相続税の税率ってどのくらい?間違えやすい相続税の計算方法

相続税の税率表は国税庁のホームページで公開されていますが、ご覧になった方はあまりの大雑把さに驚いてしまう方も多かったのではないでしょうか。サラリーマンの所得税税率表のような小刻みな表ではなく、たった8行しかありません。そのため誤った計算をされている方もいるのではないでしょうか。今回は正しい表の見方を中心にご説明します。



相続税の税率表は分かりにくい

相続税の速算表

国税庁のホームページで公開しているのは「相続税の速算表」というものです。それもたった8行しかなく「こんなもので相続税の計算ができるのだろうか」と思ってしまうほど簡易な表に見えてしまいます。それでも平成26年12月31日までの相続税の速算表は6行でしたから2行も増えたともいえますが、たった8行の表でどうやって計算するのだろうと悩んでしまう方も多いでしょう。まずはその相続税の速算表を見てみましょう。

法定相続分に応ずる取得金額/税率/控除額
1,000万円以下/10%/-
3,000万円以下/15%/50万円
5,000万円以下/20%/200万円
1億円以下/30%/700万円
2億円以下/40%/1,700万円
3億円以下/45%/2,700万円
6億円以下/50%/4,200万円
6億円超/55%/7,200万円

出典:

www.nta.go.jp
速算表はこんなに簡易な表です。パッと見た感じお分かりになりますか?表の左から法定相続分の取得金額/税率/控除額と項目が並んでいてその下にはそれぞれの金額や税率、控除額が書いてあります。

初めはこの表の使い方と計算方法からご説明します。

■例1
・相続した財産額が1,000万円以下の場合の計算例
:1,000万円x10%-(控除額ゼロ)=100万円
相続した財産額が1,000万円以下の場合は100万円が相続税というわけです。

■例2
・相続した財産額が5,000万円以下(3,000万円超)の場合の計算例
:5,000万円x20%-200万円=800万円
相続した財産額が5,000万円以下(3,000万円超)の場合の相続税は800万円となります。相続額が1,000万円以下の場合は税金から差し引くことのできる控除額がありませんが、3,000万円以下から控除額が50万円発生します。

■例3
・相続した財産額が6億円超の場合の計算例
:6億1,000万円x55%-7,200万円=2億6,350万円
なんと相続した財産が6億円を超えると44%くらい相続税として納めなくてはならいわけですね。

税率表の見方と計算はこのような手順で行い、相続税を計算することができます。金額の区分けが少ない分計算はしやすいのですが、区分けの金額を少しでも超えてしまいますと税率が5%刻みで上がってしまいますので、区分けギリギリの財産を相続した場合なんか損した感じになってしまいますね。

間違えやすい相続税の計算

相続についての正しい知識を持たないと相続税の計算を間違えてしまう可能性があります。相続税はサラリーマンの給料にかかる所得税のように、支払われた金額に税率をそのまま乗じて計算するのではありません。国税庁の資料には以下のように書いてあります。

相続税額の算出方法は、各人が相続などで実際に取得した財産に直接税率を乗じるというものではありません。正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの額を民法に定める相続分によりあん分した額に税率を乗じます。

この場合、民法に定める相続分は基礎控除額を計算するときに用いる法定相続人の数に応じた相続分(法定相続分)により計算します。

実際の計算に当たっては、法定相続分によりあん分した法定相続分に応ずる取得金額を下表に当てはめて計算し、算出された金額が相続税の総額の基となる税額となります。

出典:

www.nta.go.jp
国税庁のホームページではこのように説明書きがありますが、いろいろ難しい言葉が出てきますのですんなり頭に入ってこないのではないでしょうか。相続税の計算は税理士の任せておけば良い、という感じにも思ってしまいます。

しかし税理士に計算をお願いするのは相続が始まってからになりますので、その前にある程度は自分でも見当をつけておきたいところです。ところが国税庁の説明は以上のように難しいため、間違った解釈で計算してしまう方も多いようです。以下に間違えやすい解釈と計算例をご紹介します。

■被相続人(亡くなった人)の遺産額にそのまま税率を乗じてしまう
遺産額に税率を乗じて相続税を算出し、それを相続人で割れば良いのではないかと考える方がいます。仮に1億円の遺産があり相続人が4人いたとします。

・1億円x30%-700万円=2,300万円
・2,300万円/4人=575万円
相続税の総額が2,300万円だからそれを4人で割れば、1人あたりの相続税は575万円、と間違えてしまいます。

■被相続人(亡くなった人)の遺産額を相続人の数で割ってその額で相続税を計算する
同じように1億円の遺産があり相続人を4人で分けてから計算する方もいます。

・1億円/4人=2,500万円
・2,500万円x15%-50万円=325万円
最初に1億円を4人で分けてそれから相続税を計算しますと、1人あたり325万円が相続税となってしまいます。総額では1,300万円です。

