年少扶養控除の復活の日はあるのか?《児童手当との比較》

年少扶養控除が廃止されたのは、所得税については平成23年度分からで住民税については平成24年度分からでした。所得税も住民税も以前は16歳未満の子どもについて年少扶養控除という所得控除があり、所得税は38万円で住民税は33万円の適用を受けられ納税者にとってはありがたい控除でしたが、高校実質無償化や児童手当の導入により廃止になったのです。しかし保育料の値上げがあり子育て世帯にとっては増税となっています



年少扶養控除について

以前あった年少扶養控除とは

平成28年1月現在では子どもを扶養親族にするには、その年の12月31日時点で16歳以上でないと扶養控除38万円の適用を受けることはできませんが、平成22年分の所得税や平成23年分の住民税までは16歳未満の子どもに対し所得控除の適用を受けることができました。

この名を「年少扶養控除」といい所得税と住民税は以下の金額となっていました。

・所得税
:年齢が0歳から16歳未満を一般の扶養親族といい控除額は38万円
:年齢が16歳以上23歳未満を特定扶養親族といい控除額は63万円

・住民税
:年齢が0歳から16歳未満を一般の扶養親族といい控除額は33万円
:年齢が16歳以上23歳未満を特定扶養親族といい控除額は45万円

このように控除することができ納税者(扶養者)はその分だけ税金を抑えることができました。ところが
児童手当法の改正や高校授業料の実質無料化の実施にともない、所得税は平成23年度から、住民税は平成24年度から年少扶養控除の廃止と特定扶養控除の対象年齢および控除額が見直されることになったのです。

児童手当法
参照元:法務省(2016年1月、著者調べ)

16歳未満の扶養親族に関する扶養控除は? – 飯田市ホームページ
参照元:飯田市(2016年1月、著者調べ)

改正後の年少扶養控除

改正後の年少扶養控除を見てみましょう。

・所得税
:年齢が0歳から16歳未満は控除対象外
:年齢が16歳以上19歳未満を一般の扶養親族といい控除額は38万円
:年齢が19歳以上23歳未満を特定扶養親族といい控除額は63万円

・住民税
:年齢が0歳から16歳未満は控除対象外
:年齢が16歳以上19歳未満を一般の扶養親族といい控除額は33万円
:年齢が19歳以上23歳未満を特定扶養親族といい控除額は45万円

ご覧のように年齢が16歳未満は控除額がゼロとなり、特定扶養親族も19歳を境にして2つに分けられてしまいました。具体的に例を上げましょう。子どもを中学生(16歳未満)と高校生(19歳未満)とします。

・中学生
:改正前/所得税控除38万円/住民税控除33万円
:改正後/所得税控除0円/住民税控除0円

・高校生
:改正前/所得税控除63万円/住民税控除45万円
:改正後/所得税控除38円/住民税控除33万円

これらを合計するともっと分かりやすくなります。

・改正前扶養控除
:所得税/中学生38万円+高校生63万円=101万円
:住民税/中学生33万円+高校生45万円=78万円
:合計控除額=101万円+78万円=179万円

・改正後扶養控除
:所得税/中学生0円+高校生38万円=38万円
:住民税/中学生0円+高校生33万円=33万円
:合計控除額=38万円+33万円=71万円

・増税額=179万円-71万円=107万円

この控除額を金額に換算すれば年収500万円の家庭では年額約10万7,000円の増税となったといえるでしょう。

No.1180 扶養控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)



年少扶養控除の代役

児童手当

年少扶養控除の代役となったのが児童手当(旧子ども手当)です。平成24年度から実施された児童手当の額は納税者(扶養者)の所得制限はあるものの子どもの年齢に応じて支給されています。

・子どもが3歳未満:1万5,000円
・子どもが3歳から小学校終了時まで:1万円(3人目からは1万5,000円)
・子どもが中学校終了時まで:1万円
・所得制限以上の世帯は年齢に関係なく子ども1人あたり5,000円

これらの金額が年3回(2月、6月、10月)に分けて4カ月分支給されるようになっています。なお子どもの3人目という考え方は年上から1人、2人と数えて以下に具体例を紹介しましょう。

