相続税評価額の算出方法主なものを分かりやすくまとめてみた

亡くなった方が遺した財産にはいろんな種類がありますね。住んでいる家や土地などの不動産や預貯金だけならまだ何とかなりそうですが、株式や貸付金、権利関係になると何をどう評価していいのか分からなくなってしまいます。まして牧場を相続したら馬や牛などの家畜はどうすればいいのでしょう。今回は難解な財産の評価について調べてみました。



相続税評価額の決定

相続財産の評価について

亡くなった人が遺した財産にはいろんな種類があります。相続する際はそれらすべての財産を評価し申告しなければなりません。相続財産の評価は国税庁の「財産評価基本通達」によって各財産ごとに評価の方法が規定されていますので、財産の実勢価格とは異なる財産も多く、評価の判断は難しい作業となることは容易に想像がつきます。

基本的に相続財産の評価は相続が開始になった時点で評価することと決まっていますので、日々変動するような相場のある財産はなおのこと評価が難しくなるといえます。財産の評価方法については「財産評価基本通達」に細かく紹介されていますが、今回はその中でもより一般的な財産の評価方法についてご紹介したいと思います。

財産評価|法令解釈通達|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

課税対象となる財産

相続税の課税対象となる財産とはいわゆる「価値のあるもの」です。普通に考えれば家や土地などの不動産、現金や預貯金、株券などの金融資産、高価な絵画や美術品、骨とう品、貴金属類や宝石類があり「プラスの財産」といわれています。なお民法ではその他にも以下のようなものも財産に含められることが定められています。

第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

出典:

law.e-gov.go.jp
亡くなった人が自分の意志で行使するかどうかに委ねられていたような、生活保護費の受給する権利や身元保証人であることの地位、離婚を請求することができる権利など亡くなってしまってからはどうすることもできない権利を除いては、財産にかかわるすべての権利や義務を受け継ぐことが相続人には求められています。

また亡くなった人が直接的に遺した財産ではなくても課税対象となる財産、これを「みなし財産」といいますが例えば「生命保険金」や在職中に亡くなった場合に支払われる「死亡退職金」も相続税がかかるように規定されています。

No.4105 相続税がかかる財産|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

相続税のかからない財産

民法第896条の「一切の財産」には相続税のかからない財産があります。それらを「非課税財産」といいますが主に以下のような財産をいいます。

・住宅ローンや自動車のローン残高
・クレジットカードの利用残高
・カードキャッシングの利用残高
・消費者金融や個人からの借入残高
・税金の未払い分や滞納分
・他人の借金の保証人

誰が見ても価値のない不要な財産ばかりで、それら「借金(負債)」の部類に入るものには相続税はかかりません。この他にも国税庁のサイトには「墓地」や「墓石」なども非課税財産として紹介されています。

No.4108 相続税がかからない財産|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



相続税評価額の規定のある財産

財産評価基本通達にある主なもの

国税庁の資料「財産評価基本通達」に規定されている相続税の課税対象となる主な財産の種別をご紹介しましょう。

■土地
・宅地
:自分が住んでいた土地以外にも貸している土地や事業用として使われていた土地も含まれます。

・畑
:他人に貸していた畑も含まれます。

・田
:他人に貸していた田も含まれます。

・山林
・その他
:原野や牧場、鉱泉地、雑種地などが該当します。

■家屋
・家屋
:自宅以外にも事業用として使用していた倉庫や建物、および借家。
:以上に付随した門や塀、庭など。

・その他建築物
:魚類の養殖用池や駐車場など。

■不動産に関する権利
・農業業の小作件や耕作権
・自宅の地上権や賃借権

■現金
■預貯金
・一般的な預金や信託口座預金

■有価証券
・株式
:公開株や未公開株(上場、非上場にかかわらず)

