【生活保護受給者の扶養義務】条件と問題・疑問点をスッキリ解決

身内が生活保護をうけるといったときに、扶養の義務は発生するのでしょうか?その条件っていったいなんでしょうか?生活保護についての扶養義務の問題点や疑問を解消していきましょう。



生活保護とは

生活保護とは、日本の社会保障です。経済的に困っている人に、最低限の生活を保障するもので、最後のセーフティネットとなっています。

生活保護法では、生活保護を受ける前に、自身の資産や財産、また仕事をする能力やその他の社会保障などを、全て利用した上でも、生活が困窮する場合に、その生活を維持するために、生活保護を受給できると定められています。

そのため、生活保護を受ける前に、家族に扶養をしてもらえるかどうかを確認する必要があります。

生活保護の扶養義務

生活保護を受けるためには、扶養義務者について確認しなければなりません。その扶養義務を負う人としては、3親等内の親族とされています。基本的には、夫婦間や親や子供などの直系血族、兄弟姉妹、さらにおじやおば等が3親等内にあたります。

しかし、その場合でも、家庭裁判所が特別な事情があると認めた場合のみ、扶養義務が発生します。ではどの程度の扶養義務があるのでしょうか。

夫婦間や未成熟の子に対する親については、生活保持義務があり、最低限度の生活を維持した上、配偶者や未成熟の子に同等の生活をさせなければならないという義務があります。

また、成人した子と親の関係、兄弟姉妹の関係であれば、生活扶助義務があり、余裕があればその生活を助け援助するという義務があります。

しかしながら「扶養」に関しては、生活保護の要件ではないのです。つまり、扶養義務者の扶養は、その意思と扶養する能力がある場合でなければ、扶養の義務は発生しません。

生活保護制度 |厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年12月、著者調べ)

必ず扶養しなければならないの?

そうとはいえ、扶養できる状況にもかかわらず、扶養をしなければならない事がわからない状況では、来るものを拒まず生活保護を認めなければならない状況にもなりかねません。

そこで生活保護法では、扶養義務者の資産や収入の調査は可能とされています。ただし、照会した先には回答の義務がありませんし、扶養義務者の同意書がないと回答を得られないというのが、今の現状です。

さらに扶養の程度についての基準がありません。「ふさわしいと認められる程度の生活を損なわない」というようになっていて、基準は不明確となっています。また、扶養能力が十分にあったとしても、扶養をする意思がなければ、その強制力は家裁で調停や審判をする以外にありません。

生活保護における扶養義務について|大阪市
参照元:大阪市HP(2015年12月、著者調べ)



扶養義務の問題点

生活保護での親族の扶養については、世間的に「子供が親の面倒を見るのは当たり前」とか「生活保護に頼る前にまずは家族が支えるべきだ」などを言う人もいます。しかし、本当にそうなのでしょうか?親には親の生活があり、子には子の生活があります。もちろん生活を一にしているのであれば話は別ですが。

生活保護を受ける前に、親族に頼るということが本当に良いことなのかどうかは、疑問です。それによって、家族や親族の関係が壊れてしまう可能性が高いとは思いませんか?

もちろん余裕のある人なのであれば、問題がないかもしれませんが、もともと親族との関係が良くない場合などは、さらに悪化するのではないかと思うのです。

関係が良くない場合

生活保護制度では、親族による扶養に関してその給付よりも「優先する」というように定められています。これは、先に援助を受けて、その足らない部分を生活保護で支給するということになっています。

これが、親族の扶養が義務としての要件となってしまった場合、経済力がある親族がいるというだけで、本当に必要な人が生活保護を受けられなくなるという可能性も出てきてしまうのではないでしょうか。これは大変危険な問題だと考えられます。

その親族との関係が良好で、快く扶養を受けてくれるならまだしも、その関係があまりよくない場合は、問題が発生する確率が高くなるでしょう。

また、DVなどで離婚が成立していない夫婦関係の場合、その心持はどうでしょうか。親子の関係でも、虐待をされて育てられた親であったり、親から捨てられた状況の場合であったりした場合など、やはり良好な関係ではありませんね。そんな関係であるのに、扶養義務を突きつけられても、援助をする気にはなれないでしょう。

関係が悪化する事例

では、生活保護の受給にあたって、もともと良好な関係の親族であれば、その援助はスムーズにいくのでしょうか?

それほど裕福ではない、いわゆる一般的な家庭の場合、その親族への援助の負担がのしかかるということは、大変苦痛に感じることになります。そうなると、やはり気持ちの上でも「何でうちがそんなことしなければならないのか」などの不満が出ることは目に見えていますね。

そして援助を受ける人も、負い目を感じてしまうでしょう。そうなると、良好だった関係でもその関係は悪くなってしまう可能性があります。これが血の繋がった兄弟姉妹であれば、情もあるので、何とかしようと考えるかも知れませんが、配偶者などがいた場合はその夫婦関係さえ危うくなる危険もあります。

お金に関わることは、人はシビアなものなのです。

親族を犠牲にする?

