借地権は相続される?相続税や相続したくない場合の対処を紹介!

借地人が亡くなったとき、借地権は相続されるのか。借地権に相続税はかかるのか。借地権を相続したくない場合にはどうすればよいのかなど、借地権の相続にまつわる問題をまとめました。



借地権は相続されるか

借地権とは

ここでは、借地権の相続に関わる問題についてまとめていきますが、そもそも借地権とは何を指すのでしょうか。借地借家法第2条によると、

(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
二 借地権者 借地権を有する者をいう。
三 借地権設定者 借地権者に対して借地権を設定している者をいう。
四 転借地権 建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう。
五 転借地権者 転借地権を有する者をいう。

出典:

www.houko.com
と、借地権は厳密には、地上権と賃借権の両方を含む概念であり、両者には様々な違いがあるため、借地権の相続というテーマについても、借地権がそのどちらを指すのかによって、結論が違ってきます。ただ、その違いが書かれた以下のサイトにも記載があるとおり、実際の借地権について、地上権が設定されている不動産というのはほとんど見られず、一般的に借地権という場合には賃借権を指すことがほとんどなので、ここでは賃借権を前提に話を進めていきたいと思います。

借地権の種類~地上権と土地賃借権の違い~|弁護士 魚谷和世
参照元:まほろば不動産(2015年12月、著者調べ)

賃貸借契約とは

では、賃借権とは何かという話ですが、賃貸借契約については民法第601条に定めがあり、

(賃貸借)
第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

出典:

www.houko.com
とされていて、ここでいう「相手方」が、いわゆる賃借権を持つ賃借人ということになります。ここでの問題は、当事者間で結んだ賃貸借契約を、賃借人が死亡しても引き継げるのかということですね。また、あくまでも借家権ではなく借地権というテーマなので、基本的には、地主さんから土地を借りている借地人が、その上に自己名義の建物を建てて住んでいるという状況を想定して、話を進めていきます。

借地権は相続される?

結論から言えば、借地権は相続されます。賃借権は、相続の対象になる権利であり、賃借人が亡くなった時には当然に相続されるので、賃貸人の承諾なども特に必要ありません。例えば、借地人Aさんが妻と一緒に住んでいた場合に、Aさんが亡くなっても、地主はその妻に「私はAさんと契約をしていたのですから、Aさんが亡くなったならこの土地から立ち退いて下さい」とは言えないわけです。

また借地権は、亡くなった借地人と同居していた相続人にのみ認められるわけではなく、同居の有無を問わず、相続されます。そのため、場合によっては、相続人の資格を持つ人が相続をしたくないと考えることもありますが、それについては後ほど述べていきたいと思います。

借地権は相続できるの? 借地権の相続評価額は? 借地権の相続サポート-借地権相続専門の阿部惠子行政書士事務所です。
参照元:阿部惠子行政書士事務所(2015年12月時点、著者調べ)

相続人の義務

上で述べたとおり、借地権は当然に相続されるので、地主の承諾や契約書の書き換えなどは原則必要ありません。場合によっては、名義の書き換えを求められることもありますが、譲渡をする際にはかかる名義変更料も、相続の場合には支払う必要がありません。ただし、義務ではないとはいえ、後々のトラブルを防ぐためにも、相続があった時には地主にその旨を伝え、建物の相続登記をしておくのがよいでしょう。

【借地人の相続は『借地権譲渡』ではないので『名義書換料』は不要】 | 不動産 | 東京・埼玉の理系弁護士
参照元:弁護士法人みずほ中央法律事務所(2015年12月時点、著者調べ)



借地権の相続税

借地権も相続税の対象

さて、借地権が当然に相続されることはわかりましたが、その借地権を必要とする相続人にはありがたい一方で、注意すべきは相続税の課税対象となることです。借地権の相続評価額というものが、遺産の一部として算入され、額や相続人の人数・法定相続分に応じて、相続税が決められることになります。

借地権の相続評価額

では、借地権の相続評価額とは、どのように計算するのでしょうか。これについては、「更地と仮定した場合の土地評価額×借地権割合」で算出されます。借地権割合とは、国税局が地域ごとに定めた評価額と割合率で、路線価図や評価倍率表に表示されています。路線価図や評価倍率表は、国税庁のホームページで閲覧することができ、地域によりますが、その割合は5割から7割であることが多いようです。

財産評価基準書|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ) 例えば、土地の評価額が1,000万円で、その土地が借地権割合60%の地域にある場合は、1,000万円×60%で、600万円が借地権の相続評価額であり、相続税の対象となります。ちなみに、この相続評価額というのは、あくまでも相続税や更新料の基準とするための額であって、借地権を売却・譲渡する際の価格とは異なります。

