贈与税の計算、どうやるの?計算方法と税金のかからない贈与

贈与税の計算についてお調べになっている方は、このくらいの金額なら贈与税がいくらかかるのかを知りたいのか、贈与税のかからない贈与の仕方を知りたい方でしょう。贈与は相続に直結する財産の分配方法といえます。相続になる前に贈与で少しでも財産を減らしたいとお考えになっているのなら、この記事は十分お役に立てるのではないでしょうか。



贈与税の計算のキホン

贈与税率について

贈与税の計算は相続税の計算に比べかなり分かりやすいといえます。金額区分が8つしかなく贈与された金額に税率を乗じ算出された税額から控除額を引く、といういたって単純な仕組みとなっています。なお税率表(以後は「速算表」といいます)は「一般税率」と「特例税率」の2つの種類があり、贈与する側とそれを受ける側の関係によって使い分けられています。

では国税庁が公開している速算表を見てみましょう。まずは一般税率の速算表からです。

■【一般贈与財産用】(一般税率)

この速算表は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用します。
例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。

基礎控除後の課税価格/税率/控除額
200万円以下/10%/-
300万円以下/15%/10万円
400万円以下/20%/25万円
600万円以下/30%/65万円
1,000万円以下/40%/125万円
1,500万円以下/45%/175万円
3,000万円以下/50%/250万円
3,000万円超/55%/400万円

出典:

www.nta.go.jp
一般税率の速算表を「一般贈与財産用」といいます。この速算表は国税庁の説明書きとのおり「特別贈与財産用」の贈与以外の贈与について使用される表となります。平成27年から使われるようになりました。

次に「特例税率」の速算表を見てみましょう。

■【特例贈与財産用】(特例税率)

この速算表は、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用します。
※「その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)」とは、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上の直系卑属のことをいいます。例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。(夫の父からの贈与等には使用できません)

基礎控除後の課税価格/税率/控除額
200万円以下/10%/-
400万円以下/15%/10万円
600万円以下/20%/30万円
1,000万円以下/30%/90万円
1,500万円以下/40%/190万円
3,000万円以下/45%/265万円
4,500万円以下/50%/415万円
4,500万円超/55%/640万円

出典:

www.nta.go.jp
こちらが特例税率の速算表で「特例贈与財産用」といいます。この国税庁の説明はちょっと難しい言葉が使用されていますね。

「直系卑属(ちょっけいひぞく)」って何のことでしょうか。簡単にいえば自分の直系の子孫のことですね。例えば曾祖父母祖父母親子孫ひ孫という関係です。

説明にもありますように直系卑属の贈与でも、贈与される側が満20歳以上でないとこの「特例贈与財産用」の速算表は使えず「一般財産用」の速算表で贈与税を計算するように規定されています。したがって満20歳以上で直系同士の贈与以外はすべて「一般贈与財産用」の速算表を使用しなければなりません。

しかし「特例」という割にはそれほど特例には見えないと思います。両者の違いは贈与される金額の区分と控除される金額だけのようです。しかも相続税に比べ税率の高さが目立ちますね。最高税率に達するのが3,000万円超の金額(一般税率の場合)です。ちなみに相続税の税率が55%に達するのが6億円超ですから贈与税の税率は段違いに高く設定されていることが分かります。比較のために以下に相続税の速算表をご紹介しておきますので参考にしてください。

■法定相続分に応ずる取得金額/税率/控除額
1,000万円以下/10%/-
3,000万円以下/15%/50万円
5,000万円以下/20%/200万円
1億円以下/30%/700万円
2億円以下/40%/1,700万円
3億円以下/45%/2,700万円
6億円以下/50%/4,200万円
6億円超/55%/7,200万円

出典:

www.nta.go.jp

贈与税の計算例①:一般税率

■国税庁

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です)。

出典:

www.nta.go.jp
いくつか計算例を上げましょう。贈与税の計算の基本はもらったお金から基礎控除110万円を引いた金額で速算表を見ることです。ついもらった金額で速算表を見てしまいがちですので気をつけなければなりません。

■友人から300万円を贈与された場合
友人同士は親族でもなければ直系卑属でもありませんので、当然一般税率での計算となります。

・贈与税額=(300万円-110万円)x10%-控除なし=19万円
「いままでお世話になったお礼に」と長年の友人から300万円贈られた場合、贈られた人は「ありがとう」といって300万円受け取っても翌年の確定申告時期には19万円の贈与税を納めることを忘れないようにしないといけませんね。

