連帯保証人は相続対象なの!?連帯保証人の基礎知識と相続の対処法

亡くなった人の借金も相続対象になりますが、実は連帯保証人になっていた場合も相続対象になるとご存知ですか?そもそも連帯保証人って何?という基礎知識から、連帯保証人を相続させない知識、相続した場合の対処法を解説します。



お金の貸し借りをするということ

ある日、友人に100万円貸して欲しいと言われたら、あなたならどうするでしょうか。「いいよ、分かった」と言って、そのままぽんと貸してしまうでしょうか。それとも貸すには貸すけれど、友人が返済しない時のことお考えて保証を立ててもらったり、実印を押した契約書を作るでしょうか。

友人は「契約書や保証なんて、私はそんなに信用がないの?」と思うかもしれませんが、貸す側にとっては後で話しがこじれるのも嫌だし、何より「返してもらえなかったらどうしよう。大切なお金なのに」という話ではないでしょうか。

お金の貸し借りをして、保証を立ててもらうというのは、相手を信用しているかどうかとは別問題です。いえ、返済能力の有無を心配しているという点で信頼や信用の一部が揺らいでいるということでもあるのでしょうが、貸す側にとっては安心が欲しいという気持ちは、お金を貸す場合、誰にだってあるのではないでしょうか。私が信頼できないからそんなことを言うのね!?という話ではなく、「貸すから返済してくれるという安心をください」という制度は、れっきとした法律で認められた主張です。

保証にも種類がある

その「貸すから返済してくれるという安心をください」という主張をどうやって実現するかというと、担保(保障)という形で実現します。

例えばAさんがBさんに100万円のお金を貸す場合、Cさんに保証をしてもらう方法が一つです。これを人的保証といいます。連帯保証人などはこの人的保証に分類されます。もう一つが物的保証です。代表的なものは抵当権でしょうか。家や土地を担保にしてお金を借りるという、物をお金を借りる際の保証として約束する方法がこれです。

物的保証と人的保証は同時に使うことができます。銀行の住宅ローンはまさにその併用と言えるのではないでしょうか。保証人を立ててくださいと言われると同時に、家に抵当権を設定されますよね。奨学金を借りる時も保証人を立ててくださいと言われますし、会社に入社する時もいざという時のために保証人を立てることを要求されることがあります。

「お金を貸してください」「はい。じゃあ、返済のための安心をください」「じゃあ、担保として抵当権を設定します」という流れと手続きは、世の中で当たり前のように行われています。

奨学金Q&A〜連帯保証人・保証人の方-JASSO
参照元:日本学生支援機構(2015年12月、著者調べ)

安心と問題が混在

お金を貸すからには安心が欲しいと思うのは、貸す側からしたら当然でしょう。いざという時のために保証があった方がより安心です。しかし、借りる側にとっては、例え返済する気があっても、「保証人を立ててくれ」「抵当権を設定してくれ」という言葉は恐怖以外の何ものでもありません。自分の誠意や返済能力が疑われているということで、ムカッとすることは確かにあるでしょう。しかし、恐怖の大本は主に別の部分です。

「保証」「担保」

そう、貸す側の安心材料である保証と担保です。この二つが恐怖の大本なのです。事実、借金の保証人や担保って凄く怖いんです。

保証や担保が怖がられる理由

この貸す側の安心材料、いざという時の借金回収の綱である保証や担保は相続対象になります。父親Aが1000万円の借金をして実家の家と土地に抵当権を設定した場合、父親が借金を返済しきれなければ借金が相続人に受け継がれるだけでなく、抵当権のついた家も受け継がれます。相続が発生したから都合よく抵当権が消えるわけではありません。

一度、物的担保として抵当権が設定されたなら、債権者が消すことに同意して手続きに協力するか、第三者の手に渡った際に相続の手続きをするか、借金をきちんと返済するか、といった方法しか、家や土地から抵当権を消す方法はありません。

人を保証人に設定した場合も同じです。保証人には幾つか種類がありますし、相続が発生したら保証人を勘弁してやるという契約を結ぶことは自由です。ですが、基本的に父親Aが連帯保証人になっていた場合、大本になっている借金が返済されていなければ、相続人である息子Bはもれなく連帯保証人という身分を受け継ぎます。だからこそ保証人や担保は非常に怖がられているといえます。

自分の借金じゃないのに?

