労災保険の手続きやメリットを実体験からまとめてみた【実録】

労災保険があってよかった……人生でそう感じることがあってはなりません。だって、仕事に行く途中や、仕事をしている途中で事故にあうということですから。でも、筆者はありがたみを感じました。実際、仕事に行く途中で事故にあったから。そんな筆者だからこそわかる労災保険の手続きやメリットをまとめてみました。人間、いつ事故にあうかなんてわかりません。転ばぬ先の杖、という意味で知識を身に着けてくださいね。



某月某日に労災が役立った……

まずは筆者がこの記事を書くきっかけになった事件について、書きます。「実際に労災保険って役に立つんだな」という理解のためにも、お付き合いください。それは某月某日、首都圏のとある駅の階段で起きました。

事件の概要

筆者はUPINでの記事の執筆以外にも、様々な媒体で記事を書かせていただいております。その中で、ほぼ常勤という形で加わっているプロジェクトがあります。そのプロジェクトのオフィスは東京都内の割と乗降者数が多い駅の近くにあるのです。

その日、電車が遅れていて焦った私は、電車を降りると速足で階段を駆け下りていました。すると、後ろから大きな荷物を持った人が降りてきました。その人の荷物が、私の背後を直撃。運が悪いことに、その日の私はヒールの高いブーツ。

当然、バランスを崩した私は階段から落ち、地面に叩きつけられました。パソコンを持っていたので、それをかばおうと不自然な形で着地したのがよくなかったようです。ものすごく、痛い……。てか、歩くのもきつい……。それでも私は「会社に間に合わないと!!!」と力を振り絞り、オフィスに行きました。よく考えてみれば、この時に会社に電話しておくべきだったと思います。

足を引きずって会社に行ったら……

そのオフィスは駅から徒歩5分ほどのところにあります。しかし、事件当日の筆者の足では20分かかりました。オフィスに着いたときには息も絶え絶え、顔も真っ青。誰が見ても「何かあったのか?」と思う状態です。

当然、プロジェクトのリーダーが異変に気づきました。「ちょっとそれまずいって、早くお医者さんいったほうがいいよ」……まあ、そりゃそうですよね。総務の方も「労災関係の書類はこれから手配します」とてきぱきと動いてくれました。

周囲の方々の協力はありがたかったのですが、それで痛みが減るはずもなく(すみません)、相変わらず真っ青な顔で、オフィスの近所の接骨院に行きました。

まずは建て替え払い

オフィスの近くの接骨院に着き、「会社に行く途中で、駅の階段から落ちたんですが……」と事情を説明。早速先生が診てくれました。「うっわー、かなり腫れてますね。これ、痛かったでしょ?」「うん、痛かった!」(本当に嫌かったです。)

歩ける、という時点で骨折は否定されたものの、激しい打撲で内出血しているということでした。自分では、「1週間くらいで収まるでしょ」と思っていたのです。しかし、先生いわく「全治2ケ月ですね」とのこと。「ま、マジすか……」頭真っ白です。

「まずは冷やしましょう。腫れが引かないと次の治療には移れません。あと、しばらくお風呂はシャワーだけで我慢してください」マジすかその2。つまり、炎症を起こす可能性が高いので、温めてはいけないということらしいです。

こうして、一通りの処置をやってもらってお会計……となったのですが、衝撃の事実が。「お仕事に行く前のケガ、ということで、健康保険は使えません。ひとまず立て替えていただく形になるので、○○○○円になります」マジすかその3。後に詳しく解説しますが、実際に労災(労働災害)の場合、健康保険の枠外での治療となり、健康保険は使えないのです。

足もお財布も心も痛んだ私は、とぼとぼと会社に戻りました。

会社に戻ったら……

かくして会社に戻った私は、ことの顛末を報告。「大変だったねー。あ、書類は数日中にできるって」と上司にねぎらいの言葉をかけられました。

さらに、総務の人が社会保険労務士さんに連絡してくださり、「接骨院の他に、一応病院にも行ってください」とおっしゃっていたとのこと。後日、病院にも行きましたが「歩ける時点でまず大丈夫でしょう」との力強いお返事。よかったー。

とはいえ、ヒールの靴を履けないので、スニーカーと底が平たい靴(フラットシューズとムートンブーツ)をローテーションしてオフィスに通う羽目になりました。

幸い、ケガはちゃんと治ってきているのが不幸中の幸いでした。



そもそも労災保険ってなんだ?