借地権の相続について-ピタットハウス【借地権 無料相談ドットコム】
参照元:ピタットハウス(2015年12月、著者調べ)

相続税の税率

相続税は、誰にでも必ずかかるというものではなく、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合にのみ、申告・納税が必要なものです。2015年1月1日から、基礎控除額が引き下げられ、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」とされましたが、法定相続人が1人だとしても、3,600万円を超える遺産がなければ相続税はかからないことになります。

基礎控除額の引き下げと課税対象者の拡大|改正の影響|相続税の改正と対策|ヘーベルハウス
参照元:ヘーベルハウス(2015年12月、著者調べ) 相続税がかかる場合の税率は、以下の国税庁のサイトにあるとおりで、遺産額から基礎控除額を差し引き、法定相続分によって按分した額によって、税率が変わってきます。借地権が相続税の課税対象になることを知らず、他の遺産だけを見て相続税はかからないと思い込んでいた、ということも起こり得ますので、ぜひ知っておいて下さい。

No.4155 相続税の税率|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

借地権を相続したくない時は

借地権を相続したくない事情

借地権を相続する権利を有する法定相続人としては、上で述べたように、税金がかかることはもちろん、遠方に住んでいて借地権を持っていても仕方ない、亡くなった借地人名義の建物が老朽化していて住める状態ではない、賃料を払えないなどの事情で、借地権を相続したくないと考える人も多いようです。その場合、どのような選択肢があるのでしょうか。

借地権の返還

まず、借地権自体を地主に無償で返還するという方法があります。この場合、地主と借地人の両方が、法人ではなく個人であれば、所得税や贈与税などの課税対象になることもありません。しかし、借地権には、時に何千万円という価値があるという場合もあり、それを無償で返還してしまうというのはもったいないとも考えられます。まずは、借地権を買い取ってもらえないかというところから、交渉してみるのがよいかもしれません。

借地権の相続
参照元:十文字会計鑑定事務所(2015年12月、著者調べ)

借地権付き建物の売却

自己所有の建物は、自由に売却することができますが、これが借地上に立っている場合は、建物だけを買っても土地を利用する権利がなければ、実際に居住することは難しいですから、借地権も一緒に譲渡することになります。民法第612条により、借地権を譲渡する際には、地主の承諾を得る必要があります。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

出典:

www.houko.com
地主の許可なく借地権を譲渡すると、地主は契約解除を言い渡すことができるということになりますが、借地借家法第19条1項には、借地人を守る次のような規定があります。

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第19条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 第1項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
4 前項の申立ては、第1項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。
5 第3項の裁判があった後は、第1項又は第3項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。
6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項又は第3項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
7 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第3項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

出典:

www.houko.com
つまり、地主の許可が得られない場合でも、借地権付きの建物を第三者に売却できる可能性があるということですね。売却ができれば、代金の支払いを受けながら晴れて借地権を手放せるわけですが、受け取れるお金だけではなく、地主への借地権譲渡承諾料の支払いが必要になります。相場としては、借地権価格の10%程度であることが多いようです。

ただ、裁判所が認めた譲渡で、地主がきちんと賃料や承諾料を受け取れる見込みがあるといってもなお、譲渡を認めたくないという地主のために、上記3項により、地主自らが譲渡を受ける旨を申し立てることができます。この場合は、借地人が第三者に譲り渡したいと考えている場合であっても、優先的に地主に譲渡することになります。

Q&A よくあるご質問 | 弁護士法人 淀屋橋・山上合同(法律事務所)
参照元:弁護士法人 淀屋橋・山上合同(2015年12月、著者調べ) とりあえず借地権を手放したいと考えている相続人にとっては、そうなっても特に問題はないでしょう。また、地主が初めから借地権を買い取ってくれる可能性もあるので、第三者へ譲ることを考える前に、まずはその交渉をしてみるのも一つの手です。

土地を買い取る

借地人の相続人のなかには、そのまま建物と借地権だけを相続して何年も地代を払い続けるぐらいなら、いっそ土地も自己所有にしたいと考える人もいます。地主としても、借地権がついている以上、その土地を利用することも売却することもできず、少しの地代しか入ってこないぐらいなら、土地を買い取ってもらった方がありがたいと考えている可能性もあります。

