マイナンバーは脱税防止のため?素朴な疑問を掘り下げて注目!

2016年1月からスタートするマイナンバー制度。10月から通知カードが配送されはじめているようですが、果たして「申告漏れ資産」を発見し、税の公平な負担の役に立つの?そもそも、マイナンバー制には脱税防止の効果はあるの?など、素朴な疑問について、まとめてみました。



マイナンバーをざっくりご紹介

マイナンバーの正式名称は『社会保障・税番号制度』で、産まれたばかりの赤ちゃんからお年寄りまで、日本国民一人ひとりに12桁の番号が振り分けられ、生涯その番号を使って「社会保障」「税」「災害対策」の3つの分野で、行政手続きの効率化や国民の利便性の向上、そして公平で公正な社会の実現のために役立てます――とは政府広報の弁です。

特集-マイナンバー:政府広報オンライン
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国民総背番号構想

政府広報の説明を聞けば「なるほど」と思うところもありますが、「本当にそれだけ?」と思ってしまいませんか?

実は、すべての国民に番号を振り分けて管理するという構想は1980年代にも表沙汰になりました。まだ女子高校生だった私でも覚えているぐらいですから広く世間一般に認知されていた構想だったと思います。

当時は「国民総背番号」などという野球好きの中年男性が付けそうなネーミングの他に「グリーンカード」構想などという、アメリカンな名前の国民統一コード管理案がありました。

ご存知の通り、「グリーンカード」と言えばアメリカ合衆国の外国人永住権、およびその証明書のことです。

なぜ「グリーンカード」構想かというと、バブル景気に沸いていた日本に次々と流れ込んできていた外国人就労者(特にアジア系)の出入国や難民認定のために「在日外国人登録制度」を一層強化していた政府が、「外国人だけじゃなく、いっそ日本人も徹底的に管理しちゃいたいな」と考えたから、だと私は思っています。

しかし、これらの構想は強い国民の反対にあって脆くも崩れ去ります。特に印象に残っているのは1980年代に在日韓国・朝鮮人の間で盛んになった、「外国人登録証の指紋押捺を拒否する運動」です。この運動は日本人にも広く共感を呼びました。円高の影響もあり海外旅行に行くことが増えましたから、まるで犯罪者のように指紋押捺を外国人に強制するのは世界の常識から考えても、人権保護やプライバシーの観点から考えても不当であろうと考える人が増えていたのです。

社会の「プライバシー」や「人権」意識の高まりを察知した政府は「国民総背番号制」を一旦は引っ込めました。今国民にそれを強いれば政権運営が危ういと思ったのでしょうね。

在日外国人登録制度はしっかり稼働させつつも、1990年代に入って外国人への指紋押捺の制度も撤廃されました。

住民基本台帳構想

そして、2000年代に入ると、今度は「住民基本台帳」構想を掲げてきました。「また?」多くの国民の反応は冷ややかなもので、思っていた以上に普及しませんでした。

地方自治体や公共団体、行政機関との間で国民個人を特定する情報を共有・利用することを目的として構築され、万を持して稼働したシステムだったのですが、「そんなのいらん」とシステムの導入を拒否する自治体もあったりとお粗末な状態で、外国人登録証(免許証のようなカードです)のように身分証明書にもなるから「国民が大喜びで持つようになるだろう」と思っていた「住民基本台帳カード」の交付はわずか数%にとどまるなど、信じられないレベルの大失敗でした。

2015年の今になって思うのですが、住民基本台帳カードが普及していたら、とっくの昔に、粛々と、国民の戸籍や財産等の個人情報が政府に丸見えになっていたのかもしれない、ということです。

しかし、政府がピンポイントで「この人怪しい」と本気で目をつければ、住基ネットなど使わなくともいくらでも個人情報を丸裸にすることは可能だったとも思うので、政府の本当の思惑が個人情報の閲覧だけではないんだろう、ということぐらいは私にも予想がつきます。

住基ネットなどで基本情報をサッと閲覧できたら楽ちんではあるのでしょうが、政府や役人がそんな「ライフハック」のために住基ネットを導入したとはとても思えません。

「消えた年金」問題

そして2007年のはじめ、「消えた年金記録」問題の発覚です。社会保険庁がコンピュータ入力した年金記録にミスや不備が多いこと等が明らかになり5月には大きく報道されました。社会保険庁の年金記録のずさんな管理が指摘され、野党や国民の批判を浴びました。