物的担保は第三者の不動産にも設定できます。Aさんがお金を借りたのに、Bさんの家に担保を設定することもできるわけです。こういったケースの場合にAさんが借金を返済せずBさんの家が取り上げられて強制競売に付されるのはとても気の毒なケースです。見方によっては、Bさんは自分の借金ではないのに責任を取らされた形になるのですから。

しかし、普通は、「私がお金を借りるから、あなたの家を担保にしていい?」と尋ねられれば、ほとんど信頼のない間柄なら即座に「駄目!」と言いますよね。嫌だなと思いながらでも担保設定を了承したということは、AとBは共同で事業を営んでいるですとか、親族ですとか、かなり親しい間柄なのではないでしょうか。事実、別の人の名義になっている不動産に抵当権を設定している場合は、そんなケースが多いのです。

共同で事業を営んでいた場合は、Bの不動産が借金のかたに取り上げられてしまっても、多少同情心は湧くとはいえ、仕方がないよねと考える人もいるでしょう。保証人になった場合も、共同事業を営んでいて、代表者である友人の名義で金を借り、自分が保証人になったという場合なら、本人たちの問題ですから、仕方ないと納得することもできます。

しかし、これが関係のない人ならどうでしょう。相続人ならどうでしょう。借金を相続したなら、いかに遠縁の相続人であっても返済しなければいけません。保証人や担保になっている不動産を相続したなら、担保のままであらねばなりませんし、保証人で居続けなければいけません。

よくドラマで連帯保証人になっていた父親から相続して、ですとか、友人の多額の借金の連帯保証人になっていたら友人が夜逃げして、なんていう話を見ますが、「保証は相続される」「逃げられない」のですから、こんなに怖いことはありません。自分の借金じゃないのに!という怖さがあります。しかも、そんな保証人や担保の中で特に怖い、悪魔の制度だ!とまで言われるのが「連帯保証人」という制度なのです。

連帯保証人を理解する

「保証人」と言った場合、必ずしも連帯保証人を指すわけではありません。保証人にも色々な保証人がいて、それぞれの保証の中身が違っています。例えば、普通の保証人は債権者から「借金分の金を払ってくれ」と言われた場合、「先にお金を借りた本人に言ってください」「借りた本人に支払い能力があるのなら払いません」と主張することができます。

しかし、全ての保証人がこの主張をできるかというとそうではありません。実は、連帯保証人はこんな主張はできず「お金を返せ」と言われたら借りたのが自分でなくても「分かりました」と泣く泣く従うしかありません。連帯保証人を相続した人も連帯保証人に他なりませんから、同じように従うしかないのです。

保証人には、例えば100万円のうち保証人二人で50万円ずつ保証するといったタイプもあります。しかし、世の中の保証人はほぼ連帯保証人です。保証人の契約書に「保証人」という文言がついていても、契約書の中身を読んでいくと連帯保証人のことを指しているとすぐに分かるものがほとんどです。なぜ世のお金を貸す人は数ある保証人契約の中から「連帯保証人」を選びたがるのでしょう?それは、連帯保証人がどんなことができて、どんなことができないかを大まかに理解すれば納得いただけるのではないかと思います。

ですが、まずは一つ明らかにしておきましょう。保証人の場合、「お金を返せ!」と言われたら「借りた本人に先に言ってください!」と言い返せます。しかし、連帯保証人は言い返すことができません。ここから一つ分かることがありますね。つまり、「連帯保証人」という制度は、保証人としての立場が非常に弱く、かつ、債権者に有利な保証人だからこそ債権者は選びたがり、相続人を含め債務者側はとても怖がるんです。

保証とは?
参照元:独立行政法人 国民生活センター(2015年12月、著者調べ)

保証でお困りなら  法テラス|法律を知る  相談窓口を知る  道しるべ
参照元:法テラス(2015年12月、著者調べ)



連帯保証人は悪魔の制度なのか?

