税法上の扶養親族によって変わる所得税や個人市民税の話し

税法上の扶養親族は誰のことをいうのかご存じでしょうか。扶養親族がいるかどうかで所得税や個人住民税の税額が変わることをご存知でしょうか。11月の中ごろになると会社から年末調整のために渡される書類は何のために提出するのかまたその書類によって何が変わるのかを知らないままに「なんとなく提出」状態になっていませんか?扶養親族のことを知らないままにしておくと所得税や住民税を多く支払うことになるかも知れません



税法上の扶養親族

扶養親族って何だろう

扶養親族は自分の家族や子どものこと、と思っている方は多いと思います。しかし税法上の扶養親族はそれだけではありません。扶養するということは、納税者である人が自立してくことが難しい人を経済的に支援することであり、それは何も自分の家族に限ったことではないのです。

サラリーマンなどの給与所得者は年末調整時に扶養控除という言葉を聞いたことがあると思いますが、その扶養控除の対象となる人が納税者の経済的支援によって生活していることになります。納税者は扶養することで何らかの生活費や教育費などの費用を出費する代わりに扶養控除という形で所得控除の適用を受け、所得税や個人住民税の負担を軽減してもらえるのです。

しかし扶養親族は誰でも良いというわけにはいきません。所得税法上の一定の要件を満たしていないと扶養親族にはあたらずよって扶養していても扶養控除の適用を受けることができません。納税者の損得勘定で扶養するしないを決めるわけではありませんが、扶養親族がいればその分だけ出費がかさむことには違いないでしょうから、できることなら税法上の特典を受けたいと思うことは自然のことでしょう。

扶養親族の要件とは

税法上において扶養親族がいれば扶養控除の適用を受けることができます。良く納税者の配偶者も扶養親族と間違える方が多いのですが配偶者は扶養親族ではありません。配偶者は民法第890条に定められているように納税者にとっては特別な存在として扱われ大事にされています。

大事に扱われている割に配偶者は扶養控除の適用がされないのではと心配するかも知れませんが、税法上では扶養控除の代わりとして配偶者控除という所得税の控除があり、さらに配偶者の収入によっては配偶者特別控除という2つの控除が用意されているのです。配偶者控除と配偶者特別控除は排他的に適用を受けますので両方同時に控除されることはありませんが、控除は2段構えになっていることからも分かるように特別な存在として扱われているのです。

では扶養親族になることができる要件をご紹介しましょう。まず基本的に12月31日の時点で16歳以上であることが条件となります。また以下の要件をすべて満たしていることが必要です。

(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

出典:

www.nta.go.jp
税法上の扶養親族となる範囲は広く6親等の血族まで含まれることになりますので、納税者の家族や子ども限定ということはありません。ただし納税者の生計を共にしていることや年間所得が38万円以下ということを考慮すれば6親等以内の血族とはいってもある程度範囲は狭まるといえるでしょう。それでも3親等以内の婚族も入りますので現実的には、納税者の祖父母や曾祖父母、孫、兄弟姉妹、甥や姪、伯父や伯母と配偶者の親、祖父母、曾祖父母、兄弟姉妹、甥や姪までなら家庭の事情によっては扶養親族になるかも知れません。

民法
参照元:法務省(2016年1月、著者調べ)

No.1180 扶養控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

生計を一にするとは

生計を一にするというのには必ずしも納税者との同居を必要とはしません。例えば転勤や学校、病気による入院や施設への入所をしている場合であっても常例としてたまに帰ってくるなど家族と一緒に過す時間があることや、毎月生活費や学費、療養費などを仕送りしている場合は生計を一にしているとみなされます。

仮に離れて暮らす両親や祖父母などがいる場合でも毎月生活費や療養費などを仕送りしている場合は生計を一にしているとみなされます。

No.1180 扶養控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

16歳未満の子ども

納税者の子どもでも16歳未満の場合は扶養親族にはなりません。ちゃんと扶養しているじゃないか、とお考えになる方は多いと思います。税法上でも平成23年までは扶養親族として扶養控除の適用を受けることができましたが、平成24年になってから児童手当の支給が開始されたため扶養控除の適用から外されてしまったのです。