もともと、1997年に「基礎年金番号」制度を導入しようとして年金の加入実態を調査した時に、生年月日や氏名、過去の年金加入記録を元に人海戦術で名寄せするという方法に無理があったと思うのですが、コンピュータ―上の記録と過去記録とが合致せず、多くの人の年金記録が「宙に浮いてしまった」のです。

この問題は、自民党政権に対する国民の不信を招き、翌年、2008年の民主党への政権交代につながっていきました。また、2007年後半には厚生年金基金においても類似の記録問題が明らかとなり、記録や情報の管理には、高度な知識、技術と能力が要求されるのだということを再認識させられたものです。

結婚や転居、転職などの理由で名前や勤務先、住所が何度も変わるような人もいるのですから、一人ひとりの記録を正確にトレースするためには根気だけではなくそうした記録を読み取る高度な専門性も要求されたと思うのですが、どのような人材で名寄せ作業を行っていたのか、疑問が残ります。

東日本大震災

2011年3月、東北沖を震源とする大地震が起こりました。東日本大震災によって、被災者を一元管理する必要性の議論も高まり、マイナンバーの導入に向けて「年金(社会保障)」「徴税」に加えて「災害対策」という3つ目の目的も想定されるようになりました。

まだコンピューターなどがない時代には、火事や災害、戦争などで役所の戸籍や住民の情報などが消失したというニュースを聞きつけると、新たに戸籍や住民票などを取得しようと自分の過去や出自を隠したいような「わけあり」の人や、義援金や政府による被災者の支援措置(納税免除など)を目当てに被災者に成りすますような人が集まってくるという話は、小説や映画の中でも描かれてきました。私の印象に特に残っているのは松本清張原作の「砂の器」です。

実際に東日本大震災に乗じた「なりすまし」で逮捕者も出ているようなので、そうしたことの予防にある程度の効果はあるのかもしれません。

ただ、現住所と住民票のある住所、本籍地などがバラバラの人も多いので、ここでも「名寄せ」などの作業が必要になりそうです。国民が一元コードで管理されていれば、機械的に正確なトレースができるのか、今後の運用の状況をみて確認したいところです。



マイナンバー、脱税に関するQ&A

私は税理士の資格も弁護士の資格も持っておりませんので、以降のQ&Aについては、日本や海外の富裕層のマーケティング調査や、彼らの資産運用業務に携わった金融サービス業務経験者としてお答えしていることを予めお断りしておきます。

【マイナンバーと脱税】疑問1

マイナンバー制度が脱税防止と、どう関係しますか?

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所得を自己申告する自営業者や、不動産賃貸収入、副業、農家など、源泉徴収で税金が給与所得から天引きされるサラリーマン以外の収入を税務署が把握しやすくなることは考えられると思います。そのため、納税者が自主的に「正確な申告」を心がける動機にはつながるかもしれません。

金融機関は2018年1月から預金者の同意があれば口座番号とマイナンバーを結びつけることができるようになります。当面は「預金者の同意」が条件となっているため「任意」ですが、いずれは義務化するのではないかとみるむきも多いようです。

義務化になれば、国民一人ひとりが金融機関に預けている資産の総額を国が随時チェックすることができるようになりますが、国民の反発は容易に想像できます。

脱税の摘発という観点でみれば、マイナンバー制移行前でも、「脱税の疑い」がある者がいた場合には事前に容疑の人物の預金額を調べつくした上で、必要があれば捜索(いわゆるガサ入れ)が行われているため、マイナンバー制度のおかげで急に脱税の摘発件数が増加するということは考えにくいと思われます。

考えられる脅威としては、マイナンバー制のメリットを裏付けるため、税務署員が総動員で駆り出され、摘発件数アップの実績を政府が要求することなのではないでしょうか?

いずれにしても、所得の申告を適切にしていればいいだけの話です。

【マイナンバーと脱税】疑問2

マイナンバー制度は富裕層の脱税防止の役に立つのですか?

