失業保険をもらうと「扶養」からはずれちゃうの!?

急な会社の倒産、やむを得ない事情による離職…そんなときに心強いのが失業保険ですよね。ところが、失業保険をもらうと、その給付金額によっては、社会保険上の「扶養」の対象から外れるため、社会保険料を自分で負担しなければならないって知っていましたか?そこで失業保険と扶養の関係性として、失業保険をいくらもらうと社会保険料の自己負担が発生するのか等、各種条件等を調べてみました。



そもそも失業保険とは

失業保険とは、雇用保険に加入していた人が、勤め先の倒産・リストラ等によって解雇された場合や、やむを得ず自己都合退職した場合等において、次の再就職先が決まるまでの生活支援として支給されるものです。失業保険は失業・離職した人にすべからく支給されるものではなく、受給要件を満たし、かつ求職活動等所定の活動を行った人に対して支給されます。

失業保険に係る相談は全国にあるハローワークで行うことができますが、ハローワークでは、失業保険に関すること以外でも、例えば就職活動等の支援や、離職の際のトラブル解決のサポート、失業後の生活に関する情報提供などのサポートを受けることができます。

また、ハローワークのWEBサイトでは、多くの求人から条件を指定して求人検索することができ、求人内容は毎日アップデートされています。失業・離職・求人に際して困ったことがあれば、ハローワークのWEBサイトを確認したり、気軽に訪問して相談してみましょう。

なお、失業保険の手当が受けられるのは、離職した日の翌日から1年間となっています。これは「受給期間」と呼ばれます。退職してからハローワークへの手続を行うまで長期間経ってしまうと、規定された給付日数すべてを受給することができなくなってしまう可能性がありますので、注意が必要です。

本人の病気・ケガ、妊娠、出産・育児、親族等の介護等がある場合には、最大3年間受給期間が延長される場合があります。

失業保険の受給要件とは

失業保険は、就職ができる状態である人がやむを得ずに離職している場合に、再就職するまでの支援を目的として支給されるものであることを踏まえ、受給を受けるためには以下の条件が必要となります。

・就職しようとする積極的な意思・能力があるにもかかわらず職につけない人。
・離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上(※)ある人。

※ただし、特定受給資格者または特定離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上ある場合でも可能です。

このため、病気やけが、妊娠・出産・育児のためすぐにはなお就職できない人や、定年等で退職して当面休養しようと考えている人等は、就職できる状態にあるとはいえず、失業保険の手当を受給することはできません。

なお、上記にある「特定受給資格者」「特定離職者」とは、倒産、解雇、事業所の廃止、事業所の移転によって、通勤することが困難になり離職した人等会社側の都合によって失業してしまった人や、有期の雇用契約期間が満了し、更新されなかった人、体力不足・心身障害・疾病などにより、離職した人、妊娠・出産等により離職し、かつ受給期間延長措置を受けた人等を指します。

「求職活動」って何をするの?

失業保険を受給するためには、「求職活動」を行う必要があり、具体的には以下が該当します。

・求人への応募
・ハローワークや民間企業、公的機関等が行う職業相談、講習・セミナーへの参加
・再就職へ向けた各種国家試験・検定試験の受験

なお、上記「求職活動」の実施状況については、ハローワーク所定の「認定日」に、ハローワークへ活動状況について申請・報告を行います。これは、おおむね4週間に1度の頻度で行いますが、「求職活動」については、「前回の認定日から今回の認定日の前日まで」等の失業期間中に最低2、3回以上行う必要があります。

ハローワークインターネットサービス – 基本手当について
参考元:厚生労働省職業安定局(2016年1月現在、著者調べ)



失業保険の受給額と扶養の関係

失業保険の受給額は?

