最低生活費って知ってる?計算方法や生活保護など大事な社会制度を解説

生活費は生活費でも、最低生活費という言葉を聞いたことはありませんか?家計簿で計上する生活費とは少し異なり、生活保護制度に関わる基準のお金を、最低生活費といいます。あまり馴染みのない言葉かもしれせんが、ここではなるべくわかりやすく最低生活費について説明をしたいと思います。



最低生活費って何?

憲法が定める最低限度の生活費

最低生活費とは、文字通り最低限度の生活を営むために必要だとされているお金のことです。ここでいう最低限度とは、生活保護法の元となっている日本国憲法第25条で保障されている「健康で文化的な生活を送るために必要な最低限度」を指します。

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
     国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

出典:

www.houko.com
当然ながら、贅沢な暮らしが普通だった人の『最低限度』と、元々生活に困窮していた人の『最低限度』の認識が大きく異なるのはわかるでしょう。最低生活費の『最低限度』は個人で試算して導き出した、きっとこのくらい、などという曖昧なものではなく、きちんとした基準が存在するお金です。

日本国憲法
参照元:日本国憲法(2015年12月時点、著者調べ)

生活保護に関係する

家計簿の計算で挙げられる普通の生活費とは異なり、最低生活費は生活保護の制度を利用するにあたって関係する言葉になります。生活がどうしても苦しくなり、やむを得ず生活保護を申請して審査を通過した後、支給される金額の基準が最低生活費になります。

ただし、全員が全員、最低生活費で示された金額の全額を支給されるわけではありません。最低生活費に届かない額でも収入があるのならば、その収入分は差し引かれた状態で生活保護費として支給されます。収入は働いて得たお金や、年金や各種制度によって得られる政府からの援助など、個人の資産として扱うことができる全てのお金を指します。最低生活費は生活保護費の『基準』であり、『支給額』とは異なるということは覚えておいた方がいいでしょう。

ちなみに、生活保護の受給に年齢制限はありません。老若男女、日本国籍を持つ人ならば誰でも受けられる権利はあります。生活困窮者の中には、生活保護は自分では利用できないと思い込み、生活苦に自殺を図ってしまう人もいるそうですが、生活保護制度はそんな人たちのためにある制度です。取り返しのつかないことになる前に、一度福祉事務所や町村役場で相談する方がいいと思います。

金額は条件によって変動する

生活保護費の基準となる最低生活費ですが、具体的にこの金額、と一括で定められている金額ではありません。最低限度の生活を送るために必要なお金、といってもその人の状況や環境で必要な金額が前後するのは当然であり、全国一律で決めてしまえば最低生活費とした金額でも貧富の差が生じてしまいます。

例えば、1人暮らしをしている人の最低生活費と、夫婦と子供4人暮らしで生活している世帯の最低生活費では、4人暮らしの世帯の方がより多くのお金が必要なのはお分かりかと思います。また、都会と田舎では家賃の相場が異なりますから、住む場所によっても生活費に差が出てきてしまいます。こうした差を無視して最低生活費を一律にしてしまうと、生活保護受給者の生活水準がバラバラになってしまいます。

そうした弊害を避けるため、自分に当てはまる状況の最低生活費は条件に定められた金額を計算して、個別に割り出す必要があります。次からの説明では、最低生活費を計算する具体的な方法を示していきたいと思います。



最低生活費の計算方法

生活扶助が生活費にあたる

最低生活費は、生活保護費として支給される各種扶助の全体を指しても呼ばれます。扶助の種類は後述しますが、最低生活費として主に計算する必要があるのは生活扶助と呼ばれるものです。生活扶助とは、食費や衣料品などといった、日常生活を送る上で必要なお金にあたる扶助のことです。

最低生活費の中で計算が必要となるのは、この生活扶助の項目が主になります。残りの扶助についても条件が設定されていて、生活扶助の額に加算していく形をとった方がわかりやすく計算できると思います。では、まず生活扶助をどう計算するかを見ていきましょう。

世帯構成と級地が生活扶助の目安

生活扶助の計算に必要なのは、その人の世帯が何人暮らしで何歳なのか、そしてその人がどこに住んでいるか、という情報です。住んでいる場所は級地と呼ばれ、1級地-1から3級地-2の6つに区分されており、1級地はいわゆる都会と呼ばれているような場所が主になっています。

これらを確かめたいのであれば、厚生労働省のホームページの生活保護制度に関する内容を記述したページにある、PDFファイルを開くと確認することができます。また、生活扶助に限らず最低生活費の基準は1年ごとに1回改訂されるそうなので、きちんと最新版の情報を参照して計算した方がいいと思います。

生活保護制度 |厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年12月時点、著者調べ)

他にも扶助がいくつかある

生活扶助の他にも、最低生活費として計算すべき扶助があります。まずは住宅扶助というもので、住宅費に関する扶助になります。こちらも級地によって定められた金額が設定されており、家賃が扶助の基準内であれば全額が支給されます。また、住宅費関連では他にも更新料や火災保険料なども支給されます。もし基準よりも高い家賃にお住まいであれば、基準内に収まる家賃の物件へ引っ越すことを条件とされますので、注意が必要です。