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あくまで私見ですが、富裕層(仮に1億円以上の金融資産を持つ人ということで定義してお答えします)と言われる人達の税金対策は既にほとんんど漏れがないような状態に近いと言っていいと思います。

ですから、マイナンバー制が始まったからと言って、富裕層の人達が突然「困った」状態になることは考えにくいのです。

富裕層の人達は普段から資産の管理に関しては「税理士」などに相談しており、「節税」のアドバイスを受けるなどして「税法上の問題がない範囲」を慎重に見極めながら所得の申告を行っています。正直言って庶民の私の感覚からすると「そんなものまで経費に算入していいの?」といったことも多々見受けられますが、法律に抵触するようなことはしていないというのが実情かと思います。

富裕層の人達は自分達が普段から税務署に厳しく監視されていることを自覚しています。また、一般の借金とは違い「税金」は死ぬまで逃れられないもので、納税の義務を怠れば(あるいは経済的に払えない状況であったとしても)最悪逮捕され前科もついてしまう性質の「税金」を、「なにより怖い」ものと考えていると思います。

むしろ私は、ネット副業、FXやデイトレード、不動産賃貸収入などの所得を「大した金額でもないしな」と軽く考え、本来は自己申告しなくてはならない収入を申告せずに放っているような人達に向けて「注意喚起」が必要なのではないかと思っています。

「宅配業者が頻繁に出入りしている」や「最近高級外車を買ったようだ」というご近所からの税務署への密告もあるようですから、資産家とまではいかない「ちょっとした臨時収入がある」ぐらいの人の方が「納税意識」を高めて自己防衛に配慮した方がいいと思います。

富裕層のように税理士に相談しなくても、最寄りの税務署に出向いて無料で相談にのってもらうことも可能ですから、不安に思う人はぜひ考えてみて下さい。

仕事を通じて私が感じた「富裕層とそうではない人の違い」の中で、最も顕著なのが「税の申告に関する意識の違い」です。繰り返しになりますが、資産家ほど「税金」を恐れ、その不安を取り除くためにお金を払って税理士を雇っているほどなのです。

【マイナンバーと脱税】疑問3

預金のたくさんある、富裕層はこぞってお金をおろしてしまうように思うのですが、どうなんでしょうか?

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非常にうがった見方をすれば、マイナンバーによって「預金に政府が目をつける」や「預金封鎖」といった可能性を匂わせて、富裕層だけではなく広く一般の人に「預貯金は政府の完全監視体制下に置かれてしまうから、別の資産に変えておこう」という気を起させるという目論見があるともみてとれると思うのですが、いかがでしょうか?

銀行にお金を眠らせておくのではなく(実際には銀行は顧客から預かった預貯金で国債を買ったり、住宅ローン等として貸し出したりして運用しているのですが)株式や債券、投資信託などの有価証券、生命保険、金、不動産などの投資性の消費に使わせたいと思っていたとしても不思議ではないかと思います。

ギリシャ危機では政府が銀行の預金引き出し制限を設けたりするなどの措置がとられましたが、日本政府が同じことを想定していない、とは言えないと考えています。ただ、そうした措置は「最終手段」としての措置であり、実行すれば国の威信に関わる一大事で、国際社会における日本の財政的信用は失墜してしまいます。

経済のグローバル化と金融資本主義の肥大化によって、いつ何時巨額の資金が日本の資本市場から一気に引きあげられ、その価値が暴落したところで再度巨額の資金を投下して差益を得るような「ハゲタカ」の餌食にならないとも限りません。

政府としてはそのような脅威に備えるためにも、預金一辺倒の国民の資産をあてにしたい、またはあてにできる財源として「自由にしたい」という考えもあるかもしれません。

富裕層に関していえば、彼らの資産の預貯金総額は確かに小さくはありませんが、彼らの保有資産全体でみれば他の資産にもうまく分散されているため、私たちが思うほどのダメージはないのではないかと考えられます。

私は、マイナンバーで預貯金の額が把握されることや「預金封鎖」の可能性について、国会議員達は何の脅威も抱いていないのかな?という点が気になっています。

1992年に成立した国会議員資産公開法に基づき実施されている「国会議員の資産情報開示」ですが、毎年のように現金や普通預貯金、家族名義の資産が対象外となっていることを問題視する声があがっています。保有資産を少なく見せて開示したい国会議員は、普通預金口座にお金を貯めこんでいるか、家族名義に付け替えているのかもしれないですよね?

マイナンバーで国民の預貯金の額を時の政府が把握するのであれば、国会議員とその家族の預貯金の総額も国民に開示すべきではないかしら?と思ってしまうのですが。

もしも彼らが「プライバシーの侵害だ!」と反対の声をあげたら、思いっきり笑い飛ばせるのに…とつい夢想してしまいます。

【マイナンバーと脱税】疑問4

マイナンバー制度による脱税を防ぐ効果と個人情報が流出する危険性とどちらの方が高いですか?