・子どもが5歳、10歳、16歳といる場合
:1人目16歳は0円
:2人目10歳は1万円
:3人目5歳は1万5,000円

・子どもが13歳、16歳、18歳の場合
:1人目18歳は0円
:2人目16歳は0円
:3人目13歳は1万5,000円

・子どもが0歳と2歳の場合
:2人とも3歳未満のため1万5,000円ずつ

・子どもが6歳、15歳、17歳、18歳の場合
:1人目18歳は0円
:2人目17歳は0円
:3人目15歳は1万円(中学生は一律)
:4人目6歳は1万5,000円

子どもの規定は年齢が18歳に達した最初の3月31日までの子どもをいいますので以下の場合は数え方に注意が要ります。

・子どもが20歳、16歳、12歳、10歳の場合
:1人目16歳は0円
:2人目12歳は1万円
:3人目10歳は1万5,000円

この場合は20歳の子どもは数に入れません。

児童手当について |厚生労働省
参照元:厚生労働省(2016年1月、著者調べ)

さいたま市/児童手当
参照元:さいたま市(2016年1月、著者調べ)

申請しないともらえない

児童手当は市区町村の役場へ申請しないと支給されません。扶養控除にしても「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記入しますので同じようなものですが、納税者(扶養者)がサラリーマンなら年末調整時に記入して会社の担当者へ提出すればあとは担当者がすべて手続きをしてくれるのでラクです。

しかし児童手当は基本的に納税者(扶養者)が役所へ行って手続きをしなければなりませんので少々手間がかかることになります。必要なものは以下のとおりです。

・認め印
・納税者(扶養者)名義の預金通帳(コピー可)
・納税者(扶養者)の保険証(コピー可)
・納税者(扶養者)と配偶者のマイナンバー
・納税者(扶養者)の免許証など名前と住所が確認できるもの

その他にも必要書類がありますが市区町村で用意している書類と所得できる書類があり、それらを用意して申請し認定されれば認定通知書が郵送されてきます。児童手当は6月、10月、2月の3回に分けて4カ月分口座へ振り込まれその月の10日となります。また毎年6月に「現況届」を提出しなければなりませんが、その書類は市区町村から事前に郵送されてきます。

さいたま市/児童手当
参照元:さいたま市(2016年1月、著者調べ)

保育料について

保育料の計算①

年少扶養控除が廃止されその代わりに児童手当が支給されるのは良いのですが、保育料が上がったという話を多く聞きますので計算してみましょう。手順は以下のとおりとなります。

■家族構成
・納税者(扶養者)年収500万円
・妻:専業主婦
・子ども5歳
・生命保険料の支払い年額10万円
・介護保険料の支払い年額3万円

■計算手順
①納税者(扶養者)の社会保険料を早見表で確認しましょう。
:長野県在住の場合
*健康保険料2万315円+厚生年金保険料3万5,821円=5万6,136円
*年額は5万6,136円x12カ月=67万3,632円

②住民税の均等割
:自治体によって差がありますが、標準的な額4,000円とします

平成27年度保険料額表(平成27年8月分まで) | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
参照元:全国保険協会(2016年1月、著者調べ)

保育料の計算②

③所得金額の計算をしましょう
:年収500万円/4×3.2-54万円=346万円

④所得控除の合計をしましょう
:社会保険料控除67万3,632円
:生命保険料控除
*生命保険料の年額が10万円超:3万5,000円
*介護保険料の年額が3万円:2万1,000円
*配偶者控除:33万円
*基礎控除:33万円
:総合計=67万3,632円+3万5,000円+2万1,000円+33万円+33万円=138万9,632円

⑤課税所得の計算をしましょう
:③346万円-④138万9,632円=約207万円

⑥調整控除をしましょう
:所得税の控除額=配偶者控除38万円+基礎控除38万円=76万円
:住民税の控除=配偶者控除33万円+基礎控除33万円=66万円
*(76万円-66万円)-(⑤207万円-200万円)=3万円
*上記の計算で5万円未満の場合は5万円とします

⑦所得割の計算をしましょう
:(⑤207万円-⑥5万円)X10%=20万2,000円

⑧住民税の計算をしましょう
:②均等割4,000円+⑦所得割20万2,000円=20万6,000円

⑧保育料の計算をしましょう
:早見表で確認します
*⑦所得割の額で該当するところを参照します
:5歳で保育時間を標準とすれば3万1,500円が月額の保育料となります。

年額にして3万1,500円x12カ月=37万8,000円という金額になりました。ところが平成27年度から保育料が上がったという声が聞こえてきます。どうやら保育料の算定基準が従来の所得税額から今回計算した住民税(所得割)に変更になったことが原因のようです。

市県民税の計算例/上田市役所
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)

所得の種類/上田市役所
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)

生命保険料控除の改正/上田市役所
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)

控除の種類/上田市役所
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)

人的控除差による税負担の調整控除/上田市役所
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)