:速算表を見る手順
①もらったお金は300万円
②基礎控除額は110万円(この金額は常に一定です)
③300万円-110万円=190万円
速算表は「200万円以下」のところを見てください。
④190万円に税率10%を乗じます
⑤控除額はゼロです
⑥計算の結果は19万円となります
間違えて「300万円」の欄を見て計算しないようにしてください。

■親から自分の配偶者へ600万円贈与された場合

・贈与税額=(600万円-110万円)x30%-65万円=82万円
介護などで自分の妻が舅から感謝の気持ちで600万円をもらったような時は、なんと82万円の贈与税が発生してしまいます。義理の関係からの贈与は直系の贈与とはなりませんので一般税率となってしまいます。こんなときは妻ではなく夫がもらっておけば68万円の税金で済みますので14万円のオトクとなります(この計算は後の項目で行います)。

:速算表を見る手順
①もらったお金は600万円
②基礎控除額は110万円(この金額は常に一定です)
③600万円-110万円=490万円
速算表は「600万円以下」のところを見てください。
④490万円に税率30%を乗じます
⑤控除額は65万円です
⑥計算の結果は85万円となります
間違えて「600万円」の欄を見て計算しないようにしてください。今回は110万円を控除しても金額の区分が同じでしたが110万円を引くことによって金額の区分が変わる場合がありますので注意が必要です。

■親戚の叔父さんから1,000万円贈与された場合

・贈与税額=(1,000万円-110万円)x40%-125万円=231万円
「これで家でも買え」といわれお金持ちの叔父さんからポンと1,000万円出してもらったら231万円の贈与税がかかることを覚えておかないと納税するときに困ることになります。

:速算表を見る手順
①もらったお金は1,000万円
②基礎控除額は110万円(この金額は常に一定です)
③1,000万円-110万円=890万円
速算表は「1,000万円以下」のところを見てください。
④890万円に税率40%を乗じます
⑤控除額は125万円です
⑥計算の結果は231万円となります
間違えて「1,000万円」の欄を見て計算しないようにしてください。今回は110万円を控除しても金額の区分が同じでしたが110万円を引くことによって金額の区分が変わる場合がありますので注意が必要です。

贈与税の計算②:特例税率

今度は「特例税率」の速算表で計算してみましょう。「特例税率」の計算でも同じように基礎控除額110万円をまず引くことを忘れないようにすることと、金額の区分が変わっている場合はその金額の税率を乗じることに注意しましょう。

■祖父から内緒で400万円もらった孫(25歳)の場合

・贈与税額=(400万円-110万円)x15%-10万円=33万5,000円
この贈与は直系の贈与でしかも孫は25歳ですから「特例税率」の速算表を使用します。孫は納税分として33万5,000円を別にしておかないと後で苦労することになりますね。

■親から自分(50歳)へ600万円贈与された場合

・贈与税額=(600万円-110万円)x20%-30万円=68万円
先ほどの例では自分の配偶者が600万円もらった場合の計算で贈与税額は82万円でしたが、直系間の贈与は20歳以上であれば「特例税率」になりますので同じ金額でも差がでることになるのです。

■自分(50歳)が子ども(25歳)へ1,500万円の生前贈与をした場合

・贈与税額=(1,500万円-110万円)x40%-190万円=366万円
このような生前贈与をする場合は他の特例を使わないと損になりますので、意味もなく多額の現金を贈与するともらった側は366万円も納税しなければならなくなりますので慎重にすることをお勧めします。



贈与税の計算の「期間」

いつからいつまで?

贈与された金額から基礎控除110万円を差し引くことができるということは、贈与された額が110万円以下の場合は課税価格がゼロになってしまいます。ゼロにいくら税率を乗じでも答えはゼロなのは明白です。よって贈与税を納める必要はなくなりますが、贈与された額を集計する期間はいつからいつまでなのでしょうか。

日本の習慣として「年度」という期間があります。4月1日から翌年3月31日を年度といいますし、学校や省庁でも年度を使用することから贈与も同じ?と思いがちです。しかし税金の場合は「年度」を1年の単位として使いません。税金の1年は1月1日から12月31日の期間になりますので、贈与されたお金を集計するのも1月1日から12月31日までとなります。

その期間にもらったお金を集計し翌年の2月1日から3月15日の「確定申告」期間中に申告し、納税の期限は申告期間の最終日である3月15日となります(その年によって曜日が違うため1日2日ずれる場合もあります)。

申告と納税|税について調べる|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

変則的な贈与

例えば2者から別々に自分(25歳)に対して贈与があった場合は、どのように贈与税を計算するのでしょうか。父親から500万円と母親の親(祖母)から500万円もらったようなときです。その際は2つに分けて計算することになります。以下に計算例を上げます。

■父親から500万円もらったとき
:贈与税額=(500万円-110万円)x15%-10万円=48万5,000円
父親は直系ですから特例贈与財産用の速算表を使用します。

