【奨学金の第一種】利息なしが魅力だけど借りるのは難しい?

奨学金を借りて大学へ通う学生が増えています。奨学金の中で最もメジャーなものはやはり「日本学生支援機構の奨学金」ですね。利息なしでゆっくり返還できるのが魅力ですが、借りられるかどうかという問題があるようです。日本学生支援機構の奨学金の第一種について、簡単にまとめてみました。



奨学金を利用して大学へ行くために

近所に住む響子叔母のところへやってきた姪の亜美さん。友人の奈々子さんも一緒のようです。

まず気になるのは「奨学金の第一種」

亜美(以下:A):叔母さんこんにちはー!

響子叔母(以下:K):あら、亜美ちゃん、こんにちは。お友達も一緒なの?こんにちは。

奈々子(以下:N):こんにちは、はじめまして。亜美さんの友人で高田奈々子と申します。

K:亜美の叔母です。亜美ちゃんと仲良くしてくれてありがとうね。

A:お母さんから頼まれてミカンを持ってきたの。箱で買ったからおすそ分けだって。叔母さん、少し時間ある?相談にのってほしいことがあって。

K:あら、美味しそう。おつかいありがとう。時間ならあるわよ。今日は特に予定もないし。

A:前に大学の学費の話をしたでしょう?奈々子がね、奨学金を利用して行くつもりらしいの。利息のない「第一種」を希望しているみたいで、私も参考になるから叔母さんにまたわかりやすく説明してもらえたらうれしいな。よろしくお願いします!

K:お安い御用よ。調べる時間を短縮できるものね、その分を勉強の時間に当ててちょうだいね!

日本学生支援機構の奨学金制度

K:「第一種」ということは、「独立行政法人日本学生支援機構の奨学金制度」の中の「第一種奨学金」のことを言っているのよね。「奨学金」と聞いたらまず思い浮かべるのがこの制度。叔母さんの時代は「日本育英会」という名前だったから、親御さんの中には「日本学生支援機構」の名を知らず「日本育英会のこと」と言われてやっとわかる人もいるかもしれない。第一種を希望しているということは、第二種もあるということを知っているのね?

N:はい。第二種は利息がつくのですよね。

K:その通りよ。第一種で借りられる金額は知っている?

N:いいえ、まだ何も具体的には調べていないのです。漠然と「奨学金を借りれば大学に行ける」と思っていたくらいで。



日本学生支援機構で借りることのできる金額

第一種の貸与月額

K:奈々子ちゃんは自宅通学を考えているの?それとも自宅外通学、例えば、家を出て寮や下宿から通うつもりなの?

N:自宅通学です。家から通える大学しか受けないつもりです。経済的な理由が一番ですが、うちは母子家庭だから母のことも心配で。

K:そうなの、親孝行なのね。自宅通学の場合、国公立の大学なら月額45,000円、私立なら54,000円と決められているわ。ちなみに自宅外通学の場合、それぞれ51,000円と64,000円。自宅外通学の場合に増える費用負担を考えると、思ったよりも額がそれほど増えないことがわかると思うの。それで足りない子は第二種を併用することもあるみたいね。それから、第一種では大学や通学の形態に関わらず30,000円という額を選択することもできるのよ。

大学で奨学金の貸与を希望する方へ-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

国公立大の授業料との比較

N:45,000円を12倍すると540,000円。国公立の授業料と比較しても十分な金額ですね。30,000円の場合は12倍すると360,000円。アルバイトをすれば、この金額でも大丈夫かもしれない。

K:あら、国公立の授業料を調べてあるのね。

N:はい、大体年間で540,000円位だったと思います。4年間だと200万円を超えるから、アルバイトもするつもりでいます。36万円だと4年間で144万円ですから、返す負担が減ります。このくらいでなんとかできるといいのですが。

平成22年度国立大学の授業料、入学料及び検定料の調査結果について:文部科学省
参照元:文部科学省(2016年1月時点、著者調べ)

第一種の審査基準

学力と家計の基準は目安が示されているのみ

K:しっかりしているのね。とてもいいことだわ。それでね、第一種の審査に通ることが難しいことは知っている?

N:いいえ。評定平均と家庭事情が関係するくらいのことしか知りません。

K:そうね。評定平均は3.5以上と決められているからわかりやすいわね。大学入学後は上位1/3以内の成績であること。そして、家計の基準額でおおよその目安が示されているの。この「目安」っていうところがポイントでね。具体的に「この評定平均、所得収入なら絶対審査を通ります」という明確な基準は示されていないの。だから、どの子も「審査に通るか通らないか」を事前に予想できないの。

N:母子家庭でもダメな場合もありますか?