借地人側には土地の購入費用が必要になりますし、地主が同意してくれるかどうかもわかりませんが、条件が整いそうであれば、これも一つの選択肢として検討してみましょう。

共同売却

借地権のついた土地や、借地上の建物は、それだけ取得しても土地と建物の両方を自己所有にはできないため、それだけ売却価格も低くなります。そこで、地主の協力を得られそうであれば、土地と建物を共同で売却するという方法もあります。売却価格が高くなるうえに、地主への名義変更承諾料などの支払いが必要ないというメリットがあります。

貸宅地・借地権の整理(共同売却) | 事例・コラムアーカイブ | 旭化成不動産レジデンス 資産コンサルティング
参照元:旭化成不動産レジデンス(2015年12月、著者調べ)

遺産分割

被相続人が遺言をすることなく死亡した場合、相続人全員で遺産の配分の仕方を決める遺産分割協議を行います。例えば、複数いる相続人のなかに、借地権が欲しいという人がいれば、その相続人だけが地主と賃貸借関係に立つことになり、他の相続人が借地権を相続したくないと考えている場合であれば、これが一番平和な解決策かもしれませんね。

相続放棄

借地権を相続することにメリットがなく、他にプラスの財産もない場合などは、相続放棄をすることも一つの選択肢です。相続放棄によって、初めから相続人とならなかったものとみなされるので、借地権に関わる煩わしい問題を回避できますが、借地権の相続だけを放棄するということはできず、プラスもマイナスも全て放棄することになるので、他の遺産のことも考慮したうえで行いましょう。ただし、相続放棄が認められるのは、相続があったことを知った時から3ヶ月間なので、早めに決断することが必要になります。

裁判所|相続の放棄の申述
参照元:裁判所(2015年12月時点、著者調べ)



借地権の相続における注意

使用貸借なら相続されない

賃貸借だと思っていても、地代によっては法律上の使用貸借というものに該当する場合があり、その場合は借主の死亡によって効力を失い、相続はされないことになります。そもそも借地人がどのような権利を持って土地を使用していたのかをはっきりさせてから、対応を考える必要があります。

◎使用貸借

地代を払っていなかったり、固定資産税の実費負担程度で土地を借りている場合は、『賃貸借』ではなく、『使用貸借』となり、権利は相続されません(民法第599条)。

出典:

www.isansouzoku-mio.com

手続料の請求に注意

貸主によっては、相続による名義変更の手続料や承諾料を請求してくる人がいるようですが、借地権の相続において名義変更の手続や地主の承諾は義務づけられていないので、そのような請求に応じる必要はありません。場合によっては、契約書の書き換えや作成し直しが必要となることがありますが、その場合も実費的な少額であることが通常なので、高額な手続料を請求されても安易に支払わず、調べたり相談したりして、本当に支払うべきものかどうかを確認しましょう。

【借地人の相続は『借地権譲渡』ではないので『名義書換料』は不要】 | 不動産 | 東京・埼玉の理系弁護士
参照元:みずほ中央法律事務所(2015年12月、著者調べ)

争いを防ぐ

初めの方でも述べたとおり、借地権が当然に相続され、とくに相続人にやるべきことはないとはいえ、誰が相続して今後地代を支払うのかなどを地主に知らせておくことは、地主に余計な手間をかけないためにも、後々の争いを防ぐためにも、やっておくべきことであると言えます。遺言や遺産分割協議書の保管、建物の相続登記など、紛争予防策はしっかりとっておきましょう。

遺贈なら承諾が必要

借地権が相続された場合は地主の承諾は不要ですが、相続ではなく遺贈である場合は、地主の承諾が必要となります。法定相続ではなく、遺言によって借地権を譲り受ける場合には注意しましょう。この場合も、地主の承諾を得られない時は、裁判所に申し立てることで、それに代わる許可を得られる可能性があります。

借地権を相続した時に覚えておくと便利な7つのコト|厳選 相続弁護士ナビ
参照元:厳選 相続弁護士ナビ(2015年12月、著者調べ)

まとめ

以上、借地権の相続についての問題をまとめました。結論としては、賃貸借契約に基づく借地権であれば、当然に相続される。借地権の相続にも相続税がかかる。借地権を相続したくない場合には、遺産分割で借地権を欲しがっている相続人に配分する、相続放棄をする、地主に借地権を買い取ってもらえないか交渉するなど、状況に応じて選択をする、ということになります。

借地人が死亡してそのままにしておくと、地主が誰に賃料を請求してよいかわからなかったり、相続人を調べなければならなかったりと迷惑をかけてしまいますので、最低限のマナーとして報告をして、良好な関係を築くことで後々の争いを防ぐようにしたいものです。相続関係の問題には、複雑な事例も多いと思いますので、困った時は、法律事務所や不動産屋など、事例に応じた機関に相談することをおすすめします。