ここまで読んで「そもそも労災保険って、なんだ?」と思ったかもしれません。このあたりの話をしましょう。

まずは基本を押さえよう

労災保険とは、労働者災害補償保険法という法律に基づく制度です。
業務上災害(=仕事中の事故)や、通勤災害(=通勤中の事故)により、労働者(=働いている人)が負傷したり、病気にかかったりして、障害が残ったり、死亡した場合について、ケガ・病気になった人(=被災労働者)又はその遺族に対し、保険給付を行う制度です。わかりやすく言えば、仕事に行くとき、仕事しているときの事故やケガを保証してくれる制度と考えればいいでしょう。

労働保険制度(制度紹介・手続き案内) |厚生労働省
参照:厚生労働省、2016年1月参照、筆者調べ

健康保険との違い

健康保険は、業務外の疾病に対して保険給付がなされるものです。
つまり、あくまでもプライベートで病気やケガをした場合、保険で医療費の一部が補てんされる制度、と考えておくといいでしょう。窓口負担率は、保険によって様々です。

一方、労災保険では仕事中の疾病に対して保険給付がされます。そのため、基本的には窓口負担はありません。しかし、手続きに時間がかかるので、手続きが完了するまでは窓口で代金の一部を立て替えて払うという場合もあるのです。

保険料は誰が払う?

健康保険の保険料は、労働者と雇用主が払います。しかし、労災保険の保険料は、雇用主が支払います。
従業員個人が払うことはないので、安心しましょう。

なお、基本的にはすべての事業者が加入を義務付けられています。「うち、労災入っていないから医療費は自分でなんとかして」という場合、(雇用形態にもよりますが)明らかに怪しいので、労働基準監督署に行きましょう。

労働保険制度(制度紹介・手続き案内) |厚生労働省
参照元:厚生労働省(2016年1月時点、著者調べ)

労災保証の給付を受け取るための手続きは?

さて、私のように、労災保険が役に立ってしまう場合=通勤災害、業務上災害と思われる事象が起こってしまった場合、何をどうすればいいのかという具体的な話に移っていきたいと思います。 実際、どのように手続きが進むかについて、筆者の場合をもとに考えてみましょう。

1)医療機関(病院、接骨院等)を受診します。そのとき、「仕事中(通勤中)にケガをした(病気になった)」という旨を伝えましょう。労災適用、ということで計算してくれます。後述する書類が出来上がるまでは、全額自己負担になるので注意しましょう。
(※病院によっては、労災保険を適用する場合、最初から自己負担額がない場合もあります。)

2)会社の担当の人(総務、人事など)に労災保険の書類をそろえてもらいましょう。かかった医療機関によって書類が違うので注意が必要です。

3)事故が起こったときの状況などを自分で書きます。その上で、会社にも必要事項を書いてもらい、かかった医療機関に請求しましょう。このとき、自己負担していた医療費が戻ってきます。

大まかにいえば、このような流れを踏んで、労災保険を使うことになります。もちろん、これは通院で済んだ筆者のケースだから当てはまる場合であり、入院が必要なケースの場合、多少流れは異なるでしょう。

しかし、重要なのは、書類を書くことです。これが労災保険を受ける上で一番大事かもしれません。「ケガや病気になったら書類」と覚えておきましょう。

より詳しい手続きは、リンク先を参考にしてください。

労災保険の手続き
公益社団法人労災保険情報センター



労災保険が使える人と給付内容は?

では、労災保険が適用される人、および給付内容はどうなっているのでしょうか。

どんな人が労災保険を使える?

基本的には、労災保険の適用事業所で働く人全員に適用されます。

・正社員
・派遣社員
・契約社員
・アルバイト
・パート

と雇用形態は問いません。ただし、経営者は原則として入りません。なお、中小企業向けには特別加入制度というものがあります。これは、中小企業では社長も労働者と一緒になって作業するケースが多いことから、労災保険の特別加入制度を適用し、経営者を労災保険に加入させるというものです。

どんな給付が受けられる?

