【地震保険の基礎知識】誤解が多い?「地震保険の本当」を教えます

阪神淡路大震災、東日本大震災などをきっかけに地震対策意識を高めている人が増えています。防災用品を揃えるのはもちろんですが、「どうしようか迷って決めかねている」のが地震保険ではないでしょうか。気になるけどお金もかかることだし「なんとなく放置している問題」となっている家庭もあることでしょう。そんな地震保険の基礎知識についてわかりやすくまとめました。



地震保険に入れば安心?

栃木県の高校で同級生だった葵さんと小春さん。葵さんは大学進学で東京へ行き、そのまま東京で就職、結婚しました。その後も地元に残った小春さんとの交流が続いています。

小春さんは栃木で、葵さんは東京で来年家を新築することになっています。葵さんが帰省で栃木へ戻り、いつものようにカフェで小春さんと楽しくおしゃべり。その中で「新しく建てる家のために地震保険をかけるかどうか」の話題が出ているようです。

元々の「地震保険」に対する考え方の誤解

小春(以下K):なんだか最近、地震が気になっちゃって。余計な保険に入ると支出が増えるけどもしものときの備えって大事よね。葵は考えている?

葵(以下A):もちろんよ。東日本大震災のときも東京の一部では影響もあったし、地震はいつくるかわからないから家を建てるにあたって色々調べているわよ。

K:どこの「地震保険」に入るか決めているってこと?

A:どこも何も地震保険ってね、単独で入る保険じゃないのよ。火災保険とセットで加入するものなの。

地震保険制度の概要 : 財務省
参照元:財務省(2015年12月時点、著者調べ)

同じ家を再建できるわけではない

K:そうなの?火災保険に地震保険をつけるかどうかを決めるってことなのね。でも地震保険って高そうだな。大きい地震だと家を建て直すことになる人も多いだろうし。そうなると保険料は高くなるわよね。

A:地震保険では家を建て直せないわよ?家を建て直せるほどの補償額ではないから。

K:え?そうなの?じゃあ、何のために入るの?地震保険って?

A:基本的には「生活の再建に使うためのお金」「家財道具を買い直すためのお金」と思うのが正しい認識ね。地震保険は火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で決めることになっているの。しかも建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度となっているのよ。

地震保険制度の概要 : 財務省
参照元:財務省(2015年12月時点、著者調べ)

「国の保証」とは?地震保険は特別な保険

K:やっぱり地震のときって普通に起こる「火事」とか「事故」と違って被害が大きいイメージあるものね。だから家を建て直せるほどの補償額にはならないのかな。

A:そうね、被害額の規模が違うから「一般の保険とは異なるもの」と思った方がいいわね。何しろ、「国の保証」がされている保険だから。

K:国が関わっているの?

A:そうよ。保険会社だけでは賄えない規模になる可能性があるかもしれないじゃない?民間では手に負えないかもしれないから、国がバックアップしているの。関東大震災クラスの規模でも大丈夫なように想定してあるらしいわ。



「安い地震保険」を探す?

保険料はあまり変わらない

K:国が保証しているのなら安心ね。だったら、あとは少しでも「保険料が安い」地震保険を探せばいいのね。

A:地震保険の保険料は変わらないわよ。他の保険と性質が違うから、保険料を「各保険会社で比較検討」するものではないの。国がバックアップしているものだから変わりようがないのよ。

K:そうなんだー。一律ならわかりやすいわね。

A:そうね、地域や建物の状況によって変わるけれどね。

火災保険とセットなのです

K:そういえば火災保険とセットで入るものって言ったわよね?

A:そうよ、だからどこの火災保険に入るかを決めたら、その後に地震保険をつけるかどうかという流れになるの。

K:じゃあ、選ぶべきは火災保険ね。

A:そう、ランキングサイトも色々あるから比較検討するといいわよ。

価格.com – 火災保険ランキング | 人気申込ランキング | 保険比較
参照元:価格.com(2015年12月時点、著者調べ)

地域で変わるのです

K:葵は地震保険に入るの?保険料は高い?いくらか調べた?

A:栃木と東京では保険料が違うのよ。栃木は安く設定されているからうらやましいわ。東京は高いのよね。

K:いくらなの?教えて!