次に教育扶助があります。こちらは学校に通う子供が世帯にいる時に発生するもので、小学校と中学校の義務教育期間に発生する教育費を補てんしてくれる扶助になります。毎月平均的にかかるだろう基準額が設定されている他、学校側が指定している教材費や学校給食費、通学に必要な交通費も実費で支給されます。ちなみに、高校進学でも扶助が出ますが、そちらは教育扶助ではなく生業扶助で支給されるようです。

また、医療扶助は指定の医療機関にて受診した医療費を全額負担してくれるもので、介助扶助は要介護者や要支援者に対する介護サービスにかかる費用を全額負担してくれるものです。生活保護を利用する方の中には、身体障害や精神疾患で働くことが難しい方もおられますので、そうした方々が不自由しないように負担をしてくれる扶助になります。

後は生業扶助という就労に関する技能習得などに必要な費用を支給してくれるものや、臨時的な支給として出産扶助や葬祭扶助といったものもあります。高校が生業扶助に当たるのは、教育扶助が義務教育までと決められているからです。現在は高校の進学率が高く、高校卒業資格がないと就職が難しいという背景から、就職支援の範囲として高校の学費が生業扶助から支給される形になっているようです。

支給関係 | 生活保護を学ぼう
参照元:生活保護を学ぼう(2015年12月時点、著者調べ)

さらに加算される条件も

上記の扶助に加えて、特定の環境により最低生活費に加算される場合があります。まず、世帯の中に障害者がいる場合、設定されている金額を上乗せします。身体障害者手帳の1級か2級、もしくは精神保健福祉手帳1級を所持していると、おおよそ25,000円前後の増額がなされます。

また、身体障害者手帳の3級、もしくは精神保健福祉手帳2級を所持していると、おおよそ16,000円前後増額されます。こちらも級地で金額が上下するため、具体的な金額は生活扶助基準額を確認してください。

それとは別に、冬季加算という季節によって加算されるお金もあります。これは冬場の11月〜3月に支給される、使用頻度が上がる暖房器具などでの光熱費や暖房代へ使用する目的として加算される扶助になります。こちらは地域によって加算額が異なり、北海道などの寒さが厳しくなる地域であるほど金額が高くなっています。

また、父子家庭や母子家庭といった片親家庭においても、子供の人数により支給額が増額されます。子供が1人目であればおおよそ20,000円前後が、2人目であればおおよそ22,000円前後が支給されますが、3人目以降の子どもになると1人につき800円前後の増額になります。障害者による加算も、片親家庭における加算も、級地によって支給額が異なってくるので、計算する時はきちんと基準額とご自身の級地を確認しましょう。

他にも、生活保護の受給許可が下りた段階で子供がいなくとも、後に妊娠された場合は妊産婦加算というもので出産に関する費用に補助が付きます。実際に生まれれば児童養育加算という、子育てをする時にかかるお金の補助も加算されます。ご家庭の状況によっては、最低生活費に色々と加算されることもありますので、不明な点があれば担当の方に聞いてみるのがいいと思います。

なお、上記でおおよそという形で提示した金額は、2015年度版の生活扶助基準額の表を参考にしています。実際の具体的な金額を確かめたい方は、厚生労働省のホームページから最新版の生活扶助基準額のデータを確認することを推奨します。

生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(平成27年度)
参照元:厚生労働省(2015年12月時点、著者調べ)

最低生活費の計算例

では、具体的に最低生活費をどのように計算していくかを、例を用いて説明していきます。住んでいる地域で定められた級地により金額が異なってきますが、今回は東京23区内や横浜市、大阪市などの大都市と呼ばれるような場所にあたる、1級地-1に指定されている地域を例として説明していきます。

まず、38歳男性の1人暮らし、身体障害者手帳の1級を所持している場合の最低生活費を計算します。生活扶助費以外は実費となる場合が多いため、ここでは生活扶助費の計算を行っていきます。また、基準額は2015年度での生活扶助基準額を参考にしています。

第1類は年齢により計算されますから、20~40歳の項目に注目して38,430円となり、逓減率は1人暮らしでは1なのでそのままの金額になります。あとは世帯人数で決まる第2類の項目で1人である40,800円を合計して79,230円が基本的な生活扶助費になります。それに加え、例では身体障害者手帳の1級を所持しているため、26,310円が加算されて、合計105,540円が生活扶助費の基準額になります。

次に、39歳の母親と11歳と9歳の子どもがいる3人暮らしの母子家庭を計算します。第1類での計算では母親が41,440円で、子供2人が35,060円ずつとなり、第2類が3人暮らしであることから54,840円です。それらを加算して0.9をかけると149,760円となり、そこから母子加算は子供が2人いるため24,590円となり、児童養育費を2人分で20,000円を加算した194,350円が生活扶助の基準額となります。

他にも、ご自身の家庭の状況で金額は変化しますので、計算してみてください。また、表を見ながら計算が面倒くさい、と思われる方ならば、簡単に生活保護費の計算ができるサイトもありますので、そちらで計算をされてみてはいかがでしょうか?