・債権類
:国債、地方債、社債など。

・投資信託などの証券

■家財
・自宅内にある家財類や電化製品、美術品など

■事業に付随する財産
・自動車
・船舶
・重機
・工作機械
・その他設備
・製品や商品
・資材や原料
・売掛金
・未収金
・貸付金
・手形など

■その他の財産
・立木(竹林を含む)
・自分の自動車
・ゴルフ会員権
・著作権や特許権
・未収の借地料や家賃

他にも細かく分類されていますが主にこれらの財産は一定の評価方法があり、その金額に対して相続税がかかることになります。

財産評価|法令解釈通達|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

財産の評価の仕方と評価額

評価の方法は現金や預貯金などすぐに評価額が分かる財産は良いとして、不動産やゴルフ会員権などはどう評価されるのか主な例をご紹介しましょう。

■土地
・路線価方式
・倍率方式
具体的な計算例は別の項目でご説明しますが以上の2通りの評価方式があります。土地の評価額は売買価格のおよそ80%といわれています。

■家屋
・固定資産税評価額x倍率
市町村役場へ行けば台帳を閲覧できますので、その額に一定の倍率を乗じた額が評価額となり購入(または建築費用)費用の30%から70%が評価額になるようです。建築年数によって評価の割合が下がることになります。

■現金
現金はそのままの額が評価額となり割引はありません。

■預貯金
預金額に解約したときの利子を足した額が評価額となり現金同様割引はされません。

■株式(上場されている場合)
株式の評価額は以下の4つの方法で行います。そのうち1番低い額が評価額になります。

・亡くなった日の終値
・亡くなった月の平均の終値
・亡くなった前の月の平均の終値
・亡くなった前々月の平均の終値

一気に値が上がったような株なら前月や前々月の終値で計算した方が良いかも知れません。

■利息付債券
国債や地方債、社債など利息が解約時に計算されるものは売却したときの手取額が評価額となりますが、これも2つの方法がありそのうち低い金額が評価額となります。

・発行当初の額面+利息
・相場の額面+利息

国債や地方債は額面自体変わることがありませんのでどちらでも良いといえますが、社債の場合はどちらが低いかで決めれば良いですね。

■利息割引債券
国債や地方債、社債など利息を差し引いた債券は売却したときの手取額が評価額となりますが、これも2つの方法がありそのうち低い金額が評価額となります。

・発行当初の額面+償還差益(または差損)
・相場の額面

■貸付信託
・元本+配当益(または損)-手数料、で計算した額が評価額となります

■投資信託
解約したときの価格での評価となります。

■ゴルフ会員権
取引価格から30%ほど差し引いた額が評価額となるようです。

■宝石
時価での評価額となりますので店舗によっては多少差があるかも知れません。

■貴金属
これも時価での評価額となりますので店舗によっては多少差があるかも知れません。

■負債
借金の残高や税金の未払金や滞納額がそのまま評価されますが、その額は「プラスの財産」から差し引くことができます。

■死亡生命保険
受け取った金額から一定の額を差し引くことができます。その額の計算方法は以下のとおりです。

・評価額=受け取った保険金-(500万円x相続人の数)
仮に保険金が5,000万円で相続人が4人の場合は以下の計算となります。

・評価額=5,000万円-(500万円x4人)=3,000万円

■死亡退職金
死亡生命保険金同様の計算で評価します。

・評価額=死亡退職金-(500万円x相続人の数)

■香典などの弔慰金
これらも課税対象となる財産で条件により評価額の計算が2とおりあります。

・勤務中に亡くなった場合
:評価額=もらった香典や弔慰金-(賞与を除いた給料x36カ月分)

・勤務中以外で亡くなった場合
:評価額=もらった香典や弔慰金-(賞与を除いた給料x6カ月分)

■生命保険の単なる解約
解約した時点での解約返戻金がそのまま評価額となります。

■美術品や骨とう品
鑑定士による評価額となりますので個人により多少の差がある場合もあります。

■牛や馬などの家畜
市場で売却した価格が評価額となります。

死亡生命保険金や死亡退職金の控除について

・相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
 
・相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分

出典:

www.nta.go.jp

No.4108 相続税がかからない財産|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

財産評価|法令解釈通達|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

自動車や家財道具について

自動車には名義がついていますので亡くなった人の財産かどうかが分かりますが、家具や電化製品などの家財道具は他の家族と同居していた場合所有者がはっきりしません。評価の表方は財産評価基本通達にも規定がありませんが、一般的は中古価格を参考にするかまたは経年に応じた償却費を差し引いた額が評価額となるようです。