児童手当の対象年齢は15歳になってから最初の3月31日、つまり中学校終了時までで年齢が3歳未満であれば毎月1万5,000円、それ以降は毎月1万円が支給されていますので、納税者の所得制限(年収960万円未満)はあるものの扶養控除の金額38万円(税額にして1万9,000円から3万8,000円の控除)から考えれば良いといえるでしょう。

なお扶養親族に障害者がいる場合は年齢が16歳未満でも障害者控除という所得控除の適用を受けることができます。控除額は一般の障害者の場合は27万円で特別障害者については40万円を扶養控除と併用して使用することができます。また特別障害者と同居している場合は75万円の控除の適用を受けることもできるようになっています。

児童手当について |厚生労働省
参照元:厚生労働省(2016年1月、著者調べ)

No.1160 障害者控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

専従者について

納税者が青色または白色申告事業主で扶養親族が専従者として働いている場合、青色申告なら専従者に支払った給与が経費として計上できるため扶養控除の適用は認められません。また白色申告なら専従者1人につき50万円を控除されるため同じく扶養控除の適用を受けることができません。仮に扶養控除が適用されますと2重の控除となってしまうからです。

No.2075 専従者給与と専従者控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)



税法上の扶養親族の収入

一般の扶養親族

扶養親族には年齢によって区分けがされており控除額も違いがあります。一般の扶養親族とは年齢が16歳以上19歳未満と23歳以上70歳未満の2つの年齢帯があります。年齢的には高校生と23歳以上の大人という感じになりますね。控除される金額は38万円となっており年間所得は38万円以下であることが必要です。

具体的に年収がいくらまでなら扶養親族になることができるのかは以下の計算式で求めることができます。

・年間収入=年間所得38万円+給与所得控除65万円=103万円

扶養親族の収入が給与支払であれば、年間収入から給与所得控除65万円を差し引いた金額が38万円以下であれば良いことになります。しかし収入が給与所得以外にもある場合は、年間収入が103万円以下であっても扶養親族となれない場合もあります。主な例を以下に紹介しましょう。

・年間の給与収入が80万円と不動産所得(家賃収入など)が30万円あった場合
:年間給与所得=年間収入80万円-給与所得控除65万円=15万円
:年間所得=15万円+不動産収入30万円=45万円

・3年間会社に勤務していたが結婚のため退職し退職金200万円とそれまでの給与が90万円の場合
:退職金所得=退職金200万円-40万円x3年=80万円
:給与所得=給与収入90万円-給与所得控除65万円=25万円
:年間所得=80万円+25万円=105万円

収入には給与の他に不動産所得や一時所得、譲渡所得などがありますので給与収入だけを考えていますと間違いを起こしやすくなってしまうでしょう。

No.1410 給与所得控除|税について調べる|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

特定扶養親族

扶養親族の中で年齢が19歳以上23歳未満である人は特定扶養親族といわれ控除額は63万円となります。この年齢は大学生と重なることから納税者の中には学生じゃないと特定扶養にあたらないのではないか、と思い違いをしているケースがありますが、税法上では学生でないと特定扶養親族ではないとの記述がありませんので年齢が該当すれば無職でもフリーターでも関係なく扶養親族となることができます。

ただしあまりアルバイトに熱中しすぎて年間収入103万円を超えないようにしないと、扶養親族から外れることになってしまいますので注意は必要です。例えば年間給与所得が120万円になってしまいますと所得税や住民税を自分で納めることになります。以下に計算例をご紹介しましょう。

■所得税
①給与所得控除:65万円
②勤労学生控除:27万円
③年間所得=年間収入120万円-給与所得控除65万円-勤労学生控除27万円-基礎控除33万円=0円
④所得税=0円

■住民税
①均等割:4,000円
②所得割
:所得金額=年間収入120万円-給与所得控除65万円-基礎控除33万円=22万円
:22万円x10%=2万2,000円
③住民税の総額
:均等割4,000円+所得割2万2,000円=2万6,000円

所得税は勤労学生控除27万円のおかげでかかりませんが、住民税は年額2万6,000円の自己負担となりますので年間収入103万円を超えて働く場合は住民税のことも考えておきましょう。

No.1199 基礎控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

No.1175 勤労学生控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

市県民税の計算例/上田市役所
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)