保証人に関する法律は民法432条から462条に規定されています。

連帯保証人という言葉から、「借りた本人が返済できない時に代わりに返す」という解釈をしている方を見受けますが、連帯保証人は、借りた本人が返せない時に代わりに返す保証人ではありません。簡単に言ってしまえば「もう一人の借りた本人を作り出す手続き」なのです。

連帯ではない保証人の場合は、お金を貸した人から「返せ!」と言われても「借りた本人に先に言ってください」と言い返せます。「借りた本人に返済できる能力があるなら本人から返してもらってください!」とも言い返せます。しかし、連帯保証人は言い返せません。なぜなら、連帯保証人という名のもう一人の借りた本人になっているからです。お金は一銭も受け取っていなくても、連帯保証人イコールもう一人の同様の債務者を作り出す手続きと考えていただければ分かりやすいと思います。

もう一人の借りた本人になってしまったわけですから、「返せ」と言われたら「本人に言って!」とは言えません。なぜなら、コピーされた本人だからです。本人が本人に言ってくださいとはおかしな話です。いざという時に代わって保証するのではなく、連帯保証人の場合はお金を借りていないのにもう一人の債務者本人にされると覚えてしまいましょう。

いかがでしょう。とても怖いことだと思いませんか?コピー本人ですから言い訳できない。返せと言われたら返さなければいけない。自分は借りていないのになぜか債務者本人と同じ立場になっている。しかも、相続人に立場が相続されてしまう。連帯保証人をして悪魔の制度という話も聞きますが、確かに借りる側からしてみれば本当に恐ろしい制度であるといえます。しかし、貸した側からすれば、Aに100万円を貸したらBというもう一人の同じ立場の債務者を作ってもらえるわけですから、安心な制度と言えるのではないでしょうか。

連帯保証人を相続させないために

相続人になるだろう人に連帯保証人を相続させたくない。この場合、父親はどんなことに気をつけ、どんなことができるのでしょう。

まず一つに、友人や知人に連帯保証人になって欲しいと言われても、断固として断ること。自分が事業に参加するなど、お金を借りることも自分も関係する場合は別ですが、自分が他人の借金をそのまま引き受けして支払えるのか、そこまで相手に義理立てする必要はあるのかを考えるべきです。何となく断れなかったから引き受けたでは済みません。場合によっては家族の今後と友人を秤にかけることになりますが、その時にやはり友人の借金を背負うことはできないと判断したなら、断固として断るべきです。その人が連帯保証人にならなければそもそも相続なんてされるわけがないのですから、根本的な解決策は「引き受けないこと」です。

ちなみに、企業や事業に関してお金を借りる際に知人や友人という第三者に連帯保証人を頼まないこと!というガイドラインが金融庁から出ています。知り合いにそういった話を持ちかけられたことのある方は是非目を通していただければと思います。

中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針
参照元:金融庁(2015年12月、著者調べ) 友人や知人、親族を巻き込んで借金をし、けっきょく逃げたり破綻したりする。そして連帯保証人が自分の借金ではないのに身ぐるみを剥がされる。相続もする。そんな状況は前から問題視されており、ガイドラインの発表に至ったようです。連帯保証人問題も少しずつ動いています。駄目なものははっきりとダメ!と答えましょう。

ローンにも動きあり!

自分の借金、特にローンの場合は、最近は連帯保証人不要というタイプも増えています。

「そういうローンって大丈夫なの?」「じゃあ、自分が返さなければ借金はどうなるの?」と思われるでしょう。ご安心を。最近は保証料を支払って保証会社(保証人になってくれる会社です)にローンの際に保証人になってもらうケースが増えています。特に銀行の住宅ローンではこのタイプが増えており、特定の条件下では連帯保証人が必要だけどそれ以外の普通のケースでは保証会社に保証人になってもらうから連帯保証人は不要です、となっていることがけっこうあります。

保証会社にはローンの際に保証料を支払うのが普通ですが、銀行によっては保証料をサービスするキャンペーンをしたり、無料にしているところもあります。保証会社が保証をしてくれるなら連帯保証人が相続される心配もありませんし、連帯保証人をお願いしますと胃の痛い思いをしながら頭を下げる必要もないのですから、積極的に利用することをお勧めします。

自分が「住宅ローンを利用したいんだけど保証人が……」と言われる立場なら、「最近は保証人が不要なタイプも多いよ」とアドバイスすることもできます。アドバイスすることによって保証人になることを回避できるのではないでしょうか。

住宅ローンを借りるために保証人は必要となりますか?|イオン銀行
参照元:イオン銀行(2015年12月、著者調べ)