K:残念ながらそうなの。母子家庭なら大丈夫、という基準ではないようね。収入の基準は示されているから、基準以下だと申請してみる価値が当然あるのだけれど。

大学で奨学金の貸与を希望する方へ-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

収入基準は給与所得者かそれ以外かで異なる

N:収入基準はどれくらいでしょう?うちは多分、基準額を超えないと思っているのです。具体的にはまだ母に聞いていませんが…。

K:奈々子ちゃんのお家は何人家族?

N:3人です。妹もいるので、女3人家族です。

K:お母さんは会社員のようにお給料をもらうようなお仕事かしら?それとも、自営業のような形で働いているのかしら?

N:お給料をもらって働いています。

K:だとしたら、国公立の自宅通学で見ると基準額は737万円。ちなみにね、給与所得以外の人だと318万円なのよ。

A:家族の数で基準額が変わるということ?うちみたいに4人家族だったらいくらなの?

K:4人世帯で国公立自宅通学の場合、805万円。給与所得以外だったら373万円ね。自宅外からの通学ならそれぞれ849万円と417万円。5人世帯で国公立自宅通学の場合、952万円。給与所得以外だったら520万円。自宅外からの通学ならそれぞれ1,040万円と608万円。

A:基準額が大分上がるね。そんなに収入があるのに奨学金?養う家族が多いと大変とは思うけど…。

K:そうね。やはり収入の低い世帯が優先されるとは思うわ。それに、入ってくる分だけでなく出て行く分もあるでしょう。施設に入っている高齢者を養っている家もあるかもしれないし、事情は様々よね。だから、総合的に判断されるのではないかしら。成績ももちろん加味されてね。

大学で奨学金の貸与を希望する方へ-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

私立の場合

A:ちなみに私立の場合は?

K:それほど国公立の基準額と変わらないのよ。

●3人世帯における所得上限額
【通学区分:給与所得者:給与所得以外】
・自宅:799万円:367万円
・自宅外:842万円:410万円

●4人世帯における所得上限額
【通学区分:給与所得者:給与所得以外】
・自宅:854万円:422万円
・自宅外:897万円:465万円

●5人世帯における所得上限額
【通学区分:給与所得者:給与所得以外】
・自宅:1,050万円:618万円
・自宅外:1,136万円:704万円

A:いずれにしろ、全体的にイメージしていたよりも収入の上限が高い金額だったように思う。

N:私もそう思う。

K:そうね、でもこの上限に近い人が借りられるかといったら厳しいのではないかと推測されるわ。実際に政府広報オンライン上で貸与基準を見直すと宣言しているの。より低所得の世帯の学生が第一種を利用することができるようにという目的でね。

大学で奨学金の貸与を希望する方へ-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

より利用しやすくなった奨学金制度:政府広報オンライン
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

「所得連動返還型無利子奨学金」制度

K:それから、平成24年度に「所得連動返還型無利子奨学金」制度が新設されているの。これは、「第一種」の中に含まれているのよ。返還を心配する学生のためにね、第一種申込者の中で特に家計状況が厳しい、シンプルに言うと収入の少ない世帯を対象としたものなの。大学を卒業した後、一定の収入額になるまでは返還が猶予されるのよ。

A:「特に厳しい」ってどのくらいのこと?

K:給与所得のみの世帯で年間収入が300万円以下であることが条件。世帯収入でみるから、共働きの場合はお父さんとお母さんの収入を合算した額でみるのよ。それからね、この「所得連動返還型無利子奨学金」制度は大学院には適用されないの。一般的な学生でも経済的なことを考えて大学院を選択しない人も多くいるでしょうし、妥当ではないかしら。他の条件は第一種と同じなのよ。

N:どのくらいの収入になるまで、返還が猶予されるのでしょうか?

K:給与所得の場合で300万円よ。給与所得以外の場合なら200万円。他の奨学生の場合でもね、収入300万円(あるいは200万円)になるまでは最長で10年まで猶予してもらえるの。あくまでも目安であって世帯の状況によるからはっきりこの金額、とは言えないのだけれどね。そして、「所得連動返還型無利子奨学金」制度の場合は、何が違うのかと言うと期間の制限がないの。ただ被扶養者(親や配偶者などのことね)に乳幼児がいて保育しなければならないとか、介護をしなければいけないとか、妊娠中であるとか、障害などで就労制限がある場合に限られているのよ。期限がないということだから「本当に返すのが大変」な状況であることが条件なのね。

所得連動返還型無利子奨学金制度-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

「経済困難」審査の収入金額・所得金額の目安-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)



審査が厳しい

奨学金の利用者は増え続けている

N:300万円、あるいは200万円が一つの目安であることはイメージできてきました。学生側からすると、この金額、この成績なら大丈夫というような線引きがもっとはっきりしていたら安心なのですが…。

K:そうね、その気持ちはよくわかるわ。審査の状況は年度によって変わってくるでしょうね。利用者の増加というのも原因だと思う。

N:増えているのですか?

