生前に相続放棄はできない!代わりに取れる3つの方法まとめ

特定の人に全財産を相続させたい・この人にだけは相続させたくない、など、いろいろな感情が渦巻く相続。のちのちの事を考えて相続放棄の手続きを取っておきたい人もいるのではないでしょうか?相続放棄は相続が開始してからでなければできませんが、代わりに選べる方法をまとめてみました。



被相続人の生前に相続放棄はできない

相続にはいろいろな事情がつきものです。特定の相続人に財産を相続させたい場合や、逆に特定の相続人に財産を相続させたくない場合もあるかもしれません。財産を相続させない・しない方法として相続放棄という手続きが挙げられますが、相続放棄ができるのは、相続人が相続の開始があったことを知った時からとされており、被相続人が亡くなってからでなければできません。

相続放棄は放棄した相続人が失う利益が大きいため、生前に行ったり被相続人が遺言書に「相続放棄するように」などと書いたりしても、効果はありません。

裁判所|相続の放棄の申述
参照元:裁判所(2015年12月時点、著者調べ)



生前の相続放棄の代わりにできる3つの対策

事情によっては、どうしても生前に相続財産の行方を確定しておきたいというケースもあるかもしれません。そんな場合に、相続放棄の代わりに取ることができる対策をまとめました。

1.遺言書を遺す

特定の人に相続させたい意思がある場合、遺言書に記載することによって財産の譲渡は可能になります。遺言書の書き方は民法でその要件が定められていますので、要件に従って作成しなければ最悪無効になってしまうこともありますので注意が必要です。

遺言書のメリットは、相続財産をどう分配するかについて被相続人の意思のみで作成ができることです。しかし、デメリットもあります。デメリットは遺留分については被相続人の好きにできないことです。遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている相続割合のことです。

この遺留分は、兄弟姉妹以外の直系卑属、直系尊属及び配偶者に認められています。例えば配偶者と子どもが3人いたとします。子ども3人のうち、長男に全財産を相続させたいと思いその内容の遺言書を遺したとしても、配偶者や他の2人の子どもが遺留分を渡すように主張してきた場合には、遺留分をそれぞれに渡さなければなりません。

この請求を遺留分減殺請求といいます。遺言書によって相続財産を遺す場合には、この遺留分を侵害しないように注意が必要です。

遺言:日本公証人連合会
参照元:日本公証人連合会(2015年12月時点、著者調べ)

裁判所|遺留分減殺による物件返還請求調停
参照元:裁判所(2015年12月時点、著者調べ)

2.遺留分放棄の申し立て

例えば非相続者が会社を経営しており、相続によって財産を分割すると会社が傾きかねないという場合などには全財産を後継者である長男に譲るということはよくあります。一度は家族全員それに合意したものの、いざ相続が始まると次男が遺留分を主張してきた…このようなケースはよく耳にします。

一度決まったことに法律上の拘束力を持たせるために有効な手段が、遺留分放棄の申し立てです。長男に全財産を相続させたいというケースですと、他の兄弟が遺留分放棄の申し立てをして、裁判所がそれを許可すれば、他の兄弟は遺留分減殺請求権を失います。

他の兄弟が遺留分減殺請求をできなくなることによって、長男に全財産を相続させることが可能になります。遺留分放棄の申し立ては、相続人側が行う手続きですが、この手続きは相続人の利益を大きく侵害する可能性がある点や、無制限に認めると親が本人に強要するなどの危険があります。
そのため、被相続人の生前に遺留分放棄をする場合には遺留分を放棄する本人が自分の自由意志で家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所の許可を得ることが必要になります。しかし一般的に遺留分放棄には合理的な理由が必要と言われていて、簡単に許可が下りるわけではないようです。

もう一つの注意点は、放棄された遺留分は被相続人の財産になる点です。どういうことかというと、長男以外の兄弟が遺留分を放棄したとしても長男が法的に相続する割合は変わらないのです。遺留分の放棄だけですと、長男は被相続人のすべての財産を相続することはできません。そうなることを防ぐためには、遺言書を書いておく必要があります。

裁判所|遺留分放棄の許可
参照元:裁判所(2015年12月時点、著者調べ)

3.推定相続人の廃除

生前の相続放棄に代わる方法の一つとして、推定相続人の排除という方法があります。これは被相続人側が行うもので、民法892条には、このような規定があります。

「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」

例えば複数子どもがいて、そのうちの1人から日頃から暴力を振るわれていた、などの事情がある場合には、「この人物を相続人から外したい」と 家庭裁判所に請求することができます。推定相続人の廃除は遺言書によってもできるとされています。

法律関連用語「相続人の廃除」  法テラス|
参照元:法テラス(2015年12月時点、著者調べ)

まとめ

被相続人の生前に、相続人に相続放棄をさせることはできません。しかし、代わりに取れる方法もあります。特定の相続人に財産を遺したいのか、遺したくないのかによって、遺言書を遺す・遺留分放棄の申し立て・推定相続人の廃除と、取れる手段は変わってきます。相続はとても大きなイベントです。後悔のないように、考えを整理しておくといいかもしれません。