになっていますので、払い過ぎた税金は確定申告するか年末調整で返還してもらいましょう。

Wワークの方は月額表の乙欄で所得税が差し引かれますので、1カ月の収入が8万8,000円未満であればそのアルバイト先では所得税を差し引くことはないと思います。もし日額表で所得税を差し引かれた場合は会社では年末調整ができませんので自分で確定申告し税金の還付を受けることになります。

平成27年分 源泉徴収税額表|パンフレット・手引き|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

税金の違い②:社員篇

さて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しなかった社員の場合、甲欄と乙欄ではどのくらい税金が違ってくるのか見てみましょう。

■給料20万円(社会保険料を差し引いた額)で扶養家族0人の場合
・提出済:所得税4,770円
・未提出:所得税2万900円

これだけ差があるとうっかりでは済まされませんね。1月分の給料の手取りが12月に比べやけに少ないと思ったら明細を確認することですぐに分かります。いち早く「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出し2月分からの給料を正常に戻し、1月分の所得税の差額は確定申告して取り戻すことになります。

申告書に多い勘違い

世帯主とあなたとの続柄

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の右上に記入する欄があります。

・世帯主の氏名
・あなたとの続柄

この書き方を間違えてしまう方が意外に多いようです。世帯主というのは住民票を取得すればすぐに分かりますが、年末調整のためにわざわざ市町村役場にいくのも手間がかかります。役場では同居しかつ同一生計をしているグループを世帯と呼ぶようです。

世帯主はその家族構成によって異なり、夫を中心としたグループであれば世帯主は夫となるケースが多いのですが、事情によっては妻が世帯主となるケースも考えられます。良く選挙などで役場から投票用紙が郵送されてきますが、その宛名になっている方が世帯主と思って良いでしょう。

電気料金や水道料金の宛名では確認することはできません。その宛名は単なる請求するために必要な契約者に過ぎませんので、役場から送られてくる通知の宛名を思い出してみて下さい。また親と同居している家族構成では親が世帯主になっていることが多いようですが、これもいろんなケースがあり一概にはいえません。この場合も役場から送られてくる通知の宛名を思い出すか、やはり住民票を取得するのが最も確実かも知れませんね。 次に「あなたとの続柄」ですが、「続柄」の読み方は「ぞくがら」と読みます。間違っても「ぞくへい」とは読まないようにしてください。さてその「続柄」ですが、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する本人が世帯主なら「本人」と書くようにします。決して「自分」とか「私」と書かないようにしてください。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する方が妻で、世帯主が夫であれば「続柄」には「夫」と書きます。これも間違って「夫婦」と書かないように気をつけましょう。また世帯主が父親であれば「父」と書き母親であれば「母」と書きます。中には「親子」と書く方もいますし「お父さん」や「お母さん」と書く方もいるようです。そのように書いてしまうと会社の事務担当者はただ笑うしかありませんね。

扶養親族の続柄

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の扶養親族の欄にも「あなたとの続柄」という欄があります。やはりここも間違って書いてしまう方が多いようです。申告書を提出する方から見ての続柄を書くのですが、子どもが男の子だけで扶養親族になっている場合は「長男」、「次男」、「三男」と書きます。また女の子だけの場合は「長女」、「次女」、「三女」と書きます。扶養親族がひとりの場合は「子」と書いてもOKですが、どの場合でも「親子」とは書きません。

また両親を扶養親族に入れる場合は「父」や「母」書くようにします。ここも「親子」とか「お父さん」と書いてしまう方がいますので注意しましょう。

なお配偶者を扶養に入れる際は記入する区分が分かれており区分Aに書きます。「続柄」は斜線が引いてありますのでそのままで良いですね。間違って区分Bの扶養親族の欄に記入しないようにしましょう。

医療費控除

扶養者や配偶者、扶養親族が支払った医療費が10万円を超える場合は一定額の所得控除を受けることができますが、この医療費控除は年末調整ではできません。年末調整は所得税についてのみ会社側が行うものですので医療費については自分で申告しなければなりません。

その年によって異なりますが、通常2月1日から3月15日が確定申告の受付期間となりますので、自分で税務署へ行って申告をするかインターネットを通して申告するかのどちらかになります。

No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)



申告書を提出するメリット

扶養控除の適用

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出するメリットは所得税の金額が正確になる以外にも、年末調整で所得控除を受けることができることです。所得控除の種類は以下のとおりとなります。

・配偶者控除
配偶者の年間収入が103万円以下の場合は38万円が控除できます。

・一般の扶養控除
扶養親族の年齢が16歳以上19歳未満と23歳以上70歳未満の場合38万円を控除することができます。ただし年間収入が103万円未満でないといけませんが、公的年金受給者で65歳未満であれば年金額にして108万円未満、65歳以上であれば年金額158万円未満であればOKです。

・特定扶養控除
扶養親族の年齢が19歳以上23歳未満で年間収入が103万円以下の場合は63万円の控除を受けることができます。

・老人扶養控除
扶養親族の年齢が70歳以上で公的年金を受給している場合、年金額が158万円以下でかつ同居していれば58万円の控除、別居の場合は48万円の控除を受けることができます。

・障害者控除
扶養親族に障害を持った方がいる場合、扶養控除38万円に加算して27万円の控除を受けることができ、障害の程度が重く特別障害の場合は40万円を加算して控除されます。また同居している場合は75万円の控除を加算して控除されます。

No.1180 扶養控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

No.1191 配偶者控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

No.1160 障害者控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

高齢者と税(年金と税)|税について調べる|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

どのくらい税金が違うのか

扶養親族がいればそれだけ扶養者の年収から差し引くことがきますので納める所得税や住民税を低くする効果があるといえます。その金額は扶養者の年収によって差があり一概にいくらということはできません。所得税の税率は所得金額によって5%から45%の税率となっており、計算しないと分からないのですが扶養者の年収が500万円前後の場合は、筆者の計算で控除額の10%と考えて良いでしょう。

したがって配偶者控除38万円だけなら約3万8,000円(年額)所得税を抑えることが期待できます。さらに住民税も約3万3,000円抑えることも期待できます。子どもを扶養親族に入れることができれば16歳から19歳までなら38万円、23歳未満なら63万円控除できますのでその額の10%となると結構な節税効果があるといえます。住民税も考えればそうですね、筆者の計算では配偶者控除を含めて約25万円(年額)の効果が期待できます。

しかしこれらのメリットを得るには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要となりますので忘れないようにしてください。

No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

まとめ

いかがでしたでしょうか。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出は単に「乙欄」の問題だけではなく、場合によっては税金対策にもなりますので提出時期にはきちんと記入して会社の担当者へ提出しましょう。