非上場株式について

非上場株式の評価方法は評価の方法がまず2つに分かれており。持っている株の割合が60%以上になるなどその会社を支配している場合は「原則的評価方式」という方法で評価され、単なる株主の場合は「配当還元方式」という方法で評価されます。

■配当還元方式
所有することで配当が得られる場合は以下の計算式で評価されますが、配当がない場合は売却した額か額面のどちらか少ない方が評価額となります。

・評価額=(年間配当額/10%)x(1株あたりの資本金相当額/50円)

■原則的評価方式
その会社を実質的に支配しているような場合は以下の3つの方法により評価することになります。

・類似業種比準方式
持っている株の会社と似たような上場会社を参考にして評価するため、参考対象となった会社によっては評価額が高くなることもあるといえます。

・純資産価額方式
その会社の純資産額を株の所有率で換算した額で評価しますので、株の保有率が多ければそれだけ評価が高くなる可能性もあります。

・併用方式
類似業種比準方式と純資産価額方式の評価額の中間を評価額とする方式です。

土地の評価額を計算してみよう

路線価とは

土地の価格を評価するには「路線価」という価格を基準にします。では「路線価」とは何のことでしょうか。

「路線価」とは「道路」の価格のことです。土地を相続する場合税務署が全国すべての土地に価格を設定することは大変な作業となるため「道路」に価格を設定し、その「道路」に面している土地の価格を算出する方法をとります。

「路線価」は毎年1月1日時点での実勢価格や地価公示価格、不動産鑑定士による査定価格を参考に「道路」に価格をつけることになります。「路線価」は毎年変わりその年の7月から8月にかけて全国の税務署や国税局で発表されることになっています。「路線価」は「公示価格」の80%くらいを目安に不公平感が出ないよう配慮されているようです。

評価額の計算例

土地を「路線価」で評価する計算式があり以下のとおりとなります。

・評価額=路線価x奥行補正率x面積
:路線価は税務署で閲覧することができますが、インターネットでも国税庁のサイトから調べることができます。
:奥行補正率とは道路に面している土地の形状により価格に対して倍率を乗じます。細長い土地や三角形の土地などは利用価値が低いと判断され最大で20%ほど(x0.8倍)減額される場合もあります。
:面積は坪単位ではなく平方mで計算します。

■具体的に計算してみましょう
:住所/東京都八王子市旭町1丁目付近
:JR八王子駅前
:価格50万円
:奥行補正率/1.0
:面積/165平方m(50坪)

・評価額=50万円x1.0x165平方m=8,250万円

ざっとですがこのようにして土地の評価額は計算することができます。

財産評価基準書|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

奥行価格補正率表(昭45直資3−13・平3課評2−4外・平18課評2−27外改正) |財産評価|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

土地を貸している場合

土地を他人に貸しそこに家が建っているような場合は、「路線価」と基にして計算した評価額から一定の割合で「借地権割合」を差し引くことで評価されます。他人に貸しているためすぐに売却できないとの理由で評価が下がるようです。ちなみに「借地権割合」は「路線価図」に併記されていますのですぐに調べることができます。

先ほど計算した東京都八王子市旭町1丁目付近の「借地権割合」は70%でしたので、評価額は以下の計算となります。

・評価額=8,250万円x70%=5,775万円

このように土地を貸している場合はずいぶんと評価が下がることが分かりますね。

No.4611 借地権の評価|財産の評価|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

小規模宅地の特例

実際に自宅を相続した際、予想した以上に評価額が高かったりするとその分だけ相続税が増えてしまうことになりますが、亡くなった人が親でさらに相続人が配偶者や家族のときは「小規模宅地の特例」を利用することで評価額を80%低く抑えることができます。ただし土地の面積に上限があり330平方m以下となっています。

先ほどの計算例からすれば以下の計算となります。

・評価額=8,250万円-(8,250万円x80%)=1,650万円

条件さえ整えばここまで評価額を下げることができるといえます。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|財産の評価|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



まとめ

いかがでしたでしょうか。国税庁では相続財産の評価方法について細かく規定していることが分かります。亡くなった人の財産の種類によっては評価することが難しいこともありますが、一度「財産評価基本通達」をじっくり読んでみるのも良い勉強になることでしょう。