相続税の「小規模宅地の特例」は節税のために要チェック!

「小規模宅地の特例」で遺産の評価を減らせることをご存じですか?遺産で大きな割合を占める土地や家屋。特に土地の評価額は大きいため、評価額を減らせるなら減らしたいですよね。ちょっと難しい小規模宅地の特例ですが、少しでも理解が進めば幸いです。



相続税の計算方法

相続税の計算は大きく3段階に分かれます。始めに遺産総額を基に「課税遺産総額」を計算します。次に課税遺産総額と法定相続人の数から、「相続人全体が支払う合計の税額」を計算します。最後に、実際に各相続人が遺産を相続した割合から、それぞれの相続税を計算します。

第一段階:課税遺産総額を計算

課税遺産総額を計算するためには、まず遺産総額を計算する必要があります。遺産総額の計算はこのようになっています。

【遺産総額=プラスの財産+みなし相続財産+相続開始前3年以内の贈与財産】

プラスの財産とは、現預金や金融資産、不動産などです。みなし相続財産は被相続人が亡くなった後に受け取る財産で、死亡退職金や死亡保険金などがこれに該当します。また、相続開始前3年以内の贈与財産も遺産総額に含めることになります。次に遺産総額のうち課税対象となる金額(=課税遺産総額)を計算します。

【課税遺産総額=遺産額-(非課税財産+マイナスの財産+債務控除の対象となる葬式費)-基礎控除】

非課税財産はお墓や仏壇、生命保険のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分などです。マイナスの財産は主に借金です。葬式費用に香典返しのためにかかった費用や初七日、法事のための費用は含まれません。基礎控除は(500万円×法定相続人)+3,000万円です。法定相続人は配偶者と子どもが該当する場合が多く、法律で決められた相続人のことです。

No.4126 相続財産から控除できる債務|相続税|国税庁
参照元:国税庁(平成27年12月、著者調べ)

No.4129 相続財産から控除できる葬式費用|相続税|国税庁
参照元:国税庁(平成27年12月、著者調べ)

第二段階:相続税の総額を計算

課税遺産総額が計算されたので、この額がから相続税の総額を計算します。相続税の総額は、それぞれの相続人が支払う相続税の合計ですが、この金額は実際の配分とは関係なく決まります。まずは、課税される遺産額を法定相続人の数で、法定相続割合で分配します。そして、相続人毎に計算された「分配された課税遺産額×相続税率」を合計した額が相続税の総額となります。

最終段階:各相続人の税額を計算

最後に実際の相続割合に応じて各相続人が納める相続税額が決まります。法定相続人以外の人が相続する場合は、この段階で相続税に2割を加算します。この場合でも法定相続人の納税額には影響はありません。



財産評価は様々

相続税を計算する方法は少しややこしいですね。相続税を算出するにあたり、財産の評価も行わなくてはいけません。現預金はそのままの金額として評価されますが、不動産などは購入した価格ではありません。簡単に解説していきます。

家屋の評価額

持ち家の場合、毎年固定資産税を払っていると思います。毎年6月頃に届く固定資産税の納税通知書に“評価額”という記載があります。その評価額がそのまま相続税の評価額になります。

自宅の土地の評価額

土地の評価額も意外に簡単で、土地に面している道路の“路線価”と土地の面積を掛け算するだけです。路線価は国税庁HPから調べることができます。自宅がある土地の路線価図を見れば道路に数字とアルファベットが記載されています。

数字は1平方メートル当たりの値段(単位は千円)で、アルファベットは“借地権割合”といって、今回は使用しません。たとえば路線価が「50E」だとすると、その土地に接している土地は1平方メートル50千円(つまり5万円)で評価をするということです。土地の広さは固定資産税の納税通知書に記載があります。

財産評価基準書|国税庁
参照元:国税庁(平成27年12月、著者調べ)

路線価が書いてない場合

路線価の記載がない土地もあります。その場合はまた別の計算方法になり、“倍率方式”で計算します。倍率方式は、固定資産税評価額と評価倍率の掛け算です。評価倍率も国税庁HPに地域ごとの倍率が載っています。

土地の評価は、条件が合えば「小規模宅地の特例」として評価額を減額できる場合があります。ここからが本題、小規模宅地の特例について解説していきます。

小規模宅地の特例とは

それでは小規模宅地の特例について解説します。「小規模宅地」とは、相続の直前に被相続人が事業のために使用していた宅地や、被相続人が居住のために使っていた宅地のうち限度面積までの部分のことです。

相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地や相続時精算課税を使用した贈与により取得した宅地については、この特例の適用を受けることはできません。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|財産の評価|国税庁
参照元:国税庁(平成27年12月、著者調べ)

小規模宅地の特例により減額される割合

減額される割合は相続の開始のあった日が「平成26年12月31日まで」と「平成27年1月1日以後」で、限度面積が異なります。今回は平成27年1月1日以後に相続が開始された場合のみ解説します。

相続税では、小規模宅地について一定の割合が相続税の評価として減額されます。小規模宅地については、事業用の宅地と居住用の宅地について適用される限度面積と減額割合が異なります。居住用の宅地で特例に該当するものを「特定居住用宅地」といいます。

事業用の宅地については利用区分によって限度面積200平方メートルまたは400平方メートルとなり、減額割合は50%または80%となります。事業用宅地の利用区分は5つありますが、一般の人にも該当する可能性が高い「貸付事業用宅地」と「特定事業用宅地」について説明します。



事業用の宅地① 貸付事業用宅地

被相続人の貸付事業用の宅地とは、簡単に言えば所有している賃貸物件(アパートやマンション等)が建っている土地のことです。要件の全てに該当する親族が相続により取得したものをいいます。

