生活保護費を返還?!その理由を実際にあった事例から解説してみた

生活保護費は、一世帯につき生活することが困難であるという場合に、福祉課で受けられる制度ですが、一時的臨時収入や、『収入』とみなされるものに関しては、受けた生活保護費を返還しなければならないという条例があります。ではどうして返還しなければいけないのか、どれを返還としてみなされるのか、ケースや仕組みを一挙ご紹介いたします。



生活保護費を返還しなきゃいけない条例とは?

生活保護を受ける場合、決められている法律・条例には従わなくてはならないようです。というのも、生活保護費の返還に関する条例は、生活保護法・第63条に定められています。

第10章 被保護者の権利及び義務
(費用返還義務)
第63条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

出典:

www.houko.com
要は、生活保護費を支給するにあたって、生活資力(生活できるほどのお金がない)という状況であるということ、金品・資産(車や家)がなくお金に変えられるものがないということ、働ける状態ではないということ、預金もないこと、これらを条件として支給をしています。

その中で収入があった場合は、国がお金を立て替えて生活費を出していたので、その分を返してくださいという条例です。この『収入』とみなされるものはいくつもあります。生活保護を受給していると、毎月収入の調査をケースワーカーに提出して生活保護費の算定に使われますが、この時に虚偽の申告をしてしまうと、不正受給となり、生活保護費及び資産の徴収とされることがあります。

なにをもって『収入』とみなされてしまうのか?

収入としてみなされるのは以下の項目です。

・年金
・スポーツ保険や生命保険金
・障害者年金
・ギャンブル収入
・勤労収入

ざっくり項目にしてしまうと少ないと思うかもしれませんが、意外と問題になるのが生命保険です。例えば、生活保護を受けているAさんが虫垂炎で入院してしまったとしましょう。虫垂炎で腹腔鏡下手術を受けて、入院日数が7日。

生命保険の対象は、手術費、入院費、通院費となるわけですが、生活保護を受けている世帯は、医療費を国が全額で立て替えています。そのため、保険金として入る金額は、国が医療費を立て替えたので、返してくださいという正当理由になります。生命保険に入っていても、生活保護を受けている以上、保険金ですら収入とみなされてしまうということです。

一生懸命働いたのに返還しなければいけないの??

問題はここですよね。一生懸命はたらいた、働き始めたのに、どうして返還しなきゃいけないのと思われている方がいるのではないでしょうか。

ここで基準となってくるのが、「最低生活費」です。最低生活費とは、厚生労働省で定められている等級地から、家族構成をもとにして計算されているもので、生活保護支給費のもとになっています。国が、この家族構成なら、これだけ必要でしょう、と決めた金額ということです。

働いた分は、最低生活費として満額支給されていた場合、生活費を稼いだので、払い過ぎた分を返還してくださいというのが国の言い分です。そのため、働いた金額も払わなければいけない対象となってしまうようです。これについて虚偽の申請を行った場合は不正受給として全額返還ということもかかわってくるようです。そこで、具体的な事例で最低生活費の計算をしてみました。

【例】
・女性30歳無職、子供、三人(2歳、7歳、9歳)うち二人が小学生。
・居住区は第3等級ー1であった場合。

●最低生活費:178,830円
※この金額は厚生労働省の等級地であったり、支援対象者の年齢や勤め先によって違ってきます。おおよその概算です。

上記の金額が、子供三人と生活するのに国が計算した最低生活費というものになります。よって、働けば働いただけ、返還しその水準に合わせますし、働きすぎてそれを上回った場合は、全額返還・三カ月その状態が続けば、生活保護の廃止となります。要は国が立て替えていた生活費なので少なくても控除額を超えていた場合は返還し最低生活費にあわせるという仕組みになります。

生活保護の自動計算ツール
参照元:生活保護(2016年1月時点、著者調べ)



実際に生活保護費の返還があった事例とは?

