<遺産相続>孫に相続させたい!養子縁組で孫が相続できる!?

孫に遺産を相続させたいと検討している場合、遺言と養子縁組という二つの選択肢があります。養子縁組の遺言にはないメリットを紹介しつつデメリットについても紹介します。相続に養子縁組を活用するための基礎知識です。



遺産相続を孫へ!という需要

遺産を孫に相続させたいという需要は一定数あります。孫の親である息子や娘とあまり仲がよくないという理由から、孫の今後の学費や生活資金を相続という形で保証したいという理由、また、事業を孫に承継させたいという理由から、なぜ祖父母が孫への相続を望むのかは家庭ごとに異なっています。中には、実子である息子や娘と同列で相続させたい、息子や娘が亡くなり孫を我が子として相続させたいという需要もあるでしょう。

実際、孫への相続の需要は証券マンとして働いていると、現実に孫へ相続させようという形で動いている祖父母の方々以外にも多いと感じます。それに、行員としてコンサルタント業務をこなしていると、援助のために何らかの手段を用いている祖父母が多いことに驚かされます。

金融商品の相談をしながらお客様の家族形態を伺うと、「息子の他に養子がいまして」「うちは嫁と仲が良いもので、養子にしまして」「孫に援助をしたかったので養子縁組を」というケースがけっこうあるのです。養子縁組をするとまさに「子」になりますから、子として相続が可能なのです。しかし、子を増やすということは、その分家族関係を複雑にするということです。

孫に相続させたい!そのために養子縁組を活用する方法のメリットとデメリット、そして相続関係の変化について解説します。



孫に相続させるための養子縁組

孫に遺産相続をさせたい場合には遺言の活用と養子縁組という方法があります。とにかく財産を渡したい、急を要する援助が必要という場合は生前贈与や非課税制度を活用しても特定資金のプールという方法があります。しかし、なるべく揉め事を回避し、一定額の遺産を渡したいという場合は特に養子縁組制度の活用が有効です。手続きにより孫を養子にしてしまうのです。

No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

そもそも養子縁組とは?

養子とは、出生により自分の子となる実子と異なり、法律に則った手続きをすることにより子供となった者のことです。養子縁組とは養い親となる者が養い子になる者と養子親子関係を結ぶ手続きの事です。

養子というと血の繋がっていない者を子供にするという印象がありますが、自分の非嫡出子を養子にすることもできますし、今回の記事で取り上げているように、孫を養子にすることも可能です。血が繋がっている、繋がっていないに関わらず、「こんな人は養子にできません」という規定に反しない限り養子にすることができます。規定に反していなければ、自分の弟でも姪でも、孫でも、比較的簡単な手続きで養子にすることができます。この養子を「普通養子」といいます。

養子にはもう一つ「特別養子」という養子縁組方法があります。しかし、一般的に孫に相続させたいという場合に使われるのは普通養子の方です。なぜでしょう?

普通養子、特別養子問わず、孫を養子にすることは基本的に可能です。また、養子にすれば「子」になるわけですから、子として相続が可能になります。孫に相続させたい場合、この手続きによって子になることは重要な意味を持ちます。考えてみれば、どちらも相続できるのなら、祖父母はどちらの養子制度を選択しても良いような気がします。しかし、孫に相続させたくて養子縁組をしたケースの多くは普通養子です。普通養子はそんなに魅力的な制度なのでしょうか。

裁判所|未成年者を養子にしたいと思います。どうすればよいでしょうか。
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

養子縁組許可の手続きとは(pdf)
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

裁判所|養子縁組許可
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

特別養子という制度の困難さ

実は、普通養子が二種類の養子縁組を比較した上で魅力的だから世のおじいちゃんおばあちゃんは普通養子を選択しているのではありません。答えは特別養子の意味と制度の困難さにあります。

普通養子は未成年を養子にする場合などは裁判所の許可が必要になりますが、こんな場合は裁判所の許可を得てくださいという場合以外は個人間で簡単に手続きできるのです。対し、特別養子は絶対に裁判所が関わり、しかも子供は6歳まで(例外あり)という条件があります。しかも、特別養子の場合は実親との縁が切れます。実親の存在を子になるべく気取られないように子供一人の戸籍を作った上で養子にするという周到さです。おじいちゃんおばあちゃんが特別養子を選択した場合は、子供の本当の親である娘または息子と孫を縁切りさせ、自分たちの本当の子供として育てるということに他なりません。

特別養子が使われる場合は、子が虐待を受けていた、遺棄されていた、性犯罪により生まれた子だという悲しい事情があることも少なくありません。また、両親が事故により赤ちゃんだった我が子を遺して亡くなった場合や、自分たちで育てたいけれどどうしても経済的な理由で無理だったというケースもあります。

事情があるからこそ実親との縁切りがあると考えるのが妥当でしょう。そして、事情があり、実の親子としてこれから暮らしてゆくから、やっぱり育てられませんと養親が言い出しても特別養子にはもう戻る実親がいないわけですから、裁判所が親子の事情を判断し、厳しく手続きを行うのは当たり前ではないでしょうか。