生活保護 金額 自動計算
参照元:布施弘幸 行政書士事務所(2015年12月時点、著者調べ)

生活保護を受ける要件

資産があればまず生活費に

生活保護を受けるための基準である最低生活費ですが、ご家庭の世帯全体における収入がその数値を下回っていれば、絶対に生活保護の申請が通過する、ということはありません。生活保護は何を活用しても生活が困難であり、どうしようもできなくなった時の最後の砦であるべき制度です。当然、受給希望者は安易に生活保護に頼る前に、自分ができうる最大の努力をしなければなりません。

まず、預貯金や他の資産がある場合は、可能な限り生活費に充てて生活を維持する努力をする必要があります。資産の例としまして、土地等の不動産や生命保険を含む各種保険、あとは自動車なども資産に含まれます。自動車は住む地域によっては所有を認められる場合もあるそうですが、かなりまれなケースだと思っておいた方がいいでしょう。

とにかく、手段を選ばなければ捻出できる資産が手元に残っていた場合は、それを活用して生活のためのお金として消費しなければなりません。少しでも活用できそうな資産がある場合は、生活保護の申請を行っても許可が下りる可能性は低いでしょう。

労働可能ならば働いて稼ぐ

生活保護制度はリーマンショックという事件が起こって以降、社会的要因でも働くことが困難な状況が発生するということが認知されました。そうして、景気の悪化により生じた派遣切りなどの社会問題により、職を失った人々が生活保護の存在を知り、多くの方が生活保護を希望するようになりました。

ですが、そうした人々は可能な限り就職先を見つけ、毎月一定の収入を得て自分で生活を立て直す努力をしなければなりません。生活保護は最低生活費を上回る定期収入が得られるようになった時点で、給付は打ち切りになります。自分で生活できる力が備われば、生活保護の要件から外れるので、当然ですね。

ただし、収入があったとしても一時的なもので、最低生活費を脱しない収入であれば、生活保護は継続することもあるようです。実際に扶助の継続に関しては、担当となったケースワーカーさんと相談することになるようですが、臨時で得た収入分の金額は扶助から差し引かれて生活保護費は削減されます。

生活保護以外の制度を活用

生活苦によって国からの援助を受けようとする時に、手段は生活保護だけではありません。もし他の制度や法律による給付が認められる場合は、生活保護制度よりも優先して受給申請を行って、生活費に充てることが求められています。

例えば、失業した時や就職に必要な教育訓練を受ける時に必要なお金などを給付してくれる雇用保険や、国民年金や厚生年金、あるいは障害者年金などといった各種年金による給付も生活費に使うことが望まれます。また、子供がいる世帯の場合は児童扶養手当や、身体障害者がいる世帯では身体障害者福祉手当といった給付を受けられる場合があり、そちらの活用を求められることになるようです。

教育訓練給付制度について |厚生労働省
参照元:厚生労働省(2015年12月時点、著者調べ)

親族の援助もなるべく頼む

援助を受ける対象は、政府の補助だけではありません。身近にいる親族にもできうる限りの援助を受けられるかどうかを相談し、可能であれば生活費を援助してもらうということが求められます。例えばご両親だとか、兄弟姉妹、高齢になってから生活保護を考えている方々では成人された子どもや、その他ご親戚などに援助を頼めるかを尋ねてみましょう。

他にも片親家庭、特に母子家庭の方であれば、前夫に養育費の支払いを依頼するなどの努力も求められます。離婚後、養育費の支払いを渋ったり、突然援助が途切れたりするようなケースもあるでしょうが、直接連絡ができて、交渉の余地がある場合はできうる限りの援助の要請をしましょう。

その他の条件は役所に要相談

上記で示したような最大限の努力をしてもなお、生活費の工面ができないという場合は、迷わず生活保護制度に頼ってください。自身の年齢や環境に負い目を感じる必要はありません。制度は利用するためにあるのですから、生活に困窮して限界を感じたのならば、お近くの福祉事務所や町役場の生活保護の窓口に相談に行くことをお勧めします。

ただし、ご自身では生活保護を受給しなければならない状況だと思っていても、いざ窓口に相談して審査を受けた時に、申請が通らない場合もあります。昨今は社会問題として生活保護の不正受給や、不適切だと思われる使用目的に生活保護費を使用しているなどの問題から、生活保護の審査が厳しくなっている傾向にあるようです。担当の方とよく話し合い、生活保護に必要な条件を確認することが大事になると思います。



まとめ

最低生活費は日本で生きるために必要な、命をつなぐための最低限の金額です。ニュースなどでよく取り上げられる生活保護費の問題から、あまりいいイメージを持たない方もおられるかと思います。が、何らかの事情で最低生活費を自身の力で稼ぐことができず、生活保護費を最後の希望にされる方も大勢いらっしゃいます。そうした、本当に必要な人々のために生活保護制度は存在しています。

生存権は、日本国憲法でも保証されていて、私たちに認められている立派な権利です。どうしてもお金がなくて、日常生活もままならないならばいっそのこと、などという最悪の事態を避けるためにも、生活保護制度をきちんと理解して活用して欲しいと思っています。