相続財産管理人とは?私が死んだらどうなる?相続人不存在問題!

相続人がいなかった場合、財産は誰が管理し、どんな手続きを経てどこに行くのでしょう?あなたは自分に相続人がいなかった場合、どうなるんんだろうと考えることはありますか?相続人不存在問題と共に、相続財産管理人のお世話にならないための対策について解説します。



相続人がいない?

亡くなった人の身寄りがない。家族が先立ってしまったなどの理由で相続人がいない場合や、家族がいても欠格や廃除、相続放棄によって相続権を持つ人がいなくなってしまった場合、また、相続人はいるのかもしれないけれど遠縁過ぎて存在が分からないという場合、遺産は裁判所で相続人不存在の手続きをされ、決まった流れを経て最終的に国庫に帰属することになります(民法959条)

国庫に帰属するまでの間は、相続財産は裁判所の手続きに従い、相続財産管理人が適切な管理をします。



相続財産管理人とは?

国庫に帰属するまでの間、遺産を管理する必要がありますよね。裁判所が手続きをするといっても裁判官が一から十までやっていれば他の裁判が進みません。なぜなら、相続人が存在せずに国庫に帰属する遺産は毎年とっても多いのです。2010年の相続人不存在で国庫に帰属した額は210億円以上!この額の遺産を全て管理していたら裁判所は他の裁判に手が回らず相続財産の事務ばかりしていなければいけません。こんな時に「裁判所の手続きに合わせて管理を頼みます」と依頼されるのが相続財産管理人なのです。

平成 22 年度決算参照
参照元:財務省(2015年12月、著者調べ)

平成26年度一般会計歳入予算概算見積書
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

相続財産管理人の仕事

相続人がいない場合は相続財産管理人の出番です。

相続財産を適切に管理し、裁判所手続きに添って財産関係の必要な手続きをするのが相続財産管理人の仕事です。「相続財産管理人」という名前を聞くと、アパートの管理人のような人?そういう仕事があるの?というような印象を持つかもしれませんが、別にそんな名前の専門職があるわけではありません。裁判所の選任により近くの弁護士さんが相続財産管理人になることがほとんどです。法律を熟知している弁護士さんが裁判所とタッグを組んで、相続人のいない遺産を管理し、渡すべきところに渡します。



相続人がいない場合の手続き

1、家庭裁判所は,相続財産管理人選任の審判をしたときは,相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をします。
2、1の公告から2か月が経過してから,財産管理人は,相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします。
3、2の公告から2か月が経過してから,家庭裁判所は,財産管理人の申立てにより,相続人を捜すため,6か月以上の期間を定めて公告をします。期間満了までに相続人が現れなければ,相続人がいないことが確定します。
4、3の公告の期間満了後,3か月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。

必要があれば,随時,財産管理人は,家庭裁判所の許可を得て,被相続人の不動産や株を売却し,金銭に換えることもできます。
財産管理人は,法律にしたがって債権者や受遺者への支払をしたり,特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続をします。
支払等をして,相続財産が残った場合は,相続財産を国庫に引き継いで手続が終了します。

出典:

www.courts.go.jp

具体的には?

相続人がいないようだぞ?となった場合は裁判所が相続財産管理人を選任し、本当に相続人がいないかを草の根分けても探します。法律で相続が決まっているわけですから、「多分いない」で手続きを進めることはできないのです。

生き別れの兄弟の子供がアメリカあたりにいてひょっこり相続人発見なんていうことだってあり得るのですから。同時に、「相続人の方、もしいらっしゃるなら出てきてください!」というお触れも出します。裁判所は頑張って相続人を探します。

頑張っても頑張っても相続人が見つからない、存在しないという場合は、今度は「生前この人と縁があった方、介護に勤めた方はいらっしゃいませんか?」「家や土地を共有している方はいませんか?出てきてください」というお触れを出します。そこで誰かが名乗り出た場合は遺産を分与するかしないかを決めます(民法255条、958条)

誰も名乗り出ず、名乗り出たけれど分与はしないという決定をした場合は、遺産は国庫へ帰属します。国庫へ帰属している額は冒頭でご紹介しましたが、すごい額ですよね。あれだけの額、かなりの相続が、相続人不存在という結末を迎えているとお分かりいただけると思います。

裁判所|相続財産管理人の選任
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

裁判所|特別縁故者に対する相続財産分与
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

放置していいの?相続人不存在

もし自分に相続人がおらず、相続財産管理人がつく事態になったらと想像してみてください。あなたならどう思いますか?最終的に国庫に帰属するのだから、きちんとした使い方をしてもらえるからそれでいいと納得するのも一つの結論かもしれません。

しかし、遺産は自分の築いた人生の証の一つとも言うべき存在ではないでしょうか。誰に渡すか、どんなことに使うか、自分で決めたい、相続財産管理人のお世話にはなりたくないとも思いませんか?そんな方には、相続人がいないと考えられる場合にしておくべき対策を教えます。

自分で決めたい遺産の行方!