老人扶養親族

年齢が70歳以上の納税者および配偶者の親、祖父母、曾祖父母が同居している場合は同居老人扶養控除として58万円を控除することができます。同居老人の要件は納税者と同居していることはもちろんですが、病気治療のための入院は同居とみなされますが、老人ホームなどの施設への入所は同居とはみなされません。

なお同居している老人が公的年金を受給している場合でも年間所得38万円以下の所得制限は変わりません。税法上、公的年金は給与所得ではなく雑所得として分類されるため年間所得の計算式は以下のとおりとなります。

・年間所得=公的年金額-必要経費

しかし公的年金を受給するのに必要経費は関係ありませんので、代わりとして公的年金等控除という所得控除を差し引くことになり以下の計算式となります。

・年間所得=公的年金額-公的年金等控除額

公的年金等控除額は受給者の年齢により以下のとおりとなります。

・受給者の年齢が65歳未満:最低70万
・受給者の年齢が65歳以上:最低120万円

したがって年間所得38万円以下になるには以下の年金額となります。

・年齢65歳未満
:公的年金額=年間所得38万円+公的年金等控除額70万円=108万円

・年齢65歳以上
:公的年金額=年間所得38万円+公的年金等控除額120万円=158万円

よって扶養親族にしたい親や祖父母の年齢が65歳未満であれば一般の扶養控除38万円となり70歳を超えれば58万円が控除されるということになります。なお別居している場合の控除額は48万円です。

高齢者と税(年金と税)|税について調べる|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

配偶者控除と特別配偶者控除

納税者に配偶者がいる場合は配偶者控除38万円の適用を受けることができます。ただし扶養親族と同じように以下の要件を満たすことが必要となります。

(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

出典:

www.nta.go.jp
内縁関係は含まないということだけで、その他の要件は扶養親族と同じです。年間所得も38万円以下が条件ですから年収103万円以下というのも同じです。仮に年間所得が38万円を超えてしまった場合他の扶養親族は外れてしまいますが配偶者の特典として配偶者特別控除という所得控除の適用を受けることができます。なお配偶者特別控除の適用を受けるための要件は以下のとおりです。

(1) 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であること。
(2) 配偶者が、次の五つの全てに当てはまること。
イ 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。
ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ニ ほかの人の扶養親族となっていないこと。
ホ 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。

出典:

www.nta.go.jp
配偶者特別控除は配偶者の年間所得によって控除される金額が変わります。

配偶者の合計所得金額/配偶者特別控除の控除額
38万円を超え40万円未満/38万円
40万円以上45万円未満/36万円
45万円以上50万円未満/31万円
50万円以上55万円未満/26万円
55万円以上60万円未満/21万円
60万円以上65万円未満16万円
65万円以上70万円未満11万円
70万円以上75万円未満/6万円
75万円以上76万円未満 3万円
76万円以上/0円

出典:

www.nta.go.jp

No.1195 配偶者特別控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2016年1月、著者調べ)

所得税と住民税の違い

独身者の所得税

今度は同じ年収で独身の場合と標準的な家庭を持っている納税者の所得税の違いを見てみましょう。

■独身で扶養親族なし
・年収600万円

①給与所得控除の計算
:年収600万円x20%+54万円=174万円
②基礎控除
:38万円
③控除額の合計
:①174万円+②38万円=212万円
③課税所得の計算
:年収600万円-③控除212万円=388万円
④所得税の計算
:③388万円x20%-42万7,500円=34万8,500円

標準的な家庭の所得税

標準的な家庭の場合の所得税を計算してみましょう。年収は同じとします。

■両親と子ども2人(16歳と10歳)
・納税者:年収600万円
・配偶者:専業主婦
・長男:16歳
・長女:10歳

①給与所得控除の計算
:年収600万円x20%+54万円=174万円
②基礎控除
:38万円
③扶養控除
:16歳以上で38万円
④配偶者控除
:収入なしのため38万円
⑤控除額の合計
:①174万円+②38万円+③38万円+④38万円=288万円
⑥課税所得の金額
:年収600万円-⑤控除288万円=312万円
⑦所得税の計算
:⑥312万円x10%-9万7,500円=21万4,500円