生活保護をうけるにともなって、余裕が十分にない親族に、扶養の義務を突きつけられた場合はどうなるでしょう。余裕がない上にその援助まで負担をすることで、その親族までもが経済状態の悪化を招きかねません。

親族の誰かが貧しい状態になってしまった場合に、その周りの親族までもが貧しくなってしまうような、ネガティブなスパイラルに陥る可能性があります。そうなってくると、生活保護を受けようとしている人は、親族から厄介者扱いをされることにもなるかもしれないのです。

だからこそ、公的な扶助としての生活保護は、その状況までを把握する必要がありますし、その機能をしっかり働かせることが大切になるのです。

生活保護における扶養義務について|大阪市
参照元:大阪市HP(2015年12月、著者調べ)

生活保護の申請による扶養義務者の調査

生活保護を受ける場合は、戸籍などを提出して、扶養義務者についての調査が行われます。

本人から親族の生活の状況を確認するなどした上で、生活保持義務者(配偶者・子)や親子関係などが、扶養が可能であるかどうか、また、親族で扶養の能力のある人などだけに、扶養について可能かどうかを照会することが、通達されています。

照会はできるものの、その照会の回答については、扶養義務者の同意書がないと得ることはできません。そして扶養の意思がなければ、扶養の義務も負う必要はありません。

もし、福祉事務所からの援助や扶養に関する問い合わせなどがあった場合でも、経済状況やその他の事情を伝えればよいでしょう。扶養に関する強制力はないのです。

生活保護における扶養義務について|大阪市
参照元:大阪市HP(2015年12月、著者調べ)



家族の扶養義務

生活保護者の援助については、その照会や扶養を求められることは実際にあると思います。しかしその扶養義務は、現在の経済状況やその関係性によって、必ずしもしなければならないという強制力があるわけではありません。

ここからは、事例をもとに扶養義務について考えていきましょう。

別居している母の扶養義務

別居している母親が生活保護を申請することになり、自分に扶養の義務が生じるかどうか不安だという事例です。この親子の関係は良好ではなく、母親に恨みの感情を抱いている状況です。この場合、過去は水に流して扶養しなければならないのかという不安が出てきます。ましてや、同居をすることに対して考えられない状況です。

生活保護では、原則として扶養の義務はありますので、強制ではないですが扶養することは求められるでしょう。しかしながら、親子関係の状況なども考えて、自分のできる範囲での援助という形で考えるようにするのが良いと思います。

具体的に福祉事務所から「月に○万円の援助をしなさい」などという強制はありません。精神面での援助ということも援助のひとつですが、これも強制ではありません。福祉事務所からその扶養義務に関する意思確認が届いたときに、援助ができない(しない)場合の理由を明確に回答することが大切になります。

居候している場合は?

離婚した夫から逃れるように、姉の家に居候していて、子が小さいためにまだ働けないという状況の場合、生活保護を受けることはできるのでしょうか?

この場合は、基本的に世帯単位で適用されるため、お姉さんの世帯として認識されます。その上で最低生活費などの基準を計算して生活保護が支給されるようになります。しかし、その世帯への生活保護の支給という形になりますので、お姉さんの家族に何らかの影響を与える可能性があります。

ただし例外もあり、「世帯分離」といった取扱いであれば、生活保護を受けることができる可能性はあります。世帯分離とは、一つの世帯の一部を分けることをいいます。

この場合のように居候をしていて生活保護を受けたいという場合は、世帯分離に当てはまる可能性があります。ただし、その措置については、福祉事務所での判断になりますので、相談をしてみると良いでしょう。

親からの援助を受けずに独立したい

現在、子供と自身で親と同居をしているが、引越をして親からの援助を受けずに生活をしたいと考えていて、今は定職についていないため、別居してから生活保護を受けながら仕事を探そうと考えている状況の場合、引越や引越後の生活保護は請けられるのでしょうか?

こういった場合は、まず扶養の義務を求めることが優先されます。生活保護を受けるためには、その働く能力や使用できる資産、児童扶養手当などの手当金など、使用できるものは全て活用した上でのことになります。

親の援助が受けられる場合は、それも優先されるということになりますので、このような理由で生活保護を受けることは難しいと思います。

収入を証明する書類について

親が生活保護の申請をしたことで、扶養に関する届けに添付する収入を証明する書類について、現在フリーで仕事をしているため、源泉徴収や給与証明がない場合は、収入を証明する書類はどうすればよいのでしょうか。

この場合は、収入を証明するために、市役所などの税務課にて、前年度の課税証明書や非課税証明書などを交付してもらいましょう。そして扶養届には、現在の就労状況を記入すれば大丈夫です。

扶養届が届いたとき

扶養義務者である場合、福祉事務所からは、扶養届などで援助に対しての連絡が入ることがあります。この場合、それを放置していたらどうなるでしょうか?

実はそれを放置していても罪にはなりません。また、経済的に苦しいといった理由での援助の拒否も、正当な理由です。この場合、そのことを福祉事務所に伝えておくと良いでしょう。決して見栄などで余裕もないのに援助をするなどと伝えてはいけません。

実際に援助をしなかった場合でも、生活保護を受ける人の支給金は、その分減らされてしまうからです。正直に福祉事務所に伝えれば、何も問題はありませんので安心してください。

まとめ

生活保護の扶養義務は、原則的に直系血族や配偶者にはあります。ただし、その生活状況や経済状況から無理な場合は、それを断ることもできます。また、家族関係や親類関係の状況によって、余裕がある場合であっても、援助をしたくないという思いを持っている場合もあるでしょう。

義務とはいえ、生活保護者の援助については、優先するということなので、強制力があるわけではないのです。福祉事務所から「援助ができないのか?」という問い合わせがあった場合でも、その事情をしっかりと伝えて、援助をする意思がないことを、きちんと伝えるようにする必要があります。

無理をして援助をすることで、その援助した側の家庭が苦しい生活状況になってはいけません。もちろん余裕がありその意思があるというのなら、援助をしてほしいと思います。しかし、そうでない場合も多いものです。

生活保護の不正受給というのも、社会的に問題になっています。そういった不正な行為でない限り、生活保護は社会保障として大切な位置にあります。人が努力してもその生活が困難な場合のための生活保護です。

もしできるのであれば、近しい親族は援助をして下さい。しかし何度もいいますが、それによって関係性が悪化するような場合や、自身の生活に支障が出るという場合は、きちんと断るようにしましょう。

その扶養義務は、義務であっても強制力はありませんので安心してくださいね。