扶養控除後の税金の計算方法所得税と住民税電卓できます

扶養控除される金額や控除された後の所得税、住民税などの計算はあまり自分でやることは少ないことでしょう。サラリーマンなら経理や労務の担当者がぜんぶ計算してくれますので給料明細を見て「ふーん」って感じでしょうか。実際会社の給与計算にしても昔のようにそろばんや電卓で計算することはなくパソコンに打ち込んで「ハイ終了!」だと思います。でも税金の仕組みや計算方法を知ることは知識を広めるには良い機会といえます。



扶養控除の種類

2つの扶養控除

扶養家族に「所得税の扶養家族」と「健康保険の扶養家族」という2種類の扶養家族があるように、「扶養控除」にも2つの種類があるのをご存知でしょうか?

納税者は家族がいるとその人数分だけ食費や光熱費、被服費などの生活費がかかり、子どもがいれば教育費がかかります。毎年給料がどんどん上がっていくのであれば良いのですが現実はそう甘くはないでしょう。配偶者が生活費の不足分を補うために働きに出ることも少なくないと思います。

独身者なら生活にかかる全般の費用は自分の分だけの出費で済みますが、妻帯者の家族持ちの納税者は、安定した家計を支えるためにはどうしてもある一定の所得控除の制度の助けを借りなければなりません。その制度として「扶養控除」や「配偶者控除」などがあり、自分の収入から差し引くことができるようになっています。

その「扶養控除」には2つの控除があります。

・所得税の控除
・住民税の控除

「扶養控除」という点でこの両者は納税者の税負担を軽くする目的で同じ役割を果たすことになりますが、各控除の計算の基になる収入の期間が異なります。

所得税の計算の基になる収入の期間はその年の1月1日から12月31日であるのに対し、住民税の計算の基になる収入の期間は前年の1月1日から12月31日となっているのです。つまり平成28年分の住民税は平成27年分の収入によって計算されるため、平成27年中に退職した人や離職した人などで平成28年の収入がない人でも住民税課税され納税をしなければならなくなります。

また住民税の扶養控除の金額は所得税の扶養控除の金額よりも少ないため、計算の結果として所得税がかからない人に対しても住民税がかかってしまう場合もあるのです。

所得税の扶養家族の範囲

所得税の扶養家族の範囲はその年の12月31日の時点で16歳以上であることが必要要件となりますが、その他にも以下の要件を満たす人となります。

・納税者の配偶者でないこと
・納税者から見て6親等以内の親族および3親等以内の婚族
例外と自治体から養護を委託された老人や養育を委託された児童も含まれます。

・納税者と生計を共にしていること
・年間所得金額が38万円以下であること
・青色申告事業主の専従者として働き年間をとおして収入を得なかった人
・白色申告事業主の専従者でないこと

以上すべての要件を満たした人が納税者の扶養家族となり該当する所得控除を受けることができます。

No.1180 扶養控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

住民税の扶養家族の範囲

住民税の扶養家族の範囲はその年の1月1日の時点で16歳以上であることが必要です。16歳未満の人は扶養控除の対象にはなりません。その他には以下の要件を満たすことが必要になります。

・納税者の親族であること
・納税者と生計を共にしていること
・前年の年間所得金額が38万円以下であること
納税者の配偶者にある場合は前年の所得金額が38万円超76万円未満の場合は住民税の配偶者控除を受けることはできませんが、配偶者特別控除の対象となります。

・他の扶養親族となっていないこと
・青色申告事業主の専従者として働き年間をとおして収入を得なかった人
・白色申告事業主の専従者でないこと

ほとんど所得税の扶養家族の要件と同じですね。違いは計算の基となる収入の期間が違うだけといえます。

姫路市|住民税についてよくある質問Q&Aコーナー
参照元:姫路市(2015年12月、著者調べ)

控除額の違い

所得税の控除額と住民税の控除額には金額の違いがあります。よって計算した結果「所得税がかからないから住民税もかからないのでは?」と安心していると6月に市町村から住民税の納付書が届いてビックリということもあるでしょう。収入の計算期間が違うのが主な理由となりますが、そもそも控除される金額が違うということも要因になっているのです。以下にその比較した金額をご紹介しましょう。

■基礎控除
・所得税:38万円
・住民税:33万円
:差額5万円

■一般扶養控除
・所得税:38万円
・住民税:33万円
:差額5万円

■特定扶養控除
・所得税:63万円
・住民税:45万円
:差額18万円

■同居老人扶養控除
・所得税:58万円
・住民税:45万円
:差額13万円

■別居老人扶養控除
・所得税:48万円
・住民税:38万円
:差額10万円

■配偶者控除
・所得税:38万円
・住民税:33万円
:差額5万円

■配偶者特別控除
・所得税:最高38万円
・住民税:最高33万円
:差額5万円

以上のように控除額に差があり、これらは「人的控除」といわれ住民税を計算する上で各控除額や差額が必要となります。

No.1199 基礎控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.1191 配偶者控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.1195 配偶者特別控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.1180 扶養控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