■独身者との差額
・34万8,500円-21万4,500円=13万4,000円

計算の結果所得税だけで13万4,000円の差がありました。また10歳の長女は児童手当が月額1万円x12カ月=12万円が支給されますので所得税の差13万4,000円+12万円=25万4,000円の違いがあるといえるでしょう。

独身者の住民税

次に住民税の違いを計算してみましょう。年収は同じとします。

■独身扶養家族なし
・年収:600万円
・社会保険料控除:75万円
・生命保険料控除:3万5,000円
(介護保険は加入していない)

①均等割
:4,000円

②所得割
:所得金額の計算
*所得金額=年収600万円/4×3.2-54万円=426万円

:所得控除の計算
*社会保険料控除75万円+生命保険料控除3万5,000円+基礎控除33万円=111万5,000円

:課税所得金額の計算
*426万円-111万5,000円=314万5,000円

:所得割の計算
*314万5,000円x10%=31万4,500円

:調整額の計算
*(所得税の基礎控除38万円-住民税の基礎控除33万円)-(314万5,000円-200万円)=ゼロ
*ゼロの場合は5万円

:住民税の計算
*均等割4,000円+所得割31万4,500円-調整額5万円=26万8,500円

標準的な家庭の住民税

今度は標準的な家庭の住民税を計算してみましょう。年収は同じで変わりません。

■両親と子ども2人(16歳と10歳)
・納税者:年収600万円
・配偶者:専業主婦
・長男:16歳
・長女:10歳
・社会保険料控除:75万円
・生命保険料控除:3万5,000円
・介護保険料控除:2万1,000円

①均等割
:4,000円

②所得割
:所得金額の計算
*所得金額=年収600万円/4×3.2-54万円=426万円

:所得控除の計算1
*社会保険料控除75万円+生命保険料控除3万5,000円+介護保険料控除2万1,000円=80万6,000円

:所得控除の計算2
*配偶者控除33万円+扶養控除33万円+基礎控除33万円=99万円

:控除額の合計
*控除1+控除2=80万6,000円+99万円=179万6,000円

:課税所得金額の計算
*426万円-179万6,000円=246万4,000円

:所得割の計算
*246万4,000円x10%=24万6,400円

:調整額の計算
*(控除2の所得控除と住民税控除の差15万円)-(246万4,000円-200万円)=ゼロ
*ゼロの場合は5万円

:住民税の計算
*均等割4,000円+所得割24万6,400円-調整額5万円=20万400円

■独身者との差額
・26万8,500円-20万400円=6万8,100円

計算の結果、住民税において6万8,100円の差がでました。この差を所得税と合計しますと13万4,000円+6万8,100円=20万2,100円の税金の差となります。扶養家族を持つことによりこれだけの税金の差がでるということが分かります。

調整額とは?

平成19年度から国の税制改革により所得税の税率は下がりましたが、逆に住民税の税率が上がってしまいました。所得税と住民税では扶養控除や配偶者控除などの控除額に差があり、同じ年間収入でも住民税の方が、税負担が大きくなります。そこで人的控除の適用に応じて住民税を減額することによって不公平感がなくなるよう住民税を調整する必要がありそれを「調整控除」といいます。

なお調整額の計算は以下のように行います。

1、課税所得金額が200万円以下の方

次のいずれか小さいほうの金額の5%(市民税3%、県民税2%)
・適用を受ける人的控除の差(太字部分)の合計額
・ 課税所得金額

2、課税所得金額が200万円を超える方

次のいずれかの金額の5%(市民税3%、県民税2%)

・{適用を受ける人的控除の差(太字部分)の合計額-(課税所得金額-200万円)}
上記{ }内の金額が5万円未満の場合は、5万円

出典:

www.city.ueda.nagano.jp

人的控除差による税負担の調整控除/上田市役所
参照元:上田市(2016年1月、著者調べ)



まとめ

いかがでしたでしょうか。税扶養親族は結構広い範囲となります。年金をもらっているからダメだろうと扶養親族にいれていなかった親や祖父母なども要件さえ合っていれば扶養親族に入れる可能性があります。税金は扶養親族の数で大きく差がありますので、一度検討してみてはどうでしょうか。

もしかしたら、いままでより手元に残るお金が増えるかもしれませんよ。