養子は二種類あり、それぞれ意味が異なっている。孫に相続させたいという場合は主に普通養子という養子を選択するのだということを覚えておいてください。

裁判所|特別養子縁組成立
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

普通養子の手続き

孫に相続させたい場合の一手段として用いられる普通養子縁組。口で「この子は今日から私の子」と言っても、当然通用しません。養子縁組により法律関係や相続関係が動くのですから、当然ながら相応の手続きが必要になります。また、こんな場合は「養子縁組できません」という条件に該当してしまうと養子縁組はできません。

■自分より年上は養子にできない
■自分の直系尊属は養子にできない
■親の許可がないと養子にできない

孫を養子にする上ではあまり関係ありませんが、まずは基礎的な条件を三つ押さえましょう。養子とは何か?を考えると、至って当たり前ともいえる条件ばかりです。

条件の意味

自分より年上の者を養子にはできません。歳下であれば何歳でも問題ありませんので、例えば100歳のおじいちゃんが99歳の友人のおじいちゃんを養子にすることもできるわけです。25歳の姉が23歳の自分の弟を養子にすることもできますよ。孫の場合は、おじいちゃんおばあちゃんより年上ということ自体が有り得ないので、あまり考える必要はありません。

自分の直系尊属を養子にできない。これも当然のことではないでしょうか。直系尊属とは家系図を書いた時に自分の真上に来る人たちのことです。両親や祖父母、曾祖父母がこれに当たります。おばあちゃんは孫を養子にできますが、孫はおばあちゃんを養子にはできません。母親は自分の非嫡出子を養子にできますが、子供は自分の母親を養子にはできません。母親や父親、おじいちゃんおばあちゃんを孫が養子にできるとしたら、それってもう養子じゃないよね?何か違うよね?という話になると思います。

孫を養子にするために親の許可が必要なのは、これも当然のことかと思います。親(親権者)は法的な行為に関して子供を代理することができます。おじいちゃんとおばあちゃんと孫は確かに血が繋がっていますが、だからといって親の意見を無視して勝手に養子にはできないということです。ただし、孫が15歳を超えていれば親の同意は不要となり、孫の意思で養子になることができます(民法797条)。色々な法律行為は20歳がキーポイントになりますが、遺言と養子縁組は15歳が分岐点になっています。

他にも細かに「こんな場合はダメです」という条件が決まっています。また、「こんな場合は裁判所の許可をもらってください」という条件も決まっています。養子にできるかどうかを判断したい、養子の手続きをお願いしたいという場合は弁護士に相談すると安心です。

条件は大丈夫かを判断したら

役所に書類を提出します。一例として名古屋市の手続きをご紹介します。

名古屋市:養子縁組・離縁(暮らしの情報)
参照元:名古屋市(2015年12月、著者調べ) 特別養子の場合は裁判所での厳格な手続きが必要になりますが、普通養子の場合はそこまで厳格ではありません。養子にできるかどうかを確認し、大丈夫という場合は書類を提出すれば手続きは終了です。手続き終了で晴れて孫は養子というおじいちゃんおばあちゃんにとっては手続きで結ばれた親子になります。

簡単とはいえ、書類一枚でも手間は手間です。しかし、世のおじいちゃんおばあちゃんは相続を考えて孫を養子にするという手段をよくとっています。選ばれているということは手間よりもメリットの方が多いと多くの人が判断したに違いありません。具体的に普通養子縁組により孫に相続させるメリットとは何なのでしょう?



養子相続のメリット

孫と養子縁組をすることにより、孫を自分の「子」とすることができます。孫の親にあたるおじいちゃんおばあちゃんの息子や娘とは兄弟姉妹の関係になります。実の親子なのに兄弟姉妹?と首を傾げたく奇妙さですが、手続きで結ばれた養親子と実親子の関係はそれぞれ別物と考えた方がしっくりと理解できると思います。

養子にすることにより、孫が相続人になることができます。何も手続きしない場合は、孫は親が相続権を失くしている場合(廃除や欠格の場合)や、親が亡くなっている場合に代襲相続だけが可能です。普通は相続権がないのです。しかし養子になることによっておじいちゃんおばあちゃんの子供として相続が可能です。

また、普通養子の場合は実親との縁は切れません。ですから、養子として養親の相続ができる他に実親の相続人になることもできます。

祖父が亡くなり、実子である息子と養子である孫が相続人になった場合、1/2ずつ相続をする。この後に息子が亡くなり孫と妻(孫の母)が相続人になった場合、先の息子の相続分1/2がまるまる残っていれば、その遺産分に息子の遺産を加えた遺産を孫と妻が1/2ずつ相続することになります。この時に妻が相続放棄をすれば全て孫の一人取りになります。最終的に、他の家族が協力的であれば孫に総取りさせることも可能だということです。

No.4132 相続人の範囲と法定相続分|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

遺言よりもメリットがある?

