離婚後の生活費を考える|何が必要?どんな準備をするの?

結婚をするとお財布が変わりますが、離婚してもお財布が変わります。今まで夫婦共同だった家計が財産分与によりぱっかり二つに割れて独自の道を歩むのが、お金の側面から見た「離婚」です。離婚後は自分の生活費は自分で稼ぐことが基本。そのためにはどんなことを考えておけばいいのでしょう?



離婚と結婚のお金

結婚するとお財布が変わる

結婚とは「この人と夫婦生活を共にする」という婚姻意思のもとに婚姻届を提出することです。結婚をすると今まで自分のことだけを考えればよかったお金に大きな変化が生じます。結婚した男女の生活費は基本的に一つの財布で共有財産とみなされ(民法762条)、片方にお金がなくもう片方に稼ぎがあれば、当然ですが、夫婦として扶養しなければいけません。

これは俺の稼いだお金だから俺のもの。独身であれば通用しただろう言葉は、結婚した途端に通じなくなります。なぜなら、夫婦は生活を支え合い、各家庭の事情に合わせて通常家事や債務を共有しなければならないからです。

自分だけのお金。

今までそれでよかったものが、結婚したら夫婦のお金となり、自分が稼いだお金だからといって家計に一切入れないことは許されません。お金だけでなく、夫婦の片方がした契約はもう片方にも及びますし、片方に何かがあったときは一般的にもう片方が代理するということがよく行われているかと思います。旦那さんが仕事中に奥さんが旦那さんの口座から代理人として生活費を下ろす。よくあることだと思います。

生活保持義務とは -意味/解説/説明 | 弁護士ドットコムで法律用語をわかりやすく
参照元:弁護士ドットコム(2015年12月、著者調べ)

離婚するとお財布が戻る

しかし、離婚届を提出すると、途端にお金は独身時代に近い状態に戻ります。離婚届は婚姻届に比べて簡単に提出できてしまいます。結婚するときは提出の際に婚姻意思が必要でした。この人と結婚して家計も一にしやって行くのだという意思がないと結婚は無効とされています。ですから、自分の憧れの芸能人の名前を勝手に書いて婚姻届を提出しても結婚は無効になると解釈されています。

しかし離婚届の場合は、離婚意思は不要だと言われます。離婚届を出すだけで良いのです。離婚の際にお金の話し合いがこじれて旦那さんが勝手に離婚届を提出して離婚が成立してしまうことや、本当は離婚する気がないのに借金逃れや生活保護のために離婚が行われるのはそのためです。

離婚届が提出されて適正に離婚が成立すると、今まで夫婦として一つであった財布が二つに分かれます。独身時代のように赤の他人同士の財布に戻るわけです。夫婦でないのですからお互いの生活の面倒を見る必要もありませんし、病気に倒れたとしても看病や介護をする義務もありません。それぞれの生活費は別々になった己の財布から拠出する必要があります。

時間は戻せないからこその財産分与

財布自体は赤の他人に戻りますが、婚姻関係を結んでいた以上、絶対に戻せないものがあります。それは、時間です。夫婦であった期間に生まれた子供をお腹の中に戻すわけにはいきませんし、一緒に蓄えた財産も元に戻せません。

一緒の期間に培った財産は旦那さんが「俺の稼いだ金だ」と主張しようと、基本的に夫婦の共有財産とみなされます。離婚の時に一つの財布が二つに割れるわけですから、「財産分与」は当然の権利だと言えます。

夫婦の期間があったならその期間に稼いだお金や貯めたお金は半分にする。当たり前の法律上の処理です。しかし、夫婦ごとに事情が異なりますよね。例えば奥さんが年収600万円で旦那さんが400万円、預金が200万円で離婚した場合、財布が二つに割れた後に苦労するのは旦那さんの方でしょう。だからこそ、基本は財産分与で「はんぶんこ」ですが、夫婦ごとの離婚時の事情に合わせて柔軟な対応が求められます。

財産分与は離婚する時の清算のようなものですから、当然のことだと覚えておきましょう。

裁判所|財産分与請求調停
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

離婚の際のお金の請求

財産分与の他に、時間が戻せないからこそ発生するお金の請求権があります。

子供がいれば、子供を引き取る側からもう片方へと「養育費」の請求ができますし、離婚が片方の配偶者の不貞行為(浮気)や不法行為(暴力など)が原因の場合は「慰謝料」の請求が可能です。「財産分与」は夫婦期間のお金の清算のようなもので当然の権利ですが、その他に、状況によりこれらが発生することも覚えておきましょう。「財産分与」「養育費」「慰謝料」はそれぞれまったく別のお金です。

養育費のこと
参照元:養育費相談支援センター(2015年12月、著者調べ)

裁判所|養育費請求調停
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)



離婚後の生活費の見当をつける

離婚の際に請求できるお金は主に、夫婦期間に共に培った財産を分けて(財産分与)、子供を育てるためのお金を払って(養育費)、浮気や暴力で心が傷ついたからお金に換算して払って(慰謝料)の3種類です。この他に別居期間があった場合は、夫婦はお互いを養う必要がありますから、ガスや水道、食費などの生活費(婚姻費用)も請求することができます。