■母親の親(祖母)から500万円もらったとき
:贈与税額=(500万円-110万円)X20%-25万円=53万円
母親の親(祖母)は直系ではありませんので一般贈与財産の速算表を使用します。

■48万5,000円+53万円=101万5,000円が納税額となります。少し混同してしまいがちですが、直系以外からの贈与は一般贈与財産となる、と覚えておけば良いでしょう。

Q:自分の両親(父と母)から贈与されたときはどうでしょうか?
A:この場合はどちらも直系からの贈与となりますので特例贈与財産の速算表を使用します。

Q:母方の祖母と父方の祖母から贈与されたときはどうでしょうか?
A:この場合は、母方の祖母は直系ではありませんので一般贈与財産の速算表を使用し父方の祖母は直系となりますので特例贈与財産の速算表を使用します。

やはり少々考えてしまいそうです。基本は「直系」かどうかで判断することですね。くどいようですが「直系」以外はすべて一般贈与財産の速算表を使用、と単純に考えて良いでしょう。

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

贈与税のかからない贈与

暦年課税制度の利用

今まで計算してきた方法のことを「暦年課税制度」といいます。つまりもらった金額から基礎控除110万円を差し引くという計算でしたね。前述しましたとおり、年額110万円以下なら申告する必要もなければ贈与税もかかることもありません。この制度を利用して生前のうちに少しでも財産を減らせば、相続になった際に相続税を減らすことにつががるといえます。

相続となりますと相続人が決まってしまいますので、どうしても相続税が発生してしまう場合が多いことでしょう。しかし生前贈与なら年額110万円以下にして家族全員に贈与することもできるでしょう。仮に家族が自分を除いて5人いれば110万円x5人=550万円まで贈与しても全員基礎控除され贈与税は発生しないといえます。この贈与を10年間続ければ5,500万円という財産を減らす効果があるでしょう。

しかしあまり露骨にやりすぎますと税務署から疑いの目でみられる可能性もありますので、1人年間110万円という金額にこだわらずある程度変化を持たせることで「相続税対策」と思われずに済むかも知れません。そしてたまには年間110万円を少しだけ超えるような贈与をして、わずかな贈与税を納めれば税務署も納得しないわけにはいなかいと思います。

さらに「贈与契約書」を作成するのも効果が期待できます。契約書といっても簡単な内容で良いので「贈与します」と「もらいました」という意思確認ができるような内容で十分でしょう。

贈与契約書のひな型
参照元:八十二銀行(2015年12月、著者調べ)

相続時清算課税制度の利用

贈与する人が亡くなったときに相続人となるであろう人に対して、一気に2,500万円を贈与してしまう制度があります。それを「相続時精算課税制度」といいます。この制度を利用すれば毎年110万円という金額を気にしなくても良くなります。

また贈与する金額は2,500万円を超えても超えた分の贈与税(税率20%)を納めれば5,000万円贈与しても構いません。その代り差額の2,500万円x税率20%=500万円の贈与税はかかってしまいます。しかしその500万円の贈与税は実際に相続した場合の相続税から差し引くことができますので、相続税の先払いと考えても差し支えないでしょう。

ただし条件があり贈与する側である親の年齢が満65歳以上で、相続人となるであろう息子の年齢が満20歳以上という最低条件が付きます。しかもこの制度を利用してしまいますと「暦年課税制度」へ変更はできなくなりますので、相続時精算課税制度に切り替える時期を選ぶことが重要になりそうです。

No.4103 相続時精算課税の選択|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

配偶者控除の利用

これも贈与税の特例のひとつですが、夫(妻)から妻(夫)へ住居用の土地や建物の購入費用として資金を贈与された場合、2,000万円までは控除される制度があります。その代りに本当に家を購入し住まなければならないなどの条件がありますが、別居のための住居というわけではありませんので家に一緒に住むことはできます。ただしこの制度は20年間の結婚期間が必須で、かつ1回しか利用することができません。

なおこの制度は暦年課税制度と併用ができますので、基礎控除110万円を含めると2,110万円を資金に充てることができます。もし購入に要した金額が3,500万円だった場合は2,110万円との差額1,390万円の贈与税(およそ450万円)を支払うことになりますが、その後も暦年課税制度を利用すれば4年ほどで取り返すことが期待できますね。

No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



まとめ

いかがでしたでしょうか。贈与税の計算は速算表の見方を間違えなければ意外と簡単だといえます。しかし税率が高いため多額の財産を贈与するには手段を選択する必要があるでしょう。上手に贈与を利用すれば相続税対策にもなると期待ができそうですね。