■被相続人(亡くなった人)の遺産額から基礎控除額を引いた額で相続税を計算する
多少相続について知識があり「基礎控除額」という非課税枠を知っている方が陥りやすい計算間違いです。条件は上記まま同じにして計算してみましょう。なお「基礎控除額」については後ほどご説明します。

・1億円-基礎控除額5,400万円=4,600万円
・4,600万円x20%-200万円=720万円
・720万円/4人=180万円
この計算方法ですと1人あたり180万円の相続税となります。同じ1億円の相続でも計算の仕方によって575万円や325万円、180万円といろんな計算結果になってしまうものです。

相続税の計算方法はこんなに単純なものではありません。かといってそんなに難しいことでもないと思いますので、次の項目ではもう少し正しく計算する方法をご説明しましょう。



相続税の税率表を正しく使う

基礎控除について

前の項目で「基礎控除額」という言葉が出てきました。基礎控除額というのは被相続人(亡くなった人)の遺産総額から一定の額を差し引くことのできる非課税枠のことです。これも国税庁のホームページで公開されいます。

平成27年1月1日以後に相続が開始(被相続人が死亡)した場合

課税価格の合計額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
=課税遺産総額

出典:

www.nta.go.jp
はやり少々難しいため、簡単に以下にまとめます。

・基礎控除額=3,000万円+(600万円x相続人の数)

この計算式で基礎控除額は求めることができます。今までの例では相続人の数は4人でしたので、実際計算してみましょう。

・基礎控除額=3,000万円+(600万円x4人)=5,400万円

この5,400万円を遺産額から差し引いた金額で相続税を計算することになります。先ほどの間違いやすい計算の事例の最後ではこの基礎控除を差し引くことができたのですが、そこから先がちょっとだけ間違ってしまいました。今まで例では以下の条件でした。

・遺産総額1億円
・相続人は4人
:よって基礎控除額は5,400万円

計算に足りなかったのは相続人の内訳です。相続税を計算するためには、1億円-5,400万円=4,600万円に対して税率を乗ずることまでは良かったのですが相続人の内訳を考えていませんでした。4,600万円を「法定相続分」で先に分割する必要があるのです。

法定相続分とは

法定相続分とは民法で定められた遺産の分割方法です。相続人がこの場合はこの割合で分けなさいと一定の基準があるのです。それは民法第900条にあり以下にご紹介します。

(法定相続分)
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

出典:

law.e-gov.go.jp
「直系尊属」というのは被相続人(亡くなった人)の親や祖父母、曾祖父母のことをいいます。左の漢数字は相続人となる順番の意味もありますが、4番目の内容は同じ相続順位で何人か相続人がいた場合は相続した額を頭数で割るということと、異母兄弟姉妹が相続人となる場合は本来の兄弟姉妹の半分が相続するということが書いてあります。

今回の例では相続人4人とうことでしたが、内訳は配偶者と子とも3人ということにしましょう。その場合の法定相続分は1番目に書いてある通り各1/2ずつということになります。

正しい相続税の計算

基礎控除後の遺産を法定により分割する

もう一度いままでの条件を確認しましょう。

・遺産総額1億円
・相続人は4人(配偶者と子ども3人)
:基礎控除額は5,400万円
・課税対象となる遺産額=1億円-5,400万円=4,600万円

課税対象となる遺産のことを「課税遺産総額」といいます。相続税額を計算するには「課税遺産総額」である4,600万円を法定相続分で分割します。分割の割合は前項目のとおり配偶者1/2と子ども1/2です。なお、子どもが3人いますので1/2を3等分することになります。よって計算は以下のとおりです。

・配偶者:4.600万x1/2=2,300万円を相続します
・子ども:4,600万x1/2=2,300万円/3人=766万円(便宜上この数字とします)
:子ども1人あたり766万円の相続です。

次は各相続人の相続税の計算に入ります。

各相続人の相続税の計算

各相続人の相続財産は以下のとおりです。

・配偶者:2,300万円
・子ども1:766万円
・子ども2:766万円
・子ども3:766万円

以上の金額を速算表で計算します。

法定相続分に応ずる取得金額/税率/控除額
1,000万円以下/10%/-
3,000万円以下/15%/50万円
5,000万円以下/20%/200万円
1億円以下/30%/700万円
2億円以下/40%/1,700万円
3億円以下/45%/2,700万円
6億円以下/50%/4,200万円
6億円超/55%/7,200万円

出典:

www.nta.go.jp
・配偶者:2,300万円x15%-50万円=295万円
・子ども1:766万円x10%=76万6,000円
・子ども2:766万円x10%=76万6,000円
・子ども3:766万円x10%=76万6,000円