事故にあった示談金や保険金も返還請求に

生活保護を受けていた世帯で、弟さんが職場で事故にあい、指を三本失ってしまった方の事例です。労災認定がおりて、労災一時金が下りることをケースワーカーに連絡したところ、その労災一時金はすべて生活保護費の返還対象なので全額返還を言い渡されたそうです。

なぜ、一時金が入ったことを連絡しなければならないかというと、保険や労災、収入は手渡しでない限り、銀行振り込みによって渡されたり、手渡しであっても一時金を払っている側は記録を取っているので、隠しようがないため、一時金が入る場合はケースワーカーへの連絡は生活保護条例に基づき、申告するようになっています。

生活保護を受けていると、保護期間が長ければ長いほど、生活保護費は加算され、大きな臨時収入は遡って返還対象となってしまいます。指を三本も失い、心のケアもできなかったという弟さんを思う気持ちがとても切なくなりますね。

やっと抜け出せた生活保護、でも返還請求が来てしまった話

筆者の身近の方にあった事例です。彼女は三人の子供を抱えてご主人の暴力から逃げ、身内の協力もなく、アパートを余っていた貯金で借りて生活保護を受けました。しかし、生活保護から抜け出して普通の生活をしたいと考えていた彼女は、一生懸命仕事をして今後も安定していることを大前提に生活保護の廃止のためケースワーカーに申し出ました。

しかし、ケースワーカーは、最低生活費以上の収入がないと廃止は認められない、廃止したら二度目は受けられないということから、廃止を強く反対したそうです。彼女はそれでも辞めたいのでとさらに仕事を追加して、児童扶養手当、ご主人との離婚での慰謝料と養育費、児童手当、自分の収入と合わせて最低生活費を上回ることができたそうです。

ケースワーカーもそれに納得して廃止の手続きを踏んだそうですが、廃止月に最低生活費を上回っていたので、その分を返還するようにといわれ、約5万円弱を返還したそう。廃止するにも、最低生活費の壁が大きくかかわってくるようです。

実は生活保護費の返還を不服申し立てもできる

不服申し立ては条例でも定められている

生活保護費の返還金や徴収金については、不服申し立ても条例ではできるようにはなっています。生活保護法の11章第64条から69条までが不服申し立てに関する条例となっていますが、実際のところはとても難しいようです。

例えば、生活保護申請が通らなかった、生活保護を一方的に廃止されてしまった、生活保護費が引き下げれて生活できなくなってしまった、返還費を天引きされる(一方的に差し押さえられることは違法とされています。)という一方的なものに関しては不服申し立てが通ることもまれにあるようですが、収入があっての返還金に関しては不服申し立ては難しいようです。

また、不服申し立てには、実際にその不服が発生してから50日以内に申告しないといけないという取り決めもあるようです。

不服申し立てが原因で生活保護の廃止になることも

これは事例としても挙げられているのですが、生活保護の中には就労支援をする更生施設やそれにかかわる場所へ入所させた場合、生活保護を受けている人が、その場が気に入らない、ここでは無理だと施設をやめたいという事例がありました。

それをケースワーカーに報告したところ、それでは生活保護を廃止するということになったそうです。
それに対して不服申し立てをしようとしたそうですが、条例での取り決めにより、更生施設での義務を果たせなかった場合、生活保護の廃止は決まってしまったそうです。生活保護法第62条に背いたため、法律のほうが多いに有利のため、不服申し立てにはならず、廃止となってしまったそうです。

このように、条例での取り決めは細かくされており、法律で決まっているもののほうが有利であるため、明らかなミスやおかしいと思うことでない限り、不服申し立てはかなり厳しいものがあるようです。

生活保護法
参照元:法庫(2016年1月時点、著者調べ)



まとめ

いかがでしたでしょうか?生活保護を申請してから受給するまでとても難しい問題や取り決め条例が付きまといます。さらに生活保護費を受けてしまっても難しい問題がたくさん浮遊しているようです。お金の問題はそう簡単なものではないということを見せられたのではないでしょうか?