A:資料を持っているから見せるわ。ほら、栃木は一番安い保険料よ。わかりやすいイメージで言うなら耐火建築は鉄骨やコンクリート、非耐火建築は木造と考えればいいかしら。厳密に言うと木造でも耐火建築物に該当すると耐火建築の保険料になるのだけれど。それは個々の住宅で要確認、といったところ。

【地域:保険金額1,000万円あたりの保険料耐火建築の場合(年間):非耐火建築の場合】(単位:円)
栃木県:6,500:10,600

A:このうらやましくも保険料の安い地域は他にもあるの。

岩手県、秋田県、山形県、福島県、群馬県、富山県、石川県、福井県、長野県、滋賀県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県

K:北海道だと8,400円で少し高くなるのね。

【地域:保険金額1,000万円あたりの保険料耐火建築の場合(年間):非耐火建築の場合】(単位:円)
北海道:8,400:16,500

A:そうね、岩手は6,500円なのに宮城は8,400円なんだ~。最北の北海道と最南の沖縄が揃って8,400円なのね。

北海道、青森県、宮城県、新潟県、山梨県、岐阜県、京都府、兵庫県、奈良県、香川県、大分県、宮崎県、沖縄県

K:11,800円はたった4県ね。非耐火の金額が県によって異なるんだ~。

【地域:保険金額1,000万円あたりの保険料耐火建築の場合(年間):非耐火建築の場合】(単位:円)
茨城県、愛媛県:11,800:24,400
徳島県、高知県:11,800:27,900

A:面白いことに埼玉と大阪が同じなのよ。どういう計算でそうなるのかは知らないけど。

【地域:保険金額1,000万円あたりの保険料耐火建築の場合(年間):非耐火建築の場合】(単位:円)
埼玉県、大阪府:13,600:24,400

A:そして東京が一番高い価格帯の集団に入っているというわけ。

【地域:保険金額1,000万円あたりの保険料耐火建築の場合(年間):非耐火建築の場合】(単位:円)
東京都:20,200:32,600
他は千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県

K:本当!地域によって全然違うのね。建物の種類の差も馬鹿にできないくらいの額!

地震保険制度の概要 : 財務省
参照元:財務省(2015年12月時点、著者調べ)

条件による割引

A:あとはね、家の条件によって割引があるくらいかしら。昭和56年6月以降の新築だったら10%割引になったり、「免震建築物」だったら50%割引になったり、耐震診断による割引が10%、耐震等級による割引も10、30、50%となっているの。家によって地震に対する強さが違うから保険料も変わることは自然なことよね。

K:そうね~、わかる気がする。

地震保険制度の概要 : 財務省
参照元:財務省(2015年12月時点、著者調べ)

地震が原因の火災の怖さ

火災保険の適用外と知っていましたか?

K:地震保険の高い地域ってよく揺れて家が壊れやすいってこと?

A:それもあるかもしれないけど、地震のときの火災も怖いからね。その可能性もあるのじゃないかしら。

K:どういうこと?火災は火災保険に入っていればいいんじゃないの?

A:火災保険では「地震の時の火災」は適用外。地震のときの火災の補償は「地震保険でしか得られない」のよ。

K:えー!!そうだったの?!

家財にかけておいて良かったというケース

K:なるほどね、地震って「揺れて家が壊れた時のためのもの」だけではないってことがよくわかってきたかも。

A:そうなのよ。あとね、建物だけに目が向きがちだけど、意外と「かけておいて良かった」って被災した人が言っているのが「家財の地震保険」。

K:え?テレビとか洗濯機とか、そういう家財?

A:そう、例えば建物と家財が全損だった場合に建物だけの加入だったら1,400万円の保険金を受け取れるところ、家財にも入っていることで1,900万円になるってことらしい。これは建物2,000万円相当と家財1,000万円相当の場合の計算だから一概には言えないけど。でもね、家財の一部損だった人も「家財にかけておいて良かった」って言っている人がいるらしくて。検討の価値があるみたいよ。

「建物」に地震保険。「家財」にも地震保険
参照元:一般社団法人日本損害保険協会、一般社団法人外国損害保険協会(2015年12月時点、著者調べ)



全損?半損?一部損?

K:一部損?一部損ってどういうこと?

A:地震保険ではね、建物や家財に保険金が払われるとき、「全損」なのか「半損」なのか「一部損」なのかで金額が変わってくるの。契約金額の100%か50%か5%かってこと。

K:全損はなんとなくわかるけど、半損、一部損ってどうイメージしたらいいの?