各相続人の相続税が決まりましたのでこの税額をすべて合計します。

・295万円+76万6,000円+76万6,000円+76万6,000円=524万8,000円
相続税の総額はこのように524万8,000円となりました。今までの間違った相続税額の計算では、2,300万円や1,300万円、720万円という相続税額でしたが正しく計算しますとこんなに違ってくることがお分かりだと思います。

No.4152 相続税の計算|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)



さら踏み込んで計算しよう

配偶者控除の利用

相続税法上認めらている非課税枠として「配偶者控除額」という枠があります。サラリーマンの年末調整などでも配偶者控除という非課税枠がありますが、相続においても配偶者の存在は大きいものとして考えられています。

被相続人(亡くなった人)の遺した財産は1人の努力で築き上げた財産ではなく、配偶者の家事や育児など陰の協力があってこそ遺すことができた財産であるという考えです。そのため配偶者控除額はかなり大きな金額となっており、以下に国税庁のホームページで公開されている資料を紹介します。

1 制度の概要

 配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

(注) この制度の対象となる財産には、仮装又は隠蔽されていた財産は含まれません。

(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額

 この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。
 したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。

出典:

www.nta.go.jp
以上のように使える配偶者控除は1億6,000万円または法定相続分のどちらか一方で、どちらを選択するかは相続人同士で話し合って決めることができます。今回の例では配偶者と子ども3人という設定でしたが、子どもがまだ未成年の場合や同居している子どもの場合などは相続税524万8,000円を納税するのももったいないような気もします。

その場合は法手相続分での相続はやめて「遺産分割協議書」という文書を作成します。財産の相続割合を変更することは民法第907条で認められていますので違法でもなんでもありません。以下のように相続割合を変更します。

・配偶者の相続割合:100%
・子ども3人の相続割合:0%

つまり配偶者がすべてを相続するようにしてしまいます。課税遺産総額は4,600万円でしたので配偶者控除1億6,000万円の枠を使い相続財産を全額非課税として申告することにより、相続税額はゼロにすることも可能といえます。

また子ども3人とも独立しているような場合や親子関係があまり良くないような環境であれば、子どもの相続分は相続し相続税を納めることになるかも知れません。それぞれ766万円を相続して76万6,000円を納税すればそれで済みます。しかし配偶者控除は法定相続分の相続額については全額非課税ですから295万円の相続税は支払うことはありません。

どちらの方法をとってみても配偶者の税負担はありませんので、配偶者控除は最強の武器といえそうです。

No.4158 配偶者の税額の軽減|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

民法
参照元:法務省(2015年12月、著者調べ)

相続税の早見表

インターネットで検索しますと、「相続税早見表」という簡単に相続税額を調べることができる一覧表が個人の運営しているホームページに掲載してあります。各サイトによって表の作り方はまちまちで、課税遺産額も5,000万円単位となっているところも多いようです。

この早見表は大まかに相続税額を調べるには大変便利な表ですが、サイトごとに多少の金額のズレもあるようです。どこの早見表も相続人は配偶者と子どもという設定になっており、子どもの数も1人から4人まで計算されています。

今回の例を早見表で調べてみたところ相続税額はゼロになっていましたので配偶者控除を加味したものと思いますが、子ども1人だと40万円の相続税、子ども2人だと10万円の相続税がかかるようになっていましたので本当のところは良く分かりません。

中には基礎控除を計算に入れていない早見表もあるようですので、これらの表をで調べる際はいくつかのサイトを見比べることをお勧めします。

国税庁ではそのような早見表は資料としてはありませんので、国税庁非公認だと考えた方が良さそうです。検索は「相続税 早見表」のキーワードですれば何件もありますね。

相続税は平成27年1月1日に法改正がありました。しかし、早見表の中には、この法改正に対応していないものもインターネット上にはあります。そのため、早見表を見る前に、その早見表が法改正に対応しているかどうかを確認しましょう。以下の早見表は、法改正に対応したものとなっています。

相続の知識 | 相続が発生した方 | 4.相続税早見表 | 税理士法人レガシィ
相続の知識。相続が発生した方。4.相続税早見表。相続総合コンサルティングを得意とする「税理士法人レガシィ」。相続・贈与税など資産家に関係するあらゆる税目を相続対策のコンサルティングを通じて、お客様の大切な「財産」や「思い」の継承をサポートいたします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。相続税の税率や相続税額の計算の基礎についておおよそ見当がついたのではないでしょうか。本格的に計算するためにはもう少し知識を必要としますが「相続税ってこんなもの」とういうイメージは持ってもらえたと思います。

法律用語が多くてとっつきにくい面も確かにあります。それでも今回の事例で基礎の部分は押さえてあります。今後のお役に立てれば幸いです。