失業保険の受給額は、退職した日の直前半年間に毎月支払われた給与の合計を180で割り、その金額のおよそ5~8割程度が手当の日額となっています。また、手当の日額は、年齢ごとに上限が定められており、現在の上限額は以下のとおりとなっています(給与の低い方ほど高い給付率となります)。

【基本手当日額】
・30歳未満:6,395円
・30歳以上45歳未満:7,105円
・45歳以上60歳未満:7,810円
・60歳以上65歳未満:6,714円

出典:

www.hellowork.go.jp
失業保険の給付日数は、離職の事由・年齢等によって異なりますが、90日~360日の間で決まります。事由別の給付日数は、おおまかには以下の通りです。

・自己都合退職の場合:雇用保険の被保険者期間が1年以上10年未満→90日、被保険者期間が10年以上20年未満→120日、被保険者期間が20年以上→150日
・倒産・解雇等による離職の場合:被保険者期間が5年未満でかつ45歳未満→90日、被保険者期間が5年以上10年未満でかつ30歳未満→120日、被保険者期間が5年以上10年未満でかつ30歳以上45歳未満→180日、被保険者期間が10年以上20年未満でかつ30歳未満→180日

扶養をはずれるのはいくらから?

失業保険の受給額が上記のとおり定められている一方で、社会保険上の「扶養」の条件は、基本的に「被保険者(例えば会社に勤めている夫)によって生計が維持されている人」となっており、「主として被保険者によって生計が維持されている人」として示されている収入要件については、以下の基準があります。

【収入要件】
年間収入130万円未満(2016年10月以降一部の方は年間106万円未満)

例えば、130万円を360日で割ると、3,611円強となりますので、失業保険手当の日額が3,612円以上あると、「扶養」の対象から外れ、社会保険料を自己負担する必要が出てきます。

健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き|日本年金機構
参考元:日本年金機構(2016年1月現在、著者調べ)

扶養から外れる場合の手続は?

失業保険を受給し、かつ受給額が日額3,612円以上であった場合は、社会保険料を自身で支払う必要があります。このため、失業保険の受給が開始すると、「扶養」から外れる手続を行うと同時に、自身の社会保険の加入手続が必要となります。詳細はそれぞれの健康保険組合等に確認する必要がありますが、おおまかな手続を以下で見ていきましょう。

【扶養から外れる手続】
被扶養者でなくなった事由が発生した日から5日以内に、「被扶養者異動届」「保険証」を被保険者(例えば会社に勤めている夫)の所属している健康保険組合に提出する

【自身の社会保険の加入】
選択肢としては、国民年金・国民健康保険への加入と、退職前の健康保険組合の任意継続のいずれかになります。

●国民年金・国民健康保険へ加入する場合:退職してから14日以内に「退職日が証明できるもの・本人確認資料・印鑑」を持参してお住いの市区町村の年金事務所や役場の窓口にて手続を行います。

●退職前の健康保険組合に任意継続する場合:退職して20日以内に退職前の健康保険組合宛に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を提出する必要があります。

国民健康保険と任意継続どっちがいいの?

「国民健康保険」と「退職前の健康保険の任意継続」について、どちらを選択するべきか悩ましいところですが、比較のうえで、やはり気になるのが「保険料」ですよね。そこで、それぞれのおおまかな計算方法について見ていきたいと思います。

まずは任意継続についてですが、健康保険料については、退職時に給与天引きされていた保険料のおおむね2倍となることが多いようです。これは、勤めていた時には健康保険料の半額を会社側が負担していてくれていたものを、退職後は会社負担分も自身で負担するためです。ただし、任意継続の保険料については、上限が定められており、上限額については市区町村で多少変動はあるものの、おおむね毎月28,000円程度のようです。

つぎに国民健康保険料についてですが、こちらは前年の所得や世帯ごとの加入人数に基づいて算出されます。健康保険料率は市区町村によって異なり、お住いの地域によって大幅に保険料が変わる可能性がありますが、保険料の上限額については年間でおよそ650,000円程のようです(市区町村によって異なります)。