自分が死んだら相続人がいないかもしれない。友人はいるけれど、特別縁故者として名乗り出ることはないだろうし、買ったばかりのマンションも預金も全て自分の名義で共有者がいないという場合は、共有者が遺産を受け継ぐこともできません。相続人不存在で相続財産管理人がついた場合は手続きの流れが決まっています。ですから、特別縁故者や共有者がいない場合は最終的に国庫に帰属する以外の道はありません。しかし、もし、遺産を自分の望む形で分与したいと考えるなら、裁判所の手続きには頼らず自分の意思を死後に遺すべきです。

相続人がいないということは、子供がいない、配偶者がいない(または亡くなっている)、両親が亡くなっている、兄弟姉妹がいないまたは亡くなっているということ。もしくはこうした相続人になるはずの人たちが欠格や廃除で相続ができなくなっているということです。

しかし、相続人がいないからといって遺産を国に帰属させたいかというとそうではないはずです。友人や知人だっているはずですし、忙しい日々に癒しをもたらしてくれたペットだっているでしょう。籍は入れていなくても恋人だっているのではないでしょうか。

現在はライフスタイルの変化や仕事上のことで姓が変わると不便だからと必ずしも結婚という道を選ばない人だっています。相続人不存在の手続きが始まってしまうと友人や知人が立候補してくれない限り遺産を渡すこともできません。また、特別縁故者の場合は裁判所の裁量次第ですから必ず遺産を受け取れるわけではありません。相続人不存在の手続きに入るとペットの今後のために使ってあげることもできません。

相続人にはなれないけれど遺産を渡したい場合、ペットのために使いたい場合は遺言と信託を使う方法があります。

相続財産管理人の世話にならないとはつまり死後の設計がしっかりしているということ。裁判所にも相続財産管理人にもお世話にならない死後の設計を考えて対策を立てることが必要です。元は自分の財産なのですから、最後まで自分で使い道を決めたいと思いませんか?

正しく遺言を使う

遺産を渡したい人がいる場合は遺言を使うことが効果的です。相続人にならない人に遺産を渡す場合は遺言をおいて他に方法がないとさえいえます。

相続の際に遺言があれば遺言で遺産分割を指定した人、方法が最優先となります。なぜなら、遺産はもともと亡くなった人の財産であったわけですから、本人がこんな使い方をしたい、この人にあげたいと指定するなら優先させようというのが法律のスタンスです。遺言で指定した通りの人が遺産を受け取れば相続人不存在の手続きには進みません。

友人や知人、お世話になった人、親族であっても相続人にはならない人、事実婚(内縁)の配偶者に遺産を渡す場合は相続財産に含まれない財産(保険金や制度上相続人だけに給付が限られないお金)を上手く使いつつ遺言することが重要です。

具体的に遺言を使う場合は、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを使うかが問題になります。自筆証書遺言は自分で簡単に書ける遺言ですが後に要件を欠いていたことにより無効になったり、トラブルの原因になることも少なくありません。

お勧めの遺言は?

具体的に遺言を使う場合は、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを使うかが問題になります。自筆証書遺言は自分で簡単に書ける遺言ですが後に要件を欠いていたことにより無効になったり、トラブルの原因になることも少なくありません。

公正証書遺言の場合は公証役場で手数料を払うことになりますが、要件を欠いていて無効ということはまずありません。公証役場に勤め遺言の相談を受けてくれる人たちは元検事や元裁判官という人たちが多いため、法律を熟知しています。遺産相続の希望を聞いて適切な内容を提案してくれるでしょう。手数料も定額で、相談は無料です。相続人がいない場合に遺産の行方の希望がある場合は公正証書遺言を活用することをお勧めします。

また、遺言と同時に遺言執行者を選定しておくことも重要です。自分が亡くなって相続人がいないという場合は遺言を書いても誰がその内容を実現してくれるでしょうか。遺言執行者を決めておけば遺言の内容を実行してくれるので安心です。遺言執行者は未成年と破産者以外は誰でもなれますし、裁判所に選任をお願いすることもできます。

日本公証人連合会トップ
参照元:日本公証人連合会(2015年12月、著者調べ)

裁判所|遺言執行者の選任
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

信託という可能性

信託とは、簡単に説明すると、お金を預託し、使い道や管理の細かい条件を定めて契約を結ぶことです。自分の財産から切り離したお金が結んだ契約に添って独自に生きていくと考えれば分かりやすいかもしれません。