K:そうなの。文部科学省の資料を見るとね、ほら、平成11年から奨学金受給率、つまり大学生のうちで奨学金を利用する人の割合ね、それがぐんと増えているのがわかるでしょう?

A:わ、本当だ!

K:平成10年といえば史上最悪の失業率を記録したり、自殺者が急増したりと経済が混迷を深めていた時期でもあるのよね。話を戻すけど、要するに奨学金を利用する人が増える。そうなるとどうなる?

N:第一種を希望する人も当然多いでしょうから、審査で通らない人も増える。

K:そうね。そういうことも考えられると思うのよ。グラフを見るとわかるように、奨学金利用者が増えたことで第二種を利用する人が増えたということになっているわ。

(独)日本学生支援機構(JASSO)奨学金貸与事業の概要
参照元:文部科学省(2016年1月時点、著者調べ)

保証人の問題

保証人を立てるのが難しい場合の機関保証制度

K:日本学生支援機構の奨学金を利用するにあたって、保証人が必要なことは知っている?

N:いいえ。お母さんに頼めば大丈夫でしょうか?

K:保証人はね、連帯保証人と保証人の二人が必要なの。お母さんに連帯保証人をお願いするとして、4親等以内の親族の誰かに保証人をお願いする必要もあるの。伯父や伯母など別生計の人ということ。兄妹姉妹でも別生計なら大丈夫なの。

N:頼みづらい場合などはどうするのでしょうか?

K:機関保証制度というものがあるの。保証料を払うことで連帯保証してくれるというものよ。

保証制度について−JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

保証人に迷惑をかけるのはどんなとき?

A:保証人のお願いをするときに「どんな迷惑をかける可能性があるか」をきちんと話す必要があるよね。やっぱり、返還の共同責任みたいな感じなのかな?

K:そう。借りたお金を返還するための保証人だから。奨学生と連帯して返還しなければならないのが連帯保証人、奨学生や連帯保証人が返還できなくなったときに返還しなければならないのが保証人。

N:返還をきちんとしていれば迷惑をかけないで済むということですね?

K:そうよ。ただ、延滞したときに保証人に電話や通知が行く場合があるから、そういう意味でも迷惑をかけるという可能性はあるわね。どのようなスケジュールで連絡がいくかについて、日本学生支援機構のサイトで詳細に明示されているから、延滞しそうなときは確認しておくといいかもしれないわね。

12月28日に、口座振替(リレー口座)による返還ができなかった方へ-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

第一種を利用した場合の返還スケジュール例

N:延滞はなるべくしたくないけれど、何があるかわからないですよね…。借りる金額が大きくなければ返還スケジュールはきつくないと思っていたのですが、少し不安になってきました。

K:そうね。返還例も日本学生支援機構のサイトにあるから見てみましょう。国公立で自宅通学、4年間45,000円を借りた場合、総額が2,160,000円。14年間で返還するなら返還月額は12,857円。

A:そんなにきつくない金額に見える!他の条件の場合は?

K:自宅外なら51,000円借りられるでしょう、総額を15年で返すためには月額13,600円。私立は自宅通学で15年間14,400円を返還、自宅外通学の場合、18年間14,222円。国公立私立関係なく月額30,000円を借りたケースでは13年間9,230円を返すプランになるわ。6年制のプランもサイトにあるから見てみるといいけど、返還年数は最大で20年、金額は12,857円から19,200円といずれも月額が低く抑えられているのがわかると思う。

N:早く返還できそうな場合は繰り上げて返還すればいいのですね。

K:その通りよ。返還分は次の奨学生への財源になるから、学生から学生へつながれていくお金ということなの。

大学・返還例-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2016年1月時点、著者調べ)

申請が通るならぜひ利用したい「第一種」

A:第一種のことは大分理解できてきた。問題は申請が通るかどうかね。厳しいみたいだし。そのためにも第二種について知っておく必要もありそう。

N:そうだね。そんな自覚が出てきた。第二種についても一緒に調べて教えていただけますか?

K:もちろんよ。お茶休憩を入れて、次は第二種の場合についてお話しましょう。第一種とどのくらい利息分で変わるのかなど、興味があるわね。 ▼▽▼あわせて読みたい▼▽▼ 奨学金を借りて大学へ進学したい。奨学金はどのくらい借りられるのだろうか?第一種に比べて借りやすい第二種では沢山借りられるって本当?沢山借りると返還も大変?そんな「奨学金」の金額あれこれについて、第二種の話を中心に簡単にまとめました。