広島市 – 収入がいくらまでなら、個人の市民税・県民税(住民税)の配偶者控除・扶養控除の対象になりますか(パート所得と税金)。(FAQID-9999)d
参照元:広島市(2015年12月、著者調べ)



扶養控除の計算:非課税枠と計算例

所得税の場合

扶養控除を受けるには年間所得が38万円以下が扶養家族になることのできる要件ですが、サラリーマンなどの給与所得者の配偶者がパートで得る収入が38万円以下ということは考えにくい金額といえます。年間38万円を12カ月で均等に割ると1カ月当たり2万6,000円という金額です。

通常パートで働けば時給1,000円とすれば4時間働くことで1日4,000円となり1カ月(20日労働)に換算すると8万円、12カ月で96万円の収入となってしまい年間38万円以下なんて無意味、と思ってしまいそうですが実は「年間所得=年間収入」ではないのです。

給与所得者には給与所得控除という所得控除があり年間収入から差し引くことができることになっているのです。その差し引かれた後の金額のことを年間所得といい、計算式にすると以下のようにして求めることができます。

・年間所得=年間収入-給与所得控除

給与所得控除額は最低65万円と決まっていますので扶養家族になる年間所得38万円を満たすには以下の計算式で年間収入を計算することができます。

・年間収入=年間所得38万円+給与所得控除65万円=103万円

つまり年間収入が103万円以下であれば扶養家族になることができ納税者は扶養控除38万円を受けることができるのです。しかし年間所得38万円あると所得税は以下の計算式によりかかってしまいます。

・年間所得38万円x5%=1万9,000円

でも「年間収入103万円なら所得税はかからない」といわれていますがなぜでしょう。実はもうひとつの所得控除がありそれを「基礎控除」といいます。所得税の計算は課税対象となる年間所得金額から基礎控除を差し引いた残りの金額かかる仕組みになっているのです。計算式は以下のとおりです。

・課税対象所得金額=年間所得-基礎控除

基礎控除額は38万円となっていますので年収103万円の人の課税対象所得金額は以下の計算で求めることができます。

・課税対象所得金額=年間収入103万円-給与所得控除65万円-基礎控除38万円=0

課税対象所得金額がゼロですから所得税がかからないということになるのです。

No.1410 給与所得控除|税について調べる|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.1800 パート収入はいくらまで税金がかからないか|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.1199 基礎控除|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

住民税の場合

住民税の計算は2段階の計算となり「均等割」と「所得割」の合計した金額が住民税となります。

・均等割とは
均等割とは所得に関係なくそこに住んでいるだけでかかってしまう税金で一定額となります。地方自治体によって多少差がある場合もありますが、標準的な均等割額は年額として市町村民税が3,000円と道府県民税が1,000円の合計4,000円です。

・所得割とは
所得割とは前年の所得金額によって変わり高収入の人ほど税額が高くなり計算式は以下のとおりです。

・所得割=課税所得金額x税率10%-各所得控除額
各所得控除額というのは「人的控除」を含めた生命保険料控除などのことです。

計算例として所得税のかからない年収103万円の場合を計算してみましょう。手順は以下のとおりです。

①所得控除額の計算
:所得から控除できる主なものは医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などですが、今回の例では生命保険料控除3万5,000円のみとします。

②課税所得金額の計算
:年収103万円-所得控除65万円-基礎控除33万円=5万円
この65万円は所得税の給与所得控除と同じ金額ですがたまたま同じというだけで性質は違います。

③所得割の計算
・所得割=課税所得金額5万円x税率10%-各所得控除額3万5,000円=ゼロ
税率10%というのは市町村民税6%と道府県民税4%の合計で一律となります。

④住民税の合計
・住民税=均等割4,000円+所得割0円=4,000円

計算の結果、年収103万円の場合所得税はかかりませんが住民税は4,000円かかることになります。しかし課税所得金額がゼロの場合は住民税がかからないようなっており年収が100万円以下でなければなりません。

市県民税の計算例/上田市役所
参照元:上田市(2015年12月、著者調べ)

パートやアルバイトによる収入と税金|東京都北区
参照元:東京都(2015年12月、著者調べ)