連帯保証人を相続してしまったら

実際に連帯保証人を相続してしまったら、基本的に「借金は返済しなければならない」「逃れる術はない」ということを覚えておいてください。被相続人である父親が断り難くて何となく連帯保証人を引き受けたというのであれば、相続人である息子や娘は主債務者(お金を借りた本人)に怒ると同時に、父親に対しても怒ってもいいと思います。しかし、怒っても状況は好転しませんので、連帯保証人を相続した際の対処法を検討します。

連帯保証人を相続してしまった場合の対処法は5つあります。

返済する

保証している借金(債務)が消えれば連帯保証人という立場も伴って消滅します。ですから、借金自体をさっさと返済してしまうという方法が一つです。人の借金ですから腹立たしい気持ちがあるのは当然ではありますが、最もスタンダードで簡単な方法が返済と言えます。例えば、相続財産が2,000万円で連帯保証人をしている借金が200万円なら、十分に使える手っ取り早い手段と言えます。

相続放棄をする

連帯保証人という立場だけでなく、預金も不動産も全て合わせて「いりません。相続しません」という手続きです。都合よく連帯保証人という立場だけを相続放棄することはできませんので、この手続きをする場合は全て捨てるつもりでしなければいけません。ですから、連帯保証人をしている借金の額が200万円で相続する不動産や預金の合計が5億円という場合は、相続放棄をしてしまうのはもったいない気がします。

相続放棄をすると不動産や預金も全て放棄しなければいけません。連帯保証人をしている借金が多額で相続する財産を上回っている場合は使える手です。手続きは裁判所で行います。

注意しなければならないのは、父親が友人の借金の連帯保証人になっていた場合は相続放棄で義務を逃れることができるけれど、相続人が被相続人の連帯保証人になっている場合は相続放棄をしても連帯保証人という義務を放棄はできないということ。

連帯保証人という立場と借金(お金を借りた本人、主債務者の立場)は別物です。父親が死んで受け継がれるのは借金(主債務者の立場)であり、息子は独自に連帯保証人を引き受けたのですから、父親から相続されるものではありません。息子独自の立場です。この点ははっきりさせる必要があります。

裁判所|相続の放棄の申述
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

限定承認をする

この限定承認も手続きは裁判所で行います。相続財産のプラスに応じてマイナス(連帯保証人をしている借金など)を返済するという手続きで、裁判所の計算で行います。

裁判所|相続の限定承認の申述
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

減額交渉をする

債権者である金融機関や人と交渉をする方法です。さすがに「相続が発生したので連帯保証人になっている借金をチャラにしてください」という虫の良い話は通用しませんが、分割払いの金額を減らすですとか、利息分を少しおまけしてくれませんか、ですとか、そういった部分の交渉は可能です。

貸した側としては途中でまったく借金の回収ができなくなったという状況に陥るよりは、多少利息が少なくなっても全額を回収したいはずです。また、本来は連帯保証人ではなく借りた本人が返すべきということも重々承知ではあるでしょう。

生活が苦しい。返すだけのお金がない。こういった事情を素直に話し、減額や分割の交渉をしましょう。

最後に

連帯保証人を相続させない方法、相続してしまった場合の対処法を簡単に解説しました。最後に代えまして、もう一つ取るべき手段を簡単に解説したいと思います。

家族が連帯保証人になっている、または自分が相続してしまったという場合、法律家に相談するのが上策であると同時に、考えていただきたいことがあります。それは、お金を借りた本人(主債務者)の財務状況はどうなのか?です。

連帯債務者は返済を迫られたら主債務者のコピー人間として応じなければいけませんが、しかし、お金を借りた本人がやたらと羽振りがいい、本人が「しめしめ、連帯保証人が返済を迫られているな。ラッキー」というのは、不平等としか言い様がありません。本来なら、借りたものは借りた本人が返すのが筋です。こんな時は「借りた本人は本当にお金がないのか?」を訝しみ、法律家にもその旨を素直に相談するべきかと思います。

確かに連帯保証人は返せと言われたら返さなければいけないもう一人の債務者になってしまった人間です。しかし、こういった場合は「それはおかしいですね」と、きっと法律家が執るべき手段を見定めてくれることでしょう。

連帯保証人にできることとできないこと、強制執行や差し押さえは、「条文はこうなっているけれど実務ではこういう扱いをする」ということがままあります。法律家はそういった実務事情にも通じていますから、被相続人が連帯保証人だった、連帯保証人の疑いがあるという場合は、相続が発生したらすぐに相談することをお勧めします。