ただし、それぞれのお金は家庭状況によって支払い方や算定がさまざまで、絶対にこの額!という決まりはありません。暴力により離婚したからといって絶対に200万円受け取れるというわけではなく、また、それぞれ個別に額を決めてもいいですし、慰謝料と財産分与を合わせて500万円という形で決めても差し支えないようです。

サラリーマン家庭の離婚の場合、財産分与だけ、または財産分与と慰謝料を含めて200万円から600万円くらいが一般的と言われています。もちろん、貯蓄状況や仕事の状況でもっと多いこともありますし、少ないこともあるでしょう。

意外に少ないという現実

例えば、旦那さんの浮気が原因で離婚し、慰謝料と財産分与込みで500万円受け取ったとします。

500万円というお金は多いでしょうか、少ないでしょうか。都心で暮らす場合、500万円では2年持たないのではないでしょうか。夫婦の場合は生活費が入ってきますし、片方が「俺の稼いだ金だ」と主張して家計にお金を入れないのは許されないことです。しかし離婚したらもう別々のお財布ですから、生活費がないから支援してとは言えません。元旦那ではありますが、離婚後は赤の他人です。皆さんが赤の他人にいきなり生活費を請求されたらどうでしょうか。渡すでしょうか?普通は渡しませんよね。

婚姻期間の財産の清算は財産分与という形で済んでいます。子供がいるなら養育費を受け取ることは当然の権利ではありますが、養育費はあくまで子供のためのお金ですから、「私の生活費分も合わせて払って」とは主張できません。元旦那は子供を養育する義務はありますが、離婚した元妻を養う義務などありません。養育費は子供一人または二人で大体2万から6万円くらいだと言われています。やはり、少ないという印象があるでしょうか。

子供の養育の義務は半分は子供を引き取った側にるのですから、お金を満額払ってくれという主張も難しいのではないかと思います。子供の急な病気で100万円支払ったなら、50万円は元奥さん、もう半分の50万円は元旦那さんの肩にかかることが基本ではないでしょうか。

養育費が足りない場合は増額請求も可能ではありますが、基本的に「あなたに半分責任があるでしょ?」ということになります。何より、離婚を考える場合にしっかりと把握しておく必要があるのは、「折半であり清算のようなものだから基本的にあまりお金なんて取れませんよ」ということだと思います。

「子供は半分は養ってもらえるけれど、もう半分は自腹で、当然だけど養育費に離婚した元配偶者である自分の生活費なんて上乗せしてもらえないよ」ということです。その上で離婚後の生活の算段をつけるべきです。

離婚について
参照元:養育費相談支援センター(2015年12月、著者調べ)

離婚の生活費はこう見当をつける

離婚を検討している場合、離婚後の生活費を考えなければいけません。自分に仕事があれば給与も入ってきますが、給与が低い場合や専業主婦の場合は、生活に足りない場合はお金の使い方を考えなければいけません。しかし、家族のお財布が一つになっていると、具体的な一人あたりの生活費はなかなか分からないものですよね。ですから、離婚を考えるなら急がず、慌てず、まずは家計簿をつけることから始めてみてください。

家計の支出から考える

一月あたりの支出が出たら、人数で割って大まかな一人あたりの生活費を算出してください。奥さんが旦那さんとの離婚を検討しているなら、明らかに旦那さんだけの支出は除き、自分の分、あるいは自分と子供の分を計算します。家賃や税金なども加算して計算してください。これを何カ月か続けると、平均的な自分の生活費が見えてきます。

また、旦那さんの浪費に困っているという場合は旦那さんがどれだ家計に打撃を与えているかの資料にもなりますし、別居となった場合に婚姻費用を請求する際の資料にもなります。家計簿をつけることによって、その家計簿が重要な資料になりますので、是非利用してみてください。お金の請求や、お金の話になった場合は、こうした資料があった方が有利に働くことも多いでしょう。

離婚後の生活費は?

離婚後、お財布が別になった時にどれだけ必要かを判断するベースは、何カ月か家計簿をつけてみて算出した自分(あるいは自分と子供)の生活費額です。

この額をベースに、すぐに離婚を進めたらどのくらい生活いてゆけるのか、一年にどのくらいのお金が必要になるのか、財産分与や養育費を払ってもらったとしてどのくらいの期間生活でき、どのくらいの期間で蓄えが尽きるのか、どのくらいの金額を自分が稼がなければならないのか、大体のところが見えてくると思います。そして、多くの方は思うのではないでしょうか。離婚後の生活って結構しんどいかも、と。

金額的には大体のところが見えても、実際に予定通り行かないこともけっこうあります。

離婚後の生活を考える

予定を立てても予定外の事態が起きることも多いでしょう。また、中には事情から財産分与や慰謝料請求すら難しい人もいるのではないでしょうか。そんな人は、生活費の目安だけを考えても意味はありません。今後のことを考えて動くことが重要です。

実は、とりあえず離婚したけど生活費のことを考えていなかったという理由で生活保護を申請する人はけっこう多いとのこと。生活保護も一つの手ですが、まずはできそうなところから足場を固めて行くのが安心です。生活保護はその後に考えましょう。あるいは、もらうものをもらい、仕事が安定するまでの間の穴埋めとして申請する方法もあります。自分ひとりのお財布でやって行くと決めたい以上、生活費を考えて動くことは重要です。

もらえるものがもらえない?