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脱税防止効果については前項の回答通り、全くないとは言えないものの絶大なる効果とまでは言えないと考えています。

それよりも、マイナンバー制の導入によって、納税意識とともに節税意識も高まると想像できますから、差し引きで言ったら少しプラスになればいいな(無理にでもポジティブに考えて)、という程度かと。

個人情報流出の危険については、非常に大きな脅威と言えると思います。アメリカや韓国などでも、「なりすまし」「詐欺」「財産の横領」「信用情報の悪用」などといった犯罪の温床になっていることは既に知られているところです。

マイナンバー保有者による不適切な管理による情報の流出よりも、行政機関や企業へのサイバーアタックや、職員・従業員による個人情報の外部への漏えいなどが心配されます。

アメリカでは「社会保障番号」漏えいの調査を行う専門の業者などもおり、そうしたことからもいかに情報漏えいや不正利用が横行しているかがうかがえます。

社会保障番号カードに生体認証機能を設けるなどの措置も検討されているようですが、2015年11月現在では実現に至っていません。アメリカ議会では社会保障番号の身分証明としての使用を制限し、商業用の使用(レンタルの申請など)を禁止する法案も検討するなど、犯罪防止措置に苦心している様子がみられます。

ドイツやハンガリーでは「憲法違反である」として国民の「総背番号制」は実施されていないようですが、「税務識別」や「住民登録番号」などの特定の目的に限りコード管理を行っているようです。

【マイナンバーと脱税】疑問5

マイナンバーでブラック企業は困る?

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法人に対しては厚生年金、健康保険という社会保険に加入する義務があり、保険料の一部は会社側が負担することになっています。しかし、法人でありながら加入していない会社も多いと言われています。

未加入の企業については加入を促してはいるものの規模の小さな事業などでは財政的に難しい面もあってなかなか加入率は上がっていませんでした。

税金は収益が赤字なら払わなくてもいいのですが、社会保険料は業績に関わらず徴収されてしまいます。マイナンバー制度の導入で法人にも13桁の番号が割り振られ、未加入法人はすぐに見つかってしまいますから、対策が必要となるでしょう。

充分な収益があるにもかかわらず社会保険に未加入の企業を「ブラック企業」と定義するとしたら、厚生年金や健康保険への加入がマイナンバーを契機に促進されればいいのですが、そのしわ寄せがリストラや従業員の労働環境の悪化につながらないよう、社会全体の注視が必要ではないかと思います。

大企業でも、マイナンバーを適切に管理するための情報管理の徹底や、システムの構築などの追加の費用負担が重くのしかかる可能性が指摘されていますし、万が一情報漏えいなどがあった場合には行政処分や賠償、企業の社会的信用の失墜といったリスクが考えられます。

ブラック企業だけではなく、優良企業でもマイナンバー対策には大きな負担が考えられます。

まとめ

マイナンバー制度を「脱税」の観点で掘り下げてみましたが、いかがでしたか?

個人的なことですが、私は「消えた年金記録」問題の時に気になって自分の記録を照会したところ、過去に10カ月間だけ年金の払い漏れがあったことが発覚し、後納したことがあります。原因は転職して海外でしばらく働いていた時の手続きの不備によるものだったのですが、自ら調べてみなければ気付くことなく過ごしてしまっていたところでした。

また、クレジット・カードの不正使用の被害にも外国で計2度あっています。2度とも請求書を確認してすぐに気がつき、カード会社と連携して不正使用をストップし、被害額は弁済してもらえたのですが、クレジット・カード自体は2度とも廃棄して新しい番号のカードを発行してもらうなどの手続きが必要となってしまいました。

マイナンバーで振り分けられる番号は一生に一度だけの永久欠番と言われ、簡単には変えられそうもないのが心配です。

番号の管理には細心の注意を払い、当面はマイナンバー・カード(個人番号カード)の発行は見送ることしようと考えています。

社会全体のメリットについてマイナンバー制を考えるなら、国民の税金への関心がかつてないほど高まっていることも挙げられると思います。

国民の関心が「徴税の公平性や政府による個人資産の監視に対する脅威」だけでなく、税金の使い方、使いみち、その社会的意義へも向けられ、よりよい社会の実現のための「1票」を投じることにつながっていくことを期待しています。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。