上 田 市 利 用 者 負 担 額 ( 保 育 料 ) 徴 収 基 準 額
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)

平成26年度までの保育料

平成26年度までは納税者の所得税が保育料の算定基準でした。どの程度変わったのか確認してみましょう。

■家族構成
・納税者(扶養者)年収500万円
・妻:専業主婦
・子ども5歳

■所得税の計算
①給与所得控除の計算をします
:年収500万円x20%+54万円=154万円

②基礎控除を確認します
:一律なので38万円

③配偶者控除を確認します
:一律なので38万円

④控除額を合計します
:①154万円+②38万円+③38万円=230万円

⑤課税所得額を計算します
:年収500万円-④230万円=270万円

⑥所得税を計算します
:270万円x10%-9万7,500円=17万2,500円

⑦保育料を確認しましょう
:早見表で確認します。
*⑥17万2,500円額で該当するところを参照します
:5歳で保育時間を標準とすれば2万8,300円が月額の保育料となります。

年額にして2万8,300円x12カ月=33万9,600円という金額になりました。平成27年度からは37万8,000円となっていますのでその差額3万8,400円の負担増ということになりますね。

平成27年度保育料について | 長岡京市公式ホームページ
参照元:長岡京市(2016年1月、著者調べ)

No.1410 給与所得控除|税について調べる|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

No.1199 基礎控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

No.1191 配偶者控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

平成26年度 横浜市保育所保育料
参照元:横浜市(2016年1月、著者調べ)



平成22年度までと比べて見る

子ども手当

年少扶養控除が廃止になる前の平成22年度の子ども手当は中学校終了時まで1人月額1万3,000円です。今までの計算例の家族構成は以下のとおりです。

■家族構成
・納税者(扶養者)年収500万円
・妻:専業主婦
・子ども5歳

現在の児童手当は5歳で1万円ですから3,000円の減です。なお住民税額は年少扶養控除がありましたので筆者の計算によれば約16万9,000円、所得税は約13万9,500円、保育料は約31万8,000円です。これらの額を合計してみましょう。

■平成22年当時
・年収500万円
・所得税:13万9,500円
・住民税:16万9,000円
・保育料:31万8,000円
・子ども手当:1万3,000円x12カ月=15万6,000円

■収入
・年収500万円+子ども手当15万6,000円=515万6,000円

■支出
・所得税13万9,500円+住民税16万9,000円+保育料31万8,000円=62万6,500円

■差額
・収入515万6,000円-支出62万6,500円=452万9,500円

平成22年度 横浜市保育所保育
参照元:横浜市(2016年1月、著者調べ)

子ども手当
参照元:厚生労働省(2016年1月、著者調べ)

平成28年度はいくらか

年少扶養控除が廃止され児童手当が下がり保育料が上がった現在はどうなのか見てみましょう。

■家族構成
・納税者(扶養者)年収500万円
・妻:専業主婦
・子ども5歳

■平成27年度
・年収500万円
・所得税:17万2,500円
・住民税:20万6,000円
・保育料:37万8,000円
・子ども手当:1万円x12カ月=12万円

■収入
・年収500万円+子ども手当12万円=512万円

■支出
・所得税17万2,500円+住民税20万6,000円+保育料37万8,000円=75万6,500円

■差額
・収入512万円-支出75万6,500円=436万3,500円

■平成22年度との比較
・平成22年452万9,500円-平成27年436万3,500円=16万6,000円

結果は?

なんと年少扶養控除が廃止される前と比べると16万6,000円の負担が増えていますね。これではとても子育て世代にはつらいことになります。少子化を何とかしなければならないといいながら消費税を上げ、保育料を上げ、児童手当を下げるような政策ではとても無理なような気がします。

年少扶養控除が廃止されでも扶養控除が所得税38万円と住民税33万円の合計71万円。税額にすると約7万1,000円の負担が増えても、児童手当が年額12万円ならプラス4万9,000円になって「トクした!」と単純に考えていたら、とんでもないことが判明しました。

これなら年少扶養控除があった方がよほどマシといえるでしょう。さらに2016年10月からの健康保険加入の年収が130万円から106万円と引き下げられ、2017年1月からは配偶者控除の廃止も予定されているようです。結局いろんなしわ寄せは国民が負担するようになっているのか…なんて思ってしまいますよね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。年少扶養控除を復活しないと子育て世代にとっては苦しいといえますね。少子化対策しているといいながら負担が増えてしまっている現状を見ると、これからどうなってしまうのだろうと不安を感じている方はさぞ多いことでしょう。