A:そうね、損害額で考えると全損は「主要構造部の損害額が時価の50%以上だったとき」に該当するし、半損は「時価の20%以上50%未満だったとき」、一部損は「時価の3%以上20%未満だったとき」。主要構造部っていうのは家の土台とか柱、壁、屋根とかのことで「家の大事な部分」ってことよね。

K:構造部の20%とかって素人にはわかりづらそう。

A:そうね、専門家に見てもらわないとわからないかも。でも基準がもう一つあって、焼失、流失した床面積が延床面積の70%以上だったら全損、20%以上70%未満だったら半損、3%以上20%未満だったら一部損になるの。一部損にはもう一つ基準があって、床上浸水した場合や地盤から45㎝を超える浸水被害があって全損、半損にもならなかった場合も該当するわ。

K:そっちの基準の方がイメージしやすいかも。でもこうして聞いていると、どの被害もつらいものではありそうね。だからこその保険なのかなぁ。

地震保険制度の概要 : 財務省
参照元:財務省(2015年12月時点、著者調べ)

家財の全損、半損、一部損基準

K:家財の場合の基準はどうなっているの?

A:家財の場合はシンプルに「損害額」で決まるわ。損害額が家財の時価の80%以上であれば全損、30%以上80%未満であれば半損、10%以上30%未満なら一部損よ。建物の基準よりわかりやすいわよね。

K:確かにわかりやすい!

保険金が出ないケース

A:でもね、気を付けないといけないこともあるの。悲しい現実だけれど、災害のときってその混乱を利用しての盗難も起きたりするでしょう?

K:あるある。ひどい話よね。踏んだり蹴ったりね。

A:そうなの、でもね、地震災害のときの「紛失・盗難」の場合は保険金が出ないのよ。あと、地震発生日から10日以上経過してから起きた損害も対象外。これは仕方ないと言えるけれど、故意や過失、法令違反が原因の損害も対象外。

K:地震が原因ではないから保険金が出なくなるのは仕方ないことかもしれないけど、盗難は辛いかも…。そういうことはあってほしくないな。

地震保険が必要な災害とは

噴火や津波はどうなる

A:栃木は津波の心配がいらないからそこはいいわよね~。

K:津波も怖いよね。津波は何の保険?

A:津波も地震保険の補償範囲なの。噴火や津波、地震に伴う火災、これは全部地震保険なの。

加入率が気になりますか?

K:となると、地震保険に入っている人は多いのかなぁ…。

A:加入率は増えているわよ。2014年度の平均で28.8%。1994年度には9.0%だったから意識の高まりを感じるわね。栃木は25.2%。東京は35.6%。小春より私の方が気にして調べているけど、平均と同じ傾向ね。

K:確かに!なるほどね、約3割の人が加入しているのね。

A:それからね、居住環境って人それぞれでしょう。だから、加入率だけでなく「火災保険への付帯率」も「他の人の意識」を判断する材料になるのよ。付帯率で言うと全国平均は59.3%。栃木が60.5%、東京は56.0%。

K:あら?今度は東京の方が低い割合!

A:でしょう。統計って色々な形でとった方がいいのはこういうことにあるのかもしれないわね。いずれにしろ全国平均の付帯率が6割というのは参考になる数値だと思うわ。

地震保険の都道府県別加入率の推移
参照元:一般社団法人日本損害保険協会(2015年12月時点、著者調べ)

地震保険の都道府県別付帯率の推移
参照元:一般社団法人日本損害保険協会(2015年12月時点、著者調べ)

地震保険料控除もあります

A:地震保険の加入に関しての重要な情報として、地震保険料の所得控除のことも知っておくといいわね。生命保険料とかも控除になって所得税が減るメリットがあることは知っているわよね?

K:そういうのは旦那に任せちゃっているけど、なんとなくは知っているかな。地震保険もその控除対象ってこと?

A:そうなの。平成19年から地震保険料控除の制度ができたの。所得税だと最高で5万円、住民税だと2.5万円控除できるのよ。

K:なるほど。その控除とかも考えつつ、あとはやりくりでどう地震保険分の出費を捻出するかってことね!判断はそれからかな。

A:そう、リスク管理も考えたいし、まずは家計管理を頑張らないとね!

個々の状況で必要性が異なります

いかがでしたか?「地震保険」は特別な形の保険ということがおわかりいただけたことでしょう。

地域によって保険料が異なりますし、建物の種類によっても異なります。また意外と知られていないのが「地震による火災」は火災保険の適用外ということ。TVで見たことがあるように、地震の際の火災はあり得ることです。自宅が大丈夫でも、近所の家からの延焼という可能性も考えられます。津波や噴火も住んでいる地域によってリスクを考える必要がありますね。

補償の範囲が限られていますから「絶対にオススメ」とは言い切れません。「入った方がいい」という人もいれば「大した補償じゃないから」という人もいます。正しい情報を元に各家庭で判断することが大事です。

まずは正しい情報を得ることが一番ですから、そのために今回の知識が役立てば幸いです。