離婚後の生活費を考える上で、実際に請求分が全てもらえればいいのですが、そうとも限りません。弁護士さんに相談したら「このくらいは取れるでしょう」という返事があったのだから、じゃあそのお金がすぐに懐に入ると思ったら大間違いです。財産分与と慰謝料を合わせて数百万だった場合、一括で支払うことはなかなか難しいかもしれません。分割払いにして欲しいという申し入れがあるかもしれませんし、不動産を売ってお金に換えるから待ってくれと言われるかも。

実際に慰謝料や財産分を払ってもらうことになった場合、一括が望ましいといえ、分割になることも多いようですし、途中で支払いが滞ることも視野に入れなければいけません。また、中には、離婚できるのだったらお金は何もいらない!と差し迫った事情の方もいらっしゃるでしょう。

幾ら取れそうだと言われても、一括では取れないことが多い、分割の場合は支払いが滞るかもしれないということを念頭に置いて生活費の算段をつけましょう。

離婚についての話し合いは、法律家に依頼しない場合、裁判所で行わない場合は、逐一記録にして残すように心がけ、特にお金が絡む話は今後のことを考えて公正証書にしたためることをお勧めします。

日本公証人連合会
参照元:日本公証人連合会(2015年12月、著者調べ)

調停・審判などで決まった養育費の支払を受けられない方のために(pdf)
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

仕事はどうする?

これから自分一人、あるいは自分と子供で生活してゆくためには、収入元となる仕事をどうするかも悩み処です。離婚してすぐに就職が見つかればいいのですが、そう簡単にはいかないことも想定しておく必要があります。

離婚を計画する場合、先に就職口を見つけることができれば心強いといえます。また、今後の生活費を算定する上で、自分の住む地域の給料相場を考えておくことも重要です。もしもの時は制度を頼りましょう。

生活保護制度とは 東京都福祉保健局
参照元:東京都福祉保健局(2015年12月、著者調べ)

年金はどうなるの?

年金は自分で払っていなかった。私の分の年金はどうなるの?離婚したらもらえなくなるの?離婚する夫婦、特に熟年離婚に踏み切る夫婦の奥さんからはこんな質問が多いようです。

離婚する場合、片方の納付実績をもう片方へ分割する制度があります。給料から年金の支払いができていたのは夫婦の助け合いがあってこそ。だからこそ、財産分割のようにぱかっと割ってしまうわけですね。

年金分割の割合や手続き方法 – 弁護士ドットコム
参照元:弁護士ドットコム(2015年12月、著者調べ)

ご存じですか?離婚時年金分割制度における家庭裁判所の手続(1)(pdf)
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

ご存じですか?離婚時年金分割制度における家庭裁判所の手続(1)(pdf)
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)



最後に

離婚をする時は感情の任せて届出をしてしまうのではなく、着々と準備をすることが重要です。自分の生活費を算定し、もらえるものがもらえた場合ともらえなかった場合にどれくらい生活に差が出るのか、そもそも生活して行けるのかを検討することも重要です。離婚とはいえ最終的にお金の話になりますから、お金のために重要な資料つくり、金額算定から始めてください。

法律の専門家に離婚相談をするにしても、資料があることとないことでは差が出るはずです。家庭内の収入と支出、夫の支出、自分の生活費といった資料作りを進めていれば、具体的に「このくらいはもらえるのではないか」という話もできるのではと思います。

実は結婚前にできることがある

余談として、結婚前にできる離婚対策について少しだけお話します。結婚前に離婚を考えるというとおかしな話ですが、この対策は婚姻届を提出する前にしかできません。

日本ではあまり利用者はいないそうですが、夫婦財産契約という結婚前にしかできない登記があります。この登記は、結婚後のお金のことや、離婚となった場合に財産をどうするかということをあらかじめ決めてしまい、登記をします。その上で結婚し、いざ離婚となった時は登記された内容を確認して財産分与を行います。あらかじめ夫婦になる前に「お金のことはこうしよう」「お金はこのように負担しよう」と決めてしまうのです。関係が破綻してからお金のことを詳細に決めるより揉めない方法です。

こんな方法もあるのだと、未婚の方は頭の片隅にでも置いていただければと思います。

中部経済新聞2010年3月掲載 夫婦財産契約及び夫婦間契約について(愛知県弁護士会)
参照元:愛知県弁護士会(2015年12月、著者調べ)

夫婦財産契約とは【大阪弁護士会】Q&Aデータベース
参照元:大阪弁護士会(2015年12月、著者調べ)