次の10種類の給付が受けられます。
つまり、仕事をしていてケガや病気になった場合、幅広くカバーしてくれると考えておいてください。

1)療養補償給付、療養給付
業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき、かかる医療費の給付が受けられます。

2)休業補償給付、休業給付
業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため働けないので、賃金が受けられない場合に受けられます。
休業4日目から、休業1日につき、給付基礎日額の6割相当額が支給されます。
「普段の給料の6割がもらえる」と覚えておけばいいでしょう。

3)障害補償年金、障害年金
業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に、障害等級第1級から第7級に該当する障害が残った場合に受けられます。
障害の程度により、給付基礎日額の313日分から131日分の年金という形で支給されます。
障害の等級により扱いが異なりますので、注意しましょう。

4)障害補償一時金、障害一時金
業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合に支給されます。
障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金が支給されます。

5)遺族補償年金、遺族年金
業務災害又は通勤災害により死亡したときに支給されます。
遺族の数などの事情を鑑み、給費基礎日額の245日分から153日分の年金が支給されます。

6)遺族補償一時金、遺族一時金
遺族(補償)年金を受け取る遺族がない場合、または、遺族補償年金を受けている人が失権しかつ、ほかに遺族(補償)年金を受け取る人がいない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合に支給されます。
一時金の額は場合によって異なります。

7)葬祭料、葬祭給付
業務災害又は通勤災害により死亡した人の葬儀を行う場合に支給されます。

8)傷病補償年金、傷病年金
業務災害又は通勤災害による傷病が療養開始後1年6カ月を経過した日以降において、傷病が治っていないか、一定の障害を負った場合に給付されます。

9)介護保障給付、介護給付
障害年金、傷病年金受給者のうち、第一級又は第二級の受給者であって、介護を受けている人に給付されます。

10)二次健康診断等給付
定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常がある場合に支給されます。

労災保険給付の一覧 – 東京労働局 | 東京労働局
参照:厚生労働省東京労働局、2016年1月、筆者調べ

フリーランスはどうすれば?

さて、ここで、フリーランスの方が仕事中にケガや病気になった場合、どうすればいいのか考えてみました。

結論から言うと、個人事業主としてのみ仕事をしている場合は、労災保険はありません。労災保険は労使関係が前提となっている制度です。つまり、仕事上、労使関係にない場合は労災保険もないことになってしまうのです。

そうなると、フリーランスの人は仕事上でケガや病気になっても、すべて(医療費の負担に関しては)自己責任です。まさしく「体が資本」。くれぐれも気を付けましょう。

なお、月2,000円でケガや病気の保障が受けられる「あんしん財団」という団体もあります。こちらへの加入も検討してみてください。

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こんな時は労災保険が使える?

さて、最後にまとめとして、こんなときに労災保険が使えるかどうか?というのを考えてみました。具体的なケースとして解説しましょう。どの例も、筆者の周りで実際にあった話ばかりです。

ガードマンのアルバイトで……

ガードマン(=警備員)のアルバイト、給料もいいからやっている人も多いかもしれません。最終的には警察に引き渡すことになりますが、不審者がいたら最初に対処しなければいけない、責任の重い仕事でもあります。

さて、ガードマンが不審者と格闘してケガをした場合、このケガの治療には労災保険が使えるのでしょうか?

結論から言うと、使えます。業務上の災害、とみなされ、治療費は労災保険でカバーされます。とはいえ、ケガをしてしまうと精神的にもダメージが大きいし、しばらく仕事に復帰できないので、ケガをしないようにするのが一番です。

実際、筆者の周りでガードマンのアルバイト中、酔っ払いともみ合いになってケガした友達がいるんですが、労災保険のおかげで医療費の自己負担はなかったようです。

ポスティングのアルバイトで……

これは筆者が税理士事務所に勤務していたときの話です。あるうだるような暑さの夏の日、他のスタッフの人がポスティングに出かけました。つまり、近所のオフィスにチラシを配って歩いていたのです。

彼がポスティングに出かけて数時間後、1本の電話がかかってきました。
「すみません、自動ドアのガラスに激突してケガしました!!!」と……総務のお姉さん、大慌てで「労災にする手続きしますから、病院にすぐ行ってください!」と叫んでいました。

当然、これも労災保険で医療費がカバーされたようです。

まとめ~何が起こっても慌てないことが大事

会社に勤めている人の場合、通勤中にケガをしたり、仕事中に具合が悪くなったりすることがあると思います。そういうときも、保障してくれる制度があるということを知っていると役に立つかもしれません。

でも、ケガや病気にはくれぐれも気を付けましょう。そして、万が一労災が必要になっても、慌てないことが大事です。