貸付事業用宅地等の要件

事業用の土地を相続した場合で小規模宅地の特例を適用するためには”事業承継要件”と”保有継続要件”それぞれに当てはまっている必要があります。

貸付事業用宅地の業承継要件は、その宅地の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぐことです。また、その申告期限までその貸付事業を行っていることも必要です。保有継続要件は、その宅地を相続税の申告期限まで有していることとなります。

また、被相続人本人が事業を行っていたわけではなく、被相続人と生計を一にしていた親族が事業を行っていた場合も適用可能です。この場合の事業継続要件は、相続開始の直前から相続税の申告期限までその宅地の貸付事業を行っていることです。保有継続要件も同様に、その宅地等を相続税の申告期限まで所有していることです。

減額される限度面積

貸付事業用宅地に該当する宅地の減額される限度面積は200平方メートルで、減額割合は50%です。

事業用の宅地② 特定事業用宅地

マンションなどの賃貸経営ではなく、小売などの自営業を行っており、事業のために使っている土地がある場合も多いのではないでしょうか。この場合も条件が合えば土地の評価額を減額することができます。

相続開始の直前において被相続人等の事業のために使われていた宅地で、要件の全てに該当する親族が相続により取得した場合に適用されます。

特定事業用宅地の要件

被相続人が事業のために使用していた宅地についての適用適用要件は、事業承継要件としてはその宅地の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、その申告期限までその事業を営んでいることになります。また、保有継続要件としてはその宅地を相続税の申告期限まで有していることが必要です。

被相続人と生計を一にしていた親族が事業のために使用していた宅地も減額の対象となります。この場合も同様の事業継続要件や保有継続要件となります。

減額される限度面積

特定事業用宅地に該当する宅地の減額される限度面積は400平方メートルで、減額割合は80%です。貸付事業用宅地の限度面積、減額割合よりも大きくなっています。

居住用の宅地 特定居住用宅地

これが最も適用件数が多いケースとなります。被相続人が住んでいた家屋が建っていた土地に関する減額です。相続開始の直前に被相続人が居住のために使用していた宅地で、親族が相続により取得した場合に評価減の対象となります。その宅地等が2つ以上ある場合には、主に居住用に使用していた宅地に限ります。

「特定居住用宅地」の取扱いについて平成26年1月1日に改正が行われています。高齢になり老人ホームなどに入所することが多くなったために要件が緩和されました。

二世帯住宅に居住していた場合

被相続人と親族が居住するいわゆる二世帯住宅の宅地について、二世帯住宅が構造上区分された住居であっても、一定の要件を満たすものである場合にはその敷地全体について特例の適用ができるようになりました。

ただし、被相続人と親族がそれぞれ別世帯として登記している場合は除外されます。

老人ホームなどに入所していた場合

相続開始の直前において被相続人が居住のために使用していなかった宅地について、一定の要件を満たす場合には、特例の適用ができるようになりました。ただし、被相続人の居住の用に供さなくなった後に事業又は被相続人以外の人が居住用に使用していた場合を除きます。適用には次のような理由が必要です。

・要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が、養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム又は有料老人ホーム・介護老人保健施設・サービス付き高齢者向け住宅に入居又は入所していたこと。

・障害支援区分の認定を受けていた被相続人が障害者支援施設などに入所又は入居していたこと。

特定居住用宅地の要件

特定居住用宅地は、宅地を”被相続人が居住するために使用していた場合”と”被相続人と生計を一にする親族が居住するために使用していた場合”でそれぞれ要件が異なります。

被相続人が居住するために使用していた宅地

特定居住用宅地等の要件として誰が取得したかにより要件が異なります。配偶者には取得者ごとの要件はありません。被相続人と同居していた親族の場合は、相続開始の時から相続税の申告期限まで継続してその家屋に居住し、その宅地等を相続税の申告期限まで有している場合に適用対象となります。また、被相続人と同居していない親族は以下の要件を全て満たす場合に適用対象となります。

・相続開始の時において、被相続人または相続人が国内に住所があること。または相続人が国内に住所を有しない場合で日本国籍を有していること。
・被相続人に配偶者がいないこと。
・被相続人に、相続開始の直前にその被相続人が住居として使用していた家屋に居住していた親族(被相続人の相続人)である人がいないこと。
・相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前に被相続人が居住のために使用していた家屋を除く)に居住したことがないこと。
・その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。

被相続人と生計を一にする親族が居住するために使用していた宅地

取得者が被相続人の配偶者の場合には所得者毎の適用要件はありません。被相続人と生計を一にしていた親族が取得した場合は相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人である必要があります。

減額される限度面積

特定居住用宅地に該当する宅地の減額される限度面積は330平方メートルで、減額割合は80%です。これらの宅地(特定事業用宅地や貸付事業用宅地)の特例を複数所有している場合は合算されるわけではなく、少し複雑な計算によって限度割合を決定するので注意が必要です。

特例を受けるための手続

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。

この特例を受けることにより相続税を納める必要がなくなる場合であっても、申告は必要です。また、申告期限内に手続きを行わなければいけなません。

相続税の申告の際に提出していただく主な書類
参照元:国税庁(平成27年12月、著者調べ)

まとめ

いかがだったでしょうか?小規模宅地の特例は適用範囲がややこしいところもあるため、すべてを理解するのは大変なことです。亡くなった人の家に引き続き家族が住む場合や事業を継続する場合に、その土地の評価が減額される可能性があるということを知っておくだけでもいいと思います。

相続税納税の対象になるかどうかの微妙な場合は小規模宅地の特例のおかげで税金を支払う必要がなくなることもあります。気になる方は身近な税理士に相談してみるといいでしょう。