扶養控除の計算:典型的な家族

所得税の計算

良くある典型的な家族の扶養控除した後の所得税を計算してみましょう。

■家族構成と収入
・夫:年収600万円
・妻:専業主婦
・子ども2人(19歳と16歳):収入なし

■所得税の計算例
①扶養控除の計算
:特定扶養控除(19歳以上)63万円+一般扶養控除38万円=101万円

②配偶者控除の計算
:収入ゼロなので38万円

③給与所得控除の計算
:600万円x20%+54万円=174万円

④基礎控除の計算
:一律38万円

⑤控除額の合計
:①+②+③+④=351万円

⑥課税所得額の計算
:年収600万円-⑤=249万円

⑦所得税の計算
:249万円x10%-9万7,500円=15万1,500円

この計算例では所得税は15万1,500円となります。

住民税の計算

今度は住民税の計算をしてみましょう。家族構成や年収は同じとしますが健康保険や年金および生命保険を支払っていますので控除額が増えます。

■家族構成と収入
・夫:年収600万円
・妻:専業主婦
・子ども2人(19歳と16歳):収入なし
・健康保険と年金分:70万円
・生命保険:10万円(支払額7万円以上は3万5,000円控除)
・介護保険:3万円(支払額3万2,000円以内なので2万1,000円控除)

■住民税の計算例
①均等割の計算
:一律4,000円

②所得控除額の計算
:社会保険料70万円+生命保険料控除3万5,000円+2万1,000円=75万6,000円

③扶養控除の計算
:特定扶養控除(19歳以上)45万円+一般扶養控除(16歳以上)33万円=78万円

④配偶者控除の計算
:収入はゼロなので33万円

⑤基礎控除の計算
:一律なので33万円

⑥各控除額の計算
:②+③+④+⑤=219万6,000円

⑦課税所得金額の計算
:年収600万円/4×3.2-54万円-219万6,000円=206万円4,000円

⑧所得割の計算1
:課税所得金額206万円4,000円x10%=20万6,400円

⑨調整額の計算
:所得税の人的控除額+基礎控除=101万円+38万円+38万円=177万円
:住民税の人的控除額+基礎控除=78万円+33万円+33万円=144万円
:差額=177万円-144万円=33万円
:差額33万円-(課税所得金額426万円-200万円)=ゼロ
:よって調整額は一律5万円

⑩所得割の計算2
:20万6,400円-5万円=15万6,400円

⑪住民税の計算
:均等割4,000円+15万6,400円=16万円400円

以上の計算の結果住民税は16万円400円となりました。

調整額って?

前の項目で⑨調整額とありますが、調整額とは所得税と住民税では扶養控除や配偶者控除などの「人的控除」に差があり、同じ年収額でも住民税の方が税負担が大きくなります。そこで納税者の人的控除額に応じて住民税を減額することで税負担に不公平が出ないように調整をする額のことをいいます。今回の計算例では所得税が15万1,500円で住民税が16万円400円と両者近い金額となっています。

調整額の計算方法は以下のとおりです。

1 課税所得金額が200万円以下の方

次のいずれか小さいほうの金額の5%(市民税3%、県民税2%)

・適用を受ける人的控除の差の合計額
・課税所得金額

2 課税所得金額が200万円を超える方

次のいずれかの金額の5%(市民税3%、県民税2%)

・{適用を受ける人的控除の差(太字部分)の合計額-(課税所得金額-200万円)}
なお上記{ }内の金額が5万円未満の場合は、5万円

出典:

www.city.ueda.nagano.jp



住民税を納める2つの方法

住民税を納めるには2つの方法を選択することができます。それは「特別徴収」と「一般徴収」です。

・特別徴収とは
サラリーマンなどの給与所得者の場合納税者の希望により、毎月の給料から天引きしてもらう方法にするか自分で支払うかのどちらかを選ぶことができます。給料からの天引きしてもらう方法を「特別徴収」といいます。

住民税を12カ月で割った金額を給料から差し引かれることで、あまり税負担を感じないで支払うことができるため気分的にはラクな方法といえます。また前もって差し引かれることで納税時期になって慌てるということも少ないでしょう。

・一般徴収
通常住民税は4期に分けて3カ月分を1回で収めるようになっています。毎年6月になると市町村から4期分の住民税の納付書が郵送されてきますが、その納付書を自分で銀行やコンビニなどから支払う方法を「一般徴収」といいます。3カ月分を一気に支払うため毎月の給料からその分を別にしておかないと納税時期になると「お金が足りない」ということもあると思います。なお住民税の納期は以下のとおりです。

1期…6月(納期限は、6月末日)
2期…8月(納期限は、8月末日)
3期…10月(納期限は、10月末日)
4期…翌年1月(納期限は、1月末日)

出典:

www.city.nasushiobara.lg.jp

住民税の納税方法(普通徴収と特別徴収) |那須塩原市
参照元:那須塩原市(2015年12月、著者調べ)

まとめ

いかがでしたでしょうか。所得税の計算ならまだ何とか理解することができますが、住民税の計算となるとかなり厄介なことが良く分かります。でもひとつずつ計算することにより、完璧とまではいきませんが基本的な計算なら電卓片手にできそうな感じがしませんか?自分で計算した結果と給料明細を見比べるのも良い頭の体操になるかもしれませんね。