養子になることで祖父母の子供として相続ができる他に、普通養子の場合は実親である両親の相続権もある。これは孫を金銭的に支援したいという場合に非常にメリットのあることです。しかし、相続させるだけならあえて養子縁組の手続きをしなくても遺言書があればできてしまいます。養子縁組に特有のメリットは何かあるのでしょうか?

あるんです。メリットが。養子縁組をすることにより、遺言にはないメリットが。それは遺留分という制度。遺留分とは相続人に認められた必要最低限の遺産の取り分のことです。遺言で他の相続人や赤の他人に全て遺産を渡されてしまっても、子供と配偶者には遺留分と必要最低限の取り分が認められているので、取り返すことができるんです。

遺言で孫に遺産を相続させた場合、基本的に遺留分はありません。しかし、養子にした場合は遺留分の行使が可能です。遺言の場合、遺言執行者か周囲の人が遺言を実行してくれること、約束を守ってくれることが前提です。もし約束を守らなかった場合は、特に未成年の孫であれば訴えを起こすのも一苦労でしょう。その点、養子にして遺留分を行使できるようにしておけば、遺産の取り分を侵害している者に対し「遺留分を行使します。返してもらいます」という通知だけで足り、あえて訴訟を起こす必要もありません。

この遺留分を行使できるという点で、遺言を使うよりも養子にする方が孫にとってメリットがあると言えます。

裁判所|遺留分減殺による物件返還請求調停
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

税金上のメリット

養子縁組だけでなく、遺言の場合もですが、「相続する」ことによって生前贈与よりも税金上のメリットがあります。遺産に対しては相続税が課税されますが、生前贈与に関しては贈与税の課税対象となります。相続税の方が控除が多く、税率が低いのが特徴です。税金面を考えると、差し迫って資金が必要でお金を渡す必要があるという場合以外は相続で渡す方が基本的にお得になります。

No.4170 相続人の中に養子がいるとき|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.4155 相続税の税率|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

養子縁組のデメリット

養子縁組をすると子供としての身分を獲得します。また、他の親族との間にも血族関係が生じます(民法809条、727条)。結果として孫は子供として祖父母の遺産相続が可能になるわけですが、これは他の親族にとっては由々しき問題です。なぜなら、孫が子供として相続するということは相続の取り分や相続関係が大きく変化するということに他ならないからです。

孫がおじいちゃんの養子になったとしましょう。おじいちゃんには孫の父親である息子が一人いたとします。この場合、孫が養子にならなければおじいちゃんの遺産は息子一人が相続するはずでした。しかし孫が養子になったことで子供二人と換算されて取り分が1/2ずつになります。相続の取り分と関係ががらりと塗り替えられることにより相続トラブルが発生する可能性があります。

また、養子は子供として扶養してもらうこと、相続できるというメリットがある反面、養親を扶養する義務も発生します。養親がいて実親との関係も切れないわけですから、最高で四人の親の介護の必要性が出るわけです。孫を純粋に可愛いと思う気持ちで養子縁組をしたら孫にいらぬ義務を背負わせる可能性もあるということは念頭に置くべきです。

養子縁組の注意点

養子縁組には縁組意思が必要だと言われています。

縁組意思とは、本当に親と子のようになるという意思のこと。ただ単にお金をあげたいから、家督相続をさせたいから、技芸の家元を継がせたいからという理由だけでは養子縁組は許されないと解釈されます。
孫に相続させたいと考えるなら、その理由をよく考えてみてください。理由が孫への愛情なら問題ありませんが、家のために養子縁組するというのは、いかに相続のためであれ養子縁組制度の趣旨から外れることになります。

遺産相続を孫に!準備は入念に!

孫に遺産相続させたいと考える場合、遺言と養子縁組という二つの方法がありますが、養子縁組の方がいざという時に遺留分を行使できることを考えるとお得感があります。養子縁組で基本的な相続権を付与し、遺言で強化するという使い方もできます。ただし、手続き上、養子縁組の条件や縁組意思が問題になりますので気をつける必要があります。

また、孫に財産を渡したいと考えている場合はあえて相続にこだわる必要はありません。生前贈与でも特定使途と条件により非課税になる制度がありますので、制度の利用も含めて自分と孫の関係、渡したい額を考慮して手段を決めるべきです。準備も入念に進めるべきでしょう。

養子縁組制度と相続関係に関しては弁護士に相談し、遺産と贈与の税金に関しては税理士に相談することをお勧めします。孫に渡したいと考えるなら、きちんと孫の手に渡るようにしないと意味がありません。そのためには制度のメリットとデメリットを理解し、専門家に間に入ってもらい、自分と孫に必要な制度をアドバイスしてもらい、下準備を進めましょう。デメリットを考え、先に対策しておくことも重要です。

孫に遺産相続させたい。残念ながら、実行に移し下準備をしないと難しいことです。願うなら、一歩を踏み出し、準備をしてみましょう。