ペットを飼っているという方もいらっしゃると思います。相続人がいなくいかにペットを可愛がっていても、ペットは特別縁故者に名乗りでることはできませんから遺産を受け取ることができません。また、相続人がいないということは友人や知人といったその他の縁者にあらかじめお願いしておき、その上で友人や知人が約束を守ってくれなければペットはもう生きて行くことができないということです。

遺産を受け取れない。人間の世界では自力で生きていけない。ペットを引き取ってくれる相続人もいない。友人知人にお願いしても約束を守ってくれるか分からない。こんな時は愛犬や愛猫の行く末も考えなければいけません。裁判所は親切にもペットの行く末を手配してくれることはなく、ただ粛々と相続人不存在の手続きを行うだけです。ペットはどうすればいいのでしょう?

こんな時はペット信託をお勧めします。ペット信託はペットのためにご飯や持病に治療、ペットの老後の世話など細かい条件まで定めて契約を行い、ペットのためのお金を預託します。この預託したお金は相続財産から外されます。

相続財産に含まれないということは、相続人のない人が亡くなっても相続人不存在の手続きとは別に動くということです。預託したお金の使い道、ペットの世話は厳しく監視されますので使い込みや、ペットは捨ててお金だけ取られるのでは?という不安も不要です。友人と口約束するよりも厳格に契約で縛られるのですから安心です。

このペット信託はできて日の浅いまだ改善の余地もある方法ですが、現状としてペットを看てくれる人が自分の死後にいないという人は利用すべきサービスではないかと思います。また、友人や知人、家族に託して信託契約を結ぶこともできますし、誰も託せる人がいないという場合も信託を利用できますから、相続人不存在の場合だけでなく親類縁者が不存在という場合も使えるところが画期的です。

一般社団法人ファミリーアニマル支援協会FASA
参照元:一般社団法人ファミリーアニマル支援協会FASA(2015年12月時点、著者調べ) ペット信託®(FA信託)の普及活動や動物愛護及び福祉活動を通して、 「家族としての動物」=ファミリーアニマルと人がより健やかで幸せな生活を 過ごすことができるようにサポートして参ります

信託は遺される人にも有効?

内縁の妻や夫を遺して亡くなる場合、残された内縁の妻や夫のことが心配です。遺言をしていなければ遺産を受け取ってもらうことができません。遺言をしていなかった場合は相続人不存在の手続き上で特別縁故者として名乗り出るという方法がありますが、名乗り出たからといって必ず分与の対象になるとは限りません。それに、名乗り出ることのできない状況だったらどうしましょう?

例えば、内縁の夫が体調を崩して寝たきりで入院していた場合を考えてみましょう。そんな時に内縁の妻が亡くなったとしたら、どうでしょうか。二人の間に子供がいれば子供が遺産を相続し、父親の介護を続けるかもしれません。しかし、妻が亡くなった段階で子供もなく、相続人そのものがいない。内縁関係では相続人にはなれませんから、夫は急に宙ぶらりんの状態になってしまいます。そんな時はどうしたらいいでしょう。

信託はこんな時にも使えます。相続人がいない、相続権のない家族が心配。遺言の他に信託を検討してみたらいかがでしょうか。

まとめ

相続人がいない、相続人が欠格や廃除、相続放棄で相続権を亡くした結果として誰も相続人がいなくなれば、相続財産には管理人が選出されます。この管理人を相続財産管理人といいます。相続財産管理人は相続人のいない財産の管理人として必要な手続きを行います。

管理自体は相続財産管理人が行い、相続人の捜索や特別縁故者に遺産を分与するかどうかという判断は裁判所が行います。判断の中で財産の名義を替えたり他に何か手続きが必要になったら、都度、相続財産管理人が行います。最終的に相続人がいない場合は相続財産管理人が手続きをして遺産を国庫に帰属させます。相続財産管理人とは相続人が誰もいない場合に手続きや財産管理をしてくれる人ですので、国庫に帰属させた段階でお役目終了ということになります。

自分に相続人がいない場合でも遺産は最終的に誰か、または国に受け継がれます。ですが、相続人はいなくても渡したい相手がいる場合は相続財産管理人のお世話にはなるべくならないように対策を考える必要があります。ペットがいる場合も、遺産自体は相続財産管理人が管理するものとなっても、ペットのために独自に動かせる資金を信託などで用意しておく必要があります。

ライフスタイルや価値観に合わせて好きに生きることは素敵なことです。ですが、自分のライフスタイルと価値観は「立つ鳥跡を濁さず」を徹底してこそ完成するものではないでしょうか。相続人がいないだろうことは死ぬ前に分かることですから、自分の死後のことも考えてライフスタイルを設計してみませんか?