上記を踏まえると、ざっくり言えば在職中の収入が多ければ、保険料の上限金額が低い「退職前の健康保険組合の任意継続」を、住んでいる市区町村の保険料率が低ければ「国民健康保険」を選択した方が安くなる場合が多いようです。参考にしてみてくださいね。

任意継続の注意点

健康保険の任意継続については、加入後の被保険者期間に制約があり、「任意継続被保険者となった日から2年間」は加入する必要があります。期間の途中で任意にやめることはできませんので注意しましょう。ただし、任意継続については、退職後も引き続き会社の福利厚生を利用することが出来るというメリットがあります。

例えば、特に大企業になると、各種人間ドッグや脳ドッグ、子宮がん検診といった婦人科検診等の割引制度や、費用補助を受けられるケースがありますので、保険料との兼ね合いもありますが、選択肢として検討してみるのも良いかもしれません。

被扶養者を削除するとき | [ITS]関東ITソフトウェア健康保険組合
参考元:[ITS]関東ITソフトウェア健康保険組合(2016年1月現在、著者調べ)

国民健康保険【2015年版】 | 国民健康保険料の計算、国民健康保険と健康保険任意継続との比較など!
参考元:国民健康保険(2016年1月現在、著者調べ)



失業保険と扶養の上手な活用方法

これまで見てきたように、失業保険の日額が3,612円を超えてしまうと、失業保険の受給期間中は社会保険料を自己負担しなければいけませんが、退職後に収入が見込めない状況においては、社会保険料として毎月数万円出費するというのはとても大きな負担に感じてしまいますよね。

そこで、失業保険を受給しながら、極力扶養を活用する方法について、よくある事例を参考に、退職してから失業保険受給までの流れ・必要な対応を具体的に見ていきたいと思います。

【具体例】
・2015年12月末日に会社を自己都合退職
・夫が健康保険組合の被保険者
・再就職する期限は特に設けず(納得いく就職先が見つかり次第就職)
・退職後の収入は失業保険のみ
・失業保険日額は3,612円以上(扶養の条件からは外れる)

【退職から失業保険受給までの流れ・対応】
①2015年12月末日会社を自己都合退職

②2016年1月中にハローワークにて失業保険に係る手続を実施:
この場合、自己都合退職となるため、約3カ月の失業保険給付制限期間が発生する。この間無収入につき、社会保険は夫の扶養に入る手続を行う(社会保険料の自己負担なし)

③2016年4月より失業保険受給:
失業保険日額が3,612円以上となり扶養の条件から外れるため、扶養の削除の手続を行う。また、自身の国民年金・国民健康保険の加入手続を行う→2016年7月失業保険の受給が終了。まだ再就職先が決まっていない場合は、再び無収入となるため、再度夫の扶養に入る手続を行う。

扶養に入ったり外れたりと、手続は少々煩雑にはなりますが、上記の対応を行うことで、失業保険の給付制限期間である3カ月間の社会保険料の負担を減らすことができます。ぜひ参考にしてみてください。

ハローワークインターネットサービス – 失業された方からのご質問(失業後の生活に関する情報)
参考元:国民健康保険(2016年1月現在、著者調べ)

まとめ

退職をすると、「これまで社会保険料は給与天引きしてもらっていたけど、これからは自分で払わなきゃ」と、すぐに国民年金・国民健康保険の加入手続をされる方がいらっしゃいます。

しかし、上記のように「扶養できる人(上記の例でいうと会社勤めの夫)」がいて、失業保険の給付制限期間がある場合(自己都合退職の場合)は、給付制限期間中に一旦扶養に入って、その後失業保険の受給が開始したら扶養から外れるという手続を行うことで、社会保険料を節約することができます。

会社を退職すると、これまでに定期的にあった収入が無くなり、とても心細い毎日かと思いますが、そんななか数万円(場合によっては10万円超)の社会保険料の負担を減らすことは、心の余裕にも繋がると思います。なるべく1日でも早い再就職を目指しつつ、上手に制度を利用することで、有意